2024年01月20日

共産党、初の女性委員長誕生で変化はあるのか

志位氏は議長に"昇格"で党運営の実権握り続ける
泉 宏 : 政治ジャーナリスト
2024/01/19  東洋経済オンライン

共産党が3日間の日程で行った第29回党大会の最終日となった18日、政策委員長だった田村智子参院議員(58―比例)を新委員長に選任した。
同党初の女性委員長で、主要政党での女性党首就任は2016年9月に、旧民進党で2代目代表となった蓮舫氏(56―参院東京選挙区)以来だ。
その一方で、同党委員長として23年間も君臨し続けた志位和夫衆院議員(69―比例南関東)は新たに議長に就任した。
今回、長年同党の顔だった不破哲三元議長(93)が「引退」したことも踏まえると、今後は「志位氏が院政を敷く」(有力幹部)との見方が多く、これまで通りの志位氏の“1強独裁”は変わりそうもない。

党大会は4年ぶりで、静岡県熱海市の同党施設に地方組織の代表者など約800人を集めて開催された。
大会冒頭、志位氏は、自民党の巨額裏金事件を踏まえ「岸田政権は末期的な状況で、自民党政治そのものを終わらせることが強く求められている」と力説。
「日本の政治を変える道は、共闘しかない」と述べ、野党共闘を進めるとともに、次期衆院選での議席増を目指す考えを表明した。
そのうえで志位氏は「経験を積んだベテランの幹部とともに、将来性のある若い幹部や女性が力を発揮できる新しい中央委員会を選出することも大会の重要な任務だ」と執行部の世代交代の必要性を訴えた。
小池書記局長は続投、山添氏は政策委員長に これを受けて大会最終日の18日午後、志位議長、田村委員長を中軸とする新体制が決まった。
田村氏は早大出身で、初の私大卒の委員長。
早稲田大学在学中に入党し、国会議員秘書などを経て、2010年参院選で初当選。その後、国会での安倍晋三元首相による「桜を見る会」疑惑をめぐる鋭い追及などが党内外で評価され、一躍「党の顔」になったことが、今回の党首就任につながった。

田村氏は「両親が非党員の家庭で育ち、一般国民の感覚を持ち合わせている」(党幹部)といわれ、「独善・閉鎖的と批判されてきた党に刷新感をもたらす」(同)との期待を担う。
また、委員長人事とともに注目されていた書記局長は小池晃参院議員(63―比例)の続投となり、小池氏の後継と目されていた山添拓参院議員(39―東京選挙区)は田村氏の後任となる政策委員長に選任された。

一方、議長に就任した志位氏は、2000年に不破哲三氏から委員長を引き継ぎ、23年にわたって党首として「君臨」してきた。
ただ、ここ数年は国政選挙で当選者を減らすなど党勢退潮が目立つ。
加えて、党員数や機関紙「しんぶん赤旗」の部数の減少にも歯止めがかからず、党内外から「委員長交代」の声が高まっていた。
党大会の締めくくりあいさつで志位氏は「(今大会は)歴史的な成功を収めた」と自賛。
その後の記者会見では「女性と若手の登用で10年、20年先を見据えた党発展態勢づくりができた」と胸を張った。

一方、田村新委員長は記者団から野党共闘への対応を問われると「共闘態勢構築にできる限り力を尽くす」とし、安倍政権時代の新安保法制制定の際の国民的反対運動の盛り上がりに触れ、「国民の支援こそが共闘への大きな力となる」との考えを示した。
「志位院政」なら田村氏も前途多難
田村氏についてはすでに、次期衆院選で衆院にくら替えし、東京ブロックの比例候補として当選を期すことが決まっている。同党で現職参院議員が衆院にくら替えした例はなく、「そのこと自体が今回の田村委員長実現への布石だった」(党幹部)ことは間違いない。
その一方で志位氏が議長に“昇格”したことで、党運営の実権は握り続けることになる。
今回の人事では、60年にわたって「党の理論的支柱」だった不破氏が中央委員を退任し、党運営への影響力もなくなるため。党内には「本格的な志位院政の始まり」(幹部)との声も広がる。 [今回党大会の最終日の模様は、その後の記者会見も含めてユーチューブで生中継され、注目度の高さを示した。
ただ、中継画面には「志位院政ではこれまでの共産党と同じだ」などの書き込みが相次ぎ、委員長交代への評価を上回った。このため、今後は党内外から「田村新体制による党体質刷新の前途は多難」などと指摘する声が広がりそうだ。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする