2024年05月02日

よく効く薬ほど副作用は強い「高齢者には薬を処方しない医師」が理想(和田秀樹)

よく効く薬ほど副作用は強い「高齢者には薬を処方しない医師」が理想(和田秀樹)
5/2(木) 日刊ゲンダイDIGITAL

【和田秀樹 笑う門にボケはなし】

 日本人はマジメな方が多く、医療においても医師の指示通りに薬をきちんと服用する患者さんが少なくありません。
そんな患者心理のせいか、診察の上、医師が問題ナシと判断して、「様子を見ましょう」と伝えて患者さんを帰すと、患者さんの中には「調子が悪くて受診したのに、何もしてくれず、薬も処方してもらえなかった」とトラブルになることも少なからず耳にします。
怒った患者さんがその医師を「ヤブ医者」と悪評を立てることもあるようです。

65歳を過ぎたらラーメン屋に行ったりかつ丼を食べるのも大切

 確かに医師が重大な診察結果や症状を見落として「異常ナシ」と診断するのは問題ですが、そういう特別な病気がないとしっかりと診断上での様子を見ましょうなら、決して問題はありません。
むしろ不必要な検査や投薬をしないことは、患者さんの肉体的にも経済的にも合理的です。

■高齢者は不必要な薬を飲まない方がよい

 私がこの連載や講演会などで何度となくお伝えしているのは、なるべく高齢者は不必要な薬を飲まない方がよい、ということです。
どんな薬にも効果があれば、副作用もあります。
よく効く薬ほど、副作用も強い傾向です。

 しかも高齢者は、薬の分解や代謝、排泄にかかわる肝臓や腎臓の機能が低下していることもあり、ひとつの薬でも体内に残る影響が強く、副作用が現れやすくなります。
複数の薬だと、それらの相互作用によって、副作用もより強くなることをお伝えした通りです。
ですから、この点でも、薬を出さない医師は、決してヤブ医者ではなく、患者さんのことを考えての治療と処方といえます。

 中日新聞は以前、がんでの闘病について医師と患者にアンケートをしたことがありました。
最後まで闘うと回答した患者は9割を超えましたが、医師は2割。
「治療をやり切って死にたい」の割合は、患者95%に対し、医師は51%でした。

 これだけの差が表れるのはなぜかというと、ひとつは抗がん剤の副作用が影響しています。
医師はそのつらさを熟知しながら、患者さんにがんのガイドラインとして明記されている抗がん剤をステージごとに提案するものの、こと自分の治療となると、“自分としてはあんまり”という思いが働いているわけです。

 抗がん剤は極端なケースですが、高齢者が5種類以上の薬を服用すると、転倒しやすいなどの副作用が現れやすいことが指摘されています。
不必要な薬を使うことなく治療する医師は、多剤併用による副作用の予防という点では、とても大きな意味があります。
そんな医師はヤブ医者ではなく、信頼できる医師というふうに見方を変えるべきだと思います。

 そうすると、高齢者にとってよい医師の姿が見えてくるでしょう。
薬の見直しや減量に応じてくれる医師が、理想といえます。(おわり)

(和田秀樹/精神科医)
posted by 小だぬき at 14:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「五月病」を予防する7つの対処法、カギは「脳内物質」 メンタルの落ち込み状態は放置してはいけない

「五月病」を予防する7つの対処法、カギは「脳内物質」 メンタルの落ち込み状態は放置してはいけない
5/1(水) 東洋経済オンライン

新年度から1カ月。
新たな生活環境でさまざまなストレスにさらされ、ゴールデンウィーク明けごろから、心身の不調や無気力感に襲われるーー。この状態がいわゆる「五月病」だ。

五月病は正式な疾患名ではなく、「適応障害」や「うつ病」のカテゴリーに入る。
この五月病を悪化させないためにはゴールデンウィークの過ごし方が大事だという。

精神科・心療内科医の医師である川村総合診療院院長・川村則行さんにアドバイスをもらった。

「これって、もしかして五月病かも?」と思ったら、ぜひやってほしい7つの対策

 「五月病とは、新しい学校や新しい職場に入って、生活環境が大きく変わり、それがストレス、プレッシャーとなり憂うつな気分になる一種の適応障害です」と川村さん。

■放置すると本格的なうつ病に

 メンタルの落ち込み状態を放置すると、本格的なうつ病につながる場合もあるそうだ。
川村さんによると、うつ病にまで至ってしまうパターンは大きく2つあるという。

 「1つは労働時間が長いこと。もう1つは睡眠がうまくいかないことです。
とくにこの2つの要因が重なる場合は要注意。心当たりのある人は早めの対処が必要です」

 まず、労働時間でいえば、週55時間以上働いている場合、あるいは15時間以上働く日が週2回以上ある場合は気をつけたい。
こういうケースでは、やる気があり不安もないのに、ある朝、突然起きられなくなるといったことが起こりやすい。

 対して、睡眠がうまくいかない人の多くは、「考えすぎ」が背景にある。
人間関係や環境に適応しようとあれこれ考えているうちに、悪いことばかりが頭に浮かんでしまう……といったケースだ。

 考えすぎによる不眠とうつの関係について川村さんは、「思考によって過剰に神経細胞が働かされると、そのストレスで神経細胞は疲弊し、うつ状態に至りやすい」と話す。

 では、五月病のうつ症状に気づくにはどうすればいいのだろう。
川村さんは、次の2点に心当たりがあるかどうかを自覚することが重要だという。

 「1つは、長時間考えすぎていないか、もう1つは、考えても答えの出ないことを考え続けていないか、に気づくことです」

 仕事中だけでなくプライベートの時間も、同じことがグルグルと頭の中を回り、そのことばかり考え続けているのであれば、それはもう「長時間考えすぎ」といっていい。

 また、答えの出ないこととは、「なぜ、あいつが栄転したのか」とか、「なぜ、この親の元に生まれたのだろう」といったことで、結局、これはいくら考えても答えが出ない。にもかかわらず、考えてしまっているのであれば、それは問題だ。

 「実は、楽しい・楽しくないにかかわらず、山ほど頭を使うと、“幸せホルモン”のセロトニンやノルアドレナリンなど、モノアミンと呼ばれる神経伝達物質が減ってしまうのです。
モノアミンが減ると、朝に元気が出ないと感じるようになります」(川村さん)

■五月病を防ぐ7つの対処法

 シグナル(考え方の問題)を感じたら、モノアミンを減らさないように努めることが、五月病の予防につながる。
そのためにゴールデンウィークでやっておきたい「日光などの光を浴びる」「運動する」といった対処法を、川村さんは紹介する。
 (※外部配信先では表を閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

 このなかで、まず実行しやすいのが運動だろう。
 なぜ運動が五月病などのうつ状態に予防的に働くのか。川村さんはこう説明する。
 「運動をすると筋肉が動き、イリシンというホルモンが放出されます。
イリシンは血液を介して脳へ運ばれると、それに反応してBDNF(脳由来栄養因子)が増え、神経細胞がよみがえるのです」

 運動といっても、ウォーキングや散歩でOK。
激しく体を動かす必要はないとのこと。
それでも、1日8000歩ぐらいは歩いたほうがいいそうだ。

 通常、10分ほど歩けば1000〜1200歩。60分で8000歩弱になる
勤め人であれば、通勤でも1日4000〜5000歩程度は歩くのだが、ゴールデンウィークなどの休日は会社に行かないため、歩く必要がなくなってしまう。

 だから休日こそ意識して8000歩歩くようにしたい。

 ちなみに、川村さんは休日には朝11時頃に家を出て、90分ほど歩く。
途中、90分ぐらいは休憩時間を設けて、何もしないで公園などでぼーっとしているそうだ。
これだけでも十分にうつ状態を予防できるのだという。

■運動することの「意外な」メリット

 運動することのメリットは、体を動かすことだけにとどまらない。

 散歩をしていると、あちこちの看板が目に入ったり、信号機で止まったりするなど、この間、さまざまな情報が入ってくる。その結果、問題となる思考(長時間考えすぎ、答えの出ないことを考える、など)が分断される。
これも五月病の予防に大きく働くそうだ。

 「3時間ほど外にいると、頭がリフレッシュした感じになると思います」(川村さん)

 運動が苦手な人は、風呂掃除でもいい。
体を動かすことになり、しかもきれいになった風呂に入れるといった“おまけ”もつく。
料理もいいだろう。レシピを考えて食材を買いに行き、調理しておいしく食べれば、気持ちの切り替えになる。

 家事をするのが嫌なら、コンビニに行ったり、デパートでウインドーショッピングをしたりするのもいい。
美術館やライブに出かけたりするのもありだ。

 「とにかく体を動かすきっかけを作ることです。
運動が嫌い、体を動かすのが面倒くさい、という人に私がよくアドバイスするのは、3分だけやってみるということ。
頭でいろいろと言い訳を考えず、まずは行動してみましょう」(川村さん)

 もう1つ、ゴールデンウィークにやっておくといいことが、「考えを書いてみる」という対処法だ。
これは先に挙げた4と5の対処法となる。

 川村さんの外来では、うつ症状を訴えて訪れた患者には、自分の気持ちや考えをノートに書くようにすすめている。

 具体的には、大学ノートなどを用意し、左ページには自分が考えている事実を書く。
たとえば「上司の顔を見ると不安になる」などだ。そして、右ページには、それについて自分がどうしてそう思うかを書いてみる。

 あくまでも、事実と推論をわけることで頭を整理するのだ。

 「患者さんには、書くときにはきちんと机に向かって、日付を記して、毎日書くように指導していますが、自分で試すのならそこまでやらなくても大丈夫です。
ただ、何日か続けていくうちに自分が普段何を考えているかが少しずつわかってきます」

■ポジティブなことをいっぱい書く

 自分の考えていることがある程度整理できたら、次は、「すぐできること」や「将来の夢など前向きなこと」などポジティブなことをいっぱい書いていく。

 「たとえば『ハワイ旅行に行きたい』といった場合、行ったら何をするかも具体的に書いていきます。
書くことでワクワクした気持ちを顕在化すれば、それを見返したときに楽しい気持ちがフィードバックされます。
自分を前向きに洗脳するイメージです」(川村さん)

 話は少し変わるが、「推し活」もいいそうだ。自分の好きな相手に前向きに没頭できるから、というのがその理由だ。

 そして、運動や書くといった対処法に加えてやりたいのは、コミュニケーションをとること。

 「困りごとがあるときは、自分で抱え込まずに家族や親しい友人に相談するのが一番です。
特に、考えても答えの出ないことを考えている場合には、それが今まで何か役に立ったのか客観的に振り返ることが大切で、この点でも周囲の人の意見は大事です」

■連休中に体と心を休ませよう

 仕事の内容や職種によっても違うだろうが、ゴールデンウィークは労働から解放されて、体を休ませられる絶好の機会だ。

 また、寒くも暑くもなく外出も気持ちのいい時期にあたる。
日光浴や食習慣など、川村さんが紹介してくれた他の項目も含めて実践していくことで、モノアミンを増やし、五月病を予防していきたいところだ。

 「もちろん、それでもうつ状態が続くようなら、無理をしないで専門医を受診してほしい」と、川村さんは話す。

 (取材・文/伊波達也)

川村総合診療院・院長
川村則行医師

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