2024年06月08日

『80歳の壁』和田秀樹が提唱する、感情に振り回されないための「確率や数字で考える」習慣

『80歳の壁』和田秀樹が提唱する、感情に振り回されないための「確率や数字で考える」習慣
6/7(金) GOETHE

「感情の動物」と呼ばれる私たち。喜びや楽しみがあるからこそ、人生は豊かになります。
ところが怒りや不安といったネガティブな感情や、自分でも気づかない服従、同調、損失回避といった感情のせいで、どんなに知的な人でも「バカな判断」をすることがあります。
そんな「感情バカ」のメカニズムを解き明かし、バカにならないコツを教えてくれるのが、精神科医・和田秀樹さんの『感情バカ』です。その中でも、私たちがとくに陥りやすい感情をご紹介しましょう

身につけたい「この考え方」
感情に振り回されて間違った判断をしないためには、確率や数字で考える習慣を身に付けることも大切です。

北朝鮮が暴発する確率であれ、原発事故が起こる確率であれ、あるいは発がん性物質を摂取したときにがんになる確率であれ、人々が気になっているものや恐れているものの多くは、その確率を調べてみると、1万分の1であったり、10万分の1であったりというように、意外に低いことがけっこうあります。

たとえば、確率的に10万年に1度起こるようなものだとしたら、10万年も生きる人はいないのですから、起こらないものと見てもいいわけです。
あるいは10万日に1度起こるようなことであっても、閏年を除いて単純計算をすれば、10万日は約274年なので、少なくとも自分が生きているうちにまず起こるものではないと考えることができます。

もちろん、不幸なことに、10万分の1の確率で起こる災いに遭遇することもありますが、無視できる確率のものは無視しないと、生きていることが不安だらけになってしまいます。

逆に心配しなければいけないのは、85歳を過ぎたら半分の人が認知症になるといった、高い確率で起こる悪いことです。

生活保護の問題も同じです。

厚生労働省のデータによると、2016年1月の時点での生活保護の被保護者は約216万人です。
日本の人口がだいたい1億2600万人で、そのうち成人の人口が1億人くらいなので、大人100人のうち2人ぐらいが生活保護を受けている計算になります。

これでも「自分は無関係」と言えるか?

世帯数で見ると、生活保護を受けている世帯は約164万世帯で、日本の総世帯数がだいたい5700万世帯ですから、100世帯あれば3世帯くらいは生活保護を受けているということになります。


要するに、50人に1人(50分の1)、30世帯に1世帯(30分の1)という確率で生活保護を受けている実態があるのですから、全く縁遠い数字ではありません。

人生、明日のことはわからないものです。
高給取りで裕福に暮らしていたとしても、明日には会社が倒産してしまうかもしれませんし、リストラに遭うかもしれません。
急な病気で仕事ができなくなるかもしれません。

たとえばうつ病の生涯有病率は、女性の場合は4人に1人、男性の場合は6人に1人と言われています。
大きな災害に巻き込まれて財産をすべて失うことだって、あるかもしれません。

この確率を知りながら、「自分とは関係ない」と言い切れる人は、よほど想像力が欠けていると言えるでしょう。

感情論で「“働かざる者、食うべからず”(これももともとは、レーニンが働かないで贅沢をしている富裕層に対して使った言葉なのですが)だ。
生活保護のシステムなんかやめてしまえ!」と言うのは簡単です。

しかし、自分が生活保護を受けなければならなくなる確率を考えると、弱者を救済するための非常にありがたいセーフティネットであることは、すぐわかるはずです。

こういう例を見てもわかるように、確率論で考えることは、感情に振り回された判断を避ける良い方法だと言えるわけです。


TEXT=和田秀樹
posted by 小だぬき at 12:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「記憶」は想像以上に曖昧…容易に真実と塗り替えられる【科学が証明!ストレス解消法】

「記憶」は想像以上に曖昧…容易に真実と塗り替えられる【科学が証明!ストレス解消法】
6/7(金)  日刊ゲンダイDIGITAL

【科学が証明!ストレス解消法】

「サブリミナル効果」という言葉があります。映像の中に、見ている本人が気づかないような速さで刺激となる映像を見せると、見ている人は無意識にその隠された映像によって影響を受けてしまう効果です。

 こうした効果は、会話の中にも潜んでいることがあります。
次の実験は、実際に私が学生たちを対象に行ったものですが、「言葉のサブリミナル効果」とも呼べる効果を発揮しています。

 学生たちに、とある学園ドラマの映像を見せた後、その映像に出てきた教頭先生役の人について、私は「さっきのバーコード頭の教頭先生が」という具合に、意図的に教頭先生の悪口を言いながら映像を振り返りました。
その後、映像で見た教頭先生の特徴を提出用のプリントに書いてくださいと伝えました。

 すると、半分以上の学生が頭髪の薄さについて書いていました。
ところが、実際の映像の教頭先生の髪の毛はちっとも薄くなかったのです。
言葉の中にもサブリミナル効果のように、虚偽の情報をちりばめることで印象を操作することができてしまう。
記憶というものは、簡単に言葉によって変えられてしまうことが分かると思います。

 また、アメリカの認知心理学者であるエリザベス・ロフタスは、長年、変わってしまう偽りの記憶(虚偽記憶)の生成について研究しています。一例を挙げて説明します。

 まず被験者に、交差点に進入した自動車が別の自動車に接触し、玉突き事故を起こしてしまった映像を見せます。
その後、「車Aは一時停止標識を通り過ぎたとき、どれくらいの速さで走っていましたか?」と質問しました。

 実は、映像には一時停止標識はなかったのですが、意図的に質問内容に入れることで、被験者の反応を調べたのです。
興味深いことに、「一時停止標識は見ましたか」と被験者に尋ねると、なんと半分以上の人が見ているはずがない一時停止標識を「見た」と答えた。
まさに、虚偽記憶を生成したというわけです。

 私たちの記憶は、思っている以上に曖昧です。
かつて、故・志村けんさんが「亡くなった」というウワサが流れたことがありました。
海外でも似たケースがあり、1994年から1999年まで南アフリカ共和国の大統領を務め、2013年に95歳で死去したネルソン・マンデラさんが、「1980年代に獄中死した」という誤った記憶を多くの人が持っていたという事実もあるほどです。
こうした単なる記憶違いではなく、多数の人が共通した虚偽の記憶を持つ現象を「マンデラ効果」と呼ぶのですが、インターネットスラングとしてこの言葉は拡散された背景を持ちます。

 現代は、ネットによってさまざまな情報が飛び込んできます。
しかし中には、意図的に印象を操作するような情報も潜んでいます。「マンデラ効果」は、まさにネットの“良くない”面が表れた現象でしょう。

 記憶は容易に変わりやすく、そして伝播する。
与えられた情報をうのみにせず、自分でいったん整理するなど、立ち止まることを忘れないようにしましょう。

(堀田秀吾/明治大学教授、言語学者)
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする