いつの間にか深刻化していた「異常気象」の恐怖
7/21(日) :現代ビジネス
2011年3月11日、戦後最大の自然災害となる東日本大震災が発生した。
あれから13年、令和6年能登半島地震をはじめ何度も震災が起きている。
もはや誰もが大地震から逃れられない時代、11刷ベストセラーの話題書『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれ、また、防災に必要なデータ・対策が1冊にまとまっている。
(※本記事は宮地美陽子『首都防衛』から抜粋・編集したものです)
私たちは大災害が発生するたびに法を改め、ハードを備え、対策やシミュレーションを重ねてきた。
それでも「想定外」が繰り返されるのが自然現象の怖さでもある。
日々変わる天候や寒暖に加え、私たちの周りは絶えず変化し続けていることは忘れてはならない。
首都圏の物流の要である東京湾の湾口には「東京海底谷」と呼ばれる水深500メートル以深の深海域が広がる。
海洋の専門家である東海大学の山田吉彦教授によれば、東京の海もまた変化しているのだという。
伊豆諸島であまり見られなかった沖縄の県魚・グルクンが釣れるようになり、200キロ級のクロマグロも姿を見せている。
温暖化の影響でマグロ類の餌となるグルクンやイワシが北上し、それをマグロが追う。
単に「魚のことでしょ」と思うかもしれない。
だが、激甚化・頻発化する近年の気象災害の背景には地球温暖化の影響があると考えられている。
世界気象機関(WMO)によれば、世界で洪水や暴風、干ばつといった気象災害の発生件数は1970年からの50年間で5倍に増加した。
気候変動によって気象や降水量に極端な現象が増え、その深刻さは増大していくと予想されている。
世界気象機関のターラス事務局長は「温暖化の影響で異常気象が増している」と警鐘を鳴らしているが、私たちが暮らす環境は変化を続け、自然災害の危険度が上昇していくリスクがつきまとう。
「できることをやる」しかない
もちろん、いかなる巨大災害がいつ襲ってくるのか確定的なことは誰にもわからない。
「1000年に一度」の大災害に遭うならば、そのときに生活している人は「運が悪い」のかもしれない。
ただ、先人たちが残した教訓を活かし、生き抜くだけの情報と準備、対策が備えられていれば多くの命は救われるはずだ。
要は、正しい知識や教訓を「知っているか」。それを元に「備えているか」が問われる。
首都直下地震と南海トラフ巨大地震、富士山の噴火がほぼ同時期に発生する「大連動」が生じれば、我が国だけではなく、地球上でどの国も経験したことがない非常事態が訪れるだろう。
自衛隊や警察・消防は大量動員される計画が立てられているが、同時多発の事態は想定されてはいない。
「絵空事」で済めばよいが、地球が変化し続ける以上は「大連動」が生じる可能性はゼロとは言い切れない。
そのときに隣国から攻撃に遭ったり、風水害に襲われたりすれば──。
間違いなく言えることは、世の中に「絶対」はないということだ。
いかに人間が万全を期したと思っていても、自然の力はそれをあざ笑うかのように上回る。
そのような地球で暮らすことの“宿命”を踏まえるならば、国や自治体、そして国民一人ひとりが「できることをやる」しかないのだ。
第7代の東京市長を務めた後藤新平氏は「人のお世話にならぬよう 人のお世話をするよう そして、報いを求めぬよう」という言葉を好んで使った。後藤氏の思いは、人間関係が希薄化しがちな今日の私たちに突き刺さる。
あなたには自らの備えと同時に、大切な人の命を守る覚悟ができているだろうか。
本書『首都防衛』で記した教訓や備えなどが少しでも皆さんの準備や心構えにつながれば幸甚である。
国や東京都、自治体は「首都防衛」に全力を尽くす。
皆さんが築き上げる「防衛力」が次の100年につながることを願っている。
宮地 美陽子(東京都知事政務担当特別秘書)
いつの間にか深刻化していた「異常気象」の恐怖7/21(日) :現代ビジネス
2011年3月11日、戦後最大の自然災害となる東日本大震災が発生した。
あれから13年、令和6年能登半島地震をはじめ何度も震災が起きている。
もはや誰もが大地震から逃れられない時代、11刷ベストセラーの話題書『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれ、また、防災に必要なデータ・対策が1冊にまとまっている。
(※本記事は宮地美陽子『首都防衛』から抜粋・編集したものです)
私たちは大災害が発生するたびに法を改め、ハードを備え、対策やシミュレーションを重ねてきた。
それでも「想定外」が繰り返されるのが自然現象の怖さでもある。
日々変わる天候や寒暖に加え、私たちの周りは絶えず変化し続けていることは忘れてはならない。
首都圏の物流の要である東京湾の湾口には「東京海底谷」と呼ばれる水深500メートル以深の深海域が広がる。
海洋の専門家である東海大学の山田吉彦教授によれば、東京の海もまた変化しているのだという。
伊豆諸島であまり見られなかった沖縄の県魚・グルクンが釣れるようになり、200キロ級のクロマグロも姿を見せている。
温暖化の影響でマグロ類の餌となるグルクンやイワシが北上し、それをマグロが追う。
単に「魚のことでしょ」と思うかもしれない。
だが、激甚化・頻発化する近年の気象災害の背景には地球温暖化の影響があると考えられている。
世界気象機関(WMO)によれば、世界で洪水や暴風、干ばつといった気象災害の発生件数は1970年からの50年間で5倍に増加した。
気候変動によって気象や降水量に極端な現象が増え、その深刻さは増大していくと予想されている。
世界気象機関のターラス事務局長は「温暖化の影響で異常気象が増している」と警鐘を鳴らしているが、私たちが暮らす環境は変化を続け、自然災害の危険度が上昇していくリスクがつきまとう。
「できることをやる」しかない
もちろん、いかなる巨大災害がいつ襲ってくるのか確定的なことは誰にもわからない。
「1000年に一度」の大災害に遭うならば、そのときに生活している人は「運が悪い」のかもしれない。
ただ、先人たちが残した教訓を活かし、生き抜くだけの情報と準備、対策が備えられていれば多くの命は救われるはずだ。
要は、正しい知識や教訓を「知っているか」。それを元に「備えているか」が問われる。
首都直下地震と南海トラフ巨大地震、富士山の噴火がほぼ同時期に発生する「大連動」が生じれば、我が国だけではなく、地球上でどの国も経験したことがない非常事態が訪れるだろう。
自衛隊や警察・消防は大量動員される計画が立てられているが、同時多発の事態は想定されてはいない。
「絵空事」で済めばよいが、地球が変化し続ける以上は「大連動」が生じる可能性はゼロとは言い切れない。
そのときに隣国から攻撃に遭ったり、風水害に襲われたりすれば──。
間違いなく言えることは、世の中に「絶対」はないということだ。
いかに人間が万全を期したと思っていても、自然の力はそれをあざ笑うかのように上回る。
そのような地球で暮らすことの“宿命”を踏まえるならば、国や自治体、そして国民一人ひとりが「できることをやる」しかないのだ。
第7代の東京市長を務めた後藤新平氏は「人のお世話にならぬよう 人のお世話をするよう そして、報いを求めぬよう」という言葉を好んで使った。後藤氏の思いは、人間関係が希薄化しがちな今日の私たちに突き刺さる。
あなたには自らの備えと同時に、大切な人の命を守る覚悟ができているだろうか。
本書『首都防衛』で記した教訓や備えなどが少しでも皆さんの準備や心構えにつながれば幸甚である。
国や東京都、自治体は「首都防衛」に全力を尽くす。
皆さんが築き上げる「防衛力」が次の100年につながることを願っている。
宮地 美陽子(東京都知事政務担当特別秘書)