2024年10月01日

解散総選挙へ国民が持つべきもの

解散総選挙へ国民が持つべきもの 直木賞作家が指摘「世の中を変えてきたのは熱量」「愚痴もっと出して」
9/29(日) スポニチアネックス

 直木賞作家の今村翔吾氏(40)が29日、日本テレビ系「真相報道バンキシャ!」(日曜後6・00)にコメンテーターとして生出演し、年内にも行われる見通しの解散総選挙について自身の考えを語った。

 27日の自民党総裁選で石破茂新総裁(67)が誕生。10月1日の臨時国会で石破茂首相が誕生する。
既に党役員人事の方向性が続々と決まり始めた。

 石破氏は総裁選後、解散時期について「国民の皆さんでご判断いただく材料はきちんと提供します」とした上で、「内閣支持率が高いうちに総選挙をした方が、我が党の議席もたくさん得られるし、同志の方々の議席も確保できる。
与党総裁として、それも考えないといけない。とにかく国民に向かって不誠実な態度だけは取らない」と述べた。
しかし、ここにきて党内からは、早期解散を促す強い声が上がっている。

 そんな中で迎える総選挙について、今村氏は「石破さんが総理になった時、私たちの暮らしにどのような変化が起こるか、細かくイメージしていくことが大切」と話した。

「大きな問題もあるけど、僕たち庶民は具体的にこれだけはやられたら困るとか、これやってくれたら推せるじゃないけど、この一点だけでも私たちは推したいじゃないけど、細かいところにまで落とし込むということも必要なのかな」とし、「イメージを持って次の選挙に臨まないと、同じことの繰り返しになってしまうのかなと思います」と、有権者の判断の大切さを訴えた。

 有権者の熱量も必要だという。
「精神論みたいな話じゃないけど、バカに聞こえるかもしれないけど、熱量って必要になると思っていて。
国民の熱量ですね。
世の中の歴史を変えてきたのは熱量であって、国民の熱量というものが意外と政治家の人たちも恐ろしいというか」と指摘。
「僕たちが情報を取って選挙に参加していくというのが必要というか、運命を分ける選挙になってくるんじゃないかなと思います」と訴えた。

 自民党の裏金問題への処分の甘さ、増税の懸念など、政治側と有権者の間で隔たりが大きい部分は多い。
今村氏は「愚痴は出ているけど、もっと出していきたいですよね」と呼びかけた。
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2024年10月02日

「私の話って退屈なのかも…」と心配な人にすすめたいプロの会話術・2選

「私の話って退屈なのかも…」と心配な人にすすめたいプロの会話術・2選
2024年10月01日 ダイヤモンドオンライン

なかなか難しいお願いごとが、なぜかすんなり受け入れてもらえている。
そんな人がまわりにはいないだろうか。
どうして、あの人はいつもそうなのか。もしかしてそこには、相手への「伝え方」の違いがあるのかもしれない。
そんな誰もが感じていた疑問に見事に応え、日本、さらには中国でもベストセラーになっているのが、『伝え方が9割』(佐々木圭一著)だ。
「伝え方にはシンプルな技術がある」と説く、本書のメソッドとは?(文/上阪徹、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)

■誰にでも、強いコトバ、感動するコトバはつくれる

「おかげで好きな人とのデートが実現できた」「提出物の締め切りを延期してもらうことができた」……。
著者の佐々木氏のメソッドを知った人からは、そんな声が上がることも少なくないという。

 佐々木氏はコピーライターとして国内の賞を数々受賞、日本人コピーライターとして初めて米国広告賞で金賞、アジアの広告賞でグランプリになるなど、実績を持つ人物。

 CHEMISTRYや郷ひろみのプロデューサーから作詞のオファーが来て、アルバムがオリコン1位になったり、日本人クリエイターで初めてスティーブ・ジョブズお抱えクリエイティブエージェンシーへの留学生にも選ばれた。
大学で教壇に立ち、伝え方のメソッドを教える講演も数多く行ってきている。

 ところが佐々木氏はもともと、コミュニケーションが下手だったのだという。
広告代理店に大量入社した中で、たまたまコピーライターとして配属され、当初はダメダメ社員だった。
そんな彼が、なぜヒット連発のコピーライターになれたのか。

 実は誰にでも、強いコトバ、感動するコトバはつくれる、と佐々木氏は記す。

■人の感情を動かすエネルギーをどう生み出すか

 そして「強いコトバ」は、誰かを感動させるためだけに使えるわけではまったくない。
メール、HP、企画書、メモなどすべてのコトバを使う場面で役立つ方法だと佐々木氏は記す。

 もとより今ほど、「強いコトバ」が求められている時代はない、と。

 では、「強いコトバ」とは、どういうものか。佐々木氏は、「人の感情を動かすエネルギーのある言葉」と定義する。

 目指すべきは、「気になるコトバ、心に/記憶に残るコトバ、思わず文章の先を読みたくなるコトバ」を意識してつくるようになることだ。

 では、人の感情を動かすエネルギーをどうすれば生み出せるのだろうか。

ここからは、本書から「高低差をつけるワザ」を2つ紹介しよう。

■言葉を10秒で変えてしまう「サプライズ法」

「超カンタンだけど、プロも使っている」と佐々木氏が記す技術が「サプライズ法」だ。

 シーンに合わせたサプライズ法のワード「サプライズワード」が紹介されている。
それぞれ、冒頭につけるだけなのだ。

 サプライズ法は10秒で作れる。
伝えたい言葉を決め、適したサプライズワードを入れる。

「今日はいい天気。」もこんなふうに変わる。

 この「サプライズ法」が使われた、誰でも知る有名なキャッチコピーがある。
JR東海の「そうだ 京都、行こう。」だ。


「京都行こう」という普通の言葉が、サプライズワードを入れるだけで、強烈なキャッチコピーに変貌してしまったのだ。

 もう1つが「クライマックス法」。
これも一言加えるだけで強烈なメッセージにできる技術だ。

 など、「クライマックスワード」から始めるだけで、強い言葉にできる。
例えば、「私はカレーが好きです。」も、「クライマックスワード」が加わると印象が変わる。

「サプライズ法」も「クライマックス法」も一度知ってしまえば、すぐにでも実践できるし使ってみたくなる。

 佐々木氏のメソッドは効果があるだけでなく「すぐにでも使ってみたくなる技術」でもあるのだ。

(本記事は『伝え方が9割』より一部を引用して解説しています)
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2024年10月03日

メルカリで買った“未使用”の商品にダメージが…「残念だった」はつけてもいい?泣き寝入りを防ぐには

メルカリで買った“未使用”の商品にダメージが…「残念だった」はつけてもいい?泣き寝入りを防ぐには
10/1(火)  All About

メルカリで「未使用」の商品を購入したのに、受け取ってみたら明らかに使用感があった……
こんなとき、どう対応するのが正解なのでしょうか?
返品はできるのか、出品者にマイナス評価をつけてもいいものなのか、解説します。

メルカリでは実際の商品を手に取って見ることができないので、写真や商品説明の情報をもとに判断することになります。
商品説明に「新品未使用」と記載されていれば、それを理由に買う人もいるでしょう。

ところが、未使用とは思えない状態で商品が届くケースもあるよう。
そんなとき、購入者はどう対応すればいいのでしょうか。

◆泣き寝入りする人も……

All About編集部は2024年8月5日〜9月2日の間、メルカリの利用に関するアンケート調査を実施しました。
メルカリを使っていて「出品者」にモヤッとしたことがあるか聞いたところ、79%が「ある」と回答。
詳細を尋ねると次のようなエピソードが寄せられました。

『かわいらしい子ども服を発見し、未使用に近いと書いてあったので購入したのですが、届いてみると実際は毛玉がちらほらできていて少し使用感も見受けられました。
書いてあったことを信じて購入しただけにショックというかモヤッとした気持ちになりました。

毛玉がたくさんあるわけではなく、毛玉取り機を使えばなんとかなりそうなくらいだったので毛玉取り機でキレイにしました。自分も確認不足だったのかなと思い出品者への評価は良い評価にしましたが、その評価のコメントに毛玉があったことは書かせていただきました(30代女性)』

『ゲームソフトを買ったとき、「新品だ」と記載してあったにも関わらず、明らかに使い古した感じのある傷や汚れがついていました。
また、新品であれば付属しているはずの取扱説明書やアートブックも見られませんでした。

正直、それならば新品を買った方がコストパフォーマンス的にも良かったと思うので、クレームを入れたい気持ちではありました。
ですが、いたずらに人ともめるのも面倒なので、結局何も言わないまま泣き寝入りしました(30代男性)』

『商品の状態が「ほぼ未使用」だったのに、実際に届いた商品はとても使用感があり、商品の状態とはまったくかけ離れているものでした。
着物を着るときに履く草履だったのですが、底の部分がはがれかけているような状態でした。

このような状況が発生したのは、今回が初めてだったので、悪い評価をつけてしまうとその後どのようになるのかが怖くて、相手の評価も「良かった」につけてしまい、結局泣き寝入りの状態になってしまいました。
返品もしませんでした(50代女性)』

「新品」「未使用に近い」などと説明されていた商品を購入したのに、そうとは思えない商品が届いた、というものです。
受取評価で「良かった」を選択してしまった人もいますね。

商品の状態を細かく確認しなかった自分にも落ち度があると考えたり、マイナス評価をつけると出品者とトラブルになるかも、と不安になったりしたことが理由のようです。

◆「マイナス評価をつけると報復される」は本当?

出品者が受取評価を見られるようになるのは、出品者が購入者を評価した後です。
ですから、購入者が出品者を「残念だった」と評価したとしても、報復されることはないでしょう。

ただ、商品の状態について何も伝えないままいきなりマイナス評価をつけてしまうと、出品者のほうも戸惑ったりモヤっとしたりするかもしれません。

◆受取評価はせず、出品者に連絡を

届いた商品が商品説明の状態と異なる場合、まずは出品者に連絡しましょう。
ここで注意したいのは「受取評価はしない」こと。
受取評価をすると商品に不備がなかったと認めることになり、その後の対処が難しくなってしまいます。

「商品説明には新品未使用と書かれていましたが、商品にダメージがありました」などと連絡し、状態をできるだけ詳しく伝えることが大切です。
あとは出品者からの連絡を待ち、返品の手続きを進めていきます。

▼返品の流れ

返品には追跡サービスのついている配送方法を使いましょう(ただし、メルカリ便の利用はできません)。
匿名配送で送られてきた商品の場合は住所が記載されていないため、取引メッセージで出品者に問い合わせましょう。

▼返金はいつされる?

商品が出品者の手元に届いたら、出品者がキャンセル申請をし、購入者はそれに同意します。
あとはメルカリ事務局が対応してくれるのを待つだけです。
購入代金は取引のキャンセル後返金されます。

◆マイナス評価はつけてもいい!

取引自体がキャンセルになれば、お互いを評価する必要もなくなります。
ですが取引のキャンセルが難しい状況もあるでしょう。
そんなときはマイナス評価をつけても問題ないと筆者は考えます。

少々気が引けるかもしれませんが、正しく評価をすることは他のユーザーへの注意喚起にもなります。
出品者もマイナス評価をつけられたことで次の出品時には注意を払うようになるかもしれません。

これからの取引のことを考えれば、マイナス評価が出品者のためになる可能性もあるのです。


<調査概要>
調査方法:インターネットアンケート
調査期間:2024年8月5日〜9月2日
調査対象:160人(男性:35、女性:120、その他:1、回答しない:4)

※アンケートの回答者コメントは原文ママです

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2024年10月04日

三日坊主必見! 勉強を習慣化する3つのステップ

三日坊主必見! 勉強を習慣化する3つのステップ
2024年10月03日 ダイヤモンドオンライン

成績アップ率、驚異の95.7%を誇る、門外不出の勉強法をついに解禁! 小学生から社会人まで世代に限らず、「こんな勉強法があるなんて知らなかった!」という声が続々。
なぜ、ストレスフリーになると、勉強で成果を出せるのか。
そこには「一瞬で覚えられる」「10分の1の勉強時間で」という魔法のような方法はありません。
最新の脳科学に裏付けられた、誰でも効果が出る『ストレスフリー勉強法』よりすぐに使えるノウハウを紹介する。

■好きなことと一緒に勉強すると、習慣化がはやい
 習慣化したいことと、自分の「好きなこと」を一緒に行なうことで、勉強を習慣化することができます。

■1.活動を明確にする

 まず、あなたが習慣化したい活動を明確にします。
「毎日30分間の数学の勉強」や「週に3回、英語の単語を覚える」といった具体的な目標を設定しましょう。
目標をはっきりさせることで、何に対して適用するのかが明確になります。

■2.好きなことをリストアップする

 次に、自分の「好きなこと」をリストアップします。これは、「音楽を聴くこと」「特定のテレビ番組を見ること」「好きなスナックを食べること」など、あなたが楽しんで行なう活動です。このステップでは、勉強や習慣化したい活動をする前や、その最中に楽しむためのものを選ぶことがポイントです。

■3.2つを組み合わせる

 最後に、習慣化したい活動と「好きなこと」を組み合わせます。
「数学の勉強を30分やったら、その後で15分間お気に入りの音楽を聴く」といった具合に、勉強やタスクの前後に楽しい活動を配置します。

 同時並行できるものなら、「お菓子を食べながら勉強する」のようにしてもよいでしょう。

 この組み合わせにより、勉強やタスクを始めるモチベーションを高めるとともに、終えた後の満足感や報酬も得られます。

 この3ステップを繰り返すことで、徐々に勉強やタスクが習慣化され、最終的には「好きなこと」なしでも、活動を自然と行なえるようになります。

 重要なのは、はじめは小さな目標から始めて徐々にステップアップしていくことです。
これにより、挫折することなく、習慣化に成功しやすくなります。

(*本記事は、『科学的アプローチで勉強がとまらなくなる ストレスフリー勉強法』より一部抜粋し、再編集したものです)
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2024年10月05日

「自民大乱」の予兆が見えた! 「悪党政治家」ではなかった石破茂 大手町の片隅から 乾正人

「自民大乱」の予兆が見えた! 「悪党政治家」ではなかった石破茂 大手町の片隅から 乾正人
10/4(金) 産経新聞

やはり、石破茂は正直者だった。

人事は、会社でも役所でも最も難しい仕事の一つで、人事が下手な会社や役所は、衰亡してしまい、やがて消えてなくなる。
だから、大企業でも中央官庁でもエリートが人事部に配属される。
それでも誰もが納得する人事なんてあり得ないのは、言わずもがな。
まして人事部のない永田町では、時の権力者の一存で大臣や党幹部が決まるため、選から漏れ、冷や飯を食わされた政治家の恨みは凄(すさ)まじいものがある。

■「悪党」でなかった石破茂

冷や飯を食わされ続けた政治家が、臥薪嘗胆(がしんしょうたん)して権力を握ると、「恨みはらさでおくべきか」という心境になるのもよくわかる。

新首相は、暗殺された元首相・安倍晋三を「国賊」呼ばわりして処分を食らった村上誠一郎を重要閣僚に据え、最盛時には100人を数えた旧安倍派からは誰一人として大臣にも党四役にも登用しなかった。
絵にかいたような「報復人事」で、ここまで徹底するとかえって清々(すがすが)しい。

もし、石破が「悪党政治家」だったなら、このような人事はしなかっただろう。
「悪党政治家」とは、拙著「政治家は悪人くらいでちょうどいい!」(ワニブックス)で詳しく書いたが、「あらゆる手練手管を使って国家権力を握ろうとする強い政治家」のことである。
吉田茂や岸信介、田中角栄といった政治家をイメージしていただきたい。

彼らが、いま新総裁に就任したなら人気のある高市早苗を幹事長に、小林鷹之を重要閣僚に起用して総選挙と来年夏の参院選を戦い、終わったところでお役御免にしていたはずだ。
あるいは、40歳代の小林だけ抜擢(ばってき)し、ライバルの高市を孤立させる策を採ったかもしれない。

12年前の総裁選で石破に逆転勝利した安倍は、大嫌いだった石破を幹事長に抜擢して挙党態勢を演出して政権奪還に成功した。
政権基盤が安定してから彼を幹事長ポストから追い出し、徐々に力を削いでいった。

そんな芸当は、彼にはできなかった。
結果として「石破人事」は、自民党を完全に分断した。

旧安倍派はもちろん恨み骨髄だろうし、高市や小林の両陣営で積極的に働いた面々も政権にそっぽを向き、かつての石破のように「党内野党」として鋭い言葉の刃(やいば)を首相やその取り巻きに投げつけるだろう。

もし27日投開票の衆院選で、自民党が敗北すれば、党内抗争が激化するのは必至だ。
だから、新総裁は党内融和に腐心すべきだ、という陳腐な能書きは言わない。

■「高市現象」は世界的潮流

他社のある先輩記者は、高市を「キワモノ政治家」と表現したが、自民党員の3割が支持した彼女は、もはやキワモノではない。

トランプばかりではなく、オーストリアでは、極右政党が第1党となり、フランスではルペンが大統領にあと一歩まで迫っているように、「自国第一主義」を掲げる政党や政治家が大きな支持を集めている。

自民党総裁選での「高市現象」は、富める者はより富み、貧しき者はより貧しくなっているグローバリズムの行き過ぎを是正しようという世界的潮流を反映したものだ。

来年、結党70年を迎える自民党に大乱の予兆がみえる。=敬称略(コラムニスト)
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2024年10月06日

科学的アプローチで勉強がとまらなくなる「超・1分勉強法」

科学的アプローチで勉強がとまらなくなる「超・1分勉強法」
10/5(土) ダイヤモンド・オンライン

成績アップ率、驚異の95.7%を誇る、門外不出の勉強法をついに解禁! 小学生から社会人まで世代に限らず、「こんな勉強法があるなんて知らなかった!」という声が続々。
なぜ、ストレスフリーになると、勉強で成果を出せるのか。
そこには「一瞬で覚えられる」「10分の1の勉強時間で」という魔法のような方法はありません。
最新の脳科学に裏付けられた、誰でも効果が出る『科学的アプローチで勉強がとまらなくなる ストレスフリー勉強法』よりすぐに使えるノウハウを紹介する。

● 勉強をなかなか始められない人は、 とりあえず1分頑張る
++
 長時間勉強しなければならない!という思い込みは、勉強の習慣化から程遠いものです。
そこで、「1分」区切りで勉強するのです。やり方はとっても簡単です。

1.やるべき教材を目の前に広げる
2.タイマーを1分にセットする
3.タイマーが鳴るまで勉強を続ける

 たったこれだけです。
タイマーが鳴ったら、勉強を終了してOK。
でも、もし「もう少しできるな……」と思ったら、そのまま続けてみましょう。

 この方法で、これまで教えてきた数多くの生徒が、勉強を習慣化することができました。

 「1分でもいいと思うとすごく始めやすい。
1分でほんとにやめちゃうことも多いけど」

 これは、北海道大学に合格した生徒が実際に言ってくれた言葉です。

 ここに至らない人には、さらに効果的な方法を教えましょう。

 1分もいりません。数秒です。
この方法を用いることで、勉強に対するハードルがものすごく下がります。
やることはたった2つ。

1.教科書や参考書を開く
2.ペンを持つ

 以上です!2まで進んだら、そこで勉強をやめても構いません。

 「でも、本当にやめてしまったら意味ないですよね?」という質問をよく受けます。
ですが、本当にペンを持った後、勉強をやめてしまってもよいのです。

 行動の模倣といって、習慣化したい行動の「マネ」をすることで、その行動を実際に行なうことへの抵抗感が減ることが研究で明らかになっています。
これは本当に誰でもできる方法ですので、ぜひ取り入れてみてください。

 (*本記事は、『科学的アプローチで勉強がとまらなくなる ストレスフリー勉強法』より一部抜粋し、再編集したものです)

粂原圭太郎
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2024年10月07日

なぜ、10月は疲労感が溜まりやすい?現役医師が明かす「秋バテ」思わぬ“危険信号”にゾッ

なぜ、10月は疲労感が溜まりやすい?現役医師が明かす「秋バテ」思わぬ“危険信号”にゾッ…
2024.10.6

10月に突入し、一気に涼しくなりましたよね。
8月は「夏バテ」でぐったりしていた…という方々も、「ようやくひと安心…」と思っているかもしれません。

…ちょっと待って!実は、9月・10月は「秋バテ」になるリスクがあるそうなんです。
今回は、これからの時期に気をつけたい秋バテについて、現役医師の方にインタビューしてきました。
詳しい症状や対策について、詳しくご紹介させていただきます!

秋バテの原因は?

秋バテになってしまう原因はいくつかあるそうですが、大別して4つ挙げられるそうです。それぞれ詳しく解説していただきました。

(1)夏バテの長期化

夏の疲れがなかなか抜けなくて、そのまま秋バテに突入してしまうパターンです。
昔の夏バテは単純に暑さによるエネルギーの過剰な消費によるものでしたが、今の夏バテは冷房で身体を冷やしすぎたり、冷たい飲み物や食べ物をとりすぎて内臓を冷やしすぎたりすることによって「自律神経」が乱れ、全身の血液の巡りが悪くなることにより起こります。

(2)急な冷え込み

暑い夏から涼しい秋になると、身体が気温の変化についていけなくなることがあります。
また、同じ週の中でも真夏日があったり冬を思わせるような冷え込みがあったりと気温が安定しません。
さらに、一日の中でも朝晩の寒暖差が大きいのもこの時期の特徴です。
このような急激な気温の変化に対して、自律神経が一生懸命に体中の器官をコントロールしようと頑張ります。
このコントロールが追い付かないのが、秋バテの原因の一つです。

(3)急な天候変化

9月は8月に引き続いて台風の発生数が多く、近年は接近数・上陸数ともに増えてきています。
また、一般的に9月に上陸する台風は勢力が強いことも特徴です。
さらに、台風の数が減り始める9月の後半には秋雨前線が発生し、そこに上空からの寒気が流れ込むと前線の活動が活発になり、各地で大雨を降らせます。

この不安定な気圧の影響が、耳の奥にあって体のバランスをとる働きをしている「内耳」に作用し、めまいや頭痛といったいわゆる「気象病」を起こしやすくなります。慢性的なめまいや頭痛は、結果的に自律神経のバランスも乱してしまいます。

(4)日照時間の減少

秋は他の季節に比べて急速に日が暮れる時間が早くなります。
日照時間が短くなり、太陽の光に当たる時間が少なくなると、脳内の神経伝達物質の一つである「セロトニン」の分泌が減ってしまいます。

セロトニンは「幸せホルモン」と呼ばれ、脳の興奮を鎮め、精神を安定させる作用をもっています。
これが減ることにより不安感や意欲の低下をきたし、体調不調につながります。

秋バテの症状は?

原因のところで述べたように、秋バテの症状は寒暖差や気圧変化による「自律神経の乱れ」と、日照時間の減少による「セロトニンの低下」により引き起こされます。

(1)自律神経の乱れ

「自律神経の乱れ」は頭痛、めまい、ほてり、汗、口の渇き、喉のつまり、動悸、息苦しさ、お腹の張り、節々の痛みなど、とにかく多彩ですが、ポイントは「一つの臓器の症状では説明がつかない」ということです。

これは、自律神経が多種の臓器を支配しているためです。ある意味「あれもこれも症状があって原因がよくわからない」といった症状が、自律神経が乱れた時の典型的な症状であり、秋バテの特徴と言えます。

(2)セロトニンの低下

セロトニンの主な役目は、ドパミンなど脳を興奮させるホルモンを抑制し、脳を鎮静化させる働きです。
また、偏桃体という不安や恐怖に関わる器官の活動を調整することにより、恐怖・不安によるストレスをコントロールします。セロトニンが減るとイライラ感や落ち着かない感じが強くなったり、恐怖感や不安感が強くなったりします。

(3)あなたは秋バテ?チェックリストで確認しよう!
以上を踏まえて、秋バテのチェックリストを作ってみました。
一つでも当てはまる方で、秋になって症状が増悪したという自覚のある方は、秋バテの可能性が高いと思います。

自分できる秋バテ対策はあるの?

本来ならば自律神経を整えることが重要ですが、これは短期間ではなかなか行えません。

秋バテの症状を感じた際は、まず「体を温めること」を意識してください。
朝1杯の白湯を飲んだり、朝食に温かい野菜スープなどを飲むと、冷えて働きの落ちた胃腸に効果的です。38〜39℃のぬるめの湯船にゆっくり浸かるのもいいですし、足湯を併用するのもいいでしょう。

朝晩に冷え込むことも増えてきますので、季節にあったパジャマや布団を利用してください。

疲労回復という点では、胃腸を整えて免疫力をアップしてくれる山芋やさつまいも、消化を助けて身体に潤いをもたらす人参やカブ、筋肉や臓器を強くするために必要なたんぱく質を多く含む乳製品や魚肉、エネルギー代謝を高めてくれるビタミンB群を多く含んだ豚肉のヒレやモモ肉、大豆製品、抵抗力を高めてくれるビタミンCを多く含んだ柑橘系の果物などを積極的に摂るようにして下さい。

日常生活での注意事項は?

ここまで述べたように、秋バテに伴う体調不良の根幹は「自律神経の乱れ」といって過言ではありません。
自律神経を整えるコツは、一にも二にも「規則正しい生活をすること」です。一日の流れに沿って抑えてみてください。

【朝】

・起きたらまず日光浴で体内時計をリセット。セロトニンも増えます。時間がなければ15秒でもOK。

・15分の早起きで時間に余裕をもって行動を。余裕がないと副交感神経の働きが低下します。

・余裕があればウォーキングなどのリズミカルな運動を。自律神経も整い、セロトニンの分泌も促します。

・少し熱めのシャワーを浴びて体温を上げると、交感神経が活性化しスタートモードに。

・朝食をしっかりとって、脳の自律神経を活性化。食べる前に白湯を飲むと効果アップ。

・朝1杯の牛乳やトマトジュース。セロトニンを増やしたり、セロトニンの働きを助ける効果があります。

・慌ただしい朝こそ、鏡の前で笑顔。ゆっくり深呼吸して副交感神経を優位に。


【昼】

・お出かけの際は視線を上に。空や木々の緑でリラックス。胸張り姿勢になり質の良い呼吸に。

・連続した作業は90分まで。交感神経を定期的に休ませてあげましょう。

・笑顔でいるとストレスホルモンが減少!作り笑いでも効果あり。

・喫煙すると血管がしまり血圧上昇や脈拍上昇のリスクに。できれば禁煙を。

・夕方頃にストレッチや軽い運動をして、昼間の疲れをリセットしましょう。


【夜】

・夕食は寝る3時間前まで。ゆっくり休養モードに切り替える余裕を持ちましょう。

・日が落ちてからのカフェインは睡眠の質を悪くするのでほどほどに。

・就寝前のアルコールは、かえって睡眠の質を下げる。ダラダラ飲みもやめましょう。

・38〜39℃のぬるめのお風呂で一日の疲れをとりましょう。

・パソコンやスマートフォンは控えめに。ゆったりした音楽やアロマの香りでリラックス。

規則正しい生活を心がけよう!

これからの時期に気をつけたい秋バテ。チェックリストを確認し、「実は自分もそうだった…」と気づいた方もいらっしゃるかもしれません。

今回教えていただいたアドバイスを参考に、まずは規則正しい生活を心がけましょう!そうすれば、秋バテによって引き起こされていた体調不良が改善されるかもしれませんよ?


監修者:安藤大樹
内科医/プライマリケア学会指導医/心療内科学会登録医
医療法人社団藤和会あんどう内科クリニック院長。『医療よろず相談所』をクリニックのコンセプトに掲げ、医療に関わるあらゆる問題に向き合う生粋のプライマリケア医。「プライマリケアは日本の医療を救う」と信じ、若手医師の教育も積極的に行っている。
andoc-clinic.com
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2024年10月08日

【10.27総選挙289全選挙区緊急予測】自民党が「53議席減」、自公でも過半数割れの衝撃シミュレーション結果 新閣僚3人も落選危機

【10.27総選挙289全選挙区緊急予測】自民党が「53議席減」、自公でも過半数割れの衝撃シミュレーション結果 新閣僚3人も落選危機

10/7(月) NEWSポストセブン

 国会論戦をすっ飛ばして一気に解散・総選挙へと突き進む石破茂・首相。総裁選で党の“顔”を代え、ボロが出ないうちに選挙を乗り切ろうという腹だが、有権者はそう甘くはない。
永田町で50年以上にわたり政治取材を続け、数々の選挙で当落予測を的中させてきた野上忠興氏(政治ジャーナリスト)が、全289小選挙区の最新情勢を詳細分析。その結果は衝撃的なものとなった。【全3回の第1回】

↓議席予想

前代未聞の解散だ。石破首相は国会召集前日、まだ首班指名前で組閣もしないうちに「10月27日に総選挙を行ないたい」と衆院解散を表明した。

 総裁選では「予算委員会を開いて野党の方々と論戦を交わした上で国民に判断いただく」と語っていたが、その予算委員会さえ開かない。

 そればかりか、解散を決めてから霞が関に経済対策、すなわち選挙向けのバラマキの検討を指示するというチグハグぶりなのだ。

 首相がそこまでして選挙を急ぐ最大の理由は、「野党の選挙協力」がまとまるのを恐れているからにほかならない。

 立憲民主党の野田佳彦・代表は、野党各党に自民党の裏金議員への対立候補一本化を呼びかけている。
日本維新の会の吉村洋文・共同代表も「裏金議員のところは一本化して勝負をかけていくというのは筋が通っている」と前向きだ。

 実現すれば、自民党が大苦戦を強いられるのは間違いない。
選挙情勢分析に定評がある政治ジャーナリスト・野上忠興氏が指摘する。

「立憲、維新、共産党など野党各党はバラバラで候補者擁立を進めてきたから、多くの小選挙区は候補者乱立状態です。
一本化されれば自民党には脅威だが、そのためには野党間で話し合ってどの選挙区にどの党の候補者を出すかを調整し、すでに立候補が決まっている候補者を説得して降りてもらわなければならないから時間がかかる。

 石破首相は野党にその候補者調整の時間を与えないために、いきなり解散を選んだ。野党候補が乱立して潰し合ってもらったほうが、自民が有利になると考えたわけです」

 裏金議員に野党統一候補という「刺客」を送らせないためになりふり構わず解散に走ったのだ。

 しかし、「正論」を売りにしてきた石破氏が予算委員会で野党と論戦を交わして国民に政権の考え方を示すことより、党利党略を優先したことでメッキが剥がれた。

石破首相の短期決戦の賭けはどんな結果が出るのか。

 本誌は野上氏の協力で全選挙区の情勢を緊急調査し、当落を予測した。結論は、野党の候補者調整ができない場合でも、自民党は「53議席減」の202議席。公明党も25議席へと減らし、自公合わせて「227議席」で過半数割れという衝撃的なものだった。

「総理が交代しても、有権者の裏金問題や旧統一教会問題への批判は消えていません。
自民党の裏金議員たちは小選挙区で厳しい審判を受けることになる。
自民党支持層が自民離れを起こしているため、自公両党ともに比例代表でも票を大きく減らすことが予想されます」(野上氏)

 さらに野党の選挙協力がなされ、自民党への対立候補が一本化されれば野党が逆転勝利可能な選挙区が53あり、自民大惨敗となる。

 では、注目選挙区の情勢を具体的に見ていこう。

初入閣から即落選危機、早くも崖っぷちの新閣僚が3人も

 石破首相は新内閣の組閣で裏金議員を排除し、13人を初入閣させて“クリーンイメージ”をアピールした。

 だが、不祥事で批判された議員がいないわけではない。

 大物議員2世の小里泰弘・農水相(鹿児島3区)は前回総選挙前、会員制ラウンジの女子大生と愛人契約関係にあったことを報じられ、批判を浴びて小選挙区では大差で落選。比例代表でなんとか復活当選した経緯がある。

「大臣になったとはいえ、有権者はスキャンダルを忘れていない。逆風は免れず、劣勢の戦いです」(以下、「 」内は野上氏)

 牧原秀樹・法相(埼玉5区)も厳しい。

 過去6回の選挙で連続して立憲民主党の枝野幸男・元代表に敗れ、小選挙区で勝ったことがない(比例復活で5回当選)。

 旧統一教会が2021年にさいたま市で開いた「祝福結婚と希望前進大会」で挨拶していたことが報じられたが、自民党の調査には回答を拒否したことから、公表された教団と接点のあった議員には名前が記載されていないなど、法相としての資質が疑問視されている。

 もう1人が坂井学・国家公安委員長(神奈川5区)だ。

 菅義偉・元首相の側近として知られ、念願の初入閣を果たした。
しかし、NTTの接待問題では坂井氏も総務副大臣時代に同社から接待を受けていたことが発覚し、国会で釈明に追われた。旧統一教会との接点があった政治家の1人でもある。

「神奈川5区は立憲の現職と維新の新人が出馬し、野党が票を食い合うため情勢は現職大臣の坂井氏がやや有利だが、野党が候補を一本化すれば形勢逆転する可能性が高い」

 せっかく初入閣を果たしたのに、落選すれば「大臣在任27日間」という超短命に終わるケースが出てきそうだ。

野上忠興(のがみ・ただおき)/政治ジャーナリスト。

※週刊ポスト2024年10月18・25日号
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2024年10月09日

多くの人の生活を支える「大事な仕事」ほど給料が安いという「厳しい現実」

多くの人の生活を支える「大事な仕事」ほど給料が安いという「厳しい現実」
10/8(火) 現代ビジネス

経済停止と「エッセンシャル・ワーカー」

3K労働の定義のなかにあげられた職業には、「建設・土木、ゴミ処理などの肉体労働や、警察官や看護師、介護士」とありました。
お気づきのように、これらはいわゆる「エッセンシャル・ワーカー」に属しています。

『ブルシット・ジョブ』には「エッセンシャル・ワーク」という概念はあらわれません。
この概念はつい最近までそれほど流布していませんでしたし、この研究のテーマはあくまで「ブルシット・ジョブ」のほうです。

だからここでは、「非BSJ」と消極的なかたちで表現されるか、あるいは「実質ある仕事」と積極的なかたちで表現されるかしても、便宜上というニュアンスが強く(BSJのなかにもふくまれる実質のある仕事についてもいわれています)、主題になることはありませんでした。

「エッセンシャル・ワーク」ないし「エッセンシャル・ワーカー」という概念が浮上してきたのは、もちろん、COVID-19パンデミックのもたらした「ロックダウン」、日本では「自粛」状況です。

それがグレーバーのかねてよりのBSJについての主張を事実によって裏づけたという感もあり、「エッセンシャル・ワーカー」という概念にひそむ認識と共振したようにもみえます。

グレーバーはずっと「必要のない仕事は存在する」と論じてきました。
とはいえ、「経済」を止める以外に、この世界が回っていくのになにが必要か必要でないかをみきわめる方法はありません。

だから、「経済」が停止するという事態は、実験が不可能な社会科学的領域において、そうそうある機会ではなかったのです。ところが、このパンデミック状況が、皮肉なことに、それを可能にしました。

グレーバーは、パンデミック初期、2020年5月のインタビューでこう述べています。

長いこと、世界中の政府が、こんなことなんてありえないとわたしたちに説きつづけてきました。
すなわち、ほとんどすべての経済活動が停止すること、国境を閉鎖すること、そして世界規模で緊急事態が宣言されることです。
3ヵ月ほどまえまでは、GDOが1%減少しただけでも大惨事になるとだれもが予想していました。
ゴジラみたいな経済的怪物に、わたしたちが押しつぶされてしまうかのように、です(中略)ところが、だれもが自宅でじっとしていましたが、経済活動の減少はたった3分の1です。
すでにこれ自体、ぶっとんでますよね。
だれもが自宅にじっとして、なにもしないとすれば、経済活動は少なくとも80%ぐらいは低下するようにふつう考えませんか。
ところが3分の1なんです。
いったい、経済を測定する尺度ってなんですか?

「エッセンシャル・ワークの逆説」という難題

おそらく、そこで浮上してきたのは、『ブルシット・ジョブ』で前面にあらわれるよりは、その強力な文脈として作用していたテーマ、不要な労働ではなく、必要な労働というテーマです。

「エッセンシャル・ワーカー」が、その名の通り、この人類が生活をいとなんでいくにあたりもっとも基本的で必要不可欠であるにもかかわらず、労働条件において相対的に低劣におかれていることはたとえば、アメリカの経済政策研究所という労働組合のシンクタンクによる統計のまとめによってもあきらかです。

2020年5月の時点で、このレポートの著者たちは、コロナ禍のもとでのエッセンシャル・ワーカーが十分な医療や安全配慮を与えられずに働いており、その結果、死亡者が多数にのぼりつつある状況を指摘しています。

そのうえで、アメリカのエッセンシャル・ワークを12(食糧・農業、緊急サービス、公共交通・保管・配達業務、工業・商業・居住設備やサービス業、医療業務、自治体・コミュニティサービス、エネルギーなど)に特定して、それに従事するおよそ5500万人の労働者の賃金やジェンダー、組合組織率などを調査しています。

それによると、エッセンシャル・ワーカーの70%が非大卒。医療従事者における女性の割合は76%、それに対してエネルギー部門では男性が96%、食糧・農業や工業・商業・居住設備やサービス業の半数以上を非白人が占めています。その結果もあるでしょうが、給与も非エッセンシャル・ワーカーに対してエッセンシャル・ワーカーが低くなっています。

「エッセンシャル・ワークの逆説」は、ここからも確認できます。
それでは、いったいどうしてこのようなことが起きているのでしょうか?
どうしてこのようなことがさしておかしいともおもわれていないのでしょうか?

この問題については、すでに2013年の小論の時点でこう提起されていました。再度、確認してみます。

・とりわけ1960年代、自由時間を確保した充足的で生産的な人々があらわれはじめた(ヒッピームーヴメントのような動きもその一端でしょう)。この状況に支配階級は大いなる脅威を感じることになる。

・それとは別に、わたしたちの社会のうちにはかねてより、労働はそれ自体がモラル上の価値であるという感性、めざめている時間の大半をある種の厳格な労働規律へと従わせようとしない人間はなんの価値もないという感性が常識として根づいていた。これは支配階級には、とても都合のよいものだった。ネオリベラリズムはこの感性を動員する。

・その感性が、有用な仕事をしている人間たちへの反感の源泉にもなる。
つまり、労働そのものが至上の価値であるならば、その価値観でもって働いている人間にとっては、それ以上の価値をもった仕事に就いている人間は存在そのものが妬ましい対象である。
そしてその妬みを促進するのが、BSJに就いていることにひそむ精神的暴力である。

・このようなモラルの力学が、はっきりと他者に寄与する仕事であればあるほど、対価はより少なくなるという原則を裏打ちする。

・さらには、これを矛盾ではなく、むしろあるべき状態とみなすという倒錯がある。

こういった議論の構成です。ここから確認できるのは、

(1)労働はそれ自体がモラル上の価値であるという感性がある

(2)それが有用な労働をしている人間への反感の下地となっている

(3)ここから、他者に寄与する仕事であればあるほど、対価はより少なくなるという原則が強化される

(4)さらに、それこそがあるべき姿であるという倒錯した意識がある

この逆説はこうした価値意識に根ざしています。
人は労働に市場価値だけでなく社会的価値をもとめています。
市場価値にすべて還元することはなかなかできません。
ところがそれが社会的価値のある労働への反感の下地にもなっているのです。

酒井 隆史(大阪公立大学教授)
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2024年10月10日

なぜ夜中に目が覚めてしまうのか?中途覚醒の理由と、放置するデメリット

なぜ夜中に目が覚めてしまうのか?中途覚醒の理由と、放置するデメリット
MELOS -メロス-
2024年10月8日

夜中に目が覚めて、眠れない。

すぐにまた寝付けたり、生活に支障を生じたりしていなければあまり気にすることはありません。
しかし、夜中に何度も目が覚めてお困りの方は要注意です。

中途覚醒について、その症状や考えられる原因などを、薬剤師の目線から解説します。

夜中に目が覚めて眠れない、それ「中途覚醒」です

中途覚醒とは、一度寝付いても夜中に目が覚めてしまうことを指します。

いったん寝付けても夜中に何回も起きてしまい、眠りが浅いタイプです。

「夜中に目覚めたら眠れない」「ぐっすり眠れないことで日常生活に支障が出ている」ようであれば中途覚醒の可能性があります。

中途覚醒、考えられる原因は

中途覚醒の原因は多岐にわたり、どれかひとつが原因ということもあれば、原因が複数あり複合的に絡み合っていることもあります。

・老化(加齢によって体内リズムが変化すると、若い頃よりも眠りが浅くなる傾向にある)
・糖尿病
・高血圧
・うつ病
・睡眠時無呼吸症候群
・過度なアルコールやカフェインの摂取(脳が覚醒して睡眠が浅くなり、利尿作用で夜間のトイレ回数が多くなることも)
・精神的ストレスや身体的ストレス など

中途覚醒、気にしないのはどう? 放置するリスクとは

中途覚醒を放置すると、睡眠不足によって脳機能が低下したり、ストレスがたまることによるうつ病リスクが高まります。

また、通常、寝ている間は「副交感神経」が優位になっていますが、不眠によって「交感神経」が活発になることで高血圧を引き起こす可能性もあります。

「副交感神経」を優位にする4つの方法

睡眠不足が続くと、日中に眠気や集中力の低下を感じて、日常生活に支障が出てくることも。
仕事のパフォーマンス低下、事故を起こすなど、さまざまなミスにもつながりかねません。

さらに、睡眠が十分でないとインスリンの働きが低下するため、糖尿病のリスクも高まるとされています。

夜中に目が覚めたらどうしたらいい? 再入眠へのコツ

夜中に目が覚めてしまったら、無理に布団の中にいなくても大丈夫です。

一度布団から出てアロマを嗅ぐ、温かいノンカフェインの飲み物を飲む、ゆったりした音楽を小さな音で聴くなどして、リラックスしながら次の眠気が来るのを待ちましょう。

一度に長時間の睡眠が取れなくても、過度に心配する必要はありません。ある程度まとまった短時間の睡眠を何度かに分けてとる「分割睡眠」でも、疲れを軽減させることができます。
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2024年10月11日

マンション住民を直撃する「3つの値上げ」、管理組合がやるべき防衛策とは【専門家が解説】

マンション住民を直撃する「3つの値上げ」、
管理組合がやるべき防衛策とは【専門家が解説】
10/10(木) ダイヤモンド・オンライン

● マンション管理に影響する 3つの「値上げ」とは

 物価の上昇が続いている。
帝国データバンクによると、2024年10月に値上がりする食品は2900品目を超え、4月以来の大きな値上げラッシュが予定されているという。
また食品以外にも私たちの生活に影響を及ぼすことは確実だ。
さらに日本郵便でもこの10月、30年ぶりに封書の料金が値上げされる他、先発医薬品の一部でも負担増が予定されているのだ。

 長引く物価高騰の波はさまざまな部分に及び、私たちの暮らしや日常生活のコストに直接的な影響を及ぼしつつある。
なかでも、マンション暮らしや管理組合の運営に大きく関わってくるのが(1)損害保険料、(2)人件費(3)金利、これら3つの「値上げ」要素だ。
それぞれの「値上げ」について詳しく見ていこう。

 値上げ(1)マンション損害保険料の改定

 マンション管理組合で加入し、共用部分の損害(火災をはじめ、風水害などその他のリスクも含まれる)をカバーする保険料の全国平均が13.0%引き上げられた(※参考純率)。
10月1日以降の新規契約・更新で適用されることとなっている。
エリアや建物の構造、築年数により改定率は異なるものの、従来と比較するとかなり大きな値上げ幅となる改定だ。

 この改定の背景には、近年の自然災害頻発による支払いの増加に加え、資材価格・人件費の高騰などによる修繕コストの上昇も関係している。
また水災保険料率も改定され、水害リスクに応じて市区町村別により細かく5段階で評価されることになった。
つまり水害リスクの高い地域は、保険料が高く設定される仕組みに改定されたというわけだ。
このように、今後も保険料の上昇傾向は続いていくものと考えられる。

● 保険内容が新築時のままなら 再度の見直しが重要

 時勢を考えると、保険料の改定はやむを得ない部分が大きい。
だからこそ今、あらためて契約内容の見直しを行うことが重要となる。
自分たちのマンションの現状に適した見直しを行うだけでも、保険料の抑制につなげられる可能性もあるからだ。

 そもそも、新築時から一度でも保険内容の見直しを行ったことがあるだろうか。
入居当初、管理会社から提案された内容のまま契約し、そのまま期間満了のたびに更新し続け、保険内容の見直しが手つかずとなってはいないだろうか。
その場合は次のようなポイントに着目したうえで、再度契約内容をチェックしてみてほしい。

<保険料が割安になる長期契約(最長5年)となっているか>
 <水災補償の見直し>

 ハザードマップなどからマンションの立地に付随する水害リスクを再確認しておく。
丘の上など、ある程度高い場所などの水害が想定されていないエリアでは、過度な水災補償は不要になる場合も考えられる。
一方、想定以上に水害リスクが大きい立地の場合には、補償内容を手厚くしなければならない可能性も。
自分たちのマンションの現状にあった形を再度検討することが大切だ。

 <保険約定金額の割合(付保割合)の確認>

 保険契約の対象と同等のものを新たに建てたり、取得したりするために必要な資金を「再調達価額」という。
保険約定金額(具体的な保険金額)は、「再調達価格」と「付保割合」を基に計算される。
この付保割合とは保険契約において、どの程度の割合を保険金として保障するかを設定する割合にあたる。

 ただ、建物の再調達価額に対してどれくらいの割合で保険をかけるか、という判断はとても難しい。
というのもマンションで火災があったとしても、共用部分がすべて燃えてなくなるということはまず考えづらいためだ。
いいかえると、全額(100%)の保険が必要なのかを再考しなければならない、ということになる。
割合が下がれば、当然保険料も抑えられることにはなる。
しかし修繕積立金の蓄えや保険に対する備えの必要性はマンションそれぞれで異なるため、個別の事情を考慮しながら判断することになる。

 <個人賠償責任特約の解約を検討>

 マンションの管理組合が加入する保険には、居住者が第三者に与えた損害を包括的に補償する個人賠償責任保険が付保されていることがほとんどだ。
しかし区分所有者それぞれが個別に個人賠償責任保険に加入していれば、管理組合が特約をつけるメリットは少なくなる。
特約分を外せば、保険料が下げるメリットもある。

 では、個人賠償責任保険はどのようなケースで適応となるのだろうか。
例えば給排水管などから水漏れがあり、階下に被害が出た場合、管理組合が加入する保険の個人賠償責任特約によって支払われるケースが一般的だ。
逆に特約を外した場合は、居住者それぞれの責任において支払う必要があるのだ。
仮に個人で個人賠償責任保険に加入していなかった場合は、多額の修繕コストを負担しなければならなくなる。

 個人賠償責任の特約を外すことは、保険料節約のための有効な手段の一つとなる。
ただし、区分所有者が適切な保険に加入し、個人賠償責任を十分にカバーすることの重要性を周知することが前提条件であり、それは管理組合の役割でもある。
特約を外す場合は、将来的なトラブルを防ぐ意味で区分所有者への通知はもちろん、売買があったタイミングで次の買い主へ伝えていくなどの配慮を心がけたい。

● 管理委託費の値上げ提案があっても 管理会社の変更は慎重に

値上げ(2)日々の管理業務を担う人材の人件費

 2つめの「値上げ」は10月から最低賃金が全国平均で50円アップすること、つまり人件費の上昇だ。

 賃金上昇は消費者視点では「明るい」ニュースと言ってもいい。
しかし、管理員、清掃員、コンシェルジュなど、マンションに関わる人材のコストが上がるのもまた事実だ。
インフレの加速や人手不足などの要因から、今後賃金上昇傾向が続くのは確実だろう。
人材コストを抑えるためには、管理業務の見直しを適切に行うなどの対策が必要となる。

 例えば、管理会社による共用部の点検が年に12回行われている場合、それを6回に減らせるか…といった共用部の点検や定期清掃の回数など小さな見直しも大きな意味を持つ。
どのような業務の見直しで人件費の上昇分をカバーするのかという視点が重要になってくる。

 人件費上昇に伴い、管理委託費値上げの提案があった際も、管理会社の変更には慎重になってほしい。
今後の流れを考えると最低賃金が下がるとは考えにくく、人件費の高騰が管理委託費に与える影響はどの管理会社にも共通の課題となっているからだ。

 管理委託費の値上げが提案された際には、しっかりと理由を確認し、交渉を経た上で、双方が合意できた内容で承認することも重要なポイントとなる。
加えて「管理委託費の値上げ」が許容できるかどうかは日々マンションの収支を理解しているかも関係してくるだろう。

 管理組合の役員を担う立場ならば、管理会社から提出される月次の収支報告書をしっかりとチェックし、予算通りに推移しているかを把握しておきたい。
区分所有者も年に一度の定期総会で提示される収支報告書を通じて、年間の収入と支出をチェックする必要がある。
支出が収入を上回る状態は、単年度の「赤字」であり、収支改善のサイン。自分たちのマンションで管理費の値上げが必要かどうかを見極める材料としても、「日々のお金の流れ」をこまめに見ておかなければならない。

● 進むマンション管理の「二極化」 早め早めの対策が不可欠

 値上げ(3)金利上昇の影響

 最後の「値上げ」は、皆さんご存じの「金利」上昇について。
金利は不動産の売買において、特に住宅ローンに大きな影響を与える要因となる。
住宅ローンの条件は、マンションの資産性にも深く関係してくる部分だ。

 マンション管理組合としては資金運用の視点も忘れてはならない。
例えば、修繕積立金の代表的な運用方法として「マンションすまい・る債」という債券がある。マンション管理組合が行う修繕積立金の計画的な積み立てをサポートするために発行されている債権で、住宅金融支援機構が国の認可を受けて提供している。

 このように金利の上昇に伴い、利率がアップするなどでプラスの影響を受けるマンションも多く存在する。
その一方で、住宅金融支援機構から修繕資金を借り入れる時の金利も上昇しているため、修繕積立金に余裕がなく、借り入れを行って修繕をする必要があるマンションは金利負担が重くなってしまう。

 修繕積立金が潤沢なマンションは金利上昇の恩恵を受け、修繕積立金不足が生じているマンションは金利上昇が負担になるということだ。
財政状況が危ういマンションに関しては手をこまねいていると、より深刻な事態となりかねないため、迅速に対策を講じる必要がある。

 先手を打ち、将来の大規模修繕などに向けて修繕積立金の資金運用や保険内容の見直しを実行し、資産価値を高めているマンションと、借り入れを検討せざるを得ないほどの財政状況になっており、各種値上げによって更なる会計のひっ迫が予想されるマンション。
まさに二極化の様相を示している昨今、マンション管理組合運営において計画的な準備と早期の対策が求められている。

(株式会社さくら事務所創業者・会長 長嶋 修)
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2024年10月12日

胃がん検査では「バリウム」と「胃カメラ」のどちらを選べばいいのか…男女8万人への研究結果が示唆すること

胃がん検査では「バリウム」と「胃カメラ」のどちらを選べばいいのか…男女8万人への研究結果が示唆すること
2024年10月11日 PRESIDENT Online

健康診断を最大限活用するためのポイントは何か。
産業医の池井佑丞さんは「気にしてほしい項目は5つある。
また、企業によってはオプション検査でがんの検査を追加できる。
男女ともに、年齢に合わせて胃がんや大腸がんの検査を検討したほうがいい。
胃がん検査の方法を選べるなら、胃内視鏡検査がおすすめだ」という――。

■特に気にしてほしい5つの項目

年末にかけて、健康診断を受けていないことにハッと気づき、急いで健康診断を予約する方も多いのではないでしょうか。
現代社会において、健康診断は私たちの健康を守るために大切なものです。
特に生活習慣病やがんの早期発見と予防において、その重要性はますます高まっています。
私自身も産業医として、多くの就労者の健康を見守る中で、健康診断の重要性を痛感しています。
今回は、健康診断とその活用方法についてお話しします。

健康診断では、身体計測や血圧、また視力・聴力測定などの生理学的検査、血液・尿検査と胸部のレントゲン検査が一般的です。
検査結果を見ると、異常値が示されていたり、A/B/C/Dの4段階で評価されていることがあるかと思います。
検査結果のうち異常があった場合、
特に気にしていただきたい項目は、
@血圧、
ABMI、
B脂質(総コレステロール・中性脂肪・HDL-コレステロール・LDL-コレステロール)、
C肝機能[AST(GOT)・ALT(GPT)・γGTP]、
D糖代謝(HbA1c・空腹時血糖)の5つです。

■40代以降の女性は脂質の変化に要注意

@血圧

高血圧は、心筋梗塞や脳卒中を招く動脈硬化や、腎臓病の発症に関わります。高血圧は自覚症状がないことも多いため、健康診断で血圧が高いと指摘されたら、まずは家庭での血圧測定と受診をおすすめします。

ABMI

BMIが高いと、糖尿病や高血圧などの生活習慣病のリスクが高まるため、健康管理の指標として非常に重要です。

B脂質

脂質異常症は、それ自体に自覚症状がほとんどなく放置されがちですが、動脈硬化を進行させ、狭心症や心筋梗塞などの心疾患、脳出血や脳梗塞のリスクを高めます。

特に40代以降の女性は脂質の変化に注意が必要です。閉経後はエストロゲン(女性ホルモン)の分泌が減少し、LDL(悪玉)コレステロールの抑制作用が弱まるため、数値が高くなりやすい傾向があります。

C肝機能

肝臓には痛みを感じる神経がないため、障害を受けても自覚症状が出にくく、症状が現れた時には病状が進行していることが多いです。原因としてはアルコールや薬物の過剰摂取、ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎、脂肪肝などが挙げられます。特に「アルコール性肝障害」や「脂肪肝」といった生活習慣病に起因する肝臓病には注意が必要です。

D糖代謝

日本では4人に1人が糖尿病またはその予備軍と言われています。糖尿病自体は直接命に関わる病気ではありませんが、自覚症状がなく進行することが多く、合併症が大きな問題となります。

■血圧コントロール率の低い日本

健康診断の基本的な検査項目によって、高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病を発見できる可能性が高いです。
これらの病気は自覚症状が少ないため、日常生活の中で異常を感じることは少ないかもしれませんが、放置すると生命に関わるリスクが高まります。

例えば、近年高血圧の治療戦略は「より早く、より厳格な24時間にわたる降圧」と言われていますが、日本での治療率は約53%、血圧コントロール率は30%程度にとどまっています。
これは台湾や韓国と比較しても低い数値です。
台湾では治療率89.4%、コントロール率70.2%、韓国では治療率61.1%、コントロール率69.3%に及びます。
健康診断で指摘を受ける場合にはコントロールが不十分である事が多いため、早期に対応することが重要です(苅尾七臣「高血圧の最新治療2021 ガイドラインからデジタルハイパーテンションへ」第118回日本内科学会講演会 教育講演)。

また、糖尿病においては軽症の耐糖能異常であっても、累積死亡率は健常者の2倍以上と言われており、異常が指摘された際は早めに受診することが大切です。

■胃がん・大腸がんの検査も追加したほうがいい

また、がんの検査についても考慮が必要です。
企業によっては、健康診断のオプション検査を追加できます。
基本的な検査項目でがんを発見することは難しいため、生活習慣や遺伝、年齢などを考慮して、リスクが高いがんの検査を追加すると良いでしょう。

男性は30歳以上、女性は40歳以上で、胃がんや大腸がんの死亡率や発症リスクが高まります。
定期健康診断の必須検査項目には胃の検査や便潜血検査が含まれていないため、年齢に応じて腹部超音波・便潜血検査・胃内視鏡検査(特に30代以降の受けたことがない方、前回受けてから2年以上経過している方、胃腸に不調を感じている方、飲酒習慣がある方)や、ピロリ菌抗体検査(血液検査で調べたことがない方)を追加することをおすすめします。

胃透視検査(バリウム検査)と胃内視鏡検査(胃カメラ)の選択について、よく質問される事があります。
胃透視検査(バリウム検査)は、胃内視鏡検査と比較して検査時間が短く、全体像や動きを観察することができます。そのため、全周性に収縮している像を持つスキルス性胃がんの発見には、内視鏡よりも向いていると言われています。
一方で胃内視鏡検査は、胃の粘膜を直接見ることができます。侵襲性は高くなるかもしれませんが、病変そのものを色まで確認し、必要に応じて細胞を採取することもできます。

■「胃内視鏡検査」の方が死亡リスクを減らす研究結果

がんの既往がなかった男女8万272人を、20年程度追跡し、胃内視鏡検査による胃がん検診と胃がん死亡・罹患との関連を調べた多目的コホート研究があります。
追跡期間中(中央値;13.0年)に、1977例が胃がんと診断され、さらにそのうち783例が胃がんにより死亡しています。
解析の結果、胃透視検査または胃内視鏡検査を受けた人では、未受診の人と比較して、胃がんによる死亡リスクがそれぞれ37%、61%減少していました。

また、胃透視検査を受けた人または胃内視鏡検査を受けた人では、未受診の人と比較して、進行胃がん罹患リスクがそれぞれ12%、22%減少していました。
このように胃内視鏡検査は胃透視検査と比較して、胃がん死亡を抑制する効果が示唆されています[Nobuhiro Narii et.al “Effectiveness of endoscopic screening for gastric cancer: The Japan Public Health Center-based Prospective Study” Cancer Sci. 2022 Nov;113(11):3922-3931.]。
検査のキャパシティの問題から選択できる機会はそう多くはないかもしれませんが、胃透視検査か胃内視鏡検査のどちらかを選択することができる場合には、胃内視鏡をおすすめしたいと思います。

■女性は乳がん・子宮頸がん、男性は前立腺がんの検査も

また、女性は乳がんや子宮頸がんに関する検査も定期的に行えると良いでしょう。
乳がんの罹患率は20代後半から増え始め、40代後半に最初のピークを迎えます。
乳がんは乳房検査(乳腺エコー、マンモグラフィ)にて確認する事ができます。
また、子宮頸がんの罹患率は20代前半から増え始め30代後半から40代にピークを迎えますが、特に生理痛が重い方や不正出血等の症状がある方は経膣超音波検査追加を検討すると良いでしょう。

男性では前立腺がんは今や男性の部位別がんで最も多く、50歳ごろから急増します。
特に早期発見の観点から、40歳以降の健康診断には前立腺腫瘍マーカー(PSA)の測定を追加することを推奨します。

■健康診断の目的は「早期発見」だけではない

健康診断は病気の早期発見だけでなく、健康面から「働いて問題ない」ことを確認するための目的もあります。

企業には労働者の健康を守るために必要な措置を講じる法律上の義務があり、労働者には労働者自身が自らの健康状態に注意し管理し、安全に働くことができるよう主体的に行動する義務が課せられています。

また企業には、異常所見があると診断された者に対し、労働者の健康を保持するために必要な措置(就業区分、作業環境管理、作業管理)について、意見聴取を行わなければならないという法令上の義務があります。
時には、医師の診断に基づいて、労働時間の短縮や出張の制限など負担軽減を行ったり、作業内容や就業場所の変更を行ったりします。
療養が必要な場合には、一定期間の休業の提案など、適切な措置を講じることが求められます。

健康診断を受けることは労働者の義務です。異常が見つかった場合には、二次検査を積極的に受け、生活習慣の見直しや早期治療に繋げることが大切です。
----------
池井 佑丞(いけい・ゆうすけ)
産業医
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2024年10月13日

「こんなに値上がりしてるの?」日々通うスーパーで実感する物価高騰 家計防衛のためには“店ごとに異なる価格”を把握してハシゴすべし

「こんなに値上がりしてるの?」日々通うスーパーで実感する物価高騰 家計防衛のためには“店ごとに異なる価格”を把握してハシゴすべし
10/12(土) マネーポストWEB

 ここ数年間の原油高や原材料費の高騰、円安などの影響で、日常利用するスーパーマーケットでの買い物でも「こんなに値上がりしてるの?」と感じる機会が増えている。
「2〜3年前と比べたら15%ぐらいは上がったとの体感値がある」と述べるのは、日常的にスーパーで買い物しているネットニュース編集者の中川淳一郎氏。
佐賀県唐津市で暮らす中川氏が、過去と比較した商品ごとの現在の価格を踏まえ、節約術をアドバイスする。

* * *

 大体同じようなものをスーパーでは買っています。
2021〜2022年は1回の買い物で2800円ぐらいでしたが、今は3150円ぐらいになる感覚です。そこで、過去の価格の記憶が残っている商品(少しはブレがあるかもしれません)と現在の価格を比較してみたら、やはり輸入品が大きく値上がりしていることを実感します。

・オリーブオイル500ml:698円→1080円

・トマト缶:98円→158円

・粉チーズ80g:498円→658円

・タバスコ:218円→278円

・タコ:100g298円→498円

国産の調味料系もかなり上がっていますね。
私は基本的には安い調味料を買います。

・袋入り味噌1kg:158円→218円

・めんつゆ1000ml:198円→238円

・食用油:298円→398円(※1000ml→900mlへ)

・ラー油1瓶:108円→148円

・カレールー10人前:138円→178円

 かつて特売の目玉で、通常棚に置いてあるものでも安かったカップ麺もこんな感じです。

・有名カップうどん:138〜158円→188円

・有名カップラーメン:128〜148円→198円

・PBのカップラーメン:98円→138円

サンマは昨年までより安くなっている!

 野菜や豆腐や練り物、国産の魚介類・肉については、あまり変わっていない印象です。
いずれも生産者と加工業者と流通業者の努力の賜物ですね。
しかしながら昨今「モヤシ農家が悲鳴」なんて記事を見ることもありますし、実際、値上がりを実感しているものも少なくありません。

 たとえば、昨年末から今年初頭にかけては玉子が大幅に値上げされました。
かつては特売で10個入り98円なんてものもありましたし、158〜178円ぐらいで買えたものですが、鳥インフルエンザの影響もあり、ある時は10個入り328円になっていた。
そこで「6個入り198円」や「8個入り248円」といった形で、とりあえず支払う金額を減らすような小売店側の施策も打たれました。

 今は玉子の価格は178〜268円ほどに落ち着いていますが、またいつ値上がりするかは分からない。とにかく買い物をするにあたっては、自身が納得できる相場を把握しておくことが、家計防衛への近道です。

 とはいえ高くなっているものばかりではありません。
たとえば今年の秋は、サンマが安くなっているのを実感します。
kmここ数年、不漁でサンマは高嶺の花に。1匹698円やら798円で、しかも身が痩せていた。2010年代中頃、よく行くスーパーではトロ箱に氷を大量に入れ、そこにサンマが山積みで各自ビニール袋に入れられる投げ売り状態でした。
しかも価格は79円で丸々と太っていた! そんな時代を知っているものですから、しばらくサンマからは離れていましたが、今年はいいです。2匹399円で型もなかなか良い。

 このように物価高について述べてきましたが、最後に節約のためのアドバイス。“店のハシゴ”はした方がいいと思います。私はいつも行くスーパーで「粉チーズ:498円→658円」「タバスコ:218円→278円」と書きましたが、なんと、大手ドラッグストアでは、同じ粉チーズは399円でタバスコは199円なのです! 規模の経済がさせる業なのかは分かりませんが、「この店はコレがとにかく安い」を知っておきたい。
それを踏まえて店のハシゴをして家計防衛につなげましょう。

【プロフィール】

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):
1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。
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2024年10月14日

【鼻血で上を向くのはNG】医師が教える、ケガの「正しい」応急手当て

【鼻血で上を向くのはNG】医師が教える、ケガの「正しい」応急手当て
2024年10月13日 ダイヤモンドオンライン

鼻血、やけど、突き指……。普通に生活をしている中でよくあるケガだが、応急手当ての仕方によっては、悪化させてしまうことがあるという。
たとえば、鼻血が出たら上を向いて首をたたくというのは間違った知識だ。
では、正しい手当とはどのようなものだろうか。
また、どの程度なら病院へ行くべきかというのも迷うところかもしれない。

そんな疑問に答える書籍、『いのちをまもる図鑑』(ダイヤモンド社)が刊行された。鼻血の応急手当てから、危険生物に遭遇したときの対応、突然の災害から身を守る方法まで、さまざまな「生きる知恵」が網羅されている。

今回の記事では、第3章「ケガ・事故からいのちを守る」監修者で医師の西竜一先生に、身近なケガの応急手当てと、病院に行くかどうか判断のポイントについて聞いた。(取材・構成 / 小川晶子)

■鼻血が出たらどうするのが正解?

――前回、西先生には緊急性の高い病気・ケガでの応急処置を教えていただきました。今回は、家庭の中でよくあるケガについて教えてください。病院に行くべきかどうか迷うケースもあると思うんです。

西竜一先生(以下、西):止血法についてはすでにお話ししましたが、やはり包丁で手を切ったという話は多いですね。スライサーも多いです

――めちゃくちゃ切れるやつありますもんね……。圧迫して止血をし、なかなか止まらないようなら病院へ行った方がいいですね。
止血で言えば、『いのちをまもる図鑑』を見て驚いたのが、鼻血が出たときに上を向くのはNGということです。
昔は「上を向いて首の後ろをトントンたたく」なんて言われていましたが、違うのですか?

西:やらないほうがいいですね。上を向くと血を飲み込んで、嘔吐を誘発するおそれがあります。

――下を向いて喉の奥にたれ込んできた血を吐き出しながら、小鼻を手でつまんで血を止めるのが正解ですね。

西:鼻血の7〜8割は鼻の内側の部位からの出血なので、圧迫すれば多くの場合は止まります。心配いりません。高齢者の方で鼻の奥から血が出ている場合は例外ですが……。救急車で来られる方も、多くは病院に着いたときには血が止まっています。

――そうなんですね! 鼻血がたくさん出ると焦ってしまいますが、まずは落ち着いて止血することですね。

■熱いお味噌汁がかかった! やけどで病院に行く目安は?

西:それから、やけども多いと思います。熱いお味噌汁をかけちゃったとか。やけどをしたら、『いのちをまもる図鑑』に書いてあるように、すぐに流水をかけて痛みがやわらぐまで5〜30分冷やすようにします。

――私は終わったばかりの手持ち花火の火がついていたほうを持ってしまい、やけどをしたことがあるんですが、冷やしてもなかなか痛みがやわらぎませんでした。水ぶくれができて痛くてたまらなくて。流水で冷やしたあとも、保冷剤を巻いておくとか、冷やし続けたほうが痛みを感じない気がするんですが……。


西:冷やし過ぎも良くないんですよ。氷で冷やすと冷えすぎて悪化することもあります。やけどの範囲が広ければ病院へ行った方がいいですが、痛みがあるというのはまだマシです。


――えっ、そうなんですか?


西:やけどには損傷の深さによって大きく分けて3段階あります。1度は皮膚が赤くなった「日焼け」程度のもの。日焼けでもひどい場合は水疱ができますが、水疱ができるほどのやけどは2度。範囲が広いと脱水を起こしやすくなるため点滴が必要になる場合もあります。さらに深いやけどが3度で、感覚がなくなります。皮膚が焦げてしまった状態で、植皮、つまり別の場所の皮膚を移植する手術が必要になることもあるレベルのものです。

病院に行く目安としては、水疱ができており、範囲が広いかどうかといったところです。

――天ぷら油がはねてかかったり、熱い鍋をさわったりして3度までいく場合もありますか?

西:熱いものにどのくらいの時間暴露されているかによるんですよね。普通は瞬間的に離れると思うので、そこまで深いやけどにはなりません。

■突き指は引っ張らない! 冷やして安静に

――子どもはけっこう突き指をよくやるのですが、突き指の応急処置はどのようなものですか?

西:水や、氷をタオルなどで包んだもので冷やします。炎症なので、大事なのは安静と冷却です。昔は「突き指した指を引っ張るといい」と言われていたようですが、骨折や靱帯損傷が悪化するおそれがあるのでやらないでください。

――私もそれ、聞いたことがあるんですが引っ張っちゃダメなんですね。

西:なぜそういう誤った言い伝えがあるのでしょうかね。しいて言うなら、脱臼している場合は関節がずれているので、引っ張ることによって元に戻ることがありますが……。

――なるほど。脱臼と突き指がごっちゃになってしまったのかもしれませんね……。では、一般的な突き指なら、冷やして安静にしておけば治るということでいいですか?

西:はい。ただ、骨折している場合もありますからね。腫れがひどいようなら病院へ行くのがいいと思います。それだけ炎症がひどいということですから。

――ありがとうございます。こういった知識があれば、あわてずに対処できそうです。

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2024年10月15日

失ったものを数えるより、いま手にしているものを数えるほうがいい

失ったものを数えるより、いま手にしているものを数えるほうがいい
10/14(月) ダイヤモンド・オンライン

 101歳、現役の化粧品販売員として活躍している堀野智子(トモコ)さん。
累計売上高は約1億3000万円で、「最高齢のビューティーアドバイザー」としてギネス世界記録に認定されたキャリア61年のトモコさんが、年をとるほど働くのが楽しくなる50の知恵を初公開した話題の書『101歳、現役の化粧品販売員 トモコさんの一生楽しく働く教え』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものをお送りする。
佐藤優氏(作家・元外務省主任分析官)が「堀野氏の技法は、ヒュミント(人間による情報収集活動)にも応用できる」と絶賛(日刊ゲンダイ・週末オススメ本ミシュラン)する世界一の先輩による“人生訓”は、アナタの疲れた心を元気にしてくれる!

● 15年務めた 営業所長を辞める

 営業エリアを統括しているマネジャーに「こういう事情で営業所長をやめさせていただきたい」と告げたところ、驚かれはしましたが、引き留められることはありませんでした。

 当時は今よりも一家の主(あるじ)の意向第一という風潮が残っていたので、主人が定年退職するのでやめたいというのに、反対するわけにはいかないと思われたのかもしれません。

 私が営業所長をやめることになって、営業所自体を閉じることになりました。
事前に営業所のみんなに事情を話して、「みなさん、自分の行きたい営業所に行ってくださいね」とお願いしました。

● ヒラの営業に戻り 収入は逆戻り

 私は元いた営業所に戻ったのですが、メンバーの半分くらいは「堀野さんと一緒のところに行きたい」とついてきてくれたんです。
それは、やはりうれしかったですよ。

 営業所長ではなくなり、セールスレディの1人になったので、収入は以前に逆戻りです。

 お客様により多く喜ばれて、自分の収入も増やしていきたいという気持ちでやってきたので、収入減になったのは、正直ちょっと残念ではありました。

 初心に立ち返ることの大切さ

 でも営業所長としての役目を終え、再度、元の立場になってみると、それはそれでいいものだな、とも感じました。
気がつけば、子どもたちの教育にお金のかかる期間もすでに終わっていて、そうあくせく働かなくてもすむようになっていたのです。

 そうなると営業所全体の売り上げを気にしたり、スタッフを雇い入れるのに心を砕いたりすることなく、自分がお客様とどう関わっていくかということだけに集中すればいい立場は、決して悪いものではなかったのです。

 むしろ、初心に帰ることができてよかったかもしれません。

● 失ったものより 今あるものを数える

 さらに今回は主人という運転手つきです。
私自身は車の運転をしませんから、どこにセールスに行くにも、自分の足を使わなければならなかったのに比べると、主人の車でどこにでも連れて行ってもらえるのは本当に楽でした。

 ものは考えようだなと、このときしみじみ思ったものです。
失ったものを数えるより、今手にしているものを数えるほうがいいですものね。

 営業所長という立場を失った代わりに、自分にとって楽な働き方が手に入ったのだと自然に思えるようになっていきました。

 ※本稿は、『101歳、現役の化粧品販売員 トモコさんの一生楽しく働く教え』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

堀野 智子
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逮捕・収監された元法務大臣が体験したムショ生活と「囚人のパラドックス」

逮捕・収監された元法務大臣が体験したムショ生活と「囚人のパラドックス」
10/14(月) JBpress

 3年2カ月に及んだ「塀の中」の生活を経て、昨年11月、栃木県の刑務所から仮釈放となった河井克行・元法務大臣。
刑務所の中では獄中の体験について月刊誌に連載を書き続け、それは本になった。
元法務大臣は刑務所の中で、受刑者としてどんな光景を目の当たりにしたのか。
『獄中日記 塀の中に落ちた法務大臣の1160日』(飛鳥新社)を上梓した河井克行氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

 河井克行氏(以下、河井):
刑務所に収監された段階で、その人の人生はもう破壊されています。
もちろん被害者がいる場合は被害者の人生も破壊されていて、だからこそ受刑者は罪に問われたので、生涯かけて償う必要があります。
けれども、罪を犯した方もまた、刑務所に入った段階ですべてを失っています。

 仕事も収入もなくなる。財産も補償に当てなければならない。離婚されたり、親子の縁を切られたり、大切な家族との絆が断ち切られる場合も少なくありません。社会との接点はほぼ失われてしまうのです。

 そうした状況下で、数年間、閉鎖空間で過ごすわけですが、入所した段階はゼロか、むしろマイナスからのスタートですよね。
では刑務所の中で、多少なりとも人生がプラスに転じていくかというと、自分が刑務所生活を経験してみて分かりましたが、むしろマイナスが増えてしまうのが現実です。

 ──プラスは全くないですか。

 河刑井:
務所の中で受けることができる資格試験は簿記しかありません。
簿記を否定するわけではありませんが、今の時代、社会で役立ちそうな資格試験は他にもたくさんあるでしょう。

 「英検、TOEIC、漢検などがなんで受けられないんだ」と工場の同衆たちはしきりに文句を言っていました。
そういうものは刑務所内で挑戦できる資格として用意されていませんでした。

 そして、いざ簿記の勉強を始めるにしても障害がありました。
受刑者は、私がいた図書計算工場から参考書を借ります。
私はまさにその「特別貸与本」の担当をしていましたから、実態をよく知っています。

 しょっちゅう参考書や問題集を借りたいという申し込みが来ますけど、喜連川に受刑者は1400人くらいいるのに、簿記試験の参考書は3、4冊しかない。
それもかなり古いものばかりでした。
「今貸し出し中です」と、申し込み用紙にいつも断りばかりを書かなければならないのが、本当に心苦しかったです。

 借りられないのなら、自分で買えばいいと思うかもしれませんが、お金を持っていない方が少なくありません。

■ 岸信介でも感じた「囚人のパラドックス」

 河井:
また、これもひどいのですが、自費で外部に本の注文をしても、ほとんど品切れ状態なのです。
直近の新聞広告に出ていた話題の本やとても有名な本でさえ品切れ。
「なんでこれが品切れなの?」と先輩受刑者に聞いたら、「契約している本屋がおかしいんじゃないの」と言っていました。

 一生刑務所の中に留めておくのならまだしも、受刑者は刑期を終えるか、その途中で、必ずまた社会に出て行きます。
ひょっとしたら、あなたの電車の隣の乗客や、アパートの隣の住人が出所した元受刑者かもしれない。
好むと好まざるとに限らず、出所した人たちと私たちは共存しないわけにはいかないんです。

 そうであれば、刑務所にいた人たちが社会の一員として責任と自覚を持って生活できるようになるほうがいい。
出てから急にそうなれと言っても、できないですよ。
中にいる時から、そうした訓練をしていかなければならない。
しかし残念ながら、塀の中の現実は、それが果たせそうな状況ではありませんでした。

 ──刑務所の中の人間が、出所して外へ出て行くことがいかに内心では怖いか、「囚人のパラドックス」という言葉で説明されていました。

 河井:
「囚人のパラドックス」は私が作った言葉です。

 受刑者たちは、とにかく早く外に出たい。1日も早く外に出たい。
だけど、釈放された後に応援してくれるような、家族も、親戚も、友人知人もいない。
そういう環境で一体どうやって生きていけるのかと、皆すごく不安になりますよね。

 でも、とりあえず刑務所の中にいれば、3食食べられるし、洗濯もしてもらえるし、回数は少ないけれどお風呂にも入れるし、毎月散髪もしてもらえるわけです。

 もちろん、それはすべて国民の税金ですが、生きていくための最低限のものは提供される。
だから、外に出たいという気持ちとは裏腹に、やがて「ここの生活も悪くない」と思い始める瞬間が訪れるのです。

 私は妻や友人たちからの本の差し入れのおかげで、刑務所の中で戦前戦中戦後史の本もたくさん読みました。
その中の一つ、原彬久さんの著書に、安倍晋三元総理の祖父である岸信介元総理大臣が敗戦後に巣鴨拘置所に収容されていた時、そういう心境になったことを獄中日記にしたためていたという記述がありました。

 「一日も早く自由の身になることは誰しも念願するところ」という気持ちがある反面、「住めば都というかこの監禁の世界にも馴れるとまた一種棄て難き味あり」とも書かれている。

 自分の置かれた環境や仕打ちに対して深い憤りは持っていらっしゃったと思いますが、戦後日本を代表する大政治家でさえ、塀の中の環境に慣らされていくお気持ちがあった。これは心理学のテーマかもしれません。

■ 出所後の生活に迷う受刑者のリアル

 河井:
受刑者にとって、人生の本当の舞台は社会です。
何年かだけこの部屋の中にいるに過ぎないのだけれど、「本当はここが自分の人生の舞台かもしれない」とだんだん勘違いしてきてしまう。

 厳しい自由の制限があるから、そこに無理にでも自分を適応させなければならない。
順応させようとものすごく努力する。
でも、順応すればするほど、刑務所の中の居心地が良くなってしまう。
だって、今はそこで生活しているのだから、順応できなかったら不幸じゃないですか。
やがて、出所後の社会における自分の姿を想像できなくなっていってしまうのです。

 私のいた刑務所にも心優しい刑務官がいて、「刑期なんてすぐに過ぎていくから、出た後の準備を今からしっかりしておいてください」と毎週末に言っていました。
でも、刑務所として受刑者の釈放後につながるような情報提供やトレーニングを早めにしたり、あるいは、受刑者の心情を把握したり、出所後にどんな仕事に就きたいか聞き取りしたり、そういうことを相談できる面談のようなものはありませんでした。

 工場に保管されている受刑者専用の求人案内を同衆たちと一緒に見ると、95%くらいが建設関係の仕事でした。
20代や30代ならいいけれど、もっと上の年齢になってくるとしんどい仕事ですよね。でも、そういう職種しかありませんでした。

 「就職先は出所後に自分で探せ」ということなのでしょうけれど、そのための情報があるわけではない。
刑務所を出る直前になって、「私は一体何をすればいいんでしょう」と相談してくる人がいると笑って話す刑務官もいましたけれど、笑う話じゃなくて、本当にみんな迷っているのだと思います。

 変な言い方かもしれないけれど、半ば強制的に社会復帰させられて、どうしていいか分からない。
だから、また犯罪に近づかざるを得なくなり、再犯率がなかなか下がらないのだと思います。

 ──河井さんの場合は、世間的によく知られていることから来る苦しみもあったのではないですか。後援会など、政治家時代に応援してくださった方々に、挨拶やお詫びにも行かなければなりません。

 河井:
広島の僕の後援会は、僕が27歳の頃から、ずっと支えてくださってきた、家族同然の付き合いを30年くらい積み上げてくださった方々です。

 ただ、「あらぬ誤解を捜査当局に与えぬために、一切地元には連絡しないように」と弁護団からきつく注意されていたので、接触を控えていました。
法務大臣を辞任してから、地元には一切帰らず、連絡もできませんでした。応援して下さった皆さんには大変な心配をおかけしたし、寂しい思いを味わせてしまいました。

■ 「石でも投げられるのか」と思って後援会を訪ねると……

 河井:
現役時代は、時間があれば広島に帰り、呼ばれもしないのにいろいろな行事に参加したり、国政報告会を開いたりしていました。
災害があれば、いの一番に被災地に駆けつけ、復旧復興の様子を確かめるなど、とにかく人一倍地元に戻っていました。

 だから出所後は、本当はすぐにでも地元に帰りたかったのですが、受刑中に体重が14キロも落ちましてね。
刑務所の中では運動する機会も十分に与えられませんから、極度に体力が落ちてしまって、3、4分歩くだけでも息が上がってしまう状態でした。

 そこで、しばらくは体力をつけることに専念して、今年2月、5年ぶりに初めて地元に戻りました。
見慣れた故郷の姿を眺めた時には、本当に涙が出ました。

 後援会の方々を訪問すると、それこそ「石でも投げられるのか」と思ったりもしましたが、ありがたいことに、私の顔を見るなり号泣されたり、抱き付いて来られたり、両手を握って離さなかったり、本当に皆さん温かく接してくださいました。涙が止まりませんでした。

 中国新聞は、出所後に地元に帰った私が後援会の方々から冷たい対応をされたと書きましたが、一体どこの誰に話を聞いたんでしょうか。
温かい対応をしていただければいただくほど、5年間も寂しい思いをさせて、心配をおかけして、申し訳なくて、心の中で泣きながら1軒ずつ歩いて回りました。

 ──本書には現役の政治家時代の反省点についても書かれていました。部下に対して自分がパワハラ的な態度を取ったことがあるなど、なかなか素直に言いづらいことまでわざわざ赤裸々に書かれていたのが印象的でした。

 河井:
刑務所に入って間もない頃です。新人の受刑者は「新入訓練工場」というところに送られます。
私もそこに送られました。そこで皆で行進の訓練などをします。

 中には高齢の受刑者もいて、少し動作が遅い人もいます。
ところが、刑務官はそういう高齢の受刑者に対しても大きな声で怒鳴りつけて注意するのです。
「何度言ったら分かるんだ」「オレの言っていることがなんで分からないんだ」とドヤしつけていました。

 その言葉を聞きながら、思わずはっとしました。

 「私の言っていることがなんで分からないんだ」と、私自身も秘書さんやスタッフたちに言っていたなと思い出した。
その時に思ったんです。分からないから分からないのに、「なんで分からないのか」と問い詰めても、答えられるはずないですよね。

 自分のすぐ横を歩いている受刑者がわーっと言われているのを見聞きして、「オレも同じこと言っていたよなぁ」ってね。
他山の石じゃないけれど、昔の自分の姿がよみがえりました。
もっと周りの人たちに愛情や尊敬を持って接するべきだったと、痛切に思いました。

 刑務所の中では、毎日午後9時から就寝時間です。
お手洗い以外は立ち上がるのも禁止で、床に横になってないといけない。
そうはいっても、6時間、7時間経ったらもう目も覚めてしまう。だから、おのずといろいろなことを考えますよ。
刑務所の中では、考える時間は潤沢にあります。

■ 河井克行が考えるこれからの人生

 ──「これから僕はどうやって生きていくのだろうか。やりたいことは山ほどある」と書かれています。現在どのような生活をし、今後どのようなことをしていきたいとお考えですか? 

 河井:
アップルの創業者、スティーブ・ジョブズが2005年にスタンフォード大学の卒業式で語った有名な祝辞があります。「Connecting the dots (点と点をつなげる)」です。これは、人生の中の一見関係のない点と点、つまり出来事と出来事がいつかは結び合って人生を彩っていくというお話です。この祝辞は、ネットで今でも見ることができます。

 私はこの話が好きで、現役時代、地元の高等学校の卒業式などに呼ばれては、引用していました。
今本当に、スティーブ・ジョブズの言っていた通りだなあと感じる日々です。
こういう状況にもかかわらず、多くの方々から応援していただいたり、手を差し伸べていただいたりしています。

 安倍政権時代に、安倍総理が外交担当の総理大臣補佐官という役職を私のために初めて作ってくださいました。
総理の特命により様々な国や地域に行かせてもらいました。

 たとえば、フィリピンのドゥテルテ前大統領にはずいぶん親しくしていただき、今でも側近の方々を含めてお付き合いがあります。
出所するなり「早くおいで」と言ってくださいました。
会った瞬間、「My friend, my friend」と固く手を握り締めていただきました。今年は既に4回フィリピンを訪問しています。

 今、いくつかの企業の顧問をしていますが、海外でのビジネス展開に私の人脈や知見・経験を活かすことができればと思っています。
7月にはバチカンに行きました。今回で7回目の訪問でした。

 そして、つい先だっては、ブータン王国に行ってきました。
あの国を訪れるのはこれで6回目です。訪問の度に、第四代国王陛下に謁見を賜り、今回も、本当にありがたいことですが2時間も、お時間を割いていただきました。王妃陛下が最初から最後までずっと側にいてくださいました。

 「受刑は長らく大変でしたね」「政治をやっていると、他の勢力が妨害したりして、自分のコントロールが及ばない、いろんなことが発生しますよ」とお慰めいただきました。
通り一遍の言葉ではなく、本当に温かく響きましてね、思わず涙が出ましたが、王妃陛下が私の隣からそっとティッシュを差し出してくださって。また胸が熱くなりました。

 「ブータンの発展にぜひ協力してほしい」と言われました。
今までの私の人脈や経験が結びついていく予感がしています。スティーブ・ジョブズの言ったことは間違いありません。これは私に限らず誰でも、過去の出来事や人間関係が結びついて、必ず点と点は結びついて線になります。

 いろいろな経験をした私だからこそ言います。
特に若い人たちに言いたい。絶望しちゃいけない。諦めちゃいけない。大丈夫です。生きていればぜったいに大丈夫だよと。


 長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
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2024年10月16日

短時間で集中的に覚えた内容は脳が忘れやすい!忘れにくくなる4つの勉強タイミング

短時間で集中的に覚えた内容は脳が忘れやすい!忘れにくくなる4つの勉強タイミング
10/15(火) THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン)

勉強が続かなくて悩んでいませんか? 
オンライン個別指導塾「となりにコーチ」の代表講師・粂原圭太郎氏の著書『科学的アプローチで勉強がとまらなくなる ストレスフリー勉強法』によると、「脳科学的に正しい勉強法がある」と言います。
一体どんな方法でしょうか? 本書から一部を紹介します。

4つのタイミングで勉強すると、忘れにくくなる

皆さんは、「一夜漬け」をしたことはありますか?
 定期テストの前にやった、もしくは今もやってしまう人もいるでしょうか。
私も、一夜漬けに頼っていた時期があります。
しかし、一夜漬けをしたことがある人も、勉強内容が身についた経験はあまりないでしょう。
短時間で集中的に覚えた内容は、脳が忘れやすいからです。

では、一夜漬けが長期的な学習として効果がないなら、その「逆」はどうでしょう?
 逆とは、一夜漬けのように一気に勉強するのではなく、一定の期間を空けて勉強することです。
実は、間隔を空けて勉強するのは記憶の定着に非常にいいとされています。
この効果を「スペーシング効果」と呼びます。

スペーシング(spacing)とは、「間隔を空ける」という意味。
情報や内容を短期間ではなく、時間を空けて繰り返し学習すると、長期記憶の向上につながるのです。
スペーシング効果は、「エビングハウスの忘却曲線」で知られるドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスが発見しました。忘却曲線とは、時間が経つにつれて記憶したことを忘れてしまう様子を表した曲線です。

一度覚えたはずの数学の公式が1週間後にはおぼろげになり、1か月後には完全に忘れてしまう経験は誰しもあるでしょう。
一定期間を空けながら分散・反復で勉強していくことで、なるべく忘れないように効率を上げていくのが狙いです。

エビングハウスの忘却曲線から導き出される復習の最適なタイミングは、「1日後」「1週間後」「1か月後」の31回。
私は、ここに「ある時間帯」をプラスした合計4回をおすすめしています。
それは、覚えた日の「寝る前」です。

人間の脳は、寝ているときに記憶を整理します。
睡眠中は何もしていないと思ってしまいますが、脳はしっかり働いています。
寝る直前にインプットした記憶は、脳の中で整理され、定着するのです。
新しいことを覚えるときには、次の4つのタイミングで復習するのが効果的です。

効果的な復習の4つのタイミング

(1)初めて学んだ日の寝る前(就寝の30分前)
(2)翌日
(3)1週間後
(4)1か月後

たとえば、新しい英文法を覚えたとします。
まずはその日の寝る前に学習したことを思い出しながら要点をノートにまとめてみます。
まとめ方のおすすめは2種類あり、「学んだことを時系列で書き出す」か「印象に残ったことから順番に書き出す」のいずれかがいいでしょう。

時間がない場合は「その日の学習で得た一番大きな気づき」を1つピックアップするだけでもOKです。
翌日にそれを見返しながら、関連する文法なども併せてインプットします。
1週間後には少し忘れているので、まず要点を思い出そうとしてみて、うまく出てこなかった部分を中心に学習し直してみてください。

練習問題を解いたり、自分で問題を作ってみたりするのもおすすめです。
自分で問題を作ることで、本質的な理解が深まります。
1か月後のタイミングでは億劫に感じてしまいますが、やるのは作った問題を解くだけです。
このように繰り返し学習すると、記憶に定着するだけでなく、その単元でどこが弱いのかが把握できるようになります。

タイミングごとにまったく同じやり方で復習するのではなく、いろいろな形で思い出すことによって脳をマンネリ化させないのがポイントです。
復習のタイミングを忘れてしまう人に、おすすめのアプリがあります。
それは「Google Keep」というGoogle のメモ帳アプリ。
メモ帳とは言ったもののリマインダー機能と一体になっており、勉強の管理に非常に便利です。

リマインダー機能で毎日決まった時間に「復習タイム」のアラートを設定しておき、メモの部分に「何日に何をやるか」の詳細を書いておけば忘れません。
復習を4回も行なうのは多すぎだと感じるかもしれません。
しかし、新しいものをいくらインプットしたとしても、覚えたそばから忘れていっては元も子もありません。

今日新しく覚えたことを、1か月後に果たしてどれだけ鮮明に覚えているでしょうか?
 今日覚えた公式は、復習しなければ1か月後には「100%」忘れます。
何度も復習して土台を固めていくのは効率が悪いように見えますが、まったく復習せずゼロから新しく覚え直すほうがよっぽど非効率です。
たとえ少しずつでも、着実に身につけていきましょう。

実際に、定期テストの前に一夜漬けで勉強したときに英語が55点だった生徒は、スペーシング効果を利用して細かく時間を分けて勉強したときには80点を取ることができました。
勉強した総時間数はほぼ同じなのに、後者のほうが圧倒的にテストの点数がよかったのです。
同じ勉強時間で勉強効率が変わるなら、やらない手はありません。

実は、その生徒は、成績が向上しただけではなく、「勉強が楽しくなってきた」と言って、以前より意欲的に勉強するようになったのです。
これは、結果が出たことで勉強に対するストレスが軽減されたことの表れでしょう。
十分な復習時間がないときは、「こんな内容を学んだ」と軽く触れるくらいでも問題ありません。寝る前にざっと確認しただけのときは、翌日にしっかり振り返るといいでしょう。

とにかく時間を空けて「刻む」ことが大事です。
これができると、それまでの定期テストなどで一夜漬けだった人も、コツコツやる習慣がついていきます。
「自分ってコツコツやることもできたんだ」と自信にもつながり、勉強のモチベーションが上がるなど、いいことだらけです。

粂原圭太郎
オンライン個別指導塾「となりにコーチ」の代表講師
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2024年10月17日

秋は寒暖差でむくみやすい!?簡単にできる “秋のむくみ”解消法【ひるおび】

秋は寒暖差でむくみやすい!?簡単にできる “秋のむくみ”解消法【ひるおび】
10/16(水) TBS NEWS DIG Powered by JNN

■“秋のむくみ”原因は?

むくみ外来のある都内のクリニックには、足のむくみを訴える患者が多く訪れているといいます。

なぜ秋にむくみが起こりやすいのでしょうか?

東京血管外科クリニック 榊原直樹医師
「昼間は暑いので、夏と同じように水分を摂る。
夜は寒くなり、昼間に摂った水分が体に残っている段階で、寒さによって血流が悪くなる。すると、むくみやすくなります。」

“秋のむくみ”は寒暖差が原因で引き起こされます。

むくみの主な原因は、血流が悪くなり、皮下脂肪に水分がたまることです。

血流が悪くなると、水分量のバランスが崩れ「むくみ」となります。

秋の日中は温かいので夏のような薄手の格好で冷たいものを摂りすぎてしまう傾向にあり、さらに夜は冷え込むので、身体が冷えて血流が滞ってしまうのです。

恵俊彰:
昼間は暑いからついつい飲み食いしちゃうけど、夕方になるとちょっと涼しくなるから長袖を着たりして汗が出ないままになりがちですね。

古谷有美アナウンサー:
男性の皆さんはむくみを感じることはありますか?

弁護士 八代英輝:
むくまないように着圧ソックスを履いてます。結構ぎゅうぎゅうです。

恵俊彰:
何にもしてません。むくみっぱなしだと思う。

厚生労働省の調査によると、全国で足のむくみやだるさを感じている人は約382万人。

そのうち男性が約108万人、女性が約274万人で、女性が約7割を占めています。

足のむくみに密接にかかわる「ふくらはぎ」の筋肉の量が、女性の方が少ないので男性より水分がたまりやすいとされています。

‟秋のむくみ”解消法

むくみの解消法を、榊原直樹医師に聞きました。

▼体を冷やさない

・「冷水」ではなく「常温水」を飲む

・湯船につかる


恵俊彰:
温度が関係あるの?量じゃなくて?

コメンテーター 友利新医師:
胃の後ろには、大動脈という大きな血管があります。

冷たいお水を飲むと全身が冷えたり、温かい飲み物を飲むと全身が温かくなるのは、この大きい血管が温まったり、冷たくなったりして全身に行くためです。

なので冷たいものを飲んじゃうと、末梢といって手先とか足先が冷たくなっちゃうので血流が悪くなります。

▼就寝時は足を高くする

・バスタオルを巻いたものや使っていない枕などがあれば、足の下に入れて少し高くして寝る

コメンテーター 中村仁美:

妊娠してるときとかよくやりますよね。足上げて寝るみたいなことは。

▼かかと体操

・立って椅子の背などにつかまりながらつま先立ちの要領でかかとを上下に動かす

・3秒に1回のペースで1分間続ける

⇒ふくらはぎの筋肉を刺激して血流を促す

古谷有美アナウンサー:

たったこれだけですが、やってみると自分の体重は全てかかりますから、1分間続けると結構な運動量になります。

コメンテーター 中村仁美:

ちょっとやっただけですごく温かくなりますね。


(ひるおび 2024年10月15日放送より)
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2024年10月18日

年をとると朝、早すぎる時間に目が覚めてしまう3つの理由

年をとると朝、早すぎる時間に目が覚めてしまう3つの理由
10/16(水) Forbes JAPAN

夜の良質な睡眠は、私たちが健康のためにできる最も大事なことのひとつだ。
しかし、睡眠不足が生活の質や長寿に対する大きな脅威となっていることが、研究で明らかになっている。
睡眠不足は心臓疾患、認識機能障害、高齢者の認知症リスクの増加と関連しているという証拠が発見されたことで、睡眠は慢性疾患の苦痛を軽減する鍵になる可能性がある。

私たちは年をとるにつれて睡眠習慣に変化が生じることがある。
眠りに落ちるまで時間がかかるようになったり、夜中に目が覚めてなかなか眠れなくなったり、明け方の早すぎる時間に目覚めたりというようなことだ。
そこで本記事では、加齢が睡眠に及ぼす影響と睡眠の健康を改善する方法をご紹介しよう。

■1. 睡眠パターンの変化

全米高齢者問題協議会が発行した新しい概況報告書によると、私たちは加齢によって睡眠周期と概日リズム(体内時計によって刻まれる約24時間周期の精神的・身体的状態の規則的な変化)が変動することが予想されるという。
脳やホルモンの変化など、その要因はいくつかある。
私たちの身体は加齢にともない成長ホルモンやメラトニン(脳の松果体から分泌されるホルモン)の分泌が減少し、それが睡眠の分断につながることがある。

また、加齢は脳の睡眠・覚醒サイクルにも影響があり、睡眠に入る時間帯を狭めてしまう。
そのため、高齢者は眠りにつくのが遅くなり、朝はより早く目が覚めるようになることがある。
加齢によって概日リズムが変化するからだ。
高齢者の多くは、ノンレム睡眠のステージ3(最も睡眠が深い段階)とレム睡眠の時間が短くなるのを経験するため、布団に入ってから眠りに落ちるまでより長く時間がかかるようになったと感じるのだ。

睡眠パターンが変化しても、概日リズムを正しい状態に戻すように努力することはできる。
夜、7〜9時間の健康的な睡眠を取ることは、あらゆる年齢の成人にとって重要だ。
ゆえに適切で継続的な睡眠衛生(生活習慣や環境などの眠りに関する問題を解消し、健康的な睡眠がとれるように条件を整えること)を実践することが、睡眠の質と連続性を改善するための第一歩となる。
また、眠りに関する問題の根本原因を精査し、それらを解消するための解決策を定めることも必要になるだろう。

ポリファーマシー(多剤併用)も睡眠に悪影響を及ぼすおそれがある

■2. 生活習慣

生活は睡眠の質に著しい影響を及ぼす。
たとえばストレス、精神衛生に関する問題、運動、特定の食品、カフェインやアルコールの摂取といった生活習慣の要素が、良質な夜の睡眠に入るための準備に影響を与える可能性があることが、複数の研究で示されている。
また、加齢によって多くなり睡眠の質を低下させてしまう要素には次のようなものがある。

・慢性的・肉体的な痛み

・心配、不安、憂鬱

・睡眠時無呼吸症候群や夜間呼吸障害

・夜間頻尿(夜間にトイレへ行かなければならない回数が増える)

・日光を浴びる時間の減少

・運動量の減少

これらの要素の多くはコントロールできる。
夜、適切な食事を摂る、睡眠の計画を立てる、就寝前に水分の摂取を控えるといったことを心がけ、睡眠障害の可能性があるなら睡眠検査などの専門的な処置を受けてみるのもいいだろう。
さまざまな要因に一度に、あるいは一つずつ対処していくことも、よく眠るために役立つことがある。
例えば、就寝前に紅茶を飲むことはリラックスする効果があるが、紅茶には自然の利尿作用があるため、夜間頻尿の要因となることもある。
睡眠障害を防ぐためには、寝床に入る1〜2時間前に紅茶などの飲み物を摂取するようにしたほうがよいだろう。

■3. 薬の影響

調査によれば、高齢者の約半数がなかなか眠れなかったり、夜中に目が覚めてしまうことに悩んでいるという。
これには、上述のような生活習慣や生物学的な要因に加えて、薬やそれらの相互作用が影響していることもある。

例えば、全米高齢者問題協議会の報告によると利尿剤、プロザックやセレクサなどの抗うつ剤、サダフェッド(プソイドエフェドリン)のような鼻づまり薬などを服用すると、眠れなくなることがあるという。ゆえに、このような薬を特に夜間に服用すると、問題を引き起こす場合があるので、医療提供者とよく話し合い、指示に従うことが必要だ。

もう一つのさらに大きな問題にポリファーマシー(多剤併用)がある。
これは同時に5種類以上の薬を常時使用することであり、最近の調査によれば約46%の高齢者が、睡眠に悪影響を及ぼすおそれがあるポリファーマシーを経験していると推定される。

加齢に伴い薬を必要とする身体疾患が増えるため、高齢化が進めば複数の薬の服用は長期にわたる問題として残るだろう。
ゆえに、服用するすべての薬とそれらの相互作用について、薬の量を減らす可能性も含めて、担当の医療提供者と話し合うことが、睡眠の質を高めるためには必要だ。
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2024年10月19日

特ダネのために「無実の人」を殺人犯にする…警察、検察の「世紀の大失態」に加担したマスコミの無責任体質

特ダネのために「無実の人」を殺人犯にする…警察、検察の「世紀の大失態」に加担したマスコミの無責任体質
10/18(金)プレジデントオンライン

1966年に静岡県で起きたいわゆる「袴田事件」で袴田巌さんに無罪の再審判決が出されたことを受け、毎日新聞を含む新聞各社は謝罪記事を掲載した。
元静岡新聞記者でジャーナリストの小林一哉さんは「毎日新聞は当時から特ダネを連発し、冤罪を助長してきた。今後の事件報道で捜査機関からのリークに頼らない報道ができるのか疑問だ」という――。

■再審無罪判決の翌日に出された「おわび記事」

 9月26日の静岡地裁で袴田巌さんを無罪とする再審判決が言い渡された翌日の27日毎日新聞朝刊は、紙面1ページのほぼ半分を使って、「袴田さん本紙報道検証」という大きな記事と、坂口佳代編集局長による「人権侵害おわびします」という3段見出しの非常に長い署名記事を掲載した。

 その記事にジャーナリストの江川紹子さんが談話を寄せている。

 見出しは「冤罪事件から学ばず」で、「記者と警察は一体化しているかのようだった」「当時の記者はなぜ過去の三つの冤罪事件から学ばずに、袴田さんを犯人視する報道を続けたのか」などと批判している。

 1966年6月30日未明、静岡県清水市(現・静岡市清水区)のみそ製造会社専務一家4人が殺された事件で、毎日新聞は同年7月4日夕刊の社会面トップの「従業員『H』浮かぶ 血ぞめのシャツを発見」という特ダネ記事を皮切りに、連日、他社を圧倒する記事を掲載した。

■当時の記者だけに責任をなすりつける「検証」

 当時の新聞報道を比較すれば、毎日新聞は袴田さんを「犯人」とする一家4人殺しの事件報道を大きくリードしたことがはっきりとわかる。

 毎日新聞は「検証」で、当時の記者たちについて、「捜査当局と一体化したような書きぶり」「自白に重きを置きすぎた報道」「記者が実態をある程度把握していたことがうかがえるものの、捜査手法に疑問の目を向けたものではなかった」などと批判している。

 さらに、坂口編集局長は「1966年当時の紙面を振り返ると、袴田さんを『犯人』とする捜査当局の見立てを疑わず報道していた」として、「報道による人権侵害を二度と繰り返さない」などと「おわび」している。

 つまり、特ダネを連発した当時の記者たちの取材手法などを徹底的にこきおろしているのだ。
まるで1966年当時の記者たちの取材手法に問題があったかのような書きぶりだ。

 この「おわび」を正面から読み解くならば、毎日新聞と現在の警察回りの記者たちは今後、過去と同じような取材に基づく特ダネ記事を書くことをやめてしまうのだろうか。

 いい加減な「検証」と、ひとごとのような言い訳と取れる「おわび」は、単に当時の記者たちに過去の責任をなすりつけただけにしか見えない。

 いったい、何が問題だったのかを明らかにする。

■「H」が有力容疑者であることを伝えた毎日新聞

 「検証」では、〔「毎日新聞は(1966年)7月4日夕刊で有力な容疑者として袴田さんのイニシャルを使い『従業員“H”浮かぶ』とする記事を掲載」〕したことを問題にしている。内容には全く触れていない。

 特ダネとなった社会面トップ記事内容は、「捜査本部は4日、同社製造係勤務、H(30)を有力容疑者とみて証拠固めをしている」とある。

 事件からたった4日しかたっていない段階で、袴田さんが「有力容疑者」となったことを毎日新聞だけが伝えた。

 4日夕刊には、袴田さんの容疑が濃くなった理由について「@三十数人の作業員でHを除く他の従業員のアリバイが成立した。Hは夜一人でいたと言っている、AHの部屋のタンスから血のついたシャツが発見された、BHの右手に新しいひっかき傷や切り傷がある、C女性関係が多く、しばしば給料の前借りをしてお金に困っていた」などと細かく挙げていた。すべて警察取材を基にしているのだろう。

■毎日新聞と他紙の報道の違い

 翌日の5日朝刊でも社会面の大きな記事で、Hを9時間以上も取り調べたことを取り上げた。

 「Hは『火事のあった晩(6月29日)は事件発生までずっと寮の部屋にいた。
火事の知らせでかけつけたが、そのときけがをして血がついた。
消火作業でぬれネズミになったのでいったん部屋に戻り作業着に着替え、再び職場に行き、けがの血がついたあとを水洗いし、夜具戸ダナに入れておいた』と容疑について全面的に否定している」などと、警察での袴田さんの供述を詳しく紹介している。

 この記事で、袴田さんは当初から、はっきりと容疑を否認しているのがわかる。

 同じ4日夕刊の静岡新聞は社会面トップで、「凶器か? 小刀を発見 犯人面識者強まる えん恨、物取りかはっきりしない」などの見出し記事を掲載した。

 毎日新聞が袴田さんを「有力容疑者」とした翌日の静岡新聞5日朝刊でも「H」などのイニシャルはなく、「従業員から事情聞く」の見出しにとどまり、容疑者は特定できていなかった。

 記事内容も「知人出入り者など内部関係をよく知る従業員らから調べてゆく」「有力な情報はない」などと袴田さんにたどり着いていなかった。

 これだけでも、当時、事件当初から毎日新聞の記事が他社を圧倒していたことがよくわかる。

■当日の逮捕も「特ダネ」で出した

 袴田さんを逮捕する8月18日の毎日新聞は朝刊社会面トップで、「作業員『袴田』に逮捕状」「寝間着の血がキメ手」「放火の油もほぼ一致」とやはり特ダネ記事を掲載した。

 当日の静岡新聞は「捜査は大詰めへ 某従業員から事情聴取」と何ともあいまいな記事を掲載してしまった。

 記事は「容疑が消えない黒白をつける」「パジャマが発見された日時、場所、事件後の動向などは疑惑を打ち消す要素も大きい」などとあり、袴田さんの逮捕状など全く承知していないこともわかる。

 毎日新聞の「検証」は、翌日の8月19日朝刊について「袴田さんが容疑を否認していることを掲載する一方で『刑事たちの執念と苦しさに耐えたねばりが功を奏して(中略)逮捕にまでたどりついた』と表現した」ことを問題にした。

 同じ8月19日毎日新聞を見てみたが、そのような記事にたどりつけなかった。
当日の社会面には「袴田、否認のまま逮捕」「『私なら小刀は使わぬ』逮捕前の袴田と会見」という大きな見出しの記事が掲載されていた。

 前文で「袴田は工場のミソを盗んだことは一部認めたが強殺、放火は全面的に否認している」とある。

■逮捕前の袴田さんを単独取材していた

 本文記事は、これまでの警察情報ではなく、毎日新聞静岡支局の記者2人が逮捕の2週間前の8月4日夜、毎日新聞清水通信部で2時間余にわたり袴田さんを単独会見した際の一問一答が掲載されていた。

 以下が一問一答の全文である。
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――君は犯人と疑われているようだが……。

答 えー、そりゃ、自分のアリバイを証明できない点では不利な立場に立たされたと思っていますよ。
でも私が犯人だったらもっとアリバイをつくってからやりますよ。(声高に笑う)それに小刀を使いませんよ。バーンとアゴをなぐれば(元ボクサーらしく身ぶりですごみをきかせる)ちょっと起き上がれませんからね。

――警察は事件後、間もなく君を夜中までぶっ通しで9時間以上にわたって調べたね。内容は……。

答 いきなり部屋にはいったとたん「お前はどうしてここへきたかわかるだろうな」ときた。
「お前がやらなくてだれがやるんだ」ともいわれた。(やや興奮気味になる)パジャマにちょっと血がついていたくらいで色めきたって犯人扱いするんだからたまらないですよ。
「胸の血はどうしてついたんだ」と聞くから「そんなことわからない。消火作業に夢中だったのでどこでついたか知らないんだ」といってやった。

――事件当日のアリバイは。

答 午後5時半ころだったと思う。専務の家へ××君(記事は実名。同僚の従業員)と二人でメシを食いに行った。それから部屋に戻ってテレビを見てから寝た。

――パジャマの血はどうしてついたのかわからないの。

答 消火作業に夢中だった。土蔵の物干し台にあがって窓をこわしていたとき左手に痛みを感じ、けがをしたことに気がついた。たぶん屋根の上でころんだのでそのときのけがだと思う。
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――こんどの事件を君はどう推理するのか。

答 女をめぐって専務に対する恨みでしょうね。それに一人の犯行ではないよ。三人以上だと思いますね。

――侵入口は……。

答 そりゃ、シャッターを上げて正面から堂々とはいったと思いますよ。

――どこから逃げたか。

答 やはり裏口を飛び越えたでしょうね。

――カッパや油について。

答 それですよね。問題は……。(やや考えてから)でも犯人がわざわざカッパを着て行きますかね。
油も会社にはいろいろある。
モーターボート(専務用のもの)もあるからね。
事件が片付いたら私の潔白を証明してもらうために警察などに対して何らかの処置を取りたいと考えている。

――告訴するということか。

答 そうだ。
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■「検証」で触れられなかった単独会見

 毎日新聞の「検証」で取り上げた「刑事たちの執念と苦しさ……」などとの表現は、静岡県版の記事だったのだろう。
筆者が調べた都内版の毎日新聞縮刷版には掲載されていなかった。

 記事を読む限り、8月18日の逮捕までは袴田さんに「自白」は強要されていなかったようだ。

 まず、当時の記者たちは7月5日朝刊で、「四日は九時間にわたってHを調べた」とある。
それでも警察に対して、全面的に否定した袴田さんの供述をそのまま掲載している。

 その取材を基に、8月4日に袴田さんへの単独会見を2時間余も行った。

 そこでも、「警察は事件後、間もなく君を夜中までぶっ通しで九時間以上にわたって調べた」と常軌を逸した取り調べを行っていたことを明らかにしている。

 単独会見の記事を読めばわかるが、袴田さんは自身の「無実」を一貫して主張、「私なら小刀は使わない」など袴田さんなりの事件の「見立て」を説明している。

 2時間余にも及ぶ単独会見のわずかな部分だけが記事になったのだろう。

 当然、テープレコーダーをで録っていたはずだが、今回の「検証」では単独会見どころか、その内容は一切、明らかにされていない。

■「警察からのリーク」は今後一切記事にしないのか

 本当に当時の記者たちに責任があるのだろうか。

 もし疑問があるならば、毎日新聞本社編集局が、静岡支局記者たちの原稿を読み、単独会見のメモなどを取り寄せて、袴田さんを「犯人」とした捜査手法の間違いに目を向けて、徹底した調査取材を指示すべきだろう。

 上からの指示で必死に取材に飛び回っていた記者たちの責任というよりも、過去の冤罪事件をよく知る取材経験豊富な本社編集局幹部らの対応にこそ問題があった。

 袴田さんの事件で、当初、毎日新聞は特ダネを連発した。
特ダネとは、警察発表前に刑事らの自宅などで直接取材して、他社の知らない新たな情報を提供してもらい、独自の報道に結びつけることである。

 現在でもこの取材手法は同じである。
検察、警察は自分たちの都合のよいように事件を進めるためにリークを行い、各報道機関に特ダネとして記事を書いてもらっている。

 もし、「捜査当局と一体化したような書きぶり」「自白に重きを置きすぎた報道」「捜査手法に疑問の目を向けたものではなかった」を問題にするならば、今後、毎日新聞は検察、警察からのリークは記事にしないことになる。

 袴田事件をもって、今後は公式発表をそのまま載せるか、独自取材しかやらないということにはなるまい。

■検察、警察への追及があまりにも甘い

 袴田さんの無罪判決をめぐり、毎日新聞はもう1つ大きな問題を残してしまった。

 静岡地裁が捜査当局の「捏造」を認定して無罪判決を出した前日の25日、毎日新聞静岡県版は、元最高検幹部の伊藤鉄男弁護士のインタビュー記事を掲載した。

 そこで、伊藤弁護士は「誰一人として捏造をしたという者も、それに協力した者も、それを見たという者も存在しない。これだけの重大事件であまりにも不合理な認定がされることは、公正誠実を求められている検察としては見過ごせない」と当局の「捏造」を頭から否定する発言を掲載している。

 これも何ら裏付けのない当局側の情報・発言をただ垂れ流しただけではないか。
坂口編集局長は翌26日の「おわび」で、「当局による情報隠しが行われていないかを監視し、証拠の開示など適正な刑事手続きが行われているかをチェックすることがますます重要」などと述べている。
まるでひとごとである。寝言を言っているようにしか思えない。

 坂口編集局長の「おわび」が表面的なきれいごとでないならば、裁判官の心証ではなく、検察、警察が「捏造」したとする証拠などの情報隠しをちゃんと明らかにしなければならない。
それでなければ、9月25日の伊藤弁護士のインタビュー記事を読んだ読者らは納得できないだろう。

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小林 一哉(こばやし・かずや)
ジャーナリスト
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生活保護、申請増加も受給者減…自治体が弾き返す「水際作戦」の実態は?

生活保護、申請増加も受給者減…自治体が弾き返す「水際作戦」の実態は?専門家「若いから働けるだろうと追い返す」「1人で150世帯受け持つこともあり人手が足りない」
10/18(金) ABEMA TIMES

生活保護
 収入が最低生活費以下となっている人に、困窮の程度に応じて、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立を援助する「生活保護制度」。
2023年度は申請件数が4年連続で増加し、25万1364件となった。
その一方で、受給者数は年々減少傾向で、202万577人に。
「保護率増減マップ」によれば、12の市区では、保護率が過去10年で40%以上も減少しているという。

 このうち群馬県・桐生市は41.1%減少したが昨年、違法行為や人権侵害が長年行われてきたことが発覚。
生活困窮者に対し、生活保護の利用を認めず追い返す「水際作戦」の実態とは。『ABEMA Prime』では専門家にその原因を聞いた。

■窓口で追い返す「水際作戦」

水際作戦とは
 生活保護制度は「働くことができない。働いても収入が不十分」「預貯金や資産(居住中の住居除く)がない」「他制度(年金など)の給付が受けられない」「親族等から援助を受けられない」などの理由で、最低限の生活が送れない人を対象にしている。
東京23区の単身世帯であれば、月額約12〜13万円が支給される。

 申請件数は増えているものの、保護率が減っていることについて、SNSで「生活保護おじさん」として活動する、つくろい東京ファンド新規事業部長の佐々木大志郎氏は「役所側が抑制することもかなり増えていると感じる。一方で、緊急支援の対象者に若い人が増えている。20代から40代の働き盛りの人が、いわゆるスポットワーク、隙間バイトアプリで働きながら、最低生活ぎりぎりのところで稼いでいる。ぎりぎりで生活できているということで、生活保護は受けられない。生活は苦しいが生活保護は受けられないことも保護率低下につながっているのでは」という。

 また世田谷区で保護担当職員を務めた経験がある田川英信氏は、「いくつかの自治体でひどい運用が問題になったが、貧困が広がってる中で保護率が40%以上減少しているのはやはり異様で、ありえない。水際作戦をしている可能性は非常に高い」と、不当に申請者を追い返してしまっている現状があると指摘した。

 実際に水際作戦は、どう行われるのか。佐々木氏によれば、申請者に対して親・兄弟などの親族に伝えるということ。申請の際、親族に連絡を取る必要はないが、担当者がそう伝えることで、申請者は「ずっと連絡していないので」と断念するという。また、住居がない場合は仮住まいできるが、その環境が劣悪であることを伝えることで「行きたくない」と諦めるケースは多い。

 また田川氏は「法の運用を正しくしていない。不動産も一定程度であれば持っていていいのに、処分しなさいと言って追い返す。
また今、経済的に困っているのに『若いのだからまだ働けるだろう』と追い返している事例は結構ある。
生活保護は資産が一定以下なら誰でも利用できるが、仕事の探し方が悪いなどと追い返す実態もある。
もともと生活保護はなるべく利用しない方がいいという価値観を持っている職員もいる」と述べた。

■自治体によっては全額、国が負担のケースも

生活保護制度
 生活保護費は4分の3が国、残りの4分の1を自治体が負担するとされている。
2ちゃんねる創設者のひろゆき氏は「生活保護の人に12万円支払うとして、自治体の負担は3万円。保護された人が自治体で12万円使えば、自治体としては国から金を引っ張れて、町は豊かになるのではないか」と指摘したが、これに田川氏は地域によって、さらに国が負担するケースもあるという。
「地方交付税交付金というものがある。お金持ちの自治体は4分の1負担だが、そうでないところは、まるまる国からのお金で地域経済が回る形になっている」。つまり、生活保護費のほぼ全額を国が出し、自治体の負担がないという。しかもその数は全自治体の9割以上にものぼる。

 それではなぜ、水際作戦のようなことが起きるのか。
これには様々なパターンがある。たとえば窓口に立つ担当者の負担の大きさだ。
佐々木氏は「お金を出す以外にも、いろいろなことがある。就労できない人であれば一緒にハローワークに行くし、精神疾患の方であれば病院を手配するといった生活の相談がどんどん来て、非常に大変なのはわかる」とした。

 また田川氏も「国は標準として80世帯を1人のケースワーカーが受け持つことにしているが、残念ながら『80』を守っていない自治体は多く、ひどいところであれば『140』や『150』。寄り添った支援をする余裕がなく、心理的負担も多いからなるべく申請を避けたいという心理が働いている。
新規申請の事務処理も集中してやっても1世帯で2、3日かかる。訪問調査もして、記録も書いてと、結構な時間がかかる」と、不正受給を防ぐために必要な手続きとはいえ、人手不足なども水際作戦に拍車をかけているという。このほか、多忙なため生活保護について十分な研修・教育の機会が与えられず現場に立つという状況もあり、今の状況を招いていると指摘した。

■世間のイメージで自ら「申請しない」人も

自治体で何が…
 申請した人が追い返されることもあれば、自ら申請を諦めてしまうこともある。これもまた問題だ。
佐々木氏も「基本的に今は要件を満たせば問答無用で(保護が)取れるのに『生活保護だけは絶対に嫌です。ただ今日いっぱい何とかしてください』という声はすごく聞く」と実例をあげると、田川氏も「基本的に生活保護を利用しないで暮らすのがいいという価値観を持っている国民は多い。
いくら困っていても生活保護を利用したくないと、生活保護を忌避する気持ちを持っている人は非常に多いのがネック。
保護を受けた人がネット上でバッシングを受けているのを見て、自分もレッテルを貼られることを避けている」とした。

 現役保育士で育児アドバイザーのてぃ先生も、生活保護に対する偏見について言及し、働く人々の給与の低さとの関連を突いた。
「日本の給与は世界基準と比べてもどんどん下がっているというか維持してしまっている30年を考えた時、生活保護の申請をすべき人が申請しないのは、いわゆるスティグマ的な偏見や差別、生活保護に対する誤解がある」とし、さらに「保育士も地方に行くほど給料は低くて、沖縄などであれば手取りで本当に12〜13万円という人たちもいる。子どもたちの命を背負いながら働いているのに、生活保護で12〜13万円もらっている人がいれば、当然その人たちに対する見方はきつくなり、悪循環になっている。
海外の場合は、そういった人たちに対する目もある程度和らいでいるから、生活保護を受けるべき人が受けられる割合が高くなっているのでは」と、ヨーロッパでは80%を超えるものの、日本では約20%に留まる捕捉率の差についても問題提起していた。

(『ABEMA Prime』より)
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2024年10月20日

次世代コロナワクチン「レプリコン」 打ったら“自己増殖”で「周囲に伝播」? 定期接種開始で広がる不安 二木教授が解説

次世代コロナワクチン「レプリコン」 打ったら“自己増殖”で「周囲に伝播」? 定期接種開始で広がる不安 二木教授が解説
10/19(土) FNNプライムオンライン

コロナワクチンの定期接種が始まった。

これまでのファイザー、モデルナのほかに、新しく3種類のワクチンが加わり、接種者の選択肢が広がったように思える。

しかし今、その中の1つ「次世代mRNAワクチン(レプリコン)」をめぐって懸念の声があがっている。

SNSなどを中心に、「周囲にワクチン成分を伝播させる」などという情報が流れ、レプリコンワクチンを接種した人の入店や受診を拒否する動きが起きているのだ。

ある医院のHPには、「接種者の呼気から有害な毒素が大量に排出され、同じ空気を共有する人の健康を損なう可能性がある」とまで書いてある。

一体、どういうことなのか?感染症学が専門の昭和大学・二木芳人名誉教授に詳しく話を聞いた。

■「レプリコンワクチン」はこれまでのワクチンと何が違う?

昭和大学 二木芳人名誉教授:
「レプリコンワクチン」は、「次世代mRNAワクチン」と呼ばれるワクチンです。


mRNAにはタンパク質の遺伝情報が記録されており、接種すると人の体内でコロナウイルスのスパイクタンパクを作らせます。

すると、ヒトの体は「異物が入ってきたぞ」と、このスパイクタンパクに対する抗体(免疫)を作ります。
スパイクタンパクとは、もともとはウィルスの表面にあるとげのようなもので、ウィルスが感染し、人の細胞に侵入する時に必要なものです。

つまり、体内に抗体(免疫)があると、ウィルスがやってきた時に、ウィルス表面のスパイクタンパクを無力化し、感染を防いでくれるということです。

ちなみに、mRNAによって作られるスパイクタンパクとは、あくまでパーツであって、ウィルスそのものが作られるワケではありません。

従来のファイザーやモデルナ、新しく承認された第一三共も、同じ「mRNA」を利用したワクチンです。

mRNAを接種してスパイクタンパクを作らせ、それに対する抗体(免疫)が作られ、ウィルスの感染を防御します。

昭和大学 二木芳人名誉教授:では「レプリコンワクチン」は、何が違うのか。

従来のワクチンは、接種後、1回だけスパイクタンパクを作ります。

これに対して、レプリコンワクチンはmRNAが人の細胞内で増殖するのです。

今、問題だと言われているのが、この「自己増殖」で、どんどん作るということは、必要以上にmRNAが体内で増え、結果としてスパイクタンパクが過剰に作られて、さまざまな不都合が生じるのではないかと懸念されているのです。

■ピークは8日目 永久に自増殖するわけではない

昭和大学 二木芳人名誉教授:
自己増殖は永久に続くわけではありません。

ある程度のところで止まるということは、実験的には確認されています。

マウスにワクチンを接種し、その筋肉内のmRNAの量を調べていますが、接種した直後にいったん減ります。
その後じわじわ増えていき、8日目がピークで、あとは下がり、2週間程で検出されなくなります。
無制限に増えるわけではありません。

ただし、mRNAの量は、従来のワクチンより多くなり、効果の持続期間も長くなると考えられます。
その結果、従来のワクチンは3カ月ほどで予防効果が下がりますが、レプリコンはそれよりは長く効果が持続するのではと言われています。

身体の中でmRNAやスパイクタンパクが大量に増え、抗体(免疫)が過剰に作られることを心配される向きはありますが、仮に抗体(免疫)がたくさん出来ても、特に問題は無いレベルと考えられています。

■周囲の人への感染は考えにくい

昭和大学 二木芳人名誉教授:
従来のワクチンも、レプリコンワクチンも、体内のmRNAやスパイクタンパクは、ごく微量ですが、呼気や唾液などを通じて体の外に排出される事も知られています。

今、懸念されているのは、「レプリコンワクチン接種者の体から排出されたmRNAやスパイクタンパクが、周囲の人にシェディング(感染)を生じ、その人たちの健康を損なうのでないか」ということです。

繰り返しになりますが、レプリコンワクチンは、基本的には「mRNA」も「スパイクタンパク」も、これまでのものと同じです。
その上で、「増殖」というのが新しい仕組み。

量とか持続時間が違いますから、唾液などに出てくる状況なども、従来のものとは違うかもしれません。

ですが、それが他人に感染するとか、周りの人に害を及ぼすという可能性は極めて低いと思われ、科学的根拠もありません。

また、ワクチン接種によって作られるのは、スパイクタンパクという一部のパーツで、ウィルスそのものではありません。

ですから、スパイクタンパクが増えても、ウィルスが増えるわけではないので、感染が広まる危険性は考えにくいと思います。

■次世代ワクチンの真価には時間をかけた評価が必要

昭和大学 二木芳人名誉教授:
定期接種が始まり、5種類のワクチンの中から自分で選んで接種できるようになりました。

その中で、レプリコンワクチンは新しい仕組みのワクチンですから、不安に感じられる方がいらっしゃることも理解できますし、無理からぬことです。

mRNAワクチンそのものに関しても、まだ多少の疑問が論じられていますから、この新しい仕組みのワクチンに関しては、やはり、その中長期の安全性や、有効性については、もう少し時間をかけて評価しないといけない部分も確かにあるとは思います。

今年も冬に向けて、コロナの再流行が予想されています。
重症化リスクの高い高齢者や持病のある方は、それぞれのワクチンについて、良い点、注意すべき点をしっかりと確認し、納得された上で、ワクチン接種を検討していただければと思います。

(昭和大学 二木芳人名誉教授)
(関西テレビ 2024年10月19日)
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2024年10月21日

運動会で足の遅さを「見えない化」する配慮は子供のためにならない…「競争の場が減りすぎた」日本の大問題

運動会で足の遅さを「見えない化」する配慮は子供のためにならない…「競争の場が減りすぎた」日本の大問題
2024年10月21日 PRESIDENT Online

近年、学校で多く取り入れられているタイム順(同じくらいのタイムの子たちで走る)の徒競走は子どものためになっているのか。
スクールカウンセラーの藪下遊さんは「足の速い子どもは『自分は足が速い』という自己規定を持ちにくくなり、足の遅い子どもが『自分は走るのが苦手』という現実に触れる体験が薄まる。

子どもたちが生きていくうえで、『自分はどんな人間なのか』を認識できるように現実を提示することは大切であり、比較や競争を取り除くことがよいとは言えない」という――。

■運動会で見られる「配慮」

学校で働いていて、徒競走で「みんなで並んでゴールする」というのは流石に見たことはありませんが、教員がけっこう気を遣っていろいろ工夫しているのは目にしています。
以下の事例は、最近の学校でよく見られる「配慮」になります。

【事例】

小学校2年生の女子児童。体育で50m走をしたがタイムの公表はされないため、自分も含め同級生の足の速さはよくわかっていない。
女子児童のタイムはかなり上位だったが、運動会の徒競走では「足が速いグループ」で走ることになり6人中5位になった。
足の速い子と遅い子を一緒に走らせると、大きな差がついてしまうので、事例のように足の速さが同じくらいの子ども同士で走らせる……というのは最近の運動会でよく見られる「配慮」です。
こうした「配慮」をしておかないと、さまざまな意見が学校に寄せられるという話も耳にします。

■「配慮」によって失われる体験

ただ、この「配慮」によって、失われる体験もあります。
例えば、体育の50m走でタイムが公表されないのは、互いの差を明示しないという「配慮」であったと思われますが、「自分は足が速い(遅い)」というのは自己イメージを構成する要素の一つでもあります。
大袈裟なように感じるかもしれませんが、「○○ができる」「△△が苦手」といった情報は、子どもたちが「自分はどんな人間なのか」を創り上げていくのに資するものですから、子どもたちが認識できるように提示することが大切です。

また、運動会の徒競走で「足が速いグループ」と「足が遅いグループ」に分けることで、確かに誰の目から見ても明らかなほどの「差」が示されることは無くなります。
一方で、足の速い子どもからすると「自分は足が速いんだ」という自己規定を持ちにくくなり(事実、この事例では足が速い自覚が薄いうえに低い順位になっている)、足の遅い子どもが「自分は走るのが苦手なんだ」という現実に触れる体験が薄まることになります。

もしかすると、誰の目からも明らかな「差」を見せること、不快な感情を引き起こす「現実」に触れることが「可哀想だ」という意見を持つ人もいるかもしれません。
しかし、それは子どもを弱い存在と考えすぎです。
子どもたちは確かな支えがあれば、自分の現実に向き合い、それを受け容れていく力を備えているのです。

■成長に寄与する比較や競争

子どもたちは、家族のなかでは「自分が自分である」というだけで認められます。
ところが、思春期の集団になると何かしらの特徴を通して、集団内の立ち位置を築いていきます。
例えば、勉強ができる、足が速い、歌が上手、絵がうまいなど、そういう特徴が子どもの立ち位置として機能します。

ここで生じるのが比較や競争であり、精神科医の成田善弘先生は、思春期の子どもたちに周囲の大人がすべきこととして「比較や競争の場をなるべく増やすこと」を挙げています。
比較や競争の場が少なすぎる場合(受験勉強だけ厳しい、運動しか比較する場がない等)、そこでの比較・競争に負けてしまうと、非常に傷つきが深くなってしまいます。

だからこそ、比較や競争の場を無数に提示すること、例えば、単に「走る」という一つとっても「50m/80m/100m/300m/1.5km/3km」などで子どもの特徴を見ていくことが大切になります。
短距離が苦手でも、長距離なら輝ける子もいます。
また、教科外の活動によって、通常の学校現場では見られない子どもの特徴が明らかになることもあります(やけにメモを取るのが上手な子ども、普段はおとなしいが音読に情緒を乗せるのが上手な子ども、さりげなく他の子をサポートするのが上手な子どもなど)。

こうした無数の場面から、大人たちが子どもの特徴を掴み、フィードバックすることで、子どもたちは「あれはダメだったけど、こっちはできる」という認識を持つことができます。
ダメなことだけが提示されると傷つきが深くなりますが、無数の比較・競争の場があることで、うまくできない傷つきを支えるような体験(自分がうまくできる体験)も積むことができるのです。

■大人が用意すべきは「無風地帯」でなく「安全地帯」

もちろん、比較や競争を通して直面する「現実」は、子どもたちにとって厳しいものもあるでしょう。
だからこそ、大人の支えが求められます。
「順位が低い子ども」「周囲よりも劣ったところのある子ども」が表に出たとしても、基本的態度を変えず、それまでと同じような日常生活を通して「どんなあなたでも大切だ」というメッセージを送り続けることが大切です。
本当の意味で子どもの支えになるのは、大切な人と「ネガティブな自分」を共有し、それでも自分の存在を認められるという体験の積み重ねです。
すなわち、大人が子どもに用意すべきなのは、比較や競争の存在しない「無風地帯」ではなく、比較や競争がどんな結果になろうとも自分は受け容れてもらえるという「安全地帯」なのです。

■「人と比べなくてもいい」というマインド

あらゆる特徴をもった自分を「大切な存在」として受け容れられることで、子ども自身が「ネガティブな自分」を受け容れやすくなります。
「自己受容」という言葉がありますが、この「自己」には、得意なこと、うまくできること、上手であることだけではなく、人よりもうまくできないこと、苦手なこと、下手なことがあるという側面も含まれています。

そういう「ネガティブなところのある自分」も含めて受容することを指して「自己受容」と呼ぶのです。
本当に「自信のある人」というのは、「ポジティブな自分」を主張する人のことではなく、こうした「ネガティブな自分」も受け容れている人のことを指します。
そして、「ネガティブな自分」も含めた自己受容ができる人に生じるマインドが、「人と比べる必要なんかない」「私は私なんだから」というものです。
このマインドに到達するのは、多くの人が20代後半〜30代にかけてだろうと思いますが、子どもたちがこれに近づけるような土台・環境を整えていくことが大切になります。

■子どもの「比べてしまう」を否定しない

余談ですが、こうした「人と比べる必要なんかない」というマインドに至った親切な大人が陥りやすい落とし穴があります。
上記のように、多くの比較や競争を体験し、明らかになった「できる自分」も「できない自分」も大切な他者に共有・受容され、自分自身でも受け容れることができて、ようやく到達できるのが「人と比べる必要なんかない」というマインドです。
このような道程を経るからこそ獲得できるマインドなのです。
しかし、このマインドに至った親切な大人たちは、さまざまな「配慮」をしてしまいます。
例えば、人と比べる必要がないから「比較や競争の場自体を取り除く」という思考に陥ったり、子どもに対して「他者と自分を比較すること」自体を否定してしまうのです。

中学生くらいの子どもたちには、さまざまな発達の変化が訪れます。
この変化の一つに、自分を「他者の視点」で捉えられるようになることが挙げられ、客観的評価が紛れもない「現実」として響くようになってきます。
このような子どもたちに対して「人と比べなくていいよ」というのは、一見、優しい言葉のように見えますが、子どもたちは意識・無意識を問わず「比べてしまう」かもしれないのです。
「比べてしまう」子どもに対して、「比べなくていいよ」という言葉は、時として「比較によって生じた苦しさを共有できない」という関係を生むリスクさえあります。
繰り返しになりますが、大切なのは「比較や競争がどんな結果になろうとも自分は受け容れてもらえる」という実感です。

■現実を示すことが困難になった学校

ただ、実際の現場ではなかなか子どもに「比較や競争を通じた現実」を示すことが困難になりつつあります。

まず、学校自体がギリギリの人員・時間枠のなかでカリキュラムをこなすのに精一杯というのが正直なところで、先述の「比較や競争の場を無数に作る」ことが可能なほどの余裕がありません。
子ども一人ひとりの特徴を掴もうにも、それを掴むための機会を持つこと自体が物理的に難しくなりつつあるのです。
また、少子化の影響もあり、受験では定員割れが生じやすくなっており、子どもたちが公的に「比較・競争」の場に身を投じることが減りました。

冒頭で述べた事例のように、学校が子どもに対して「現実」を示すことが減りました。
例えば、都道府県によっては中学校の定期試験の点数は示すけど、順位については「本人が聞きに来ないと伝えない」という対応を取っていることもあります。
通知表についても、親世代、祖父母世代のそれと比較すると、子どもの気がかりや課題が明示的に書かれることはなくなりました。

かつては学校が子どもに「現実を示す」という役割を担う面が大きく、多くの親は現実によって揺さぶられた子どもを「支える」ことが大切でした。
ですが、社会状況の変化が、上記のような学校の変化にまで及んでいます。
こうした状況だからこそ、子どもと接する大人はいろいろと工夫する必要が出てきました。
カウンセリングの中で私が、親世代に伝えることの多い助言を挙げておきましょう。

■ネガティブな感情にも共感する

まず、子どもとたくさん関わることが大切です。
その際、子どもの「嫌だったこと」に耳を傾けることが、以前にも増して重要になってきています。
子どもたちは「楽しかったこと」「できたこと」は積極的に話してくれますが、否定的な出来事やそれに基づく感情は「聞かないと答えない」ということも多いものです。

もちろん、大人が不安に駆られて「嫌なことはないの?」と聞くのではなく、「楽しかったこと」「できたこと」と同じレベルで「嫌だったこと」を聞くことが大切です。
そして、その「ネガティブな感情」に共感的に耳を傾けるようにしましょう。

「共感」とは解決を試みようとするのではなく、そのときの感情に対して「それはそう思うよねぇ」「嫌だったね」などのように気持ちを理解しようと努めることを指します。
これによって、子どもたちの内側に「苦しさを理解してくれた人のイメージ」が残り、これが次の苦しい体験を支える力になってくれます。
つまり、「共感」は子どもが本当の意味で自立するために必要な大人の態度なのです。
誰かに支えられながら、誰かに支えられたイメージを抱えながら生きていくことが「自立」なんですね。

■うまくできないところがあっても生きていける

また、子どもの「ネガティブなところ」に触れられる関係を大切にしましょう。
例えば、小学校低学年では宿題のチェックを求められます。
これを、学力を身につけさせるためと考えるのではなく、子どもがどこを間違えるとか、苦手な科目は何かといった「子どものうまくできないところ」も話題にする良い機会と捉えておきましょう。
もちろん、子どもの苦手なところについて叱る必要は全くありません。
むしろ、親自身も「お母さん(お父さん)も、これが苦手だったなぁ」のように、親のできないこと、失敗したことを積極的に伝えて、「うまくできないところがあっても生きていける」という姿を見せてあげることが大切です。

そうすることで、子どもが自らの失敗やうまくできないことを話しやすい関係が生じるようになります。
これは親だけでなく、学校の先生方にも実践してほしい工夫の一つです。
大人が子どもに向けて語るのは「武勇伝」ではなく、「失敗談」である方が好ましいのです。

■子どもたちが現実に向き合えるような工夫を

そして、家庭では「家族みんなの事情を考慮した枠組み」を大切にしましょう。
「子どもは親の言うことを聞いとけばいいんだ」ではなく、「全部子どもの言う通りにしてあげる」でもなく、みんなの事情を考慮した枠組みに協力するという考え方を伝えるのです。
例えば、家族で外食に行くときに、いつも子どもの行きたいお店にばかり行くのではなく、父親や母親の希望するお店に行くこともあって良いのです(もちろん、親の行きたいところにだけ行くのは違う)。

この「現実」に対して子どもは不満を漏らすでしょうが、「家族なんだから、お互いの希望を叶え合おう」と伝えていくことが大切です。
そして、子どもの思い通りではないお店に行き、その中でも「食べたい物」を選択することは、自分の思いからズレた「現実」にあっても生きていく練習になります。
もちろん、家族みんなの事情を考慮した枠組み(ここでは、他の家族成員が希望したお店に行くこと)に協力してくれたことに対して、子どもに「ありがとう」と感謝を伝えることを忘れてはいけません。
この感謝が、家族成員間で向き合えるものになると良いでしょう。

上記のような関わりによって、子どもに対して「現実」を示しながら「支える」という状況が生じやすくなります。
こうした日常的・没個性的(=誰でも実践しやすい)・常識的な関わりを粘り強く続けることが、子どもたちが自身の現実に向き合い、成長・成熟を促すことになるのです。
社会の変化が著しい時代になり、子どもと関わる大人世代には粘り強さと工夫が求められるようになりました。もちろん、そんな大人同士で支え合うコミュニケーションが増えることも大切ですから、多くの人と協力・連携しながら子どもと関わっていくようにしましょう。

※参考文献・引用文献
成田善弘(2024)『成田善弘 心理療法を語る 「まっすぐに」患者と向き合う』金剛出版

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藪下 遊(やぶした・ゆう)
スクールカウンセラー
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2024年10月22日

健康診断は日本だけのフシギな慣習! 健診で予防できないどころか命が縮まることも

健康診断は日本だけのフシギな慣習! 
健診で予防できないどころか命が縮まることも
0/21(月) 現代ビジネス
和田 秀樹(精神科医)

職場健診、メタボ健診、老人健診…、健康でも検査を受け続けるのは日本人だけ。
病名がつき、薬が出され、それがヨボヨボ道の入り口となるとしたら…。
欧米の大規模な臨床試験で健診には予防効果がないどころか医療の厳しい管理でかえって命を縮める可能性もあるわかった。

それにもかかわらず基準値はなぜ厳しくなるのか。
残りの人生を楽しんで生きる高齢者が一人でも多くなってほしい、という目的で書かれたのが『医者にヨボヨボにされない47の心得 医療に賢くかかり、死ぬまで元気に生きる方法』。
今回は本書から健診のレールに乗せられない新常識をお伝えします。

長いあいだ、職場健診を受けてきた人は、定年退職後も引き続き、特定健診(メタボ健診)を受ける人が多いようです。
自治体から受診のお知らせがくるので、「年に一度だから、受けておくか」と軽い気持ちで受診したりする人も多いでしょう。

でも、この行動こそ、飛んで火にいる夏の虫。
60歳をすぎても健診を受け続けていると、かえって医者にヨボヨボにされてしまうかもしれないのです。

その理由を述べる前に、健診について少し解説しておきましょう。

健診は、日本だけのフシギな慣習

健診は、日本人にとってなじみ深いものですが、実は世界ではほとんど行われていません。
ひとつの診療科のみの狭い領域で問診や検査を受けられる国はありますが、体調が悪いわけではない人に対して、法律に基づいて半強制的に健診を実施している国は、日本以外にありません。
「健診を受けるのが当たり前」というのは、世界ではめずらしいことなのです。

日本の健診の始まりは、1911年に制定された工場法で、当時問題となっていた結核や赤痢などの感染症の蔓延を防ぐことが主な目的だったとされています。
54年には世界で初めて、組織的な人間ドックがスタートしました。
ドックとは船のドックヤードにたとえてつけられた通称です。
72年には労働安全衛生法が制定され、労働者は年一回、健診を受けるよう、事業者に義務づけられました。

2008年からは、40~74歳のすべての公的保険加入者を対象に、腹囲や体重、血圧、血糖値、脂質を測定して、生活習慣病のリスクの高い人を早期に見つけるメタボ健診が始まっています。
さらに75歳以上を対象にした老人健診(後期高齢者医療制度)も、任意ですが受けることができます。
つまり、日本では、その気になれば死ぬまで健診を受けることができるということです。

治療したら命を縮めた「フィンランド症候群」

さて、ここからが本題です。
健診というのは、基準値から外れた「異常値」の人を選び出して、その人たちを医療につなげていくしくみです。
それにより、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満などを防いだり、改善したりすることで、脳卒中や心筋梗塞などにならないようにしようというのが建て前です。

だから、異常値と判定された人の多くは、医者から薬を飲むように言われ、食事や運動などの生活指導を受けることになるのですが、それが本当に病気の予防になるかどうか――。
実は、よくわかっていません。

メタボ健診で生活習慣病のリスクが高いと判断され、特定保健指導の対象となった人を調べた研究があります。
保健指導の積極的支援を終了した人は1年間で、男性で腹囲が2.2cm、体重が1.kg、女性で腹囲が3.1cm、体重が2.2kg減少するなど、受ける前に比べて数値が改善しました。
血圧や血糖値、脂質も改善していました。

しかし、いちばん重要なのは数値が改善したかではなく、脳卒中や心臓病の予防効果があったかどうかですよね。
その肝心なところは、調べられていないのです。

それどころか、どこも具合が悪くないのに、健診によって問題を探し、医者があれこれと厳しく介入することで、かえって命を縮めてしまうという結果すら出ています。
それは、1991年に発表されたフィンランドの比較試験で明らかになりました。

試験では、40~45歳の男性1200人を選んで600人ずつの2グループに分けました。
ひとつのグループは「医療介入群」で、医者が定期的に面接して「やせなさい」「禁煙しなさい」などと生活指導をし、検査値が下がらなければ降圧剤などの薬を処方しました。
もうひとつのグループは「放置群」で、生活指導も検査も行いませんでした。

常識的に考えると、健康的な生活を強いられた「医療介入群」のほうが長生きしそうです。
ところが、15年間観察してみると、死亡者数が「放置群」で46人に対して、「医療介入群」では67人となり、医療が介入したほうが死亡者数が多いという結果になったのです(図)

健診とそれに引き続く医者たちの介入が、寿命を縮めてしまっている。
この試験がもたらした結果は「フィンランド症候群」と呼ばれ、行きすぎた健診を受けても受けなくても死亡率に差がない.
その後も、欧米では健診の効果を検証する臨床試験がいくつも行われています。
欧米で健診の効果を調べた14の臨床試験の計18万人のデータを解析した論文が2012年に発表されていますが、健診を受けた人と受けなかった人では、全体の死亡率、心臓病、脳卒中、がんによる死亡率に差は見られませんでした。

30~60歳の6万人を10年間追跡調査したデンマークの調査でも同じような結果となりました。
健診を受けたグループは、健診に加えて、5年間に4回の健康相談を行い、リスクが高いと判断された人には生活習慣や運動、禁煙のグループ指導も行いました。
にもかかわらず、健診を受けない人と、心臓病や脳卒中の発症率、全体の死亡率に差がなかったのです。

これらの研究結果から考えると、健診は病気を予防する効果が見られないばかりか、医療の厳しい管理でかえって命を縮める可能性もあるということです
タダより高いものはないと言いますが、実質タダの健診を受けたために、高い代償を払うハメになったとしたら笑うに笑えません。

基準を厳しくすれば、患者が増えるカラクリ

健診でメタボ症候群に該当する人は予備軍も含めて約1671万人(2022年度)にのぼります。
これは、メタボ健診の対象となる40~74歳の人口(約5900万人)の約4人に1人に該当します。
この人たちが、医者から処方された薬を飲み、その後、何十年も薬を飲み続けることになる、まさに「薬漬けの医療」にどっぷり浸かっていくことになります。
節制を基本にした生活指導も、ジワジワと元気を奪い、老化を進めていくでしょう。

24年3月、新潟大学の研究チームが、メタボ基準の女性の腹囲を現在の「90cm」から「77cm」にすべきという新基準案を提案しました。
「脳卒中や心筋梗塞を起こした女性の9割、男性の7割が現在の基準値ではメタボには該当せず、リスクが見逃されていた」というのが理由のようです。
たしかに、かける網を大きくすれば、リスクの見逃しは少なくなります。
しかし、一方で、治療の必要がない健康な人もたくさん網にかけてしまうことの害については、ほとんど語られていません。

メタボ症候群に該当する人の数は2020年度の約1715万人をピークに、高齢化や人口減少にともなって、50年には約1330万人に減少するとの推計があります。
基準値を引き下げるという提案は、メタボ患者の数を確保しておきたいという策略に思えるのは、私だけでしょうか。
これまでも、血圧、コレステロール値、血糖値などの基準値がシラッと引き下げられてきた経緯を考えるとなおさらです。

メタボ健診を受けるかどうかは、個人が判断していいことです。
しかし、すすめられるままに健診を受け、すすめられるままに治療を始めてしまうその先は、ヨボヨボ道に続いているかもしれないことは覚えておいてほしいと思います。

医療の介入はかえって健康を害してしまうことを警告しています。

和田 秀樹(精神科医)
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2024年10月23日

「令和のコメ騒動」はなぜ起きたのか 減反の功罪と農家の後悔

「令和のコメ騒動」はなぜ起きたのか 減反の功罪と農家の後悔
10/22(火) 毎日新聞

 世界は大きな転換期の渦中にある。気候変動対策は待ったなしだ。
AIは経済や社会を大きく変えようとしている。
地方に目を向ければ、少子高齢化の進展で人口構成が急速に変化している。
そんな中で衆院選が行われ、私たちは審判を下さなければならない。まずは足もとを見つめ直してみたい。

 コメや茶などの栽培が盛んな奈良県北部。
10月の田では稲穂が頭(こうべ)を垂らし、豊作を印象づけた。「令和のコメ騒動」も収まった。
農家の80代男性は、コメ騒動の原因に減反政策を挙げる。
自身もかつて減反を受け入れたが、「今は悔やんでいる」という。

 農林水産省によると、1960年代にコメの過剰生産が深刻化し、71年から減反が本格的に進められた。
水稲の作付面積を3割以上減らすため麦や大豆、飼料用作物に切り替えた農家に転作奨励金を交付した。

 2004年の食糧法改正で都道府県別に生産数量目標が設定されたが、生産の自由を妨げるという批判もあって18年に廃止された。
一方、水田で主食用以外の作物を生産した農家に補助金を出す仕組みは今も継続している。

 男性は10代で親の後を継ぎ、ヒノヒカリを中心に年間約1500キロを収穫する。
60代まで1年の半分は大阪で左官の仕事を掛け持った。

 「機材修理などの経費を差し引くとコメの収入は時給200円程度。1日14時間働いても数千円にしかならない。出稼ぎをしないと生活できなかった」。それでも「農業が好きで、やめる選択肢はない」と今も汗を流す。

 71年に地元自治体の要請で水田0・8ヘクタールのうち0・3ヘクタールの生産を放棄した。
「当時は減反が当たり前。渋々応じたが、なぜコメの消費促進にかじを切らないのか疑問だった。
今夏のコメ不足は、過去の減反のツケが回ったのではないか」。
放棄した水田は山の一部と化し、再生は難しい。

 農水省によると、24年産米の9月の全銘柄平均価格は玄米60キロ当たり2万2700円と31年ぶりの高値になった。
前年同月比7409円(48%)の上昇で、「平成のコメ騒動」と言われた93年に次ぐ高値。
肥料や農薬の高騰で経費は倍増したが、男性も「明るい兆し」と胸をなでおろした。

 減反の功罪について、近畿大農学部の増田忠義准教授は「減反助成金は、高級米を作って得る収入に見合わない。
特に生産意欲の高い専業農家へのダメージが大きかった。一方で食用小麦や大豆の自給率向上に寄与した側面もある」と指摘する。

 スーパーの棚からコメが消えた「令和のコメ騒動」の原因について、
@継続的な作付面積の低減と、高温障害のあった地域で一等米の比率が下がったこと
A23年産米の供給が絞られた中で外国人観光客の増加を背景に外食産業でのコメ消費量が急増したことを挙げた。
「そこに南海トラフ地震臨時情報が追い打ちになって家庭でコメを買い込む動きが強まった」と指摘する。

 農業の担い手は年々、減っている。
供給が減り、人口減少でコメの消費量も減りそうだ。
農業に未来はあるのだろうか。
増田准教授は「政府は、農業の保全と振興が求められている。
国内消費の促進や、高級米として輸出する販路構築の支援強化などが重要」と強調した。

 中山間地域や都市近郊での農業については「小規模だからこそ、きめの細かい農業ができる。
オーガニックや減農薬、地域環境や生態系を意識したコメ作りといった、持続可能なアグリビジネスを構築することが農業の未来を明るくする」と話した。【山口起儀】
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2024年10月24日

定年後のほとんどの人が悩んでいる最大の問題…「睡眠」と向き合うための「とっておきの秘訣」

定年後のほとんどの人が悩んでいる最大の問題…「睡眠」と向き合うための「とっておきの秘訣」
10/23(水) 現代ビジネス

元伊藤忠商事会長、そして民間人初の中国大使を務めた丹羽宇一郎さん。
仕事に生涯を捧げてきた名経営者も85歳を迎え、人生の佳境に差し掛かった。99q『老いた今だから』では、歳を重ねた今だだからこそ見えてきた日々の楽しみ方が書かれている。
※本記事は丹羽宇一郎『老いた今だから』から抜粋・編集したものです。

通常、私は朝食後から午前一一時半頃まで新聞や雑誌を読んだり、インターネットでいろいろなニュースを見たりします。
仕事をリタイアしたあとも前職に関係のあるニュースに目がいく、という人は多いでしょう。
私もそうで、関心があるのは日本や世界の政治経済。あとは、大リーグの大谷翔平選手が勝った、負けたというニュースがスポーツでは唯一で、日本の政界のもの以上に見ています。

ニュースを見ながら、大事だと思うことはメモしておきます。
これは、私が若い頃にくらべて物忘れをしやすくなったからではありません。人間とは、そもそも生まれながらに「忘れっぽい生き物」だということを、過去の経験で痛感しているからです。

日々、メディアを通して入ってくる情報のうち、翌日になっても頭に残っているのは、何割かにすぎない。
一週間もたてば、ほとんど残っていない。それくらい、私たちの頭は忘れやすい構造になっています。

ですから皆さんも、「ちょっと気になるな」と思うニュースがあれば、読むだけでなく、メモしておくとよいでしょう。

かつては長時間座っていても腰痛など経験したこともなかったのですが、この年になると、同じ姿勢で座っていると筋肉が硬直して腰が痛くなってくる。
そうなると、「ちょっと休むか」ということになり、そのままソファで寝てしまうこともあります。
こうした時間のほかに、私は就寝前に三〇分ほど読書をすることが多いのです。

午後六時半から七時頃に夕飯をとり、ひと休みします。

睡眠時間は気にしなくていい

でも、そのあとの入浴が大変です。
以前は、身体を洗うなど無意識でやっていましたが、今はちょっと身体を動かすだけであちこちが痛い。
身体を洗うのは関節をものすごく動かす動作なのだと、この歳になって気づきました。

洗髪してシャワーで流すときも、へたに身体を動かすと痛くなるうえ、お湯が耳の中に入ってしまい、始末が悪い。日常生活のなかで、「やはり若い頃とは身体が違ってくるんだなぁ」と実感することが本当に多くなりました。

ベッドに入るのは、午後一〇時から一一時頃です。
睡眠は、できるだけ七時間はとるようにしていますが、夜中にトイレに起きたりするので、朝までずっと眠り続けることはできません。

ちなみに、二〇二一年にOECD(経済協力開発機構)が三三ヵ国を対象に行った調査では日本人の一日の平均睡眠時間は七時間二二分で、三三ヵ国中最も短く、全体の平均である八時間二八分より一時間以上短かったと報告されています。

ただ、歳をとってからの睡眠は、時間が長ければいいというわけでもないようです。

厚生労働省が出している「良い目覚めは良い眠りから 知っているようで知らない睡眠のこと」というパンフレットには、「リタイア世代では8時間以上の睡眠を必要とする人は多くありません」と書かれているんです。

さらに、このパンフレットによれば、睡眠は、目覚めたときに「休養感」(しっかり休めたなという感覚)があることが重要だということです。

しかし、歳をとると夜中にトイレに行きたくなって、睡眠が中断されることが多くなる。私もそうですし、読者のなかにもそういう方が少なくないと思います。

人によっては、トイレに行くための動作に身体の痛みが伴う人もいるでしょう。
私の場合、ベッドから降りるとき、身体の右側から降りるので、右腰が痛くなることがあります。どうしても降りる側に力が入ってしまうからです。

個人差もあるでしょうが、目覚めたときの「しっかり休めたな」という感覚は、加齢とともに得にくくなるのではないか、というのが私の実感です。

それでも、睡眠の質や時間について、私はあまり深刻にとらえていません。休養感が足りないときは昼寝をすればいい、五時間で目が覚めたときはベッドの上で身体を休めているだけでいいんだと思い、そうしています。

さらに連載記事〈ほとんどの人が老後を「大失敗」するのにはハッキリした原因があった…実は誤解されている「お金よりも大事なもの」〉では、老後の生活を成功させるための秘訣を紹介しています。

丹羽 宇一郎
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2024年10月25日

「休日は寝て終わる」はむしろ健全…休日をアクティブに過ごしたいという人に養生のプロが忠告すること

「休日は寝て終わる」はむしろ健全…休日をアクティブに過ごしたいという人に養生のプロが忠告すること
10/23(水) プレジデントオンライン

休みの日、一日中寝てすごしてしまう習慣からどうしたら脱却できるのか。
中医学の観点から相談に応える漢方家の櫻井大典さんは「平日、遅くまで仕事をしていたら、休日はぐったりするのは当然。
一週間で帳尻を合わせることが大事」という――。

 ※本稿は、櫻井大典『こころゆるませ漢方養生』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

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CASE4
「寝て終わってしまう休日を、楽しくアクティブに過ごしたいです」

仕事はやりがいがあり、夜遅くまで働く日も多いですが、充実していて楽しいです。
同じように休日も楽しく過ごしたいと考えているものの、いざ休みの朝を迎えるとなかなか起きられずに、寝て終わってしまうことがよくあります。

一日を無駄にした気分にもなるので、買い物へ行ったり、アウトドアを楽しんだりと、もっとアクティブに行動したいです。
休日のレジャーを楽しむためには、どうすればよいでしょうか?
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■休日にぐったりするのは当然のこと

 これは土台、無理な話です。
平日、夜遅くまで仕事をしていたら、休日はぐったりするのは当然。
そもそも無理な生活をしているのです。もっとシンプルに考えましょう。

 まず、休日というのは、そもそも“休む”日です。
現代ではなぜか、休みの日も動かなきゃいけないと思っている節がありますが、休むときはちゃんと休む。これがとても大事で、ちゃんと休むからこそ、しっかり働けます。

 休みの日の使い方をざっくり言うと、体を動かす仕事をしている人は、あまり動かず体をゆっくり休ませること。
逆に、ずっと座りっぱなしの仕事をしている人は、適度に動くことがよいです。

よく動いて(「陽(よう)」)、よく休む(「陰(いん)」)、いつでも「陰」と「陽」のバランスをとることが大事なわけです。
一週間で大体の帳尻が合うような生活習慣を心がけるのがよいと思います。

 休日に買い物に出かけたいならば、平日の仕事の時間を減らす、働き方を朝型にシフトし、平日の夜にたっぷり睡眠時間を取るなど、基本の勤務時間で収まる仕事の仕方に変えていくことも大事です。
仕事とは、自身の体調管理も含みます。
休むこともスケジューリングしたうえで、効率のよい働き方を模索しましょう。

■老化現象は「腎」の疲労が引き起こす

 また、仕事にやりがいがあり、楽しく充実していることはよいことですが、夜遅くまで仕事をすることは、ちょっと危険です。
なぜなら、過労は五臓の「腎」に過大なダメージを与えるからです。

 「腎」は、成長や発育、生殖を司る臓器で、ホルモンや遺伝についても深く関わりがあります。
体のさまざまな機能と密接に関わっており、いわゆる“老化現象”は、この「腎」の機能が低下したことによって起きる症状です。

 中国古代の医学書『黄帝内経(こうていだいけい)』では、女性は7の倍数、男性は8の倍数の年齢のときに、体に大きな変化が訪れるという記述がありますが、「腎」の機能は、女性の場合では28歳をピークに、男性では32歳をピークに、以降はなだらかに下降していくとされています。

 しかしながら、その年を迎えなくとも、過労や座りっぱなしで歩かない、夜更かしなどの日々を続けていれば、「腎」にひどくダメージを与えますから、その衰えはもしかしたらピークを待たずして訪れるかもしれません。
相談者の方も、実際、休日に起き上がれないほど働いているわけですから、すでに「腎」が相当なダメージを受けていると思われます。

 「腎」の機能が低下すると、疲れやすくなったり、冷や汗が止まらなかったり、食欲が出なかったりと、さまざまな不調が表れます。
また、今は若さゆえのエネルギーでそのダメージが目立った症状としては表れず、本人に実感はなくても、本格的な老化現象を迎えたときに症状が激しく表れ、人よりも辛い状況になる可能性は高くなります。

 「腎」は、「精(せい)」という、生命力の根源であるエネルギーを蓄える袋でもあります。

 その「腎」がダメージを受ければ、袋は小さく硬くなり、たくさんの「精」が中に収まることはできません。

 つまり「腎」が弱るということは、命を燃やすためのエネルギーがどんどん減ってしまうということ。

 「腎」の機能低下は誰しもに訪れ、そのスピードは人それぞれですが、できるだけゆるやかにすることは可能です。
少し先の未来を思い浮かべて、無理は控え、「働く」(「陽」)と「休む」(「陰」)のバランスを大事にしてください。

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CASE5

「睡眠時間は毎日しっかり7時間取っています。
でも、なぜか日中眠くなり、集中力が続きません」

毎日、ほぼ深夜1時までには寝て、朝8時前後に起き、11時頃から仕事を始める、というスケジュールです。

7時間、もしくはそれ以上睡眠を取っている日もあるのですが、午前中は頭がぼんやりとして集中力が続かず、午後2時すぎからようやく調子が乗ってくるという感じです。

朝から活発に働くための秘訣はありませんか?
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■“何時間眠るか”よりも、“何時に寝るか”が重要

 中医学で睡眠について語るときは、実は睡眠時間よりも、何時に眠ったか、という時刻が重要になってきます。
図表1を見てください

 これは、時刻と、その時刻に活発に働く臓器の関係を表した、「子午流注(しごるちゅう)」と呼ばれるものです。

 なかでも重要なのは23時から深夜3時。図を見ると、23時から深夜1時は六腑の「胆(たん)」が該当していますね。

 「胆」という臓器は消化器官の一つで、消化の最終段階を行う場所です。
つまり、ここで「胆」が活発に働くことで、体に栄養を補給し、日中疲労した体の修復を行うわけです。
でも、この時間に体が起きて活動していると、エネルギーがそちらにも使われますから、「胆」は全力で働けません。
修復したいのに栄養が足りない、という状況が起こるわけです。

 だから23時に起きている=活動しているのはよくない。
できればその前の時間帯、21時からすでにリラックスし、体が眠りに向けて準備している状態が望ましいです。

 この時間に該当する「三焦(さんしょう)」という六腑は、体内の水分調節を行うリンパ管のような働きをする場所で、水を流して掃除をする、みたいなイメージです。
そして、「胆」の次は、五臓の「肝(かん)」の時間帯。前の記事にも登場していますが、「肝」は「血(けつ)」を貯めておくタンク、でしたよね。この時間に、「血」がつくられ、「肝」に貯められるわけです。

 つまり、21時から23時の間で、余分な水を流して体内の浄化を済ませ、23時から深夜1時の間に消化・吸収の最終段階を終えて体に栄養が補給され、深夜1時から3時までに栄養を蓄えたきれいな「血」が「肝」に貯められる、というスケジュール。

 21時から深夜3時までは、いわば体内のメンテナンス時間なのです。
そのいずれかの時間帯でも起きているのであれば、臓器の働きは鈍くなりますから、体は修復されないまま朝を迎えてしまいます。
相談者の方の眠る時刻を見ると、中医学の観点から言えば、睡眠が取れていない、という判断になります。

 さらに言うと、23時に「胆」が消化の最終段階をするわけですから、逆算すると夕食は18時までに済ませておくことが理想です。

■できる日だけでも、理想の時間割を

 とはいえ、これは理想の話。僕も22〜23時に寝るように努めていますが、難しい日もあります。
また、夜勤など、お仕事の都合でどうしてもこの時間に眠ることはできない方がたくさんいらっしゃることも、日々実感しています。
そういう場合は、休みの日だけでも「子午流注」の時間割に沿って睡眠をとることをおすすめします。

 ちなみに子どもの場合は、より自然に近い存在なので、子午流注により厳格に則って21時までの就寝を目指すのがよいでしょう。
ただし、しっかり昼寝をしている場合は、多少遅くなるのはしょうがないことです。
22時頃までの就寝を目指しましょう。
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櫻井 大典(さくらい・だいすけ)
漢方家
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2024年10月26日

プロ野球は「国民的娯楽の王様」というフェイク

プロ野球は「国民的娯楽の王様」というフェイク
実は、日本のベースボールは衰退の危機に突入
岡田 憲治 : 政治学者/専修大学法学部教授
2024/10/25 東洋経済オンライン

「青少年の刑法犯罪は増加の一途」
「生活保護費の不正受給が蔓延し財政が逼迫」
もっともらしく聞こえますが、これらはフェイクです。

気がつけば、日本の政治や社会を考えるための基本認識に、大中小のフェイクとデマがあふれかえっています。

「『世界は狂っている』という大雑把で切り分けの足りないペシミズムに陥らないことが大切」と述べるのは、政治学者の岡田憲治氏。
大中小のフェイクについて考えることをスイッチにして、この世界を1ミリでも改善するための言葉を共有する道を探そうと企んで執筆したのが『半径5メートルのフェイク論「これ、全部フェイクです」』。
今回は、日本の野球にまつわるフェイクについて考えてみたい。

最古のプロスポーツがマイナーになる可能性

日本に定着して100年を超えるベースボールが、2500万人を超える観客動員数(2023年)の水面下の川底に、未来の衰退兆候を見せています。
尋常ならざるベースボール・ファンである私には、そう見えます。

サッカーに続いてバスケットボールや卓球がプロ化して、ラグビーも世界水準の選手がたくさんトップ・リーグにやってきて、もはや最古のプロスポーツは、国民的娯楽(national pastime)ではなく、数あるスポーツ競技のひとつとして、将来的にマイナーとなる可能性もあります。

サッカーは1993年のプロ化以降、紆余曲折はありましたが、確実に地域社会に根をはり、10チームから始まったJリーグのチーム数は、今日下位リーグを含めて60になりました。

成功の理由は、全国統一の指導のコーチング・ライセンス制度が確立していること、リーグに加盟するために必ず「地域スポーツ振興活動」と「ユース育成システム」をもつなど、厳しい運営基準が義務づけられたことなどです。
今や、小・中学校レベルから「経験したことのあるスポーツ」として、ベースボールを凌駕しています。

スーパーエリートの集団「プロ野球」

とは言え、のべ数でも国民の4人に1人をスタジアムに呼び込むプロ野球の華やかさは失われていません。
緑の芝生でプレーする選手たちは文字通り「超人」です。

そして、それをつくり出すノウハウも確立しています。
小中学生レベルからリトル、シニア、ボーイズなどの各種リーグがあり(いずれも硬式ボール)、激しい競争を勝ち抜いた天才少年たちが最も甲子園大会に出場しやすい環境を基準に、郷土の代表という建前とは無関係に地方に散り、春と夏の約2週間に大メディアの関心を受けるために全国大会への出場を目指します。

卒業後は大学や企業、そしてスーパーエリートがわずか百数十人だけプロ野球に入団できます。
このエリート調達システムは、相当完成されたものであり、それゆえ日本のベースボールの水準は世界に引けを取りません。

しかし、この超人たちのリクルート・システムは、高校以後は地域密着とどんどん縁が遠くなっていきます。
青森県の甲子園の代表校の選手のうち、青森県内の中学校出身者はわずかしかいません(2023年夏)。

元メジャーリーガーの楽天の田中将大選手は駒大苫小牧高でしたが、もともとは兵庫県の宝塚ボーイズの出身です。
ダルビッシュ有選手も大阪のボーイズリーグでは伝説的天才選手でしたが、東北高校へ行き、甲子園でノーヒッターとなりました。

大谷の活躍で競技者は激増したか

しかし、全部で800人ほどしかなれないプロ野球選手のリクルートメントだけで、ベースボールはスポーツ文化として社会に磐石の基盤をもてません。
もちろん超人的プレーが、この競技を知らない人たちに衝撃を与え、それを契機に人気が高まるということは考えられます。

それでは、二刀流メジャーリーガーとなった大谷翔平選手の圧巻の活躍があって、新たにベースボールを始めようとする子どもは激増したでしょうか? していません。

あるスポーツ競技を支える人たちとは、やはり小中高という子どもの時代に部活や地域のクラブで自分が競技者としてプレーしてきた人たちであり、それが超人たちを支える裾野なのです。

その点で言えば、小中学校の競技人口において野球はサッカーに逆転され、高校でも部員数は減り、野球離れは顕著となっています。
中高の野球部員が減っているのは、そもそも少子化だから当然だと楽観視する野球関係者もいますが、中体連や高野連の調査に見られる部員数の減少は、少子化の数倍のスピードで進んでいます。原因は少子化だけではないのです。

実際、私の子どもは中学の野球部員ですが、常に他校との合同チームになる心配と戦っています。
小学校高学年のとき、クラスの男子で野球のルールを知っていた者は、数名に過ぎませんでした。
ひとクラスに「背番号3」が5人もいた私の時代には考えられないことです。

野球の裾野が枯野になっている

部員減少のひとつの理由は、専門チャンネル以外でのベースボール・コンテンツが激減してしまったことでしょう。
現在、スカパー!(CS)やDAZN(ネット)以外で、試合中継は何試合やっているでしょうか? 実に少なくなってしまいました。

すると「どうして地上波は野球放送をしなくなったのか?」と問われます。
それを「つまらないオワコンだから」とすると、理由は「子どもが小さい頃から野球をやらなくなったからだ」になります。
つまり堂々めぐりです。でも、すべてをテレビ局のせいにはできません。

超人たちを800人集めるシステムが継続しても、数十年後にスタジアムに足を運ぶ人たちが今と同じ数だけ確保できる見通しはありません。裾野が枯野になっているからです。

そして、そのことに気がついて、危機感をもっているプロチームも出てきました。
チームは年間に143試合でも、「子供野球教室」を県内で数百回やっているチームもありますし、親に連れてきてもらったスタジアムで、ホームチームのユニフォームをプレゼントしたり、各種イベントで現役スタープレーヤーが直接ファンに触れ合ったりする回数も増えつつあります。

興行にとどまる限り「流行り廃り」に左右

そしてそのとき、本腰を入れている球団が常に意識しているのが、球団が「地域とともにある」というコンセプトです。

これはプロ野球関係者がようやくサッカーやバスケットボールの成功を理解して、「リーグ全体の利益のためにこそ地域ごとにファンを大切にする」努力をしているということです。
その意味でも、あらゆるスポーツにおいて、競技の水準が急激に上がるミドルティーンくらいの子どもたちにとっても、この「地域密着」運営は非常に重要です。

スポーツが娯楽としての「興行」にとどまっているとき、それは文化となり得ません。
なぜならば興行として飽きられて見限られたら、その競技そのものが終わってしまう可能性が高いからです。

大企業の福利厚生経費で運営されている競技は、不景気になれば真っ先に廃部にされて、「お金がないからなくなる」、つまりそれは「流行り廃り」の興行にとどまります。

たとえば、なかなかプロ化が進まない、それでいてたくさんの競技人口を抱え、長い伝統を誇るバレーボールを運営していたVリーグ(セミプロリーグ、2018〜2024年)で、大企業の福利厚生費ではなく、地域に支えられた密着運営をしているのが、男子は「堺ブレイザーズ」と女子は「岡山シーガルズ」です。
2024年10月から始まる新しいバレーボールのリーグ、SVリーグもまだセミプロです。

スポーツが地域「文化」となる

ある競技が、「目の前で超人たちが奇跡を見せてくれる」喜びを享受する、地域の人々による広い裾野で支えられたとき、それは人々の生活や人生とシンクロし始め、「甲子園には出られなかったしドラフトにもかからなかったけれど、地域リーグ(四国アイランドリーグなど)や地元クラブチームで野球を続けられる」ことになり、「この街はスポーツをスイッチにして、経済も社会交流も教育もみんな連動している」というシビック・プライドを生み出し、それはすなわち、スポーツが地域「文化」となることを意味します。

地域密着の競技運営が「その競技のスポーツ・キャピタル(競技資本)」という基盤づくりを積み上げていき、それが興行ではなく「文化」として継承されるのです。

競技名をいろいろ入れ替えてみれば、地域密着してプロ化に成功した競技、それに向けて発展中の競技、そしてどうしてもそこへ着地できない競技などがわかります。

そして、まさにプロ野球という長い歴史を誇る競技団体の中においても、さまざまなコントラストが浮上します。

地元の地方テレビ局の利益を守るために、ネット放送コンテンツと契約をあえて結ばず、選手の年俸は抑え気味ではあっても、若手選手を育成から丁寧につくり上げ、地域のファンとともにその成長を見守る球団があります。
「親会社」はなく、長年支え続けてきた地元企業の経営者個人が大株主です。

その地元企業の業績が悪化すれば、その株は市民がシェアすることになるでしょう。
ベースボールはなくなりません。なぜならば地域に根づいているからです。

20世紀のビジネスモデルとしての野球

他方、地域属性が曖昧で、親会社を自称する大企業の「宣伝広告費」を税制慣習上特例的に援用して、スーパースターばかりを大金で連れてくるような20世紀的やり方は、裾野も基盤も軽視して、超人たちだけで行われる興行モデルからの離脱がなされていないように思われます(個々の選手には何ら責任はありません)。

伝統的に、日本の職業野球団の運営は、マス・メディアを中心になされてきました。
購読者数を増やすためです。夏の高校野球は朝日新聞、春のセンバツと社会人都市対抗は毎日新聞、そしてプロ野球は読売新聞です。まさに20世紀ビジネスモデルです。

亜熱帯の「亜」が取れてしまった灼熱の極東の島国で、日本で2番目の発行部数を誇る全国紙が、郷土の誇りなど希薄になった、身体を削って行われる酷暑の全国大会を今もなお延々と続けています。
未来を考える球児はもう最初から海外でのプレーを考え始めています。

悪意のないプチ・フェイク

もし、ベースボールを主導する人たちが、自チームの利益にとどまらないスポーツ全体の未来への視点をもつなら、自らの歴史的役割(ベースボールの魅力を全国規模に広げたこと)の転換点を自覚し、加速化する裾野の枯野化を防ぐ、真の意味でスポーツが地域に根ざすものとして文化になる、21世紀コンテンツをつくり上げるべきだと思います。
まだお客さんがたくさん来てくれる今がチャンスです。

トップ800人のリクルート・システムを整備しつつ、いつの日か「今日は比較的お客さんが入りましたね。9000人です」などとアナウンスされる日が来てしまうのでしょうか? 長い年月に引きずられた「野球こそ国民的娯楽の王様」という「悪意のないプチ・フェイク」に気づき、ベースボールを残してくれた先人たちの尽力に恩返しをしたいという気持ちです。

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日本の「野党」が絶望的なほど情けない根本理由

日本の「野党」が絶望的なほど情けない根本理由
個人主義のお子様軍団になっている
筒井 幹雄 : 東洋経済 記者
2019/06/30 東洋経済オンライン

野党の連戦連敗の敗因とは、いったい何なのでしょうか?

特定秘密保護法成立、解釈改憲、森友・加計学園問題、自衛隊日報隠蔽……。
国家よりも個人を重視し、多様性と経済的再分配をよしとする野党・リベラル陣営は連戦連敗だ。
国政からPTA活動まで、行動する政治学徒が自戒から著した提言の書。
『なぜリベラルは敗け続けるのか』を書いた専修大学の岡田憲治教授に詳しく聞いた。

野党の論理は赤軍と同じ

――なぜ必敗なのでしょうか。

与党が圧倒的な議席数を持ってますから。与野党伯仲なら、審議拒否で定足数未達、開会できずという戦術を採れますが、今は委員会開催の与野党交渉すらできない。
与党のやりたい放題で、逆に予算委員会100連休です
――状況を変えるには「大人にならなければいけない」?

「ちゃんと大人の政治をやろうよ」です。
リベラル陣営の多くは、正しいことがゴール。
例えば、「多様なライフスタイルに寛容になれ」と非寛容に主張する。
政治とは、自分の信条の純度を上げることで、ピューリタン化しちゃう。
究極は「純度の下がった」メンバーを粛清した連合赤軍です。

――連赤まで行きますか。

論理は同じ。膨大な資金と労働をつぎ込んだ原発の即時撤廃なんて、大人が乗れる話じゃない。
ところが、現実的な話をした途端、「脱原発って言っていたのに、原発ムラに取り込まれたな」(苦笑)。
多くの人が、会社なんかでは大人として振る舞っているのに、政治ではそれができない。
政治的成熟という言葉を聞くと口をぽかんと開けている。かつての自分です。

――自分の気持ちが大事。

大事にするあまり、選挙で棄権する人もいますね。
棄権は黙認と同じということが、わかっていない。
「マジで安倍とか応援したくないし〜」「だな」「でも立民(立憲民主党)もねえ。自分に正直に今回は棄権するわ」となると与党は大喜び。
敵の嫌がることをやるという発想がない。
仮に共産党が大嫌いだとしても、与党候補を落選させる可能性があるなら共産党に投票すべき。
鼻をつまんで、よりましな地獄に投票、です。

――参議院選挙が目前です。

立民の枝野代表はパリテ(編集部注:候補者数など政治における男女均等)が争点だと言う。
子どもの学校のPTA会長をやっていて驚くのが、ママたちの能力の高さ。
女性が政治の半分を占めれば、世の中、劇的に変わります。その意味でまったく正しい。

ただ、「パリテ!」とか「脱原発! 安倍政治を許さない!」と叫んで、参院選の32ある1人区で25勝できるかというと、できませんよ。
パリテが響く人は、それがなくても立民に投票する人です。
仕事上の取材で最近よく地方に行きますが、そこで長年自民党に投票している人に話を聞くと、彼らの関心は「正しさ」にはない。不安です。
立場が違っても信頼し合う関係がない

――不安?

1人区はほとんどが田舎。東京の大学出て、大企業に勤め、親のこともあって帰郷した40代。
ずっと自民支持、気がつけば商店街は寂れ、このままじゃ地域がダメになるのでは、という不安。

ここで「大丈夫ですよ」と語りかけるのが政治です。
正しいことをいくら言われても安心はできない。
もっと銭金の話をして、こうした人の7〜8%に野党統一候補に賭けてみようと思わせないといけない。

――「経済は社会の下部構造」と唱えた人に近い割に経済を語らない。

戦後、自民党が所得倍増だなんだと言って、企業を通じた所得再分配に成功し、さらに持ち家政策や断続的所得減税で豊かさの底上げがなされた。

野党も貢献しているが、経済政策での成功体験を記憶していないのでしょう。
だから、「消費増税反対、法人増税を」なんて言う。
法人税率が上がるとなったら大企業は租税回避に動きます。
少子化は教育充実のチャンス、消費増税分は国債償還ではなく、特定財源にして教育につぎ込む、くらい言わなきゃ。
田中角栄が日陰の人たちに日を当てたように。

――経験も含めて人材の問題?

政策・即戦力、「看板」が幅を利かすようになって、人材は与野党問わず多様性がなくなってきた。
懐かしい社会党の幹部、久保亘は、苦労人で県教組から参議院議員になり、誠実な人柄ゆえ自民党から共産党まで「くぼたん」と呼んで慕う人が多かった。
立場は違っても信頼し合う関係。今は、全体的にガキになっている。

――首相の大人げない言動も、つとに指摘されるところです。

カミソリ後藤田が残した本が『情と理』。情、です。彼がいちばん警戒したのは、人の気持ちに寄り添えない人間。
今、安倍さんに警告を発しているのは小泉、山拓、亀井静香など自民党の爺さんばかり。
政党が大人の集団じゃなくなり、広告代理店と無教養で人の気持ちがわからない学校秀才による政治に見えているのでしょう。

それでも、組織としては自民党のほうが大人。
大臣の失言が続いても、「バカな連中は放置」とせずに、失言防止マニュアルを作っちゃう。
不倫騒動の今井絵理子も、統一地方選の「どさ回り」応援演説にあえて行かせて鍛える。
これで安倍さんが引退して、もっとソフトなリーダーが「脱原発」なんて言ったら、もう永久政権ですよ。

野党は仲間を減らし続けている

――自民党は仲間を切り捨てない。

小異を捨てて大同につき、仲間を増やし、政策を実現するのが政治。
わがリベラル陣営は、政党も支持者もピューリタン化で仲間を減らし続けている。
選挙の際に、野党の党首がひとごとみたいに「皆さんの関心が高まらない」。

そうじゃない、ガチンコの戦いならみんな投票に行きますよ。
有権者の選択肢を奪うことは万死に値します。
前回の衆院選で得票数では与党を上回っていたのに、野党は候補者乱立を繰り返している。
自民公認、公明推薦の候補に対し野党候補が複数いたら、最初から勝負あり。有権者は、勝つ気があるのかと心が折れます。

――ずっと子どものままですか。

自治体の首長経験者には、大人になる必要性を感じている人はいるが、それに費やされる膨大なコストにたじろいでいる。
希望があるとすれば、私が住む東京の世田谷区のようなケース。
社民党出身の保坂展人が直近の区長選挙で自民党支持層の3割をまとめ当選した。
スローガンは「せたがやYES!」とポジティブで、彼は人の話をよく聞くようになった。
世田谷区議選は自公が6人も減らしていますよ。地方自治は民主主義の学校。こんなところにヒントがあるのではないだろうか。
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2024年10月27日

「つらい」「大変だ」「もう無理」という言葉を我慢してはいけない…

「つらい」「大変だ」「もう無理」という言葉を我慢してはいけない…和田秀樹「逃げる勇気」を妨げる5つの要因
2.024年10月26日 PRESIDENT Online

自分の心に素直になれない人のリスクは何か。
精神科医の和田秀樹さんは「言葉と行動が一致しない人は、自分で矛盾を作り出している。
会社を辞めたり、パートナーと別れたり、その場から逃げるのは勇気の要ることだが、だれでもいいので、『つらい』『大変だ』『もう無理』という言葉を吐き出すといい。弱音を吐くことは、負けではない」という――。
※本稿は、和田秀樹『逃げる勇気』(自由国民社)の一部を再編集したものです。

■周囲の「がんばれ」に隠された意図

「もっとがんばらなきゃ」と思っている人に、周囲の「がんばれ」という言葉はとても残酷です。
「いまよりもっと、がんばらなければ」という考えに支配されてしまいます。

期待してくれている人を悲しませたくない、がっかりさせたくないという思いから、無理して気丈にふるまうようになります。

「がんばれ」という側の深層心理には、「あなたががんばってくれないと、私が困る」という隠された意図が存在することがあります。

そして、その意図に本人自身も気づいていないこともあります。

親や教師、上司、会社の人事部の人など、「あなたのため」というのはあくまでも建前であって、ただ単に「自分本位」であることも少なくありません。

自分本位とは、自分のことしか考えないこと。自分に都合が良いこと。

いくつか自分本位の例をあげてみましょう。

・途中で投げだすのを許してしまうと、相手に怠け癖・逃げ癖がついてしまうのではないか。
・逃げるのを止めないと、のちのち自分の責任になるかもしれない恐怖。
・「継続は力なり」という言葉があるように、継続すれば身につけられる力があるという誤解。
・最後まであきらめない“グリット”を身につければ、将来的に叶えたい目標を達成することができる。
・安易にあきらめを許して、甘やかしてはいけない。
・親の育て方が悪い、指導の仕方が悪いと、周りから責められたくない。

■「勇気をくじく行為」は日常にあふれている

これらは「あなたのため」ではなく、「自分のため」の考えです。

あなたの「逃げる勇気」は、簡単にくじかれます。

なかには心の底からあなたを応援したいと思っている人もいるでしょう。
しかし、その応援の言葉がかえって凶器となり、あなたを追い詰めます。

「グリット」とは、困難にあってもくじけない闘志、気概や気骨などを表す英語です。
社会的に成功している人たちが共通して持つ心理特性といわれています。

でも、「社会的に成功する」というのは、どういうことでしょうか。

世の中には、勇気がくじかれることが日常的にたくさん起こります。

「くじけちゃいけない」のではなく、「くじけてもいい」のです。

世の中には、勇気をくじく行為があふれているのですから。

■言葉と行動が一致しないと矛盾してしまう

アドラー心理学では、困難を克服する活力を与える「勇気づけ」があり、5つの基本理論を提唱しています。

その5つを紹介しましょう。

@自己決定性自分がどうしたいかは、自分で選択できる。

A目的論人間は目的に向かって生きている。人の行動には目的がある。目的次第で人生は変えることができる。

B認知論自分の受け取りたいように、目の前のことを自分だけのメガネを通して主観的に意味づけている。

客観的に物事を見る力(共通感覚)を身につけ、自分の物差しだけでなく、さまざまな視点で物事を見たり考えたりすることで、誤った思いこみに気づいて建設的に物事をとらえ直すことができる。
ただし、他人の目を気にしすぎていると、判断力と行動力が弱る。

C対人関係論人間のあらゆる行動には、相手役がいる。

D全体論理性と感情、心と体は、すべてつながったひとつのものと考える。
「やめたいけどやめられない」のは、やめられないのではなく、「本当はやめたくない」という心理がある。

本来は人の心に矛盾はなく、言葉と行動が一致しない人は、自分で矛盾を作り出している。

心は「もう逃げたい」のに、「周りの期待に応えるためにがんばる」「親を悲しませたくないから、弱音は吐いちゃいけない」という矛盾を抱えていないでしょうか。

■「つらい」「大変だ」「もう無理」という言葉を吐き出す

アドラー心理学では、逃げたいのに逃げられない周囲の同調圧力が煩わしければ、いますぐにでも関係性を切りなさいと教えています。

「せっかくこの会社に入ったのだから、辞めるのはもったいない」
「せっかくつき合い始めたパートナーと別れるのは怖い」

という気持ちを捨てて、その場から逃げるのは勇気の要ることです。

ひとりで抱えこまず、上司や親、友人、飼い猫、カウンセラーなど、だれでもいいので、「つらい」「大変だ」「もう無理」という言葉を吐き出してください。

つらいのに、「私は大丈夫」「私は平気」と大丈夫なふりをして矛盾を抱えていてはいけません。

弱音を吐くことは、負けではないのです。

■逃げるのを阻止する5つの要因

あなたが逃げることを阻止している要因があります。

何が逃げることを阻止しているのか、5つあげます。

1 恐怖による脅し罰や脅しで相手に行動を起こさせない方法です。

「逃げたら、みんなに非難されるよ」「ここから逃げられると思うな」「会社にバラす」「SNSで拡散する」
これらは恐怖を植えつけるやり方です。これは脅迫罪になります。

一方で「良い脅し」もあります。

強要するのではなく、本人の行動変容につながるように、行動をそっと後押しする方法です。
それが「ナッジ理論」(nudge)といい、「軽くつつく、行動をそっと後押しする」という意味です。
選択を強制せず(選択の自由を確保する)、あなたがより良い方向に行動できるように誘導するものです。

2 同調効果みんなと行動を合わせておくとひとまず安心です。
それは意識的な行動でもあり、無意識の行動でもあります。

社会で生きていくためには、守らなければならない社会規範があります。「逃げてはいけない」という暗黙のルールが同調圧力となって、そこから逸脱しないように行動するようになります。

■自分が自分にいちばん厳しくダメ出しをしているケースも

3 マイナス思考とダメ出し思考ダメ出しばかりする人がいます。
相談しても自分の話にすりかえて、「私のときはこうだった」「それでも自分はがんばって乗り越えた」といった話をする人がいます。

また、「〜だからダメ」「そういうところが悪い癖だ」と言ってくる人もいます。あなたは、自分で自分の欠点や、できていないところを十分すぎるほど認識しています。

あなたにダメ出しをするのは他人ばかりではありません。自分が自分にいちばん厳しくダメ出しをしているケースも多々あります。
自分への期待値を下げ、あるがままの自分を許すことも逃げることにつながります。

4 現状維持バイアスと損失回避バイアス逃げだしたほうが望ましい状況でも、現状維持を好む傾向があります。
それが現状維持バイアス、または正常性バイアスです。

人は、現状を変えることを損失ととらえる傾向があります。

また、得る喜びよりも失う痛みを強く感じる傾向があります。

インセンティブがあると、それに沿った意思決定をしますが、利益を得ることよりも損をするほうにより敏感で、小さな損失でも嫌う傾向があります。
これを損失回避バイアスといいます。

逃げることを避けるのは、まさに損失回避バイアスによるものです。

■人は初期設定の変更を先延ばしにしがち

5 初期設定から変えたくないあらかじめ設定された標準の状態を「初期設定」または「デフォルト」といいます。

人は、そのままの状態を維持したがる傾向があります。

たとえば、ある商品を購入する際、初期設定からそのまま注文しがちです。
変更するのは面倒くさいという心理が働いて、先延ばしにする「現状維持バイアス」が働くからです。

その心理を利用して、定期購入コースをデフォルトにしている場合があります。

ところが、「私は定期コースではなく1回お試しで注文しているはずだ」という思いこみがあるので、それを崩すのは難しいのです。
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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
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2024年10月28日

「みんな違って、みんないい、は残酷」。“多様性”が一人歩きする日本の現状

ブレイディみかこ「みんな違って、みんないい、は残酷」。“多様性”が一人歩きする日本の現状
10/26(土) yoi

英国の「元・底辺中学校」に通う息子の日常を綴った話題のエッセイ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ほか、著作を通じて「地べた」からの視点で社会と個人のあり方を問い続けるブレイディみかこさん
社会情勢に目を向ける大切さを教えてもらいました。

■女性が社会情勢に疎いって、誰が決めた?

――「自分自身の興味のあることは、おいしいごはんの作り方よりも政治や社会時評だ」という旨のお話を過去のインタビューでされています。
ブレイディさんが政治や社会問題に興味を持たれたきっかけを教えてください。

ブレイディさん:
私も毎日料理をするし、おいしいごはんのレシピにも興味がありますが、この発言は「女性エッセイストは料理やファッション、家族のことなどを書くものだ」というありがちなイメージに対して反論したい気持ちの表れだと思います。

私の著書が、女性エッセイ本のフェアに取り上げられたときに、「ブレイディさんの本がこのフェアに入っているのは違和感がある」とSNSで発信していた人がいました。
選書されていた本が、政治時評的なエッセイだったからでしょう。
世間では、女性エッセイは政治や経済について書いたものではないという思い込みがいまだにあるのではと感じます。

イギリスの新聞各社がこぞって執筆を依頼していたジェリー・バーチェルという女性コラムニストがいて、この方の文章は隣人のおじさんとトラブルが起きた、という身のまわりの話から始まったと思いきや、今のイギリスの年金システムとか、財政が苦しい状況になっているのはなぜなのかという問題につながっていくんです。
ミクロからマクロに螺旋階段を上っていくようなコラムを書く人で。
この人の文章を読めば、政治に疎い人でも興味を持たずにいられない。
自分が日々疑問に感じていることが、いかに歴史や政治とかに関係しているのかを短い文章で教えてくれるんです。
はじめてこの方の文章に触れたとき、「日本にはあまりいないタイプだな」と夢中で読み漁りました。

あとイギリスでは、政治の話をできないと退屈されてしまう気がします。
パートナーとデートしてバーに行くとするじゃないですか。
そこでは必ずといっていいほど「今の政権のことをどう思う?」といった話になります。
友人同士の会話でも、政治や社会の話がガンガン出てくる。
「君の意見は?」って聞かれて、何も答えられないとがっかりされるわけです。子ども扱いされるというか。
パートナーや友人といい関係を築くには、社会情勢に対してしっかりと意見を持たないと同等に扱われなくなる。

――ブレイディさんの著書『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』にも、家族で政治の話をするエピソードが出てきますね。

ブレイディさん:
あの本を出したときに「なんでこんなに政治の話をするんだ?」って聞かれたこともあるんですが、それは日常的に夫婦でそういった話をしているから。
夫婦だけでなく、近所の人とだって、ママ友とだって世間話として政治の話をします。むしろしないほうが違和感がある。
日本とはまったく異なる環境ですよね。

■政府が個人の生活に口出ししてくるのは普通じゃない

――ブレイディさんのエッセイ『転がる珠玉のように』では、主にコロナ禍での暮らしが綴られています。
イギリスでは厳格な外出制限もあり、日本以上に生活に変化があったかと思いますが、コロナ禍を振り返ってみてどのようなことを感じますか。

ブレイディさん:
コロナに苦しめられた時期って、今の暮らしから切り離されているように感じますよね。
でもコロナの流行が終わったとしても、コロナが存在しなかった頃に完全に戻ったわけじゃないと最近よく思います。

最近の話なんですが、薬局に行ったらおじいちゃんがマスクをして買いものに来ていたんです。
日本に比べてイギリスでマスクをするのは珍しいことではあるのですが、店内にいる若い男の子がそのおじいちゃんにわざわざ「コロナなんてもう4年前だよ、マスクなんてしなくていいんだよ」と声をかけていたんです。

でも、そんなの大きなお世話じゃないですか。
マスクをするかしないかは個人の自由であるべきで他人にとやかく言われる問題ではない。
コロナのときに政府がやっていた、個人の行動に口を出すという行為が当たり前になりすぎてしまって、放っておけばいいのに口を出してしまうみたいな習慣が残ってしまっているのかもしれません。
異常な状況でもどんどん慣らされていって「こんなもんだろ」と思うようになってしまう感覚というか。
でもこれは全体主義的だし、一番のホラーであることは知っておきたいですよね。

――過去のインタビューで「コロナ禍ではなんとかなると信じてもがいていくしかなかった」とおっしゃっていましたが、もがくために頼りにしていたものはありましたか。
また、もがいた結果、得たものはありますか。

ブレイディさん:
コロナとか関係なく、人はもがくしかないというか、もがくのって当たり前のことじゃないですかね。
生きている以上はもがくしかないし、もがくってそんな特別なことじゃない。
日本はアメリカと似ていて、素敵に輝いている人をロールモデルにしがちですよね。

以前、アメリカの女性ライターが「イギリスの刑事ドラマに出てくる女性刑事の描写がすごい」と褒めている文章を読んだのですが、イギリスのドラマに出てくる女性刑事って生活臭がしっかりと描かれているんですよ。
アメリカの刑事ドラマに登場するような、おしゃれでバシッと決めていて、どうやってそれで犯人を追い詰めるの?ってくらいのピンヒールを履いている女性刑事は出てこない。

走りやすい靴を履いているし、口紅もはげちゃってるし、シミもシワもある。かっこよく昇進もしないし、私生活もうまくいってないし、上司とケンカもする。
人気ドラマに、もがいている女性が登場するのが普通であるイギリスで暮らしていると、「もがく」という言葉ひとつにしても、そんなたいした言葉じゃないと思って使うようになる。

■「みんな違って、みんないい」って誰の目線?

――ドラマの女性刑事の描き方ひとつをとっても、イギリスでは「世界にはさまざまな人がいる。それは当たり前のことである」という共通認識が深く根付いているのを感じますね。
ただ、日本では「多様性」という言葉が一人歩きしてしまっている気もします。

ブレイディさん:
イギリスでは1990年代の末くらいに「多様性」という言葉が流行したんですよね。
ブレアが首相になった頃だから、もう30年くらい前。
移民を受け入れてきた国で、街にも外見の異なる人々がたくさん歩いているから、違うという現実が目の前に広がっています。

日本ではこの言葉はかなり遅れて広がり、多様性というと「みんな違って、みんないい」という意味で使われていますが、みんなが違うということは、いいとか悪いとかの問題じゃない、と感じます。
「あなたたち神様なの? どこからものを言ってるの?」って思います。
いいとか悪いとか、善悪をジャッジするものではなく、現実問題としてみんな違うわけです。

よく言っているのですが、貧困でお腹を空かせている子も、裕福で不自由なく暮らしている子も「みんな違って、みんないい」とするのは残酷です。
日本は見た目がほぼ均一だからみんな同じに見えてしまうかもしれませんが、一皮むけば環境も思想もまったく違うってことは現実にあるわけですよね。
違うという現実を受け入れて、そこからどうやって共生し、どのような社会を構築していくかを考えていかないといけないのではないでしょうか。

ブレイディみかこ
ライター・コラムニスト。
福岡県出身。音楽好きが高じて1996年から英国ブライトン在住。ロンドンの日系企業に勤務したのち英国で保育士資格を取得、「最底辺保育所」で働きながらライター活動を開始。2017年『子どもたちの階級闘争』で新潮ドキュメント賞を、2019年『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』でYahoo!ニュース|本屋大賞2019年ノンフィクション本大賞などを受賞。最新作は『転がる珠玉のように』。
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「日本にはめちゃくちゃ“縦の多様性”がある」社会を変える行動を起こすには?(後編)

【ブレイディみかこさん】「日本にはめちゃくちゃ“縦の多様性”がある」社会を変える行動を起こすには?〈インタビュー後編〉
10/26(土) yoi

人種と貧富がごちゃまぜの「元・底辺中学校」に通う息子の日常を描いた話題作『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』では、他者を考え、想うことの大切さを教えてくれたブレイディみかこさん。
インタビュー後編では、行動に移す勇気を持つ大切さを教えてもらいます。

もやもやしているばかりじゃ始まらない!

−−集英社の雑誌メディア「MORE」のウェブ&プリント版では20代女性の悩みを聞く連載をされています。
読者が日々モヤモヤしていることを聞くことで気づいたことはありますか。

ブレイディさん:
まず東京在住で大手企業に勤めている子と、地方在住で中小企業に勤めている子では、話す内容も、悩みも違う。
日本では“階級化”が進んでしまっているな、と感じます。

私が若かった80年代は、今よりずっとマスメディアの力が強くて、雑誌も影響力を持っていたから、都心と地方で流行っているものにそこまで違いがなかったと思うんです。
でも今は見ているコンテンツが階層ごとにまるで違うから、文化的なものを含めた階級が生まれてしまう。
日本はそれこそ“縦の多様性”がめちゃくちゃあると思いますよ。

でも、大企業に勤めている子が得をしているかというと、そうでもない。
上司からのセクハラやパワハラに悩まされている子もたくさんいるようです。
いまだに、「結婚適齢期」というキーワードを発する子がいることにも驚きました。
「25〜30歳が適齢期だから、今から婚活して、結婚、妊活しなきゃ」とかって。

私はイギリスの国民保健サービス(NHS)を使って、無料でIVF(体外受精)治療を受けたんですが、当時は40歳までしかやってもらえなかったものが、最近改めて調べてみたら年齢制限が43歳に上がっていたんです。
テクノロジーや医療技術の発達が、適齢期などを気にしている日本の子たちの意識を変える突破口になるんじゃないかなって。

−−女性が抱える労働問題を解決するためには、どんな心構えでいたらいいのでしょうか。

ブレイディさん:
どんな言葉をかけたらいいのだろうって、書き手として考え続けています。
やっぱりみんな本当にもやもやしているから。

韓国の小説『82年生まれ、キム・ジヨン』が流行りましたよね。
この本の担当編集者に聞いたところ、韓国では女性たちがあの小説を読んでみんな怒ったらしいんです。
でも日本の読者は「泣きました」ってリアクションばかりだったと。
泣いているばかりじゃ何も始まらないんですよね。
韓国の人たちみたいに怒らないと、行動を起こすまでに至らない。

100年ほど前にイギリスで女性参政権運動をやっていたサフラジェットを知っていますか? 
彼女たちは参政権を得るために、街に出て暴れたんですよ。
当時、夫や子どもたちを優しく支えてくれる母性あふれる存在だとされていた女性たちが、暴力沙汰を起こすわけですから、男性たちはさぞ衝撃を受けたと思います。
でも、激しい運動を通じて「女性だって社会に参加すべき人間なんだ」っていうのを、男性たちにしっかりと理解させたわけです。

−−行動を起こすことが大切ですね。

ブレイディさん:
日本はジェンダーランキングがめちゃくちゃ低いって話題になりますよね(2024年は146カ国中118位)。
でも、15年連続1位になっているアイスランドだって、最初から男女平等の考え方が根付いていたわけではない。

1975年に女性たちが家事や育児、仕事をすべて放棄して街へ繰り出すストライキ運動を起こしたんです。
「女性の休日」と呼ばれるこのストライキにアイスランド女性の9割が参加したそうです。
9割ってすごくないですか。
そういう行動があったからこそ、今がある。
日本はもやもやしたり泣いたりしているだけで終わってしまって、まだ次の一歩に踏み出せない……。
生きづらい、きつい、という感じは膨張していると思うんですけど。

「yoi」でも、ウェルビーイングを取り上げていますけれど、自分だけのウェルビーイングじゃなくて社会全体のウェルビーイングも考えていかなくちゃいけない。
「私のウェルビーイングを突き詰めていきたいのに、制度とか社会からの邪魔が入るんだよね」って気づけたら、最初の一歩。自分のことだけ考えて動いても、必ず限界がおとずれます。
社会全体が少しでも上向くようにしないと、自分の暮らしも向上しないわけです。

−−社会全体のことを考える俯瞰的な視野を持たないと、自分だけ得をすればいい、自分が損をするのは嫌だ、という考えが広まってしまいますね。
「弱い」女性でいたくないから、男性側につこうとする人も出てきてしまいそうです。

ブレイディさん:
いわゆる名誉男性って言われる人たちですよね。
でも、日本に女性の首相が出てこないということが、名誉男性なんてやっていても限界があるということの証拠なのでは?
 たとえ男性に好かれて引っ張ってもらったとしても、男性と同等に活躍することが約束されていないですから。
人口の半分を占めている女性を活躍させないなんて、単純に国の損失だと思いますけどね。腹立たしいです。

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の中で、意見の異なる相手を理解する知的能力である「エンパシー」という言葉を、「他者の靴を履く」と表現して紹介しました。
たしかに権力を持っている人の靴は履き心地がいいし、得をすることももしかしたらあるかもしれない。

でも、自分が病気になったり、事故にあったりして権力者側にいられなくなる未来を想像することも大事です。
今ここにいる自分とは違う境遇になるかもしれない自分へのエンパシーです。
生活保護受給者をバッシングする動きもありますけど、自分だっていつ受給者になるかわからないのに。
あまりにも想像力が欠如している人が多い気がします。

家族にばかり面倒をみさせて国は何もしない

−−イギリスの若い世代の人は、どんなことに生きづらさを感じているのでしょうか。

ブレイディさん:
階層によってまったく違ってくるとは思いますが、イギリスは貧困がとても広がっているから、貧しい層は本当にお金がないですよね。
TikTokでは、一昔前なら自分たちが買ったものを紹介する動画が流行っていましたが、今は着回しを紹介する動画がよく見られます。
みんな新しい服を買うお金がないから。
「丈の長いシャツはこうすればボレロみたいにして着られますよ」みたいな。
マーガレット・サッチャー時代に、貧困層が増えたときにもDIYって言葉がすごく流行ったんですよ
時代が戻ってきてしまっている感じがします。

−−日本の若い世代では、親との関係性に悩んでいる方も多くいます。イギリスではどうですか。

ブレイディさん:
普遍的な問題なので、もちろんイギリスでも悩んでいる人はいると思いますが、日本の家族観って独特ですよね。
たとえば日本では、結婚は相手とするというより、“家”とする側面が強いように思います。

夫が先に他界した場合、死後離婚しておかないと義両親の介護をしないといけないとか、生活保護を受けるときは、親族や兄弟に「あなたが扶養できないんですか」って連絡がいきますよね。
家族に面倒を見させて、国は責任を放棄する。
欧州の人たちにこの話をすると「税金払っているのに国は何をしているの? そのための税金じゃないの」ってとても驚かれます

日本では、将来何かあったら国じゃなくて子どもたちに面倒をみてもらわないといけないという考えがあるから、教育熱心にもなるし、子どもと親の距離が近くなりすぎてしまうのかもしれません。
「困ったら家族でなんとかしよう」から、「社会全体で個人を支えよう」という方向に意識を変えていかないと。個人のために政治を行う国になってもらわないと困るから、社会に目を向けなければいけないし、そういった政治家を選ぶ必要がある。
個人の生活とそれを支えるべき政治がきっぱり切り離されてしまうと、その間を補うものとして家族の関係性の圧が強くなりすぎるのかもしれません。
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2024年10月29日

競争社会の優勝劣敗は「自己責任」というフェイク

競争社会の優勝劣敗は「自己責任」というフェイク
責任とは「失敗の後始末をすること」ではない
岡田 憲治 : 政治学者/専修大学法学部教授
2024/10/28  東洋経済オンライン

敗者 自己責任
今日蔓延している「自己責任論」にまつわるフェイクについて考えてみたい

「青少年の刑法犯罪は増加の一途」
「生活保護費の不正受給が蔓延し財政が逼迫」

もっともらしく聞こえますが、これらはフェイクです。
気がつけば、日本の政治や社会を考えるための基本認識に、大中小のフェイクとデマがあふれかえっています。

「『世界は狂っている』という大雑把で切り分けの足りないペシミズムに陥らないことが大切」と述べるのは、政治学者の岡田憲治氏。
大中小のフェイクについて考えることをスイッチにして、この世界を1ミリでも改善するための言葉を共有する道を探そうと企んで執筆したのが『半径5メートルのフェイク論「これ、全部フェイクです」』。
今回は、自己責任にまつわるフェイクについて考えてみたい。

気になる言葉「わたし責任取れませんから」

PTA会長だったときに、これまでやってきたことをやめるという比較的大きな決断をする場面になって、「じゃ、そうしましょう」と終わりにしようとすると、必ず不安を吐露する人が出てきました。

PTAは「卓球愛好会」と同じく、任意団体なので自由に運営の工夫をすればいいのですが、長いことやってきたことを変えるには勇気が必要なようです。

そんなとき、「でもやっぱり変えちゃマズいんじゃないですか?」と言ってくれる人の言葉に、どうにも気になるものがありました。
それは、「それを廃止してしまって、その後地域の人や以前の役員さんから文句を言われても、わたし責任取れませんから」というものです。

私は「責任なんてないし、取らなくてもいいんじゃない?」と返すのですが、相手は納得しません。
問題が重大でない限り、役員さんを不安にさせても楽しく活動はできませんから、「そうかぁ。もう少しいろいろ意見を聞いてみましょう」と言えます。

多くの人が行っている「失敗の脳内翻訳」

しかし、「これは今、マジでやめないとダメだ」という、みんなを苦しめている案件の場合は、もう仕方なく「何かあったら、全部僕が責任取るから大丈夫です」と言いました。
そう言われると、ほとんどの人は「そこまで言うなら、ま、いいです。それで」となります。

PTAの運営において責任が生ずるとしたら、その場面は「目の前の子どもたちの命を守る」と「会員から集めたお金をきちんと管理する」以外にありません。
基本的に、任意団体の活動には失敗がないのです。ボランティアですから。

だから責任は「目の前の子どもが危険にさらされたのに放置した」とか、「みなさんから集めたお金を公正に扱わなかった(横領した)」といった、「大人として当たり前の責務を果たさなかった」ということであって、それは「PTA役員の責任」ではないわけです。

どうしてこういうすれ違いが起こるかと言うと、私たちの社会の多くの人間が、責任を「失敗したことの後始末や尻拭い」と脳内翻訳しているからです。

裏を返せば、「失敗することを死ぬほど恐れるように教育されたこと」「失敗をした後のセカンドチャンスを、ほとんど用意してくれない社会で生きてきた」ということです。

「間違えるとアホと思われる」というおびえ

子どもの頃から正解を見つけてさっと先生に示し、決して間違えない、間違えたら「マジ、ヲワタ」と即断する、ノートの誤答はすべて消しゴムで消す、みたいなことを繰り返してきた人たちは、責任の本義(己の判断と行動とその結果を結びつけて考えること) を「失敗したダメな自分がそう烙印を押されて、それにじっと耐えること」と、独自の解釈をしてふさぎ込むのです。

だから、あれこれと事前に危険回避のための知恵を使います。
「答えを間違えるとアホだと思われるんじゃないかというおびえ」を小・中・高と12年間育て続けた大量の日本人は、PTAのやってきたもう必要のない習慣(「運動会の招待席へのお茶出しのシフト表をエクセルでつくってミーティングする」など)を「やめましょう」と言われただけで、何かのスイッチが入ります。

そして、「やめた結果起こる心配なこと(文句を言われる、批判される、勝手なことをしたと指摘される)」の場面を1秒くらいの間に先回りして脳内に浮かべて、「責任取れませんから」と言って、なおも無駄なミーティングのために時間をつくり、夕方の家事育児の時間を無理してズラしたりするのです。
「そんなのやめましょう」と言い出しっぺになることを避けるコストです。

競争社会での敗北は誰の責任か?

この「失敗は許されず、それが回避できなかったときは、黙って耐えてやり過ごす」という心の習慣は、PTAの現場を超えた社会生活においても同じように展開されます。
世紀転換後、規制緩和と競争の推奨、無駄を省いて効率よく優勝劣敗市場を生き延びようとする「ネオ・リベ」の風潮は、こういう過剰な自己卑下を「自己責任」という言葉で正当化させました。

各々が自分の才覚と努力とをもって競争社会に挑んだ結果だし、それは市場(アダム・スミスの言う「神の見えざる手」)が出した答えだから、敗北は自己責任であるという説明です。

でも、これは私たちの社会を、今日著しく萎縮させているよろしくない「フェイク」なので、やや強めに言っておきましょう。

「自己責任」などというものが問題になるのは、自分が「自由に選択することができた場合」だけなのであって、結果に至るまで「そのような条件を強いられざるをえなかった」、あるいは「自由に選択しろと限定された選択肢〞を無理に押しつけられた」場合には、問う必要も意味もないものです。

単体では弱くて卑小なる人間が、それでも己と他者の力を信じ、多くのチャンスを得て、失敗したり間違えたりしながら成長していくための胆力とポジティブな力を引き出させる工夫を「教育」と呼びます。

そのために不可欠なのは、徹底して「自分を重んずる人間になる」ために、「次のチャンスを提供し」「適合しない競争やステージとは別の選択肢を用意する」という3つです。

「公平」や「平等」は十分に用意されていない

にもかかわらず、今日蔓延している自己責任論は、成長すべき者たちに一番必要なこれらの3つの基盤を、ことごとく奪っていくのです。
人間は、他者からの肯定的評価なしには自分を自律的に支えることはできません。
そして、小さく卑小なる、世界に対して不完全情報しか持ち得ない人間は必ず失敗するため、とにかくセカンドチャンスが必要です。

そして、同時に「どうしても限界が来たら一度ゲームを降りる」ための階段の踊り場が不可欠なのです。
ちまたの自己責任論は、評価は冷徹な競争の「結果」だけだとし、だから公平だと強弁し、負けた者は次の勝負の段取りすら自分で調達せよと追い詰め、そしてゲームを降りた者たちを市場の敗者として、社会のメンバーから排除します。

百万歩譲って、「公平な競争なら仕方がない」としても、この世の社会経済的競争は、基本的な「公平」や「平等」を十分に用意していません。

教育を受ける豊かな経済基盤は、平等に配分されていません。
直感的な能力や豊穣な想像力に長けていても、その反面、合理的かつ迅速な情報処理が苦手な者たちを適切に評価する学力基準が用意されていません。

その時代に受け入れられやすい容姿は、自分では選択できません。
離婚や死別というアクシデントの責任は、子どもにはありません。
未知のウイルスで肉体がむしばまれる者も無傷の者もいます。
難病や障害をもっていることは自分にも起こりうる不条理です。
これらはすべて、自由に選択できなかったことです。

善処する方法を考えて決断する諸条件が、きちんと用意されていなかった者たちにとっては、それが理由でうまくいかなかったら、それは彼らの自己責任ではありません。

無念さと無力さは敗者の言い訳ではない

自己責任論は、そういう「選択できなかったこと」を前にしてたたずんでいる人間の無念さや無力さなどをすべて「敗者の言い訳」と排除して、なおも「そうなることを避けるための努力が足りなかったのだ」と追いかけて来て切り捨てます。

なんと傲慢な理屈なのでしょう。
自分の努力によってすべてを成し遂げたと結果から逆算して、人の善意や運にも恵まれたことを忘れる、自分に対しても他人に対しても浅はかな考え方です。
そしてそれを「この世の冷徹な原理だ」とします。最悪のフェイクです。

明日不運にも破産したり、病気になったりしても、そう言えるのでしょうか?

国境を越えてヒトもモノもカネも行き来する、80億人もの人がいるこの星で起こる経済の動きなど、誰一人として自覚的にコントロールなどできません。必ず富の分配には歪みが生じます。

想像できないほどの数の遺伝子が行き交ってどんな人間が生まれるかは誰にもわかりません。
遺伝子の偶然のミスプリントで生まれるがん細胞がその後どうなるかなど、世界最高の医学でも解明できません。
離れていく他者の心はお金ではつなぎ止められません。

人間は不完全情報の下で生きている以上、森羅万象に責任など取れるわけがないのです。

格差の構造を放置・堅持しようとしている者

しかしそれは、すべての人間が責任から自由という意味ではありません。
責任を取るべき者とは、巨大で複雑なシステムを生きぬく条件が適切にそろわないために不当な扱いを受けているおびただしい数の人たちの命とエネルギーを搾取して、運と不運をせこくかぎ分けて、いろいろと諦めねばならない人たちを生み出す「格差の構造」を放置し堅持せんとしている者たちです。

勝者のためのゲームのルールをつくる者(市場の勝者)と、そしてそれを修正しようともしない監視者(政治家)です。

とりわけ、小さく弱く不利な立場で生きている人々を動員して、彼らの命と引き換えに壮大な社会資源の動員を行い、国民の人生と生活を左右するような大きな決断(戦争!)をする統治エリートたちの責任は、絶対に放置してはなりません。

病と不運で経済が立ち行かなくなった者と、満州国をでっち上げた者とを、同じ「自己責任」でくくってよいはずがありません。
言わずもがなの話です。
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2024年10月30日

今の時代「固定電話」は本当に必要? かかる費用やメリットを教えて!

今の時代「固定電話」は本当に必要? かかる費用やメリットを教えて!
10/28(月) ファイナンシャルフィールド

固定電話の現状と必要性を解説します。
また、費用やメリット・デメリットを交えて固定電話を持つ利点や比較を行うため、固定電話の利用を検討している方の判断材料として、ぜひ参考にしてください。

固定電話の種類

固定電話には4種類があり、それぞれ通信方法と料金が異なります。

アナログ回線は、NTT東日本・西日本が提供するアナログ信号の電話回線であり、電話加入権を購入して回線の利用券を得ることから「加入電話」ともいわれています。

次にISDN回線は、デジタル化した音声をアナログ回線と同じ導線を使って伝送しますが、FAXやインターネットなど電話と同時に使えるのが特徴です。

IP電話は、インターネット回線を経由して「050」で始まる番号を使う電話システムです。
ただし、フリーダイヤルや110番などの緊急通報電話をかけることができません。

最後に光電話とは、インターネット接続の光ファイバーケーブルを使った電話回線です。
光回線を使った通信の安定性と高音質が特徴ですが、停電時や通信障害が発生すると使えないケースがあります。

固定電話にかかる費用

NTT東日本を例に、アナログの固定電話で必要な費用をご紹介します。
まず、新規加入の場合、NTT東日本の「加入電話」では、契約料880円と施設設置負担金の3万9600円が必要で、合計4万480円となります。

施設設置負担金なしで設置できる「加入電話・ライトプラン」では、契約料880円と工事費3300円の合計4180円が必要です。
さらに、表1のとおり、毎月の費用として「回線使用料」が発生します。
出典:NTT東日本「毎月の基本料金」から筆者作成

ほかに、屋内配線使用料として加入電話・加入電話ライトプランともに66円、ユニバーサルサービス料2円、電話リレーサービス料1.1円などの負担が必要です。

通話料金としては、県内通話・県間通話は全国一律9.35円/3分、携帯電話へは17.6円/60秒となります。

固定電話のメリット・デメリット

総務省「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(令和5年度第3四半期(12月末))」によると、固定電話の契約数は5004万回線となり、前期と比べて0.5%減少しています。
「0ABJーIP電話」は3621万回線「NTT東西加入電話」は1263万回線と続きます。

固定電話をもつメリットとしてまず挙げられるのは、「FAXが使える」という点です。
特に法人の場合にはFAXの送受信が求められるケースがあります。
また、停電時でも回線から電力供給できる電話機であれば、電話が利用できます。
さらに、通話料金は携帯電話よりも安価です。

デメリットとしては、導入や解約時に工事と費用が必要となる点が挙げられます。
NTT東日本の「加入電話」の場合、施設設置負担金として3万9600円が必要です。
また、転居の際には、番号の変更が必要になります。

光回線の固定電話という選択肢

現在は固定電話の代わりにインターネット回線を使った電話を自宅にひく方が増えています。
回線によりますが、従来の電話機をそのまま使用し、固定電話の電話番号を引き継ぐことも可能です。

フリーダイヤルや110、119番などの緊急電話も使えるため、従来の固定電話とほぼ同等のサービスを利用できます。
光回線の契約が必要ですが、すでに回線を契約している場合はすぐに使えます。

例えば「フレッツ光」を契約している場合、提供する「ひかり電話」を使うためには月額使用料として550円の追加で可能です。
日本国内の加入電話への通話料は8.8円/3分、携帯電話へは17.6円/60秒となります。

電話加入権の購入が不要かつ月額利用も安価でありながら、ナンバーディスプレイなどのオプションサービスも充実しているため、多くの方に選ばれています。

固定電話は手軽に持てる

従来の固定電話は設置の費用や月額料金が必要ですが、インターネット回線を利用した「光回線電話」は、手頃な価格で固定電話を持つことができます。
現在契約中の回線により契約方法や料金が異なるため、まずは問い合わせてみましょう。

出典
総務省 電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(令和5年度第3四半期(12月末))

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

ファイナンシャルプランナー
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「とりあえず薬を」という横柄な医師が"秒"で黙る…医師・和田秀樹が伝授「診察時に出すと効果的なアイテム」

「とりあえず薬を」という横柄な医師が"秒"で黙る…医師・和田秀樹が伝授「診察時に出すと効果的なアイテム」
2024年10月28日 PRESIDENT Online

人は誰もが老い病にもかかる。
それらとどのように向き合えばいいのか。
医師の和田秀樹さんは「医者は決して万能ではないし、医者の言うことは絶対ではない。薬の種類も量も患者自身で決めていい。
賢い人は、医者の言いなりになることの愚かさを知っている」という――。
※本稿は、和田秀樹『脳と心が一瞬で整うシンプル習慣 60歳から頭はどんどんよくなる!』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

■医者の言いなりにならない賢さを持とう

60代以上の方の関心事といえば、老いや病気に関するものが圧倒的に多いのではないでしょうか。

誰だってできれば老化もしたくないし、病気にもなりたくはありません。
けれど生きている以上、人は老いていくし、病にもかかります。
そういったなかで、それらとどのように向き合うかという姿勢は、人生の質そのものに関わってくると言えるでしょう。

ここではそういったことを踏まえ、私が考える「老いや病気との知的な向き合い方」をお伝えしていきたいと思います。

読者の皆さんのなかには、かかりつけの病院がある方も多いかと思います。

ここで改めて振り返ってみてほしいのですが、その医師の言う通りに薬を服用して、調子は悪くなっていませんか?
 あなたが抱える疑問や不安に対し、その医師は雑な対応をとったりしていませんか? 
あなたの体質や状況を加味することなく、「とりあえず薬を飲んでおけば大丈夫」という雰囲気を出していませんか?

もし思い当たることがあるのなら、その医師を疑ってみてください。
そしてその人が不機嫌になるのを承知の上で、診察の際、質問してみたり、臆せず自分の意見や希望を言ってみたりしてみるのです。
メモをとったり、録音したりするような姿勢を見せると、医者も横柄な態度はとれず、丁重に対応しようとするのではないでしょうか。

それでも自分が安心できるようなコミュニケーションがとれないのなら、別の病院を探すことを視野に入れてみましょう。

多くの方が、医者という存在を絶対的なものだと思い込んでしまっているように感じます。
どの病院に行っても、変わらず最善の治療が受けられるものだと信じている人は少なくないでしょう。

けれど、決してそんなことはありません。
医者は万能ではないし、彼らの言うことは絶対ではないのです。

■本当に有益かわからない薬でも杓子定規に処方するケースが

経験のある方も多いでしょうが、病院が効率重視に陥り、一人ひとりをじっくり診ることができなくなっているというケースは多々あります。
その人の状態をつぶさに観察することなく、ひたすら数値を正常値に戻すことに必死になってしまう。
そのために、その患者にとって本当に有益かどうかわからない薬であっても、杓子定規に処方するのです。

私は、安易に薬に頼るべきではないと思っています。

もちろん、風邪や頭痛などが辛いとき、一時的に力を借りるぶんには問題はないでしょう。
しかし、長期にわたって薬を飲み続けることで、内臓の機能が衰えていくことも考えられますし、多剤服用のリスクもあります。

ですが、医者がこういった薬の副作用について話すことは多くありません。

高齢になるほど薬の副作用は出やすくなるものですから、薬を飲んで体調が悪くなったのであれば、時には薬を捨てる勇気も必要になってくると思います。

血圧、血糖値、コレステロール値……大切なのは、血眼になってこれらの数値を正常値に戻すことではなく、自分の体からのサインに目を向けることです。

私は血圧が最大220ですから、高血圧とされる140をはるかに超えています。
それでも医者から処方された通りに薬を服用することはありません。
指示通りに薬を服用して無理に血圧を下げてしまうと、頭がボンヤリしてしまうからです。

そのため、自分で薬の量を調整しながら、おおよそ170あたりを維持できるようにコントロールしています。

また、血糖値に関しても放っておくと600くらいになります。
正常な血糖値は140未満と言われていますから、こちらも平均よりかなり高い状態ですが、処方された通りの量は飲まず、運動をすることで300くらいまで下げています。

薬を服用して無理に正常値に近づけようとし、不調になるくらいなら、たとえ将来的に病気になるリスクがあったとしても、今、心地よく毎日を過ごすことのほうが、私にとっては重要なのです。
必要以上に健康を気にして我慢を強いられる生活を送るよりも、長生きにこだわらず、死ぬまで楽しく、自分らしく生きたいと思っています。

自分が受ける医療は自分で決めていいと私は思います。
それは、自分がどう生きたいかということにそのままリンクするでしょう。

あなたの医者は、あなたの人生観や死生観を理解しようとしてくれる人ですか?

大事な命を任せるに足る人でしょうか?

常にそんな問いを持ってみてください。
医者の言いなりにならないということは、シニア世代を迎えた私たちの人生の質を向上させる、大切な知性だと思います。

■医者も病院も、自分で見極め、選ぶ

それでは、自分にとってよい病院、そしてよい医者とは、どのようにして見分けるのでしょうか?

まず先にお伝えしておきたいのが、恐ろしいことに、日本の医師は、患者のその後の人生については考慮せず、「死にさえしなければなんでもいい」と思っている人が圧倒的に多いということです

彼らは、自分の病院を訪れる患者の生活の質がその後どれだけ低下してしまうか、どのような後遺症が残るのかといったことには、残念ながら関心を示しません。
また時には、患者よりも、自身のメンツを優先することも往々にしてあります。

そういったなかで、患者の想いや不安にしっかりと向き合い、適切な治療を施してくれる医者に巡り合えるかどうかは、非常に重要です。

よい医者と出会えるか否かで、心身の健やかさや安定感、そして人生の幸福度は大きく変わってくるでしょう。

信頼できる医者の条件の一つとして、ことさらに標準的な数値や方法にとらわれるのではなく、患者一人ひとりの状態に合わせた、柔軟な治療ができるということが挙げられます。
「基準値至上主義」の医師は信用できないと私は思っています。

たとえば薬を処方したあとは経過観察を丁寧に行い、この患者さんは薬の量を減らしたほうがよいようだとか、この方は血圧が多少高くても調子がよさそうだなどと、患者さん一人ひとりの状態を踏まえながら、柔軟に対処すべきです。

実際に私も、「先生に処方された薬を飲んだら調子が優れない」などと患者さんから言われれば、すぐに量を減らしたり、別の薬に替えたりします。
そのようなことを繰り返しながら、その患者さんにとって最適な治療法を見つけていくのです。

また、特定の疾患や臓器だけを診る、というスタンスの病院は推奨しません。
その人の年齢、体質、その他の持病などといった要素も考慮しながら総合的な治療を施してくれる病院を探しましょう。
そういった意味では、個別の臓器を専門的に診ることが多い大学病院は、高齢者にとっては最良の選択とは言えないと感じています。

そして主治医は、話すと気持ちが楽になるような、通院するのが楽しみになるような人であることが大切です。
心身を健康にするための病院で、不安やストレスを抱えてしまっては本末転倒でしょう。

場数を踏めば、相性のよい医師と出会える可能性もそれだけ高くなります。

医者も病院も、自分にとってベストな選択肢を自分で見極め、選ぶ。
それはシニアに求められる大切な知恵だと思います。

■健康診断を絶対視する必要はないと理解する

健康診断の結果に一喜一憂したり、不安をあおられたりしている方も多いことと思います。
そのような方には衝撃的かもしれませんが、私は、健康診断の数値を絶対視する必要はないと思っています。

その理由は、検査結果と実際の健康状態がリンクしていないから。
数値が異常でも健康な方はいますし、その逆で、数値が正常でもあっても病気にかかる人もいます。

このような現象が起きる理由は、日本の健康診断は、相対評価によって「正常」の数値を設定しているからです。
健康とみなされる人たちの数値から平均値を割り出し、その95%の範囲内に収まる人を「正常」、そこから外れる人を「異常」とします。

つまり、例えば「コレステロール値が異常」という結果が出た場合も、あくまで平均値から外れたというだけのことであり、明らかに病気になるというエビデンスがあるわけではないということです。

健診では何十項目という項目を検査されるかと思いますが、そのなかで病気との明らかな因果関係を持つのは、血圧や血糖値、赤血球数など5項目程度ほど。
それ以外の項目に関しては、明らかな異常値ではない限り、将来的に病気になるというエビデンスはないのです。

コレステロール値に関しては、高いほうが免疫力が上がり、がんになりづらくなることがわかっています。
また、血糖値を無理に下げようとすると、低血糖になり、意識障害のリスクが高まります。
また、血圧を下げ過ぎると転倒の危険性が高まります。

こういったことを加味せず、やみくもに正常値を追いかけることは危険です。
健康診断を受けるより、脳ドックや心臓ドックを受けるほうが、突然死につながる恐れのある病気の発見に役立つので、よほど価値があると言えます。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
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2024年10月31日

ネガティブなことに向き合うときこそ笑いや遊び心を加えよう

ネガティブなことに向き合うときこそ笑いや遊び心を加えよう【人気エッセイストが提案】
10/29(火) 毎日が発見ネット

センスよく暮らしたい、おしゃれだと思われたい、そう考えている方はたくさんいると思います。
でも、センスっていったい何で、どうやったら身に付くのでしょう? 
『センスいい人がしている80のこと』(扶桑社)は、50種類の仕事、約50か国を旅してきた作家・有川真由美氏が「センスいいな」と思った魅力的な人のこと、感性を磨くためにやってきたことを満載した1冊です。
今回はその中から、センスがいい人がしていた「作法」についてご紹介します。
マネしやすいことばかりなので、日々の生活に取り入れてみるのもいいかもしれません。

※本記事は有川真由美著の書籍『センスいい人がしている80のこと』から一部抜粋・編集しました。

愚痴を「笑いのネタ」にして話す

愚痴なんて言わないほうがいいとわかっていても、「だれかに愚痴らなきゃ、ガス抜きができない」「少しでもつらい気持ちを聞いてほしい」ということがあります。

そんなときは、いいではありませんか。愚痴っても。

ただし、愚痴には流儀があります。
愚痴の言い方にも、センスのよし悪しが出るのです。

センスのよくない人の愚痴は、目を三角にして口が歪み、怒りや悲しみに満ちています。
「こんな会社、やってられない。幹部がひどい人ばかりで......」とだらだら続くので、聞いているほうも不快な感情が伝染して、引きずってしまいます。

センスのいい人は、愚痴を笑いのネタとして楽しく語り、早めに切り上げます。
「そうきたか!って、もう笑うしかない。私、この会社でずいぶん精神力が養われたと思う」と、ポジティブに締めるので、聞くほうも安心して乗ってきます。
「私も夫との生活を長く続けて、悟りを開いた境地よ」と、明るく愚痴れるわけです。

そんな人は、嫌なことをそのまま愚痴るのは"野暮"だと思っています。

ユーモアのセンスや遊び心をまとって、相手を楽しませることが"粋"で美しいことだと、どんなことも笑いに変換するのです。
たとえばサラーリマンの悲哀を詠った川柳も、クスリとする笑いがあって、カッコいいとさえ感じるほど。

「粋とは、痩せ我慢の美学」と聞いたことがあります。
いい意味で格好をつけて、相手に喜んでもらうことで自分も救われ、品格も育っていくのでしょう。

身近な人に言いにくいことを言うときも、茶化すのではなく、真面目でありながら少しだけユーモアを交えて和ませる。
最後は「期待してます」とにっこり終わらせ、後味さわやか。
ネガティブなことに向き合うときは、ひとさじの笑いや遊び心を加えるのが作法といえます。

そもそもユーモアとは、つらいことを乗り越えるために生まれたものなのです
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オーバーコミュニケーション社会が引き起こす人格崩壊 氾濫する「匿名の言論」

オーバーコミュニケーション社会が引き起こす人格崩壊 氾濫する「匿名の言論」
10/29(火) Yahoo!ニュース オリジナル THE PAGE

 世界の有名観光地などで、観光客が地域住民の生活を圧迫するオーバーツーリズム(観光公害)が問題になっています。
日本でも京都などで大きな問題になっており、他人事ではありません。

 建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、オーバーツーリズムについて「コミュニケーションの過剰による社会的弊害」の一つであると指摘し、「オーバーコミュニケーション」の問題であるといいます。若山氏が独自の視点で語ります。

ビュルツブルクのユースホステル

 若いとき、ヨーロッパをヒッチハイクで放浪していて、ドイツのビュルツブルクという街のユースホステルに泊まったことがある。
古い城館を改装したようなユースであった。
スペインにはパラドールという古い城館や修道院を改装した公的なホテルチェーンがあって、きわめて魅力的な施設となっているが、それに似ていた。

 一方、日本の伝統建築は木造であるから、このような再利用が難しいのであるが、それでも最近は小さな木造の古い家を改装して、インターネットをつうじた簡易な宿泊に利用することが人気である。
外国人観光客も、日本文化のデリケートな性格を理解しはじめたようだ。

 さてそのビュルツブルクのユースホステルで、ヨーロッパを周遊中のドイツ人若者二人と相部屋になった。
僕が日本から来た大学院生で、人生に疑問を感じてヨーロッパを放浪しているのだというと、話がはずみ、彼らはそのときのドイツ社会をオーバーエデュケーションだと批判した。
ドイツでは大学などへの進学率が過剰に高くなっているということで、なるほどそういう批判もあるのかと、僕はこの言葉が不思議に頭に残ったのだ。

 最近は、オーバーツーリズムがよく話題になっている。
観光地に人が来すぎて、地元の人が迷惑することである。

 しかしオーバーコミュニケーションという言葉はないのではないか。
最近考えはじめたことだが、いわば僕の造語である。

オーバーコミュニケーションとは何か

 ツーリズムも、エデュケーションも、一種のコミュニケーションであるととらえられるかもしれない。
そういう意味でのコミュニケーションは、人類の知的進歩をうながすことであり、過剰となって弊害をもたらすということは、これまでの常識では考えにくかった。

 しかし昨今の、SNS上における誹謗中傷、学校のいわゆるイジメ、監視カメラの氾濫と顔認証、AIの発達とその悪用、闇バイトのサイトを使った匿名流動型犯罪などを考えると、単なる「情報過多」という言葉ではとらえられないような、コミュニケーションの過剰による社会的弊害が現れているように思えるのだ。

 ここでは、オーバーツーリズムもオーバーエデュケーションも、また過度の都市集中も含めて、オーバーコミュニケーションという現象について考えたい。
遠隔地を結ぶ情報技術によって都市集中に歯止めがかかるという見方もあるが、それはものごとの表面しか見ない意見であって、長期的にはコミュニケーションツールの発達はリアルの都市集中を促進するものだ。
19世紀以来の人口爆発は、都市人口の爆発であり、都市集中は交通技術と情報技術の発達と並行する。これまでにも述べてきた加速的な都市化現象である。

 そして今、人類の社会全体がオーバーコミュニケーションという都市化の過剰に陥っているのではないか。

テレビ・パソコン・スマホが人間を衰退させる?

 東京の地下鉄などでは、スマホを見ながら列車を乗り降りする人を多く見かける。
彼らは周囲に迷惑をかけていることに気づかない、あるいは気づかないふりをしている。

 かつて大宅壮一はテレビの普及を「一億総白痴化」と評した。
僕の友人は「テレビでハクチ化、パソコンでオタク化、スマホでサル化」と評する。
極端な表現だが一理ある。
要するにそういったコミュニケーション手段によって「人格」が微妙に変化しているのだ。

 人は社会的動物であり、人間相互のコミュニケーションが文化文明の基本である。
文字というものが成立してから、法律や契約が成文化されることによって、確固たる国家システムが誕生した。
1960年代、マーシャル・マクルーハンは、活版印刷の時代からテレビの時代に移ることによる人間の社会的性格の変化をメディア論として展開した。
そしてその後、人間の社会では、パソコン、携帯電話、インターネット、スマホ、AIというかたちで、コミュニケーションのツールだけが加速的(爆発的)に発達している。

 もちろんこうしたコミュニケーション手段の発達は人類の文明の発達であるが、その過剰は、人類の一人一人を衰退させているのではないか。
あるいは、表層的な言葉や映像が氾濫することによって、本当の(魂の)コミュニケーションが難しくなっているのではないか。

同調する人格

 「人格」というものは、単に個人の特性というより、個人とその社会との関係の特性というべきだろう。
社会におけるコミュニケーションの体系が個人の人格をつくるのだ。

 テレビ(特に地上波)をみていると、今の日本は周囲に同調する人が多いと感じる。
バラエティ番組ではタレントとかゲイニンとかアイドルとかといわれる人たちが、そのスタジオに満ちている空気に同調し、その空気を読めない人をバカにして笑い合っている。
報道番組のコメンテイターたちは、どこかで聞いた同じような意見を繰り返すばかりだ。
英語圏では「ステレオタイプ」というが、この言葉が日本に広がらないのは、日本ではそれがあたりまえだからではないか。
日本中の言論がステレオタイプになっているのではないか。
個性の時代といいながら個性のない時代になっている。

 安倍晋三元総理と森友学園や加計学園の問題で、「忖度」という言葉が人口に膾炙(かいしゃ)したが、日本では忖度する人格すなわち「同調する人格」でないと、うまく生きていけないのかもしれない。

 しかし物事には裏がある。今の日本には、「同調する人格」の裏返し、すなわち匿名化する人格も問題となっているのだ。

匿名の人格・監視される人格

 SNS上の誹謗中傷は、ここに書くのもはばかられるほど過激である。
サル化した人たちが発する匿名の言葉は、本当のサルの爪以上に凶暴だ。
今の日本には「同調する人格」とは逆の「匿名の人格」が存在するのである。
その「匿名の人格」による「匿名の言論」の氾濫が、本当の言論によるコミュニケーションを機能不全に陥らせる。
最近、EUが巨大IT企業に厳しくなっているもそのことを感じているからだろう。

 そして同時に、監視カメラと顔認証などの個人特定手段が社会に浸透している。
中国やアメリカの犯罪は、監視カメラとプロファイリングで捕捉されているようだ。
われわれのような普通の日本人も、ネット上の買い物や閲覧したサイトなどが記録されている。
犯罪が匿名化すると同時に権力も匿名化している。

 今われわれは「匿名の人格」からの攻撃にさらされながら、政治権力と情報資本によって「監視される人格」としても生きていかなくてはならない。

 人間の社会に、人類がこれまでに積み上げてきた人格とはまったく異なる人格が出現しているのだ。
やや大袈裟だが、この混乱を「人格崩壊」と表現したい。

気候崩壊と人格崩壊

 人類は都市化する動物であり、不可逆的かつ加速的に都市化する。
しかし人類社会には、時に都市化の過剰という現象が見られるものだ。
エジプト文明にも、ローマ帝国にも、中国歴代王朝にも、日本の藤原王朝にも、都市化の過剰現象が見られ、社会体制の衰退につながった。

 工業生産によって排出される炭酸ガスが地球を覆い、地球を沸騰させ異常気象を招来する。「気候崩壊」だ。
同じように、インターネットを利用する情報機器が社会に浸透し、オーバーコミュニケーションの弊害をもたらす。「人格崩壊」だ。
前者は、肉体的都市化の過剰であり、後者は頭脳的都市化の過剰である。
人類は、外からの文明攻撃ばかりでなく、内からの文明攻撃にもさらされている。

 昨今先進国に現れている排他的国家主義の伸長は、単なるグローバリズムに対するものではなく、このオーバーコミュニケーションに対する反動ではないか。
彼らに言い訳を与えるわけではないが、プーチンやネタニヤフやトランプや金正恩の行動が示しているのは、コミュニケーションの拒否ではないか。
「サル化」による人格崩壊と無関係ではないような気がする。

 多くの人も、多くの国も、どうしたらいいのか分からなくなっているように思われる。
僕らにできることは、とりあえず、自然を大切にし、孤立を大切にし、アナログを大切にすることだろう。

 半世紀以上も前の、ビュルツブルクのユースホステルの一室には、本当のコミュニケーションが成立していたような気がする。
あのドイツ人若者二人は、今何を思っているのだろうか。

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