2024年11月23日

共産党が「除名」「除籍」を乱発して元党員が怒りの提訴…元幹部は「党内のリーダーシップに問題があることは明らか」と指摘

共産党が「除名」「除籍」を乱発して元党員が怒りの提訴…元幹部は「党内のリーダーシップに問題があることは明らか」と指摘
11/22(金) デイリー新潮

田村智子委員長は「パワハラ根絶」を表明した

 自己批判の強制はパワハラ──。
共産・社会主義に関心のある人なら、隔世の感を覚えるだろう。
読売新聞や産経新聞などは11月13日、日本共産党から除籍された元党福岡県常任委員の神谷貴行氏が党などを相手取り、東京地裁に提訴したと報じた。
神谷氏は党員・党職員としての地位確認と、県委員会からパワハラなどの被害を受けたとして数百万円の損害賠償を求めている。

 近年の共産党は除名や除籍を“乱発”し、多くの人々を呆れさせてきた。
それでも共産党に反省している様子は見られず、それこそ自己批判が足りないのではないかと指摘したくなる。
まずはなぜ神谷氏が除籍されてしまったのか、その原点から経緯を辿ってみよう。

 共産党で要職を歴任してきた松竹伸幸氏が『シン・日本共産党宣言 ヒラ党員が党首公選を求め立候補する理由』(文春新書)を上梓したのは2023年1月のことだった。

 松竹氏は党改革が急務だとし、党首公選制、自衛隊合憲、日米安保堅持など現実路線の転換を訴えた。
すると共産党は翌2月、「党規約違反」と一方的に除名処分を下してしまったのだ。

 議論さえ許さぬという共産党の高圧的な姿勢を朝日新聞が問題視し、社説「共産党員の除名 国民遠ざける異論封じ」を掲載。
《党のあり方を真剣に考えての問題提起を、一方的に断罪するようなやり方は、異論を許さぬ強権体質としか映るまい》と強く批判した。

 これに共産党は朝日新聞を攻撃するという暴挙に出る。
当時は党委員長だった志位和夫氏が「朝日に指図されるいわれはない」と感情的に反論。
その独善的な発言に呆れる声が続出したのは言うまでもないが、何と志位氏は当初、「産経に指図されるいわれはない」と社名を言い間違えていた。これで失笑も買ってしまう。

きっかけは松竹氏の除名問題

 それでも共産党は除名・除籍処分の乱発を続ける。
実は23年1月には、京都府内で長年、共産党活動に従事し、多くの党員から尊敬を集めていた鈴木元氏が「志位和夫委員長への手紙」(かもがわ出版)を上梓していた。
やはり鈴木氏も著書で党首公選制を主張したため、共産党は3月に除名処分を下した。

 さらに6月にはSNSで「党の閉鎖的で独善的なイメージを打ち破るには綱領を大きく変え、地道に活動するしかない」などと訴えた、兵庫県南あわじ市議だった蛭子智彦氏も除籍した。
蛭子氏は《共産党はどの党よりも民主的と信じてきました。
しかし長い時間党と過ごして信じる心がボロボロと壊れていく苦しみに今あります》と悲痛な叫びを投稿している。

 そして共産党を提訴した神谷貴行氏は、松竹氏の除名に強い疑問を持っていた。担当記者が言う。

「神谷さんは京都大学に在学中、共産党系の全学連委員長を務めました。
その後、党の専従職員として活動してきたほか、『紙屋高雪』のペンネームで漫画評論家としても知られています。
ちなみに2018年、安倍政権の“論点ずらし”を揶揄する『ご飯論法』のネーミングに関わり、その年の新語・流行語大賞に選ばれたこともあります。
そして神谷さんは松竹さんの除名問題に納得できなかったようなのです」

「自己批判」の強要

 神谷氏はサンデー毎日の取材を受け、次のように経緯を説明した(註)。
神谷氏は「松竹氏の処分を見直せ」という意見を共産党の福岡県委員会総会で表明したが、これを県委員会は否決した。

 神谷氏は自身のブログで否決に至る経緯を説明し、「自分の意見は否決されたが、党の決定には従う」と投稿した。
ところが共産党はブログの執筆が「党内での自由な発言、討論を保障した党規約の精神を踏みにじる行為」と一方的に決めつけ、今年8月に除籍を発表したのだ。

「共産党の説明に納得できる人は皆無ではないでしょうか。
党内で自由な発言が許されているのなら、ブログの投稿が問題視されるはずがありません。
むしろ4人のベテラン党員に除名や除籍を乱発するという異常事態から、党内では自由な発言が許されていないことが改めて浮き彫りになったのです」(同・記者)

 除籍に至るプロセスも極めて異常だったと神谷氏は証言している。
共産党は5人や11人という多数で1人の神谷氏を査問し、「謝れ!」などと詰問。
「自己批判」や「ブログ削除」を強要した。神谷氏が党をパワハラで提訴した原因だ。

共産党の退潮は明白

 ちなみに松竹氏も共産党を提訴している。
元参議院議員で共産党のナンバー4にあたる政策委員長を務め、2005年に離党した筆坂秀世氏は「共産党内では神谷さんの除籍を撤回してほしいという意見表明が相次いでいるそうです」と言う。

「私は神谷さんに会ったことはありませんが、人望が厚い人だと聞いています。
福岡県の党員は『神谷さんの除籍は納得できない』と大騒ぎしているそうです。
松竹さんから始まって神谷さんまで、共産党は4人を除名・除籍しました。
いずれも現場で地道な党活動を積み重ね、党員から信頼されてきたという共通点があります。
それを納得できる理由がないにもかかわらず、党から一方的に追い出したわけです。
とてもではありませんが、今の共産党はガバナンスが崩壊していると言わざるを得ません。
公党にあるまじき人事権の濫用であるのは明らかです」

 さらに筆坂氏は、松竹氏や神谷氏が一歩も退かずに撤回を求め、堂々と党を提訴したことに注目する。

「かつて共産党が勢力を維持していた時代に除籍や除名の処分が下ると、元党員は萎縮したものです。
もちろん暴力を振るわれるなどということはありませんでしたが、それでも何となく脅威を感じ、身辺に不安を感じることが珍しくなかった。
松竹さんや神谷氏が撤回を求めて訴訟を起こしたのは、もちろん2人に対する処分に問題があるからですが、共産党が落ち目になっているという点も指摘できると思います」(同・筆坂氏)

志位議長の問題点

 日本共産党中央委員会議長の変遷を見ると、野坂参三、宮本顕治、不破哲三の3氏が歴任した後、今年1月に志位氏が就任した。
筆坂氏は宮本、不破、そして志位の3氏で比較すると、リーダーシップの差が歴然としていると指摘する。

「端的に言って、宮本さんや不破さんの悪口を言う党員はいませんでした。
例えば宮本さんは毀誉褒貶が相半ばする政治家だったとはいえ、戦前の軍部独裁に公然と異を唱え、あの中曽根康弘さんが『敵ながらあっぱれ』と評したことは重要でしょう。
宮本さんも不破さんも党員が喜んでついて行きましたが、志位さんの悪口を言う党員はいっぱいいます。
選挙で負け続けていることから力量に問題があることは明らかですし、党員に対する包容力に欠けているためリーダーシップがなく、誰も付いてきません。
その結果、志位氏は除名や除籍を乱発せざるを得ないというわけです」(同・筆坂氏)

註:〔共産党〕共産党を除籍、解雇された漫画評論家 「パワハラ的に問い詰められ…一方的に排除」と訴え(サンデー毎日:9月15日号)

デイリー新潮編集部

posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする