2024年12月01日

「一晩寝かせて考える」は本当に賢明か? 最新の心理学実験でわかったこと

「一晩寝かせて考える」は本当に賢明か? 最新の心理学実験でわかったこと
11/29(金) クーリエ・ジャポン

難問を解けずに行き詰まったら、どう突破口を見いだせばよいのだろう。

とりあえず寝るべしと豪語した偉人たちもいる。
しかしそれは科学的に有意義なことなのか?
 そうした睡眠の効果を検証した最新の研究を、英国の心理学者が紹介する。

「夜に解くには難しい問題も、睡眠委員会が取り組んでくれた翌朝に解決しているという経験はよくある」と言ったのは、作家のジョン・スタインベックだ。

ほかにも多くの人が、夢のなかで突破口や革新的なアイデアを思いついたと主張してきた。
こうした言い分が現代科学によって裏づけられていることが、近年の睡眠の科学研究から示されている。

2024年のある研究で示されたのは、睡眠のおかげでわれわれはより合理的で、充分な情報に基づいた判断ができ、紛らわしい第一印象に惑わされずに済むということだ。

米デューク大学の研究者たちが実施したこの実験で、ガレージセールのバーチャルゲームに参加した被験者たちは、不要品が入っている箱をいくつもあさった。

箱に入っている品の大半は大して価値がなかったが、そこにはより高価な特別のものがいくつか混じっていた。
被験者たちは数箱あさり終わってから、気に入った一箱を選ぶよう求められ、その箱に入っている品物の価値に相当する報奨金を獲得することになった。

どの一箱を選ぶかすぐさま決めなければいけなかった場合、被験者たちはその中身全部ではなく、最初に見た数品によって箱を査定しがちだった。
つまり、被験者たちは遭遇した最初の情報に過度に影響され、その後の情報を判断材料として考慮しなかったのだ。

一方、睡眠をとって翌日に一箱を決定した場合、被験者たちはより合理的な選択をし、高価な品が箱のどこにあったかはその決定に影響しなかったようなのだ。
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「暑さも寒さも彼岸まで」とはどんな意味?彼岸とはいつあるもの?

「暑さも寒さも彼岸まで」とはどんな意味?彼岸とはいつあるもの?
2024.11.30 ※FUNDO

励ましの意味でも季節的な意味でも使用される言葉、それが「暑さも寒さも彼岸まで」です。

しかし、ここで言う「彼岸」とは具体的にどのような時期までを意味するのでしょうか?
今回はそんな「暑さも寒さも彼岸まで」について解説します。

「暑さも寒さも彼岸まで」とは

ここでは「暑さも寒さも彼岸まで」の意味を解説します。

「暑さも寒さも彼岸まで」はどんなにつらいことでもいずれ時期が来れば自然と去っていくということを意味することわざです。

ここでの「暑さ・寒さ」は「つらいこと」を指しています。

確かに強烈な暑さや寒さが続くと毎日の生活も大変です。
しかし、その暑さや寒さでさえ時期が来れば去っていきます。

転じて、どんなつらいこともいずれ時期が来て去っていくということを意味するようになったとされています。

慣用句としての「暑さも寒さも彼岸まで」

慣用句の「暑さも寒さも彼岸まで」は、残暑は秋の彼岸までに治まり余寒は春の彼岸までに和らぐのでそれ以降は過ごしやすくなるという意味の言葉です。

夏の暑さも冬の暑さも彼岸を迎えればしのぎやすくなることを指します。

実際に夏や冬の厳しい気候はいつまでも続くということはありません。
異常な暑さも寒さもやがては和らいで過ごしやすくなる時期が来ます。

このように、ある意味厳しい自然環境に対する励ましの意味も込められているのが「暑さも寒さも彼岸まで」です。

「彼岸」とは

ここからは「暑さも寒さも彼岸まで」に含まれている「彼岸」について解説します。

年2回ある「彼岸」

暑さと寒さが和らぐとされる「彼岸」は年2回あります。

その時期としては秋と春に訪れるとされています。
要は夏の終わりと冬の終わり、その季節の境目に訪れるのが「彼岸」です。

しかし、具体的に暑さと寒さの終わりはいつ頃なのでしょうか。

暑さの終わりは「秋分」?

暑さの終わりはおおよそ「秋分」の頃とされています。

秋の「彼岸」は秋分の日(9月23日頃)の前後3日を合わせた1週間を指します。

この時期には夏の暑さも次第に和らぎ、過ごしやすくなってくるのが特徴です。

ただし、秋分は北海道・本州・四国・九州・沖縄など地域によって時期が異なるため気を付けましょう。

寒さの終わりは「春分」?

寒さの終わりはおおよそ「春分」の頃とされています。

春の「彼岸」は春分の日(3月21日頃)の前後3日を合わせた1週間を指します。

この時期には冬の寒さも徐々に和らぎ、過ごしやすくなってくるのが特徴です。

ただし、春分も北海道・本州・四国・九州・沖縄など地域によって時期が違うので注意しましょう。

慣用句「暑さも寒さも彼岸まで」の類義語

ここからは慣用句としての「暑さも寒さも彼岸まで」の類義語を紹介します。

●禍福は糾える縄の如し

「禍福は糾える縄の如し」は災禍と幸福は糾った(縒り合わせた)縄のように表裏一体であることを例えたことわざです。

現に幸せなことがあれば不幸せなこともあるのが人生です。
その幸不幸にいちいち一喜一憂していても仕方ありません。

転じて、つらいこともやがて終わるという意味で使用されます。 その点が「暑さも寒さも彼岸まで」に通ずるのではないでしょうか。

人間万事塞翁が馬

「人間万事塞翁が馬」は不運に思えたことが幸運につながったり、その逆だったりすることを例えたことわざです。

現に運の良し悪しは容易に判断することなどできません。
不運な出来事も幸運な出来事につながるかもしれません。
その逆もまた然りといえるのではないでしょうか。

転じて、つらいこともやがて終わるという意味で使用されることがあります。
その点が「暑さも寒さも彼岸まで」と似ているのではないでしょうか。

まとめ

「暑さも寒さも彼岸まで」はつらいこともいずれは終わりがやってくるということを意味する言葉です。

ここで言う暑さや寒さが「つらいこと」を意味します。
ただし、その暑さ・寒さも彼岸を迎える頃には和らぎます。

転じて、どんなにつらいこともいずれは過ぎ去っていくという意味で使用されるのが「暑さも寒さも彼岸まで」です。
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2024年12月02日

生活保護「家族に“扶養照会”しないと受けられない」は“ウソ”…行政に課せられた“正しい運用ルール”と「どうしても知られたくない場合」の対処法【行政書士解説】

生活保護「家族に“扶養照会”しないと受けられない」は“ウソ”…行政に課せられた“正しい運用ルール”と「どうしても知られたくない場合」の対処法【行政書士解説】
12/1(日) 弁護士JPニュース

「貧困」が深刻な社会問題としてクローズアップされるようになって久しい。
経済格差が拡大し、雇用をはじめ、社会生活のさまざまな局面で「自己責任」が強く求められるようになってきている中、誰もが、ある日突然、貧困状態に陥る可能性があるといっても過言ではない。
そんな中、最大かつ最後の「命綱」として機能しているのが「生活保護」の制度である。

しかし、生活保護については本来受給すべき人が受給できていない実態も見受けられる。
また、「ナマポ」と揶揄されたり、現実にはごくわずかな「悪質な」不正受給が過剰にクローズアップされたりするなど、誤解や偏見も根強い。
本連載では、これまで全国で1万件以上の生活保護申請サポートを行ってきた特定行政書士の三木ひとみ氏に、生活保護に関する正確な知識を解説してもらう。

今回は、生活に困窮した人が生活保護を申請する際にネックとなりうる、行政による親・きょうだい等への「扶養照会」の問題と、その対処法について紹介する。(第2回/全8回)

※この記事は三木ひとみ氏の著書『わたし生活保護を受けられますか 2024年改訂版』(ペンコム)から一部抜粋し、再構成しています。

家族への「扶養照会」は、生活保護申請の“最大の障壁”

生活に困窮した人は、それぞれ様々な事情を抱えている

生活に困窮した多くの方々に、生活保護申請を、長年にわたりためらわせてきたのは、生活保護の業務を担当する自治体の福祉事務所の職員等が、親・きょうだい・成人した子などの親族に連絡し、経済援助できるかを問い合わせる「扶養照会」です。

今回は、私が生活保護行政にかかわるようになってから、最も多い相談、質問の一つである「扶養照会」について、詳しく説明します。

扶養照会とは、生活保護の申請を受けた福祉事務所が、親族の経済的な状況などを聞き取り、生活保護の申請をした人への経済的な援助などができないかを親族に問い合わせることです。
これは、生活保護を利用するうえでの「最大の障壁」となっていると言っても過言ではありません。

「きょうだいには、生活保護の申請を知られたくない。それでも生活保護を受けられますか?」

「絶対に、家族に役所から連絡されては困ります!」

「生活保護を申請したら、親に連絡が行きますよね?」

これらは、最も多く受ける相談です。
扶養照会の相談や質問を受けなかった日というのは、私が生活保護行政にかかわるようになってから、1日たりともなかったように思います。

たびたび問題になる「扶養照会の強行

扶養照会について、厚生労働省は、「20年間音信不通の場合」には親族に照会しなくていいとされていた運用を「10年程度」と改めるなど、柔軟に運用すべきとの通知(2021年2月26日付)を自治体向けに出しました。

生活保護制度運用の法令上、それ以前は「親族からDV や虐待を受けていた」「20年以上連絡を取っていなかった」など、限られた場合にのみ、扶養照会はしなくてよいとされていたのです。
つまり、福祉事務所の職員は、「三権分立」に基づき法にのっとった仕事をしなければならず、親族からの暴力など差し迫る危険がなく、かつ、直近20年間に連絡を取っている親族については、扶養照会をするというのが、自らがすべき仕事、職責でした。

しかし現実には、生活保護を申請する人には個別にさまざまな配慮すべき事情があります。
そこで、そういった現実に即し、扶養照会の要件が緩和されたのです。

とはいえ、この扶養照会緩和の通達が出された後にも、「10年以内に連絡を取っていたのだから、本人が拒絶しても、扶養照会します」と強行しようとした自治体のケースが報道され、話題になりました。

このケースは、扶養照会を実施しないことを書面で求める申出書を生活保護申請時に提出しようとしたところ、窓口担当者から「申出書を出すなら、生活保護申請手続きは進められない」と言われたというものです。

やむなく扶養照会を拒む申出書の提出を断念したところ、本人の意に反して扶養照会が強行されてしまった、というものです。

「親族への扶養照会をしないでほしい」という“理由”を明記した申請書を提出
行政書士 三木ひとみ氏

役所の職員から「親族への扶養照会は必要です」などと言われた場合、多くの人は、言葉通りに受け止めるしか術(すべ)がないと思い込んでしまうかもしれません。

しかし、福祉事務所もその事情をくんで臨機応変に対応してくれることがあります。

たとえば、生活保護申請書を作成するとき、依頼者の希望で「親族への扶養照会をしないでほしい」という要請を記載することは多々あります。

実際そうした理由を明記した申請書を提出し、受理されたケースで、扶養照会が申請者の意に反して勝手になされたことは、私の知る限り1つもありません。

申請書を作成するときは、「扶養照会を拒絶する申出書」ではなく、申請書そのものに扶養照会を拒む明確な文言を、理由とともに書き入れます。

以下は、その一例です。

「扶養親族である姉には心配をかけたくないので、生活保護申請のことを絶対に知られたくありません。

家族の関係性が壊れないように、また私の最低生活が守られるように、私の意に反して扶養照会をすることは、絶対にやめてください。

姉の個人情報は一切開示できませんし、私の個人情報も姉に絶対に開示しないでください。
行政から姉に文書を送るようなことも、絶対にしないでください」

さらに、以下のように、扶養照会をする理由・必要性に関する説明を書面で求める旨の文言を明記することも多いです。

「上記の扶養照会を拒否する意思表示があるにもかかわらず、扶養照会を強行しなければ、私が生活保護を受けられないということが万が一にもあるのでしたら、書面にて根拠法令の条文と共に理由を説明してください。

勝手に扶養照会の通知を送付してしまった、では取り返しがつかないので、くれぐれもそのようなことのないようにお願いします」

血の通った運用を

こうして申請書に扶養照会を拒否する意思を明記したケースで、勝手に扶養照会がなされたことは、私が申請書を作成したケースでは、上述の通り1つもありません。

なお、過去に1度だけ、申請書に記載した扶養照会を拒絶する意思を無視して、扶養照会を強行しようとした福祉事務所がありました。

要保護者の70代女性、その息子さんである申請者から「生活保護申請するなら親戚に連絡すると何度も言われ困っている」との相談を受けました。

福祉事務所と何度も電話でやり取りしましたが、一向にらちが明きません。

そこで、事実経緯と、扶養照会を強行しないよう求める文書を提出したところ、扶養照会はされないまま、生活保護決定となったことがあります。

実際のところ、福祉事務所によっては、マンパワーが足りていないなどの事情により、最新の通達や判例などが現場の職員にまで周知されていないケースもあります。

明らかに福祉事務所の対応がおかしいときは、都道府県(または政令市)の生活保護課に問い合わせてその旨を伝え、福祉事務所に連絡を入れてもらって、解決したことがあります。

生活保護という人命に関わりかねない制度について、自治体ごと、あるいは福祉事務所ごとに対応が異なるというのは、決して望ましいものではありません。
すべての自治体が、扶養照会の判断基準を緩和した2021年の厚生労働省通知の趣旨に沿った、血の通った運用をしてくれるようになることを、切に願います。

三木 ひとみ

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日本全体が「貧困化」しているのか?「低・中所得者」が大幅に増加している現実を読み解く

日本全体が「貧困化」しているのか?「低・中所得者」が大幅に増加している現実を読み解く
12/2(月) 現代ビジネス

日本には人が全然足りない…データが示す衝撃の実態

なぜ給料は上がり始めたのか、人手不足の最先端をゆく地方の実態、人件費高騰がインフレを引き起こす、「失われた30年」からの大転換、高齢者も女性もみんな働く時代に……

話題書『ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」』では、豊富なデータと取材から激変する日本経済の「大変化」と「未来」を読み解く――。

(*本記事は坂本貴志『ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」』から抜粋・再編集したものです)

労働参加の急拡大と低所得者の急増

日本ではこれまで周縁労働者と考えられてきた女性や高齢者の労働参加が急速に進んでいる。
このような急速な労働参加の拡大は、日本人の賃金の動向にも大きな影響を及ぼしてきたと考えられる。

続いて、国税庁「民間給与実態統計調査」から、1年以上継続勤務者の賃金分布の変化を確認する(図表1-29)

すると、この四半世紀ほどで日本人の賃金構造はかなり変化していることがわかる。
まず、低・中所得者が大幅に増加している。
年間200万円以下の給与を得ている人は2000年の825万人から2021年には1126万人に、200万円から400万円の層も1464万人から1696万人に増えた。

年収水準が低い労働者の増加はどのように解釈できるだろうか。
低所得者が増えているのだから日本全体が貧困化しているのだと主張する人もいるかもしれない。

しかし、さまざまなデータを分析していくと、日本において貧困問題が深刻化している様子や格差が急拡大している姿は見えてこない。
マクロの平均時給は足元では伸びてきており、むしろ非正規雇用者をはじめとする低所得者の待遇改善の方が先行して進んでいるのである。

さまざまなデータを組み合わせて考えてみると、年収水準が低い労働者が増えている理由の多くは、女性や高齢者が労働市場に急速に参入してきたことや、労働時間が短くなっていること、あるいはこれまでであれば自営業者として働いていたような人が雇用されて働くように変わってきていることなどによってかなりの部分が説明できると考えられる。

実際に同図表をみると、年収400万~600万円の人数は1143万人から1341万人へと中間所得者層のボリュームも大幅に増えている。

厚生労働省「賃金構造基本統計調査」から性・年齢別の年収水準を取ると、女性や高齢者の賃金は全体平均よりかなり低くなっている。
こうした人たち労働力のプールが枯渇したとき、賃金はさらに高騰する。

近年の日本で就業率が急速に上昇してきたのはなぜか。

女性であれば保育所の拡充や育児休暇の拡充といった各種制度、高齢者であれば継続雇用制度の義務化など政府の政策による影響は大きいだろう。
あるいは女性や高齢者であっても働くことは当たり前だとする人々の意識の変化や、高齢者であれば年金の給付水準の抑制といった財政的な事情も大きな影響を与えているとみられる。

こうしたなか、労働市場のメカニズムから考えれば、本来は賃金水準も労働者の就労の意思決定と関係しているはずである。

労働者側の視点からすれば、たとえば定年後の人が新たな仕事を探すとき、時給800円の仕事しか見つからないのであれば、多くの人が働かずに引退しようと考える。
しかし、時給1200円の仕事が見つかるのであれば、それより多くの人が引退せずにしばらくは働き続けようと考えるはずである。
このように、賃金水準の上昇は労働参加を拡大させる効果を持つ。

一方、企業の視点で考えれば、労働市場に潜在的な労働力が大量に存在するのであれば、人手確保のためにわざわざ高い水準に賃金を設定しなくてもよいと考える。
女性や高齢者が労働市場に参入しやすくなっている環境においては、企業が積極的に賃金を上げなくても、大量の労働者が自然に市場に流れ込んでくるからである。
そう考えれば、これまで日本の労働市場は、大量に存在していた潜在的な労働力のプールが日本人の賃金水準を抑え込んでいた側面もあったのだと考えられる。

このように賃金水準と労働参加の動向は相互に関係している。そして、近年の日本の労働市場においては、わずかな賃金上昇であっても労働参加が急拡大するという意味で労働供給量は賃金に対してかなり弾力的な状況にあったのではないかと推察される。

しかしその一方で、ここまでの現象はあくまで過去の日本の労働市場において起きたことである。
つまり、これまでの賃金や就業率の水準においては、労働供給が賃金に対して弾力的であったということであり、これ以降もそうであるという保証はない。

今後の労働市場を考えたときに焦点になるのは、日本人の就業率の上昇余地があとどれくらいあるのかということになる。

総務省「労働力調査」から就業者と就業希望者、失業者の推移をとってみると、これまでの局面ですでに就業希望者の多くが就業者に移行しており、失業者数も低い水準を維持している(図1-30)。
こうしたデータをみると、潜在的な労働力のプールが枯渇に向かっていることは確かだろう。

将来、労働参加が限界まで拡大し、就業率が天井を迎えたときには、いよいよ賃金が上がっても労働供給量が増えない局面が訪れることになるはずだ。
生産年齢人口が急速に減少する一方で医療・介護需要が増え続ける未来において、日本経済は労働供給が賃金に対して弾力性を失う局面をおそらく経験することになる。
そうなれば、賃金上昇率はこれまでよりも加速することになるだろう。

それがいつになるかまではわからない。
しかし、2010年代半ば以降そうした兆候は少しずつ顕在化してきている。

就業率の推移をみていると、特に高齢者については労働参加の余地がまだ十分に残っているような感じもするが、70歳を超えても80歳を超えても現役世代と同じように働き続けられる高齢者はそう多くはない。
相対的に健康な高齢者は既にかなりの程度働きに出ているとも考えられるだろう。

そう考えれば、労働力のプールが枯渇することで賃金がさらに高騰していく未来は、そう遠くない先に訪れるかもしれない。

坂本 貴志
(リクルートワークス研究所研究員・アナリスト)
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2024年12月04日

うそを信じてしまうのはなぜ? 怒りや不安が引き金に

うそを信じてしまうのはなぜ? 怒りや不安が引き金に
12/3(火) 高校生新聞オンライン

インターネット上やSNSには、人をだます目的でうそや偽の情報が流されている。
人々はなぜ、こうした「フェイク情報」にだまされてしまうのか。
フェイク情報を研究している山口真一先生に話を聞いた。(木和田志乃)

「怒りや不安」感じるとだまされる傾向

―フェイク情報にだまされてしまう理由を教えてください。

私の研究によると、人々は「怒り」や「不安」を感じた場合にフェイク情報を信じて拡散してしまう傾向があります。
新型コロナウイルスワクチンの健康被害を訴えるフェイク情報や、震災時に発信されたうその救助要請など、フェイク情報そのものが感情を刺激するセンセーショナルな内容になっていることが多いのも一因です。

人は自分の信じたいものを信じます。
私の研究では、人は自分の立場に近い主張をしているフェイク情報にだまされやすいです。
例えば政治的立場が保守であれば保守系に有利なフェイク情報を信じやすく、リベラルであればリベラルに有利なフェイク情報を信じやすいという結果が出ています。

加えて政治的立場に関わらず、主義・主張が極端な人ほどだまされやすいです。
自分の主張に近く、感情を刺激するようなニュースがあれば信じてしまう人が多いのです。

インフルエンサーの影響力で一気に拡散

フェイク情報が拡散される流れ

―フェイク情報はどうやって広がっていくのでしょうか?

SNSとリアルの空間を行き来しながら情報が広がっていくのが現代の情報拡散の特徴だと考えています。
新聞やニュース番組にも誤報や偏りがありますが、一定のクオリティーが担保されています。
一方、SNSは誰もが発信でき玉石混交の情報が入り乱れているにもかかわらず、流れてきた投稿をいちいちチェックする人はほとんどいません。
そのため、フェイク情報が流れやすく、信じてしまいやすいと言えます。

そしてマスメディア、ネットメディア、SNSなどさまざまな媒体がある中で最も信頼されている情報源が何か調査したところ、一番信頼が置かれていたのが「家族、友人、知人との直接の会話」だと分かりました。
そのうえ、フェイク情報の拡散手段として最も多かったのも、「家族、友人、知人との直接の会話」だったのです。

例えばSNSで見たフェイク情報を食卓で家族に話し、聞いた家族が友人に話し、友人がSNSに投稿する。それをまたSNSで見る人がいて、広がっていくのです。

―信頼している人からの発信が受け入れられやすいんですね。

「信頼」という意味では、人気のインフルエンサーにはたくさんんファンがいて、ファンはインフルエンサーに大きな信頼をおいています。
このような信頼度が高い人の発信は一気に拡散されるんです。

―SNSの利用時間が長いと、だまされやすい人も多いのでしょうか?

関連性はありません。
長時間利用者ではなく、「マスコミは真実を報道しない」「SNSには真実がある」と言っているような、SNSを信頼している人がだまされやすい傾向があります。


やまぐち・しんいち
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授。
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放っておくと恐ろしい税金は

放っておくと恐ろしい税金は
2024年12月04日 ダ分イヤモンドオンライン

親が相続対策しないまま亡くなると、残された家族や子どもは、膨大な手続きに苦労したり、争族に巻き込まれたり、相続税が払えなかったり…と、多大な迷惑をこうむります。
本連載では、知識のない親御さんでも、ステップ式で5日で一通りの相続対策ができる『子どもに絶対、迷惑をかけたくない人のための たった5日で相続対策』(ダイヤモンド社刊)を出版した税理士の板倉京さんが、最低限やっておくべき相続対策のポイントを本書から抜粋して紹介していきます。

■知らない間に対象者になっている可能性大!

 皆さんは、ご自分の財産に相続税がいくらかかりそうか知っていますか?
「相続税? うちには関係ないな」と読み飛ばそうとしている方、「ちょっと待った!」です。

国税庁の「相続税の申告事績の概要」では、2022年に亡くなった人のうち、相続税の課税対象となった人は15万人超で、亡くなった人のうちの9.6%。地価や株価の上昇等をうけ、相続税の対象となる人は増え、今や10人に1人が相続税の対象となっています。

特に都市部の地価は上昇率が高いため、東京23区のみでいえば、5人に1人が相続税の対象です。
親から相続したり、昔に買った土地がある、という人は知らない間に財産額がふくれあがっている可能性もあります。

■相続税は対策しないと「恐ろしい税金」

言わせていただければ、皆さん相続税に無防備すぎます。

相続税は放っておくと怖い税金です。
親から相続した土地の相続税を払うために、身ぐるみはがされた子どももいます。
そこまで大事にいたらないとしても、相続税がかかるかどうかを事前に確認し、対策しておくメリットは大きいです。

相続税は、死亡した人の財産にかかりますが、税金を払うのは、財産をもらったご家族です。
いくら支払うのかは、支払う側が計算して税務署に申告することになっています。
相続税の申告と納付はともに相続が起きた日の翌日から10か月以内で、納付の方法は「現金一括払い」です。

相続税が怖い理由の一つが、この「10か月以内に現金一括納付」という決まりです。

たとえば、今日、親が亡くなったとしたら、ご家族は10か月後には相続税を耳をそろえて支払わなければいけないのです。

「そんなこと急に言われても、いくら払えばいいかもわからないし、お金だって用意できないかもしれない」などと文句をいっても無駄です。

相続税は、相続が起きるまでは、支払期限も正しい支払額もわかりません。

でも、相続が起きると10か月以内に支払い義務が発生するという、国に対する「潜在的債務(借金)」なのです。

いつまでにいくら払えばいいかわからない借金なんて、聞いたことありませんよね。

たとえば銀行のローンなら、借入金額はもちろん、現在の借入残高もすぐに確認できますし、たいていは無理のない返済計画を組んでいるので返済に困ることもあまりありません。

でも、相続税は違います。相続が起きてはじめて支払期限が明らかになります。
そして期限内に支払えなければ、年利8.7%(令和6年現在)という高利貸し並みの利息(延滞税)がかかります(最初の2か月は年利2.4%)。 

そもそも、いくら払えばいいのかだって、国は教えてくれません。

相続税は支払う側が計算して税金の額を決めるといいましたが、「よくわからないから適当に計算すればいいや」なんてことが許されるわけではありません。

大袈裟にいえば、1円の単位まで、すべての財産を税務署に申告しなければいけないのです。

そして万が一、申告漏れや計算ミスがあれば、残されたご家族が税務署からペナルティを科されてしまいます。

■相続税対策は効果が出やすいのが救い

このように、相続税は「コワイ債務」です。
そんな債務を背負わなければならない、残された家族の負担はいかばかりか……。
だからこそ、どんな財産があるのか、相続税がかかるのかどうか、かかるとしたら払うべき相続税はどのくらいか、家族が現金で一括で支払えるのかなど、事前に把握しておいてほしいのです。

もし確認の結果、相続税がかからないことがはっきりすれば、家族も安心です。
もし、相続税がかかることがわかれば、必要に応じて対策を行いましょう。 

相続税対策は、比較的効果の出やすい税金対策です。
早めに行うに越したことはありません。

*本記事は、板倉京著『子どもに絶対、迷惑をかけたくない人のための たった5日で相続対策』(ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集して作成しています。

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2024年12月05日

患者のメリットはゼロ!…マイナ保険証を「いますぐ考え直したほうがいい」理由と、いまこそ思い返すべき「住基カード大失敗」の悪夢

患者のメリットはゼロ!…マイナ保険証を「いますぐ考え直したほうがいい」理由と、いまこそ思い返すべき「住基カード大失敗」の悪夢
12/4(水) 現代ビジネス

任意のマイナカードがいつのまにか強制に

従来の健康保険証の発行が停止になり、マイナ保険証への切り替えが進むことになっている。
しかし、この方針には様々な問題がある。
この問題は、根本に戻って考え直す必要がある。

マイナ保険証にはメリットがない

12月2日で、従来の健康保険証の発行が停止された。
従来の健康保険証は、今後は、原則としてマイナンバーカードに保険証の機能を乗せた「マイナ保険証」に切り替えられることになる。

しかし、マイナ保険証の利用は進んでいない。

10月末時点でのマイナンバーカードの普及率は全人口の約76%であり、マイナ保険証の登録は、カード保有者の82%だ。
しかし、10月の利用率は、15.7%にすぎない。
つまり、登録はしたものの、ほとんど使われていない。

なぜ使われていないのか?
 その理由は明らかだ。患者の側から見て、メリットが感じられないからだ。
その半面で、利用に危険が伴うと感じている人が多いからである。

マイナ保険証の利点として、薬情報をさまざまな機関の医師や薬剤師が共有できることが挙げられている。
確かに、共有化は便利だ。
しかし、それを便利と思う人が任意で使えるシステムにすべきだろう。
全国民にマイナ保険証の利用を強制する理由にはならない。

また。これまでの「お薬手帳」でもある程度の情報共有ができる。
むしろ、患者の立場からいえば、この方が便利だと考えている人が多いだろう。
どのような薬を処方してもらったかがすぐにわかるし、日付や医師名も書いてあるので、受診記録としても使えるからだ。

マイナ保険証に危険を感じる人は多い

マイナ保険証にメリットが感じられない反面で、危険ははっきりわかる。

これまで、マイナ保険証に誤った情報や他人の情報が紐付けられているケースが多々報告された。
そうしたケースは、稀であったとしても、深刻だ。
こうした事故は、根絶されなければならない。
これに対して不安を覚えている人は少なくないだろう。

より現実的で誰もが不安に感じているリスクは、マイナカードの紛失だ。

これが保険証になったことで、マイナカードを持ち歩かなければならないケースが増えた。
だから、マイナカードを紛失する危険が増えた。

マイナカードは持ち歩きたくない。
しかし、出先で病気になることを考えれば、旅行や出張にも持参しなければならない。

もちろん、従来型の健康保険証でも紛失のリスクがあった。
しかし、万一紛失したとしても、そこに掲載されている情報は限られたものだ。
ところがマイナカードの場合には、紛失すれば、それとは比べ物にならないほど、大量の情報が危険にさらされることになる。

資格確認書がいつになっても必要?

利用が進んでいないのは、患者の側だけではない。
医療機関や薬局でも対応していない場合がある。

薬局が対応していなければ別の薬局に行けば良いが、かかりつけのクリニックが対応していない場合には、面倒だ。
別のクリニックに行けば良いというわけには必ずしもいかない。

だから、従来の保険証も、捨てないで持っている必要がある。
しかしこの有効期限が来たときにまだクリニックが対応していなければ、どうなるのだろうか?

政府は、「資格確認書」というものを発行してくれることになっているのだが、すでにマイナ保険証に登録している場合には、送ってくれない。
では、申請すればすぐに送ってくれるだろうか?

仮にそうであるとすると、マイナ保険証への完全切り替えはいつになってもできず、中途半端な状態が続いてしまうことにならないだろうか?

もちろん、いまはマイナ保険証に対応していないクリニックや薬局も、いずれは対応することになるかもしれない。
しかし、そのように期待してよいのだろうか。

そもそも、国は対応していないクリニックや薬局に対して、対応を強制できる権限を持っているのだろうか?

スマートフォン搭載は危険

政府は、マイナ保険証の利用を促進するため、医療機関の診察券の内容もマイナ保険証に載せ、これをスマートフォンで利用できるようにするという。

これが導入されれば、マイナ保険証の利用は促進されるだろう。
しかし、これによって患者のリスクは増大することになる。

第1に、カード型のマイナ保険証であれば、常時携行するわけではない。
しかし、スマートフォンは、ほとんど常時携行する。
したがって、マイナ保険証を紛失する危険が増すことになる。

また、スマートフォンは、カードと違って、装置が正常に機能していなければならない。
しかし、スマートフォンの動作が異常になることは、しばしばある。
これを常時メンテナンスするのは、かなり大変なことだ。

現状では、どうしてもスマートフォンでなければできないという仕事はない。
スマートフォンが動かなければPCで代替できる場合がほとんどだ。
しかし、かりに保険証がスマートフォンだけでしか利用できなくなってしまったら、大変だ。
おそらく、対応できない人が大部分なのではあるまいか?

任意のマイナカードがいつのまにか強制に

そもそも、マイナカードは任意のシステムとして始まったものだ。
しかし、マイナ保険証は、事実上、利用を強制するシステムになっている。
マイナ保険証導入の目的は、国民の利便性の向上ではなく、マイナカードの普及だと考えざるをえない。

マイナカードの保有者が増えたのは、申請すればポイントを得られたからだ。
これによって普及率が大幅に増加した。
マイナカード取得した人の多くは、それを利用しようと考えていたのではなくて、ポイントがもらえるから応募したのだ。

政府としては、住基カードで失敗した苦い経験がある。
巨額の資金を投入しながら、使い物にならないシステムを構築し、結局は廃棄した。
これは、失政以外の何物でもない。

だから、同じことをマイナカードでは繰り返せないというのが、至上目的になってしまった。
マイナカードの普及だけが目的となってしまい、それが国民生活をどのように便利にするかという視点がまったく欠けてしまった。
そして、その利用に伴うリスクをどう根絶できるかという視点がなおざりになってしまったのだ。

マイナカードの本来のサービスを拡充してほしい

では、マイナカードは、何のために必要なのか?

マイナカードは、原理的に言えば、本人確認のための極めて強力な手段である。
したがって原理的にいえば、さまざまな面で手続きが簡単になるはずだ。
しかし、現状では、そうした事例はほとんどない。

印鑑証明書などを、近くのコンビニエンスストアで取得することができるのは便利だが、これは、従来の印鑑システムの維持にために必要なことだ。
その意味で自己矛盾に陥っている。

マイナカードの本来の目的は、印鑑がなくても本人証明ができるシステムの構築だ。
だから、そうしたサービスを拡充してほしい。

マイナカードを持ち歩かないで、できれば自宅で利用できるようにする。
あるいは、コンビニエンスストアや市役所の支所などで利用可能な端末を多数設置する。
そのシステムで、戸籍謄本などの公的書類を紙にするのでなく、デジタル形式で直接に相手に送れるようにする。

これによって日常生活は著しく便利になるだろう。
利便性に大きく寄与することを示すのでなければ、マイナカードは、結局のところで、住基ネットと同じ運命をたどるしかない。

野口 悠紀雄(一橋大学名誉教授)
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2024年12月08日

「基礎年金3割底上げ」の口車に乗っちゃダメ…取りやすいサラリーマンから取る"姑息な改革案"のカラクリ

「基礎年金3割底上げ」の口車に乗っちゃダメ…取りやすいサラリーマンから取る"姑息な改革案"のカラクリ
2024年 PRESIDENT Online

「将来世代の基礎(国民)年金の給付水準を3割底上げする」。
厚労省が提出した案に対して、昭和女子大学特命教授の八代尚宏さんは「必要とされる年金制度の抜本改革を避けて、単に保険料を取りやすいサラリーマンから取る小手先の対応だ」という――。

■たくさん厚生年金の保険料を支払った人からの横流し、横取り

厚生労働省の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)年金部会は11月下旬、将来世代の基礎(国民)年金の給付水準を3割底上げする案を提出した。

基礎年金は現状、33年後の2057年度まで支払う年金額の目減りが続き、65歳時点の基礎年金の受給額が現在より3割低くなる。
基礎年金しか受け取れない人は低年金に陥る恐れがある。

もし、今回の改革案が実現すると、基礎年金の減額期間が2036年度に終了し、21年前倒しされる。加えて、給付水準は3割上がる。
ほぼ全ての年金受給者が恩恵を受ける、といういいニュースのように見える。

しかし、実態は被用者(サラリーマン)の負担増による国民年金の救済策である。

SNSにはこんな声が飛び交っている。

「たくさん厚生年金の保険料を支払った人からの横流し、横取りで、年金保険に対する信頼を根底から壊す」

前述したように、国民年金の給付額は今後、マクロ経済スライドにより減少を続けることになっている。
低年金者の国民年金受給者が多い中、これは大きな問題だが、なぜそうなっているか。
他の先進国のように、平均寿命の延びに比例して年金支給開始年齢を引き上げて給付水準を維持するという、年金制度改革の王道の政策を封印したことよる結果である。

少子高齢(長寿)化のコスト増を、毎年の年金給付の削減で賄えば、年金受給者が窮乏化を強いられるのは当然だ。
それにもかかわらず、保険料の未納付率の高い国民年金の救済措置として、保険料を強制的に天引き徴収される被用者の負担増で対処するのはあまりに安易な手段だ。
これは本来、必要とされる年金制度の抜本改革を避けて、単に保険料を「取りやすい被用者から取る」小手先の対応といえる。

■国民年金保険徴収率の疑問

自営業者などが主体の国民年金では、その保険料を最初から強制的に徴収できない(滞納を続けると最終催告状などを経て、強制徴収にいたることもある)。
このため保険料を実質的に納付した者の比率は2023年で44%(公表資料から筆者推計)にとどまっている。

ところが、厚労省による発表では、その納付率が78%で「11年連続の上昇」となっている。
これは「何らかの事情」による納付免除・猶予者の比率が被保険者数の43%(596万人)にまで持続的に高まっている影響もある。
年金保険料が自動的に免除される、生活保護受給者(高齢者以外)は約100万人に過ぎず、しかもその数は徐々に減少している中で、なぜこれほど多くの免除者が増加するのだろうか。

国民年金の免除者が将来的に受け取る額は国庫負担分の給付のみとなり、満額の半分しか受け取ることができない。
免除者の増加は財務省の負担増にはなるが、年金財政には直接影響せず、見かけ上(いわば財務省が肩代わりすることで)の全体の徴収率を高めているだけである。

保険料未納付者には強制徴収制度もあるが、その可能性のある対象者は、収入から経費を控除後の所得が300万円以上のみと自ら公表しているケースで、2年間で時効となる。
これは税金の滞納者を見逃さない国税庁との徴税制度の違いは明らかだ。

国民年金の給付額を増やす有力な手段として、被用者と比べて60歳と短い保険料納付期間の65歳への延長がある。
これには半分の国庫負担が付くため、被保険者には有利な改正だが、国会で立憲民主党の批判を受けると、政府はあっさりと撤回した。

また、もともと十分な額とはいえない国民年金の給付を補うために、その上乗せ給付としての国民年金基金が設けられているが、その加入者は任意加入のため33万人と被保険者数の2%に過ぎない。
年金制度間の合理的な助け合いは必要だが、被用者年金からの支援を受ける前に、国民年金の財政基盤を強化する余地は大きいのではないか。

■なぜ年金給付が毎年減額されるのか

前述したように、そもそも高齢化に伴う年金受給者の増加への対応を、毎年の給付削減で行うという、マクロ経済スライドの導入自体が基本的な誤りであった。
英米や独などの先進国では、67〜68歳の年金支給開始年齢が一般的なのに、世界でトップの長寿国の日本がなぜ65歳と低いままなのか。
他国は、平均寿命は日本よりはるかに低いのに、支給開始年齢は日本より遅いのと比べて、どう考えても不合理である。

高齢で働けなくなってから年金受給額を毎年減らされるのを回避するために、まだ現役で働けるうちに、平均寿命の延びに比例して就業期間を伸ばし、希望する場合は繰り上げ年金受給を選択する。
そうすればインフレに見合って増える年金額が確実に保障される。
こうしたグローバルスタンダードの年金制度改革が、なぜ日本では実現できないのだろうか。

この高齢化に応じた年金支給開始年齢の引き上げという選択肢を、厚労省はタブー視し、年金部会での議題にもあげていない。
この支給開始年齢の引き上げ問題をめぐっては、フランスでも大規模な反対デモが生じたが、マクロン大統領は将来世代のために不退転の覚悟で押し通した。
この日仏の違いは、目先の内閣支持率のみにこだわる日本政治の貧困と、それにおもねる年金官僚に大きな責任がある。

■救済策としての基礎年金の導入

日本の年金制度の最大の弱点は、財政基盤の弱い国民年金にある。
国民年金は基礎年金とも呼ばれるために混乱が生じやすい。
もともとは被用者年金と別個の制度であった国民年金を、被用者年金と無理に合併させ、共通の基礎年金制度としたためだ。この基礎年金には、独自の財源はなく、既存の国民年金や厚生年金などからの拠出金に依存している。

実はこの拠出金の配分基準を、各々の制度の被保険者数ではなく、保険料を負担した実人数にもとづいていることが大きなポイントだ。この結果、国民年金で、いくら保険料の免除者や未納付者数が増えても、それは自動的に100%納付している被用者の負担、前述のSNSの言葉でいえば「横流し・横取り」で賄われるという、巧みなトリックがある。

このように、被用者年金による国民年金の救済措置は以前から存在しており、今回の国民年金の3割底上げ措置は、それをより拡大したものにすぎない。

なお、被用者年金にも基礎年金部分が含まれることから、今回の措置では被用者も得になるという説明がある。
しかし、これには基礎年金給付の半分は国庫負担のため、その厚生年金に対する比率が高まれば、それだけ被用者の受給額が増えるという、第2のトリックがある。

その国庫負担は税金で賄われており、厚労省には関係がなくても、国民全体の負担増には変わりはない。
安易に一般財源に依存するのではなく、年金保険としての財政の健全化には、固有の財源を確保する必要がある。

■基礎年金の目的税方式化

国民年金に限らず、年金給付を増やすためには、そのための応分の負担増が必要である。
国民年金給付の半分は一般財源だが、残りの半分は未納付率の高い保険料である。
この保険料の代わりに、確実に徴収できる消費税の一定比率を年金だけに限定した目的税にするという大胆な構想が、福田康夫内閣時(2007年9月〜2008年8月)に、官邸に設けられた社会保障国民会議で提起された。

その当時の試算では、消費税率3.5%が必要とされたが、これは「増税」ではない。なぜならそれまで負担していた国民(基礎)年金保険料が、被用者も含めて同時に廃止される仕組みだからだ。
この使途を年金だけに限定した目的消費税は、事実上の年金保険料に近い性質のもので、徴収する官庁が異なるだけである。

この構想には多くの利点があった。
まず、基礎年金に固有の財源ができ、未納付者が一掃され、年金財政が安定化する。
国民の負担額も、現行の画一的な保険料から、個々の消費額に応じた比例負担になり、低所得層の負担は小さくなる。

被用者の保険料が半減となるだけでなく、雇用への実質的な課税である事業主負担も軽減され雇用需要も増える。
この制度の導入時から全員が目的消費税の形で負担するが、過去の個人の保険料納付記録が将来の年金給付額に反映されるため、未納付者との不公平は生じない。
目的消費税は高齢者も負担するが、長寿化の見返りとして、一部負担は止むを得ない。

厚労省の年金事務も大幅に簡素化されるが、それが逆に人員削減に結び付くことを防ぐためか、結果的に実現には至らなかった。
少子高齢化がいっそう深刻となっている現在、この抜本的な年金改革の構想を再検討する必要は高まっている。
年金制度改革では、与野党一体となって、国民の理解促進のために、多様な政策メニューの提示と活発な議論が必要だ。

ところが、年金制度の抜本改革を避けようとする政治家と、それを忖度し、国民から大きな反発が出ないような政策メニューに、最初から絞り込んでしまう厚労省との組み合せでは、今回のような「取りやすい被用者年金から財源を取る」という姑息な改正案しか生まれない。

年金制度だけでなく、医療や介護、給付付き税額控除など、抜本的な社会保障制度の改革は、個別の利害関係が錯綜する厚労省の審議会では困難である。

総理直轄の経済財政諮問会議などを積極的に活用し、改革の基本方針を定めなければならない(なお、本稿は制度・規制改革学会の提言を参考としている)。

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八代 尚宏(やしろ・なおひろ)
経済学者/昭和女子大学特命教授
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2024年12月09日

「マイナ保険証」に見た"日本の競争力低下"の理由

「マイナ保険証」に見た"日本の競争力低下"の理由
日本のデジタル政策はなぜ迷走しているのか

野口 悠紀雄 : 一橋大学名誉教授
2024/12/08 東洋経済オンライン


マイナ保険証
日本のデジタル政策は、迷走しているとしか言いようがない。それを象徴するのがマイナ保険証だ。

日本の国際競争力は、世界的に見て極めて低い水準にある。
しかも、時間を追うごとに低下する傾向がある。
このような低落過程は、GDPなどの経済指標で見る日本経済の停滞過程とほぼ一致している。
これは、日本が世界経済の大きな変化に対応できていないことを示している。

日本のデジタル競争力は、世界31位

スイスのビジネススクール国際経営開発研究所(IMD)は、11月14日、「世界デジタル競争力ランキング2024」を発表した。
日本は前年調査の32位から1つ順位を上げ、第31位だった。

昨年より順位が上がったとはいうものの、31位ではあまり大きな改善とは言えない。
日本のデジタル競争力は、極めて低い水準にあると言わざるをえない。

なお、世界第1位はシンガポール、第2位はスイス、第3位はデンマーク、第4位がアメリカだ。
アジアの中でも、韓国(世界第6位)、中国(世界第14位)が日本よりずっと上位にある。

上で見たのはデジタル競争力だが、これより広い項目を対象とした「国際競争力ランキング2024」を、IMDは2024年6月18日に公表している。

世界第1位はシンガポール。2位がスイス。第3位がデンマークだった。

一方、67カ国・地域中で、日本は第38位だ。
2023年には64カ国・地域中で第35位だったので、さらに順位を落としたことになる。

この調査での日本のランクは、2019年に初めて30位台に転落して以来、30位台で推移している。
アジアの中でも、香港(第5位)や台湾(第8位)、中国(第14位)、韓国(第20位)などに比べると、かなり低い。

そして、日本の次の第39位に、インドが迫っている。
あと数年すれば、日本はインドに抜かれる可能性がある。

GDPなどで見た日本のランキングも低下しているが、これには円安の効果も働いている。
円安が進むために、日本の国際的地位が低下するのだ。

しかし、ここで見ているランキングは、円安の直接的影響は受けていない。

国際ランキングは報道されなくなった

こうしたニュースは日本人にとっては愉快なものではないので、あまり見たくない。
事実、最近では、国際ランキングのニュースは、報道でもあまり大きく取り上げられることがない。
しかしこれは重大な問題だ。

なぜこのように低下してしまうのかを考える必要がある。

なお、このランキングでは、人口の少ない国・地域が上位に来る場合が多い。
そこで人口2000万人以上の国・地域を対象にしたランキングを見ると、第1位が台湾、第2位がアメリカ、第3位がオーストラリアとなっており、日本は第15位だ。これは、上で見たのとはだいぶ印象が異なる。

しかし、そうだからといって安心するわけにはいかない。
人口の少ないことが特殊なケースなのではなく、むしろ人口が2000万人を超えるのが非効率な国家形態なのだと考えることもできる。
国のサイズとしてどの程度が最適なのかという問題は大変興味深いものだが、ここでは取り上げず、別の機会に論じることとしたい。

「国際競争力ランキング2024」では、国・地域の競争力を、「経済パフォーマンス」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラ」の4つのカテゴリーの項目について、スコア付けしている。

日本は、国内経済や雇用、科学インフラの項目は高く評価されている。
しかし、「政府の財政状況」が第64位であることや、「企業の経営慣行」が65位となっており、これが日本の順位を下げる大きな要因になっている。

「企業の経営慣行」で低評価になるのは、上位の管理者に国際感覚が乏しく、世界経済の変化に迅速に対応できないからだ。

ランキングが低下し続けている背景

「国際競争力ランキング」が開始されたのは1989年だ。
そして、1989年から1992年まで、日本は世界第1位だった。その後
も、1996年までは5位以内だった。
しかし、1997年に17位に急落。
ただし、その後は、第20位程度で推移してきた。
ところが、2019年に第30位となり、以後は、第30位台から脱却できないでいる。

この推移は、日本のGDPや賃金などの推移と見事に一致している。

日本の経済指標は、1980年代まで急成長を続けてきたのだが、1990年代の後半になって急に頭打ちになり、その後、長期の停滞が続いている。

注意すべきは、「国際競争力ランキング」で日本のランキングが急低下を始めた1997年という時点は、バブルの崩壊よりは少し遅れていることだ。

バブル崩壊は、株価については、1990年であり、地価については1992年頃だ。株価のバブルが崩壊してもなお、日本の競争力のランキングは高かったことになる。
これは、日本企業の競争力を低下させた原因が、バブルの崩壊ではなく、別のものだったことを示している。

競争力低下の大きな要因は、1980年代に生じた世界経済の大きな変化に対して、日本企業が適切に対処できなかったことだ。
とりわけ、中国の工業化とIT革命に対応できなかったことの影響が大きい。
それが日本の製造業の成長を抑えた。そして、雇用が生産性の低いサービス産業で増加した。それによって、日本経済の効率性が低下したのだ。

それに加え、政策の誤りもあった。
とくに、デジタル関係での政策だ。
これについて、次項で述べることとしよう。

日本のデジタル政策は、迷走しているとしか言いようがない。
それを象徴するのがマイナ保険証だ。
今年の12月から従来の保険証が使えなくなると思っていたのだが、いつの間にか、「2024年12月2日から新規発行はされないが、資格喪失をしない限り2025年12月1日まで利用可能」ということになっていた。
つまり、従来の保険証でも使えるという。

紙の保険証の廃止には反対が強く、マイナ保険証の利用は進んでいなかった。
このため、デジタル庁は方向転換し、紙の保険証も使えるという方向に転換しているのだ。
マイナ保険証への転換は失敗に終わったと考えざるをえない。

何がメリットかはっきりしない「マイナ保険証」

マイナ保険証の利用が進まなかったのは、患者の立場から見て、何がメリットなのかがはっきりしなかったことだ。
その反面、誤った情報が紐付けられるなどのケースが発覚し、情報管理に対する不信が強まっていた。

マイナ保険証への切り替えは、患者のためというよりは、マイナンバーカードの普及自体が目的だったと考えざるをえない。

そもそも、マイナンバーカードの利用価値がない。
私が便利だと思ったことは、一度しかない。
それは、印鑑証明書を、近くのコンビニエンスストアでマイナンバーカードを用いて取得できたことだ。
確かに便利だと思ったのだが、よくよく考えてみると実におかしい。

なぜなら、これは印鑑を用いる仕組みを便利にするというサービスだからだ。
では、マイナンバーカードとは、アナログ事務処理の代表である印鑑システムを継続させるためのものだったのか?

しかし、脱印鑑は、デジタル政策の大きな目標だったのではないだろうか?

こう考えると、頭が混乱してしまった。

以上で見たように、日本のデジタル政策には、そもそも方向性の選択の点で大きな誤りがあるとしか思えない。
こうしたことが、デジタル競争力の低下に結び付いていくのであろう。
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2024年12月10日

理不尽クレーマー鎮める方法

「お前がやっただろ!」に「やってません」は絶対ダメ…理不尽クレーマーを一発で鎮める接客プロの切り返し
2024年12月06日 PRESIDENT Online

「お前がやっただろ!」に「やってません」は絶対ダメ…理不尽クレーマーを一発で鎮める接客プロの切り返し

いわれのないクレームを付けられた時にはどうすればよいのか。
ANAの元CAで研修講師の三上ナナエさんは「『やっていませんよ‼』と強い口調で言い返しても『やった・やらない』の押し問答が続き、結局納得はしてもらえない。
正しさを主張するのでなく、お客様の気持ちをわかってさしあげることが必要」という――。
※本稿は、三上ナナエ著『あらゆるタイプのお客様に選ばれる 一生使える「接客サービス」の教科書』(大和出版)の一部を再編集したものです。

■怒鳴ってくるお客様には聴く姿勢を

性格によって変わる対応法接客業をしていると、いろんなタイプのお客様がいらっしゃることに気づきます。

タイプによって、大事にされているポイントはそれぞれ違います。
クレームの場面でも、タイプに合わせて大事にしている部分を踏まえた応対が求められます。

以下に、お客様のタイプに応じた対応のヒントをあげてみたいと思います。

1 激怒するタイプ

エネルギー量が大きく、大声で怒鳴って怒りをダイレクトに表現するタイプの方です。

正義感が強く、人情家である場合も多いです。

こういった方が怒っている時に、口を挟むことはご法度です。

まずは、真摯にしっかりと話を聴く姿勢を表現しましょう。
売り言葉に買い言葉で喧嘩腰になったり、怯えた姿を見せたりすると、逆に相手は自分が責められているように感じます。
真摯に真っ直ぐに向き合いながら、「おっしゃっていただいてありがとうございます」とご指摘への感謝の気持ちを伝えていきましょう。

■「〜ということですね」と話を整理する

2 思い込みの激しいタイプ

自分が「こうだ」と強く思い込んで、感情的に表現するタイプの方です。

時に話が矛盾して、二転三転することもよくあります。
そのため、途中で少し交通整理をしながら聴いていくことが大切です。
説明の途中で「〜ということですね」と話を整理して、一歩ずつ話をかためていきましょう。

こちらが説明しても、「でもね」と話をひっくり返され堂々巡りになる場合、つい「先ほども申しましたが……」と言ってしまいそうになります。

しかしそのフレーズを言うと、「私が話を聴いていないと言いたいのですか?」と受け取られてしまうので、そこはグッとこらえ、余計な発言はしないこと。

表現を少しずつ変えるといった工夫をしながら、根気よく繰り返し説明していきましょう。

3 論理的なタイプ

客観的に、「それが正しいか正しくないか」という視点を大事にしていらっしゃいます。

あらかじめ話すことを準備していることも多いので、「おそらくそう思います」という曖昧な答えを避け、「はっきりした情報をお伝えしたいので、その件につきましてはすぐに調べてご連絡さしあげてよろしいでしょうか」と許可を得ましょう。

きちんと説明ができれば、納得していただけます。

このタイプの方は落ち着いたトーンでお話しされる傾向があるので、そのペースに合わせつつも、淡々とならないように気持ちを込めて応対しましょう。

■「気持ちをわかってほしい」お客様

4 粘着質なタイプ

3の方とは逆で、正しいか正しくないかではなく、自分の感情を受け止めてほしいタイプの方です。
理屈ではご自身の言っていることが合わなくても、「なんか納得いかない」といった感覚を持っているので、まずはしっかりとその気持ちを受け止めます。

「言っていることはわかるけど」や「あなたが私の立場だったらどう思う?」といった質問をされるなど、お客様が何を求めているかはっきりしないという特徴があります。

お客様自身も、望んでいることが明確になっておらず、「この気持ちをわかってほしい」という感覚を持たれていることが多いです。

ですので、お客様の気持ちに焦点をあてて、「〜と思われたのですね」と相づちを打ちながら話を聴きましょう。

手に同調してしまうと逆手に取られることもありますので、過剰な理解を示すことはせず、ただ気持ちを吐き出してもらうように心がけましょう。

気持ちを汲んでもらえたと感じると、お客様も次第にクールダウンしていきます。

<POINT>お客様の個性を読んで、クレーム応対にあたる

■理不尽なクレーム

いわれのない文句をつけられたら時に理不尽なクレームを受けることがあるでしょう。
そんな時に知っておいていただきたいことがあります。

一つのエピソードとともに、ご紹介します。

私の知人に、お宅に訪問して庭のお手入れをするサービスをしている人がいます。

ある日、一人暮らしの男性のお客様のお宅で庭を手入れしていた時のことです。

突然、「おまえ、この植木鉢壊しただろ!」と家主である男性が、烈火のごとく怒り出しました。

しかし、その知人は壊した覚えはありません。

ですので「いえ、壊してないです。最初から壊れていました」と伝えました。

それでも、「嘘をつくな、お前がやったんだろ!」と詰め寄られます。
男性のあまりの剣幕に、思わず「だから、やっていませんよ‼」と強い口調で言い返してしまったそうです。

その後も、「やった・やらない」の押し問答が続き、結局そのまま納得してもらえず、うやむやな状態で帰ることになりました。

やりもしない罪を着せられ、怒鳴り散らされ、「なんて嫌な日だったんだ!」とその日は家に帰っても気持ちがおさまらず、家族にも愚痴をこぼしたそうです。

■お客様の“言葉の裏”にあるものを読み取る

しかし時間の経過とともに、冷静になると、ふとこんなふうに思ったそうです。

「あんなに急に怒り出すなんて、ひょっとしてあの植木鉢には、私にはわからない思い入れがあったのかな……。

確かに私は壊してないけれど、強い口調で言い返すのはよくなかった。
まず気持ちをわかってあげるような言葉をかけていれば、違っていたかもしれない」

そのお客様は、毎年庭の手入れを頼んでくれていた方でした。

なので、もしまた来年も依頼があれば希望して行かせてもらおう、そしてその時に「感情的に言い返してすみませんでした」と、今回のことをお詫びしようと思っていました。

しかし、お客様は亡くなられ、結局お詫びはできずじまいになってしまったそうです。

■サービスとは奉仕である

お客様の応対で大切なことの一つに、「お客様の気持ちを察すること」があります。

お客様がなぜ今そういう言動や態度をとるのか、気持ちをわかってさしあげる。

サービスという言葉の意味には、形あるものや経済的に価値あるもののやりとりという意味の他に「奉仕する」という意味があります。
奉仕とは相手を大事にする気持ちが元になって、言葉にあらわしたり、行動するということです。

お客様の気持ちを理解しようとするプロセス、そしてそれがお客様にも伝わることが、その場の満足度を大きく左右するのかもしれません。

その際に、大切なことは何でしょうか?

先述の知人の例でみると、「植木鉢を壊した」と言われたことに対して、壊していない知人が「私は壊していない」と言い返す。

内容に関して言えば正しいわけです。
壊していないものは壊していない。

しかし、ここでは主張の正しさを証明することが大切なのでしょうか?

まさにこういう場面でこそ、内容の正しさよりも相手の心情を慮(おもんぱか)ること、お気持ちを察して、わかってさしあげること。
そして、そこからコミュニケーションをしていくことが大切なのです。

例えば、「大事な植木鉢だったんですね」とお伝えしてもよかったかもしれません。

■正しいか正しくないかではない

人は、ずっと一つの感情にはとどまりません。

怒りの感情も次第に変容していきます。

「自分のことをわかってくれている」または「わかろうとしてくれている」という態度や言動に触れることで、
怒りは静まり、逆に今まで以上に信頼されたり、より心を開いてくれるものなんですね。

正しいか正しくないかではなく、お客様の気持ちをわかってさしあげること。

この視点、感覚を大切にもってほしいなと思います。

<POINT>どんなクレームにも必ず理由がある

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三上 ナナエ(みかみ・ななえ)
元CA・人材教育講師

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2024年12月11日

日本人の賃金が上がらないのは明らかにおかしい…経済学者が糾弾する「経団連のウソ」と「労働組合の怠慢」

日本人の賃金が上がらないのは明らかにおかしい…経済学者が糾弾する「経団連のウソ」と「労働組合の怠慢」
2024年12月08日 PRESIDENT Online

日本人の賃金が上がらないのはなぜなのか。
経済学者の水野和夫さんは「本来、実質賃金の増減率と労働生産性の増減率は等しくなるはずだが、日本では四半世紀にわたって労働生産性に応じた人件費決定が反故にされている」という――。
※本稿は、水野和夫『シンボルエコノミー 日本経済を侵食する幻想』(祥伝社新書)の一部を再編集したものです。

■いつまでも届かない「成長率2.0%」

サッチャー政権・レーガン政権以降、グローバリゼーションが世界の潮流となり、日本もその例外ではありませんでした。
民間企業の活力を引き出すという名目で、中曽根康弘政権の民営化路線、橋本龍太郎政権の金融ビッグバン、小泉政権の構造改革路線と次々に改革を断行してきました。
しかし、政府の目論見の実質GDP成長率2.0%はまったく達成できていません。

不良債権処理がおおむね終わった2003年以降、2023年までの実質GDPは年0.7%成長でした。
この間、リーマンショックやパンデミックショックで大幅なマイナス成長となった年と翌年の反動によるプラス成長を除くと、年1.3%成長となります。

この数字は需要サイドから見た成長率ですが、不況で需要が落ち込んだ影響を受けない供給サイドから見ると、2003年以降の潜在成長率は年0.54%増(*1)となります。
需要サイドの実質GDPは、実力以上の成長を果たしていることになります。

*1 内閣府試算の数字。日銀が公表している潜在成長率は同期間で年0.55%増。

■経済成長はプラスなのに実質賃金はマイナス

実質GDPを就業者で割った労働生産性は、1997年から2003年まで年平均0.5%増となっています。
それにもかかわらず、実質賃金は1997年以降、下落しています(年0.7%減)。

四半世紀にわたって就業者1人当たりの実質GDPと実質賃金の関係が逆比例(図表1)にあるのはなぜか、その理由を検討してみましょう。

いくつかの前提条件を置くと、経済理論から、実質賃金の増減率は労働生産性のそれと等しくなる(*2)という結論を導き出すことができます。
その前提条件は、生産関数が規模に関して収穫一定(労働分配率が不変)であり、企業は利潤極大化を目指し、完全競争が成立していることです。

*2 実質賃金の増減率が労働生産性のそれと等しくなるという点については、マンキュー([2017]72〜88頁)参照。

■賃金上昇に歯止めをかけている要因

日本の実質賃金は1996年までおおむね、原則通りに決定されていました。
1956年から1996年までの間、労働生産性は年4.8%で上昇し、雇用者1人当たり実質賃金の上昇率は3.4%でした。
実質賃金の労働生産性への追随率が7割となり(*3)、完全に1対1の関係にならなかったのは、政府の規制が残っており、完全競争条件が満たされていなかったからです。

ところが、図表1に見られるように1997年以降、状況が一変し、「不都合な関係」となりました。
上昇率は大幅に鈍化したとはいえ、バブル崩壊後も労働生産性はプラスの伸びを維持していました。
経済理論が想定する世界であれば、実質賃金も上昇していなければなりません。

四半世紀にもおよぶ実質賃金下落の大きな原因は、資本の力が圧倒的に強くなり、雇用の流動化政策が実施されて、非正規労働者が増加したことにあります。

*3 1956〜1996年を、1973年で前半(高度成長期)と後半(中成長期)に分けると、前半の追随率は78%、後半は同53%と低下した。

■主張と行動が正反対の経営者たち

賃金の決定権は経営者側にあります。
毎年12月、あるいは翌1月になると、経団連は次年度の春季闘争(春闘)に向けた経営者側の指針である「経営労働政策委員会報告」を公表しています。

「失われた10年」がようやく収束した2003年版の報告書(2002年12月17日公表)には、「人件費と利益の源である付加価値の向上がなければ、人件費はもとより雇用の保持すら危うくなる」との記述があります

この文章は、裏を返せば「付加価値が向上すれば、人件費を増やすことができる」と解釈できます。
しかし、現実には大企業の名目付加価値生産性は2003年度から2022年度まで、年0.7%で増加していますが、1人当たり人件費は年0.1%減(*4)となっています。

翌2004年版(2003年12月16日公表)にも、同じように「付加価値生産性の上昇率がマイナスになれば、人件費を減らすという覚悟で賃金決定を行なう姿勢が必要」とあります。
しかし、付加価値生産性の上昇率がプラスになっても、経営者は賃下げを実施しています。
報告書が主張していることと真逆のことが、20年にわたって行われてきたのです。

*4 データは財務省「法人企業統計年報」。名目付加価値生産性=名目付加価値/従業員数、名目付加価値=人件費+支払利息等+動産・不動産賃借料+租税公課+営業純益。

■日本企業の国際競争力は下がったまま

さらに2006年版(2005年12月13日公表)になると、報告書は「経営者よ 正しく 強かれ」と、何かのまちがいか、あるいはブラックジョークかと目を疑うほど勇ましいタイトルがつけられています。

そして、「賃金決定においては、生産性の裏付けのない、横並びで賃金水準を底上げするベースアップはわが国の高コスト構造の原因となるだけでなく、企業の競争力を損ねる」とあります。
賃下げで企業はROEを引き上げることに成功したものの、半導体企業の国際競争力は下がったままです。

2008年版(2007年12月19日公表)においても「生産性に応じた総額人件費管理」を掲げていますが、現実には労働生産性に応じた人件費決定は四半世紀にわたって反故にされているのです。

■労働組合は正当な権利を放棄している

せっかく、経営者が「生産性に見合った人件費決定」と20年以上にわたって言い続けているわけですから、日本労働組合総連合会(連合)は今年の賃上げ率を要求するだけではなく、過去の生産性に見合って人件費が決定されなかった分も要求すべきです。
そうでないと、過去二十数年間の生産性向上にともなう賃金を放棄することになってしまいます。

厚生労働省が公表する賃金統計(毎月勤労統計)の実質賃金と、春闘賃上げ率(実質化した数字)の相関性は、1997年を境に大きく変化しました。
1996年まではおおむね両者には強い相関関係(*5)がありました。
春闘賃上げ率が決まれば、その年の実質賃金の上昇率はおおむねわかったのです。

ところが1997年以降、両者はほとんど無相関となりました。
春闘賃上げ率(実質化)は、雇用者全体の実質賃金の動向を決める要因ではなくなったのです。


*5 春闘賃上げ率(x)、実質賃金増減率(y)として、1971〜1996年までと、実質賃金が下落に転じた1997〜2023年までの2区間に分けて相関係数(r)を計算すると、前者(ただし第1次石油ショック後の1974〜1976年の3年間を除く)は0.8621、後者は0.1656。後者において、xとyはほぼ無相関。

■労組はもはや労働者の代表ではなくなった

その理由は、労働組合の組織率にあります。
労働組合の組織率はピーク時の1994年には24.1%でしたが、2022年には16.5%に低下しています。
連合加盟に限ると、組合員は約700万人(*6)で、全雇用者6076万人の11.5%にすぎません。

しかも年々、労働組合員数は減少(*7)しているうえに、非正規労働者の多くを占めるパートタイム労働者の労働組合推定組織率はわずか8.5%(*8)(2022年)です。

非正規労働者の全雇用者に占める割合は37.0%(*9)(2023年)に上っています。
日経連が「新時代の『日本的経営』」を公表したのは1995年5月でした。
日経連は、この報告書で労働者を三つの形態、すなわち幹部候補者、専門職、一般職に分け、後者二つを有期雇用契約に切り替えて、人件費の抑制を図ろうとしました。

その結果、一気に非正規労働者の割合が増加しました。
報告書が公表される前年の1994年の非正規労働者の割合は20.3%、971万人でしたが、2023年には2124万人と2倍以上に増加しています。

連合のホームページには「“働く”を支える。働く人のくらしを守る」と掲げられています。
「日本労働組合総連合会」と名乗っているわけですから、連合の組合員だけを守る存在ではないはずです。

しかし連合は、組合員の暮らしは守っているようですが、日本の労働者全体の暮らしを守っているとは言い難く、労働者全体の利益を代表する団体ではなくなったようです。

*6 2023年「労働組合基礎調査」の結果に対する談話によれば、「連合については、産業別組織を通じて加盟している組合員数が681万7000人(前年比1万9000人減)、地方直加盟を含めた総数では692万9000人(前年比2万3000人減)、全労働組合員数に占める割合は69.7%(前年比0.1ポイント増)となった」。

*7 労働組合員数は1997年に1217万人だったが、2022年には993万人と大幅に減少(労働政策研究・研修機構「早わかり グラフでみる長期労働統計」)。

*8 データは労働政策研究・研修機構「早わかり グラフでみる長期労働統計」。

*9 2023年の雇用者数は6076万人、うち正規の職員・従業員は3615万人、非正規の職員・従業員は2124万人。非正規のうちパート・アルバイトは1489万人(総務省「労働力調査」)。

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水野 和夫(みずの・かずお)
経済学者
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2024年12月12日

「なぜ日本の選手は謙虚なのか?」「はるかにレベルが高いのに」中国代表と日本代表の違いは? 森保ジャパン2戦士の見解に中国驚き!「実際の差は8−0」

「なぜ日本の選手は謙虚なのか?」「はるかにレベルが高いのに」中国代表と日本代表の違いは? 森保ジャパン2戦士の見解に中国驚き!「実際の差は8−0」
12/8(日) SOCCER DIGEST Web

「4、5点差はつく戦力差がある」

 FC町田ゼルビアに所属する日本代表2選手が、中国メディア『CCTV』のインタビューで、中国代表の印象について語った。
『直播吧』など複数の中国メディアが伝えている。

 日本代表は、北中米ワールドカップ・アジア最終予選の第1節と第6節で中国代表と対戦。
ホームでは7−0で圧勝し、アウェーではやや苦戦を強いられながらも、3−1で勝利した。

 その2試合をベンチで見守ったGKの谷晃生は、「フィールド上での実行力や戦術の全体的な理解度という点では、日本の選手の方が優れているかもしれない。
監督の取り決めや指示を実行する力がより統一されていて、これが試合に勝てるポイントの一つかもしれないし、中国選手との違いの一つかもしれない」とコメントした。

「結果的に、2試合目のスコアが、中国代表と日本代表の現在の実力差に近いものとなった」

 また、初戦はベンチ外、2試合目は招集外だったDFの望月ヘンリー海輝はこう述べている。

「個人的な視点から言うと、中国はフィジカル的に優れた選手が多く、日本は技術に優れた選手が多いかもしれない。
1対1では、日本選手のほうが勝つ回数が多いかもしれない。それが2試合で勝利した理由の一つだと思う。
1試合は7−0、もう1試合は3−1だった。
個人的には、2試合目のスコアの方が、中国と日本のサッカーの実際の差に近いと思う」

 このインタビューに、中国のファンからは次のような声が寄せられた。

「なぜ日本の選手はあんなに謙虚なのか?」
「4、5点の差はつく戦力差がある」
「とても謙虚で、ピッチ上では一生懸命にプレーする」
「日本の技術と戦術、そしてハイインテンシティ下でのボールの扱いのレベルははるかに高い」
「中立地の会場でやった場合、少なくとも4点差はつくはず」
「とても礼儀正しい。私たちが誇るフィジカルの質は実際、あらゆる面で日本が上回っている」
「7−0の試合は本当に予想外だった」
「あらゆる面で差がある」
「実際の差は8−0」

 中国をリスペクトした発言が反響を呼んでいる。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部
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2024年12月13日

マイナ保険証「紐づけは解除もできる」保険医協会スタッフが鳴らす警鐘と“正しい情報

マイナ保険証「紐づけは解除もできる」保険医協会スタッフが鳴らす警鐘と“正しい情報”
12/12(木) 週刊女性PRIME

 12月2日、現行の健康保険証が新たに発行されなくなった。
その代わりとなるものが、マイナンバーカードに紐づけされたマイナ保険証だ。
'22年10月に当時のデジタル大臣、河野太郎議員が「'24年度秋に現行の保険証の廃止を目指す」と、宣言してから2年。その言葉のとおりになったわけだが─。

「この日から今の保険証が使えなくなる」

「すぐにマイナ保険証を持たないと、医療保険を受けられない」

 といった情報に、戦々恐々としている人も少なくない。

「紐づけ解除」も可能

「国の周知が不十分だから、そんな誤った情報が拡散されているんです」

 前出の情報は誤っていると指摘するのは、東京保険医協会のスタッフ。

「今の保険証が無効にはなりません。新たに発行しなくなっただけで、有効期限内であれば最長1年間使えます」(東京保険医協会のスタッフ、以下同)

 また、現行の保険証の有効期間が切れても、

「マイナンバーカードに保険証を紐づけていなければ、資格確認書が送られてきて保険診療が受けられます。
慌ててマイナ保険証に切り替えなくても問題はありません。

 先日、報道番組で見たですが“マイナンバーカードは実印と同じだから、持ち歩いて紛失するのが怖い”と話されているご高齢の方がいらっしゃいました。
そういった方は10月28日から、紐づけした保険証を解除することも可能です。
そうすると現行の保険証と同じように使える資格確認書が送られてきます」

メリットともに危険性も

 もともとマイナンバーカードの取得は任意で、そのカードに保険証を紐づけすることは国からのゴリ押しといった批判の声も上がった制度。その保有率は75・7%だが、10月に保険証と紐づけて利用した人は15・67%と低迷している。

「国のHPや広報物には大きな文字で“マイナ保険証を登録してください”など、強制と取られかねない言葉が並ぶ中、利用解除については小さい文字で簡潔に書かれていることが多い。
“ゴリ押し”といわれても仕方ないです。

 私たちの協会では、HPに保険証の期限や資格確認書について、またマイナ保険証の登録解除について説明していますし、協会に加盟している都内6000の医療機関の待合室には、ポスターを張るなどして周知させていただいています」

 今のままでは医療現場や自治体に、今以上の混乱が広がると協会のスタッフは話す。平将明デジタル大臣は、

「従来の健康保険証はICチップも顔写真もなく、不正を働こうとする人からみると非常につけ込むスキのある仕組み。この穴をふさぎたいという思いがまずある」

 と語り、医療サービスの向上につながるという従来の説明を繰り返したが……。

「国は患者さんの診療情報を含め、メリットがあると説明していますが、それ以上にデータベースが集約されるという危険性もはらんでいます。
マイナ保険証の利用率が低迷している中、国民の意思を無視して現行の保険証の新規発行を停止するのは問題があるのではないでしょうか」(前出・東京保険医協会スタッフ)

保険証をめぐるドタバタは、まだまだ続きそうだ。
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だから坂本龍馬は教科書から消えかけた…東大教授・本郷和人「歴史研究者が坂本龍馬に見向きもしないワケ」

だから坂本龍馬は教科書から消えかけた…東大教授・本郷和人「歴史研究者が坂本龍馬に見向きもしないワケ」
2024年12月12日 PRESIDENT Online

坂本龍馬はNHK大河ドラマや小説で描かれ、いまでもファンが多い。
東京大学史料編纂所教授の本郷和人さんは「専門家からすれば、坂本龍馬は歴史研究の対象にはならない。
「薩長同盟の立役者」と言われるが、実際には西郷隆盛の使い走りでしかなかったという説を唱える研究者もいる」という――。
※本稿は、本郷和人『日本史の偉人の虚像を暴く』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。

■坂本龍馬も新選組も研究対象にはならない

日本史のなかでも、根強い人気があるのはやはり、「戦国時代」と「幕末」ですが、その理由のひとつは、いずれも個性的な英雄が登場し、そのキャラクターに感情移入したり、「推し」にしたりしやすいからなのかもしれません。

そのなかでも、とりわけ「幕末」の「英雄」と称される坂本龍馬や逸話揃いの新撰組には多くのファンがいます。

その人気にあやかって町おこしに使われたりもしていますから、迂闊なことは言えないのですが、歴史研究を専門とする身からすると、正直に言えば、坂本龍馬も新撰組も、研究の対象とは言えないのです。

『日本史の偉人の虚像を暴く』でも、藤原道長や平安時代の歴史研究の薄さについて、門外漢ながら指摘させていただきましたが、やはり歴史研究の対象になりやすいのは、歴史のターニングポイントであり、エポックメイキングな偉業を成し遂げた人物やその周辺なのです。
その意味でいうと、坂本龍馬も新撰組も、歴史の大きな流れにおいて、いったい何をした人物なのか、よくわかりません。

坂本龍馬にしろ、新撰組の隊員たちにしろ、いずれも歴史研究というよりも、小説や漫画、映像作品など、エンターテインメントの世界で深掘りされてきた人物なのでしょう。
特に坂本龍馬の人気は衰えを知りません。

■大ヒット小説で人気に火が付いたが…

まだ明治維新から間もない明治16(1883)年に地元の高知(土佐)の新聞で連載された伝記小説『汗血千里の駒』が人気を博して以降、たびたび坂本龍馬は話題となってきた人物です。

当時の明治政府では薩摩・長州閥の権力が強く、そこで土佐の人間も忘れるなということで坂本龍馬が持ち出されたという話もあります。
しかし、その後、現代まで続く坂本龍馬の不動の人気を決定的なものにしたのは、やはり司馬遼太郎先生の『竜馬がゆく』でしょう。

それは新撰組にしてもそうです。
早いものでは、新撰組の生き残りである二番隊隊長の永倉新八が記者の取材に協力した『新撰組顚末記』などが大正2(1913)年に小樽新聞で連載されています。

昭和3(1928)年に刊行された子母澤寛『新選組始末記』でその存在が一躍知られるようになり、やはり司馬遼太郎先生の『燃えよ剣』の人気によってさらに火がつきました。
今では、漫画やアニメ作品などの題材になることも多く、特に隊士たちを美形・イケメンキャラで描くなど、女性人気も高い存在となっています。

そんな人気のためか、しばしば近現代史の先生が揃って語る悩みに、「坂本龍馬か新撰組で卒業論文を書きたがる学生が多い」ということがあります。
先に述べたように、坂本龍馬も新撰組も、歴史学では評価しづらい存在のため、確実な論文を書きたいなら、テーマを変えるように指導をしているとのことでした。

■実質的には西郷隆盛の「使い走り」

新撰組は京都の市中の治安を守る一種の警察組織ですから、歴史の大きな流れに影響を与えたかどうかという観点で言えば、学術的な対象になりづらいのはわかります。
しかし、坂本龍馬の場合はどうでしょうか。

一般的には、坂本龍馬は倒幕の原動力となった薩長同盟を結ばせた立て役者ということになっています。
けれども薩長同盟の主体は、あくまでも薩摩藩と長州藩です。

この場合、薩摩の西郷隆盛と長州の桂小五郎がすごいのであって、仲立ちをしたとされる龍馬は、そもそも当事者ではありません。
一部の研究者によれば、坂本龍馬は「西郷の使者」に過ぎず、西郷の命で動き回っていた使い走りなのだから、薩長同盟への貢献はさほど認められないのだそうです。

龍馬の発案としては、「船中八策」が知られていますが、これも龍馬本人にオリジナリティがあるものとは言えないそうです。

以前、徳川家19代目の御当主で、歴史研究家でもある徳川家広さんとお会いしていろいろとお話を伺ったことがありました。そのとき、家広さんがおっしゃっていたことに、「日本三大どうでもいい事件」というものがあります。

世のなかには、未解決のために陰謀めいた説を含めてさまざまに論じられている事件がありますが、なかでも取り上げることすら意味のないものが3つあるというのです。

■ただの「警察組織」を研究しても意味がない

ひとつは、GHQによる暗殺説がある下山事件。
戦後間もない1949年、国鉄総裁の下山定則氏が失踪し、翌日に常磐線の北千住駅と綾瀬駅の間で、轢(れき)死体となって発見された事件です。
未だに真相が究明されていない戦後の未解決事件のひとつですが、GHQ犯行説がしばしば囁(ささや)かれています。

2つめが、本能寺の変。
信長を討った明智光秀の本当の黒幕は誰かというものです。
なぜ光秀は信長を討ったのか、さまざまな黒幕説・共謀説が唱えられて今もなお議論をされていますが、歴史学的にはそれを指し示す史料が何もない以上、検証のしようがありません。

そして、3つめが坂本龍馬の暗殺事件です。
坂本龍馬が歴史学上、そこまで重要な人物ではないとなれば、やはりそれは「どうでもいい」ということになります。

新撰組に至っては、やはり歴史研究の対象にはほとんどなりません。
新撰組は警察組織ですから、本来は不逞浪士を取り締まり捕縛することが役割のはずです。
にもかかわらず、エンタメの世界では多くの浪士を斬り殺した殺人集団として描かれることもしばしばでしょう。

■「自由な雰囲気」が人気の理由

血生臭いと言えば、新撰組内での粛清も有名です。

たしかに実際問題として、多くの人間が粛清もしくは切腹となっています。
また近年では、一番隊隊長が沖田総司、二番隊隊長が永倉新八なのはよいとしても、三番隊隊長が誰だったのか議論になっているそうです。
よく知られているのは、斎藤一ですが、六番隊隊長とされていて、多摩時代から近藤勇らと一緒だった井上源三郎が実は三番隊隊長だったのではないか、という意見もあるのです。

隊の組織形態もよくわからない状態であり、それほど専門の研究は進んでないのではないか。
それだけに、新撰組はフィクションの対象として面白いのかもしれません。

坂本龍馬も新撰組も人気はあるけれども、学問としての歴史研究においては対象にするほどの歴史的人物ではない……、ということで坂本龍馬と新撰組の虚像を暴いておしまい、というだけではなんとも味気ないですね。いずれにしても、現在の坂本龍馬や新撰組の人気はすごい。

どちらも、その人気を決定的にした司馬遼太郎先生が亡くなった後も、衰えを知りません。
特に龍馬に至っては、その自由な雰囲気を身にまとったような行動が、人々の精神を鼓舞しているかのようです。

■暗殺犯はどんな人物だったのか

歴史研究者からはほとんど見向きもされない龍馬暗殺ですが、私自身はこの事件を通して、当時のさまざまな勢力の動きをまとめることは、非常に面白いのではないかなと思います。
また、龍馬の暗殺には新撰組が関わっているとする説もありますから、以下では坂本龍馬の暗殺の犯人についてまとめてみましょう。

下手人探しについては、龍馬暗殺の2カ月後に戊辰戦争が始まったため、実際の容疑者取り調べは、明治2(1869)年5月の箱館戦争終結後に実施されました。
当初、事件への関与が疑われていたのは、新撰組のなかで主に「暗殺」の任務を担っていたと言われる「人斬り鍬次郎」こと、大石鍬次郎でした。
彼への取り調べが行われましたが、その後、京都見廻組が実行犯であるという証言が出てきたのです。

見廻組の隊士・今井信郎を取り調べたところ、犯行を供述し、その結果、今井を含む京都見廻組7名が、坂本龍馬暗殺の実行犯であったことが判明しました。
しかし、今井以外の6名はすでに戊辰戦争で戦死していました。
そのため、今井だけが刑に服すことになりました。
しかし、今井の自供した内容には矛盾も多く、信憑性(しんぴょうせい)に欠けていました。

また、禁固刑に服していましたが、わずか2年で赦免となっており、不審な点が多いのです。
京都見廻組は新撰組同様、京都の治安を守る警察組織のようなものですが、有象無象の集まりであった新撰組と違って、主に旗本で構成されたエリート集団でした。

剣の達人揃いで、なかでも西岡是心流の桂早之助は小太刀の名手として知られていました。

■龍馬に恨みを持っていた人物はいたが…

龍馬が暗殺されたのは近江屋の室内でのことです。

かなり狭い部屋で、大人2人が立つこともままならないくらいの広さでした。
通常の刀を振るうことは難しかったでしょうから、犯人は小太刀で龍馬を斬りつけたと考えられます。
それゆえ、小太刀の使い手である桂早之助が龍馬暗殺の下手人だと思われました。

暗殺の1年前、龍馬は京都伏見の船宿・寺田屋で、京都所司代指揮下の伏見奉行所の捕吏たちに襲われたことがあります。
その際、龍馬は高杉晋作からもらったピストルで応戦し、逃げのびました。
この事件では、伏見奉行所側に死傷者が出ています。

当時、桂早之助は京都所司代の同心でした。
つまり、桂早之助にとって龍馬は自分の部下や同僚を殺し、傷を負わせた人間ということになります。
だから、桂早之助には龍馬を斬る十分な理由があるというわけです。
しかし、どうも京都見廻組が龍馬を暗殺した理由が、ある意味では私怨(しえん)に近く、動機の根拠としては弱いように思えます。

■大政奉還に反対する勢力の犯行だった可能性が高い

私が気になるのは、まず龍馬が殺された時期です。
武力によらない平和的な倒幕を念頭に置いた大政奉還が実現した、わずか1カ月後のことでした。

薩摩と長州は武力によって幕府を打ち倒そうとしたわけですが、幕府側は薩長の攻勢をかわすための窮余(きゅうよ)の一策として、政(まつりごと)を朝廷に返上するというアクロバティックな一手に出たのです。

これを後押ししたのが、土佐藩の後藤象二郎であり、同じ土佐藩士の坂本龍馬が暗躍していたとされています。
つまり、幕府側は大政奉還を望んで行ったことになります。

旗本を中心にした上位の組織である見廻組は、浪士を集めて組織された新撰組よりも、ずっと幕府の中枢に近い存在です。
幕府の考え方により精通し、より忠実であって当然でしょう。
それなのに、大政奉還を進めた龍馬を守りこそすれ、反対に殺(あや)めてしまうというのは、幕府の意に背くことになってしまいます。

やはり、京都見廻組では龍馬を暗殺する動機が弱いのです。
そうなると、反対に大政奉還を推進されると目障りだと考える者たちが、龍馬暗殺の下手人である可能性が高いということにならないでしょうか。

■薩摩藩は圧倒的な倒幕派だった

そもそも大政奉還はいかにしてなされたのか。

まず慶応2(1866)年1月、土佐の坂本龍馬や中岡慎太郎を仲立ちにして、薩摩と長州の間で、薩長同盟が結ばれます。
その翌年に薩摩藩と土佐藩の間で薩土盟約が、薩摩藩と長州藩と安芸藩の間で薩長芸三藩盟約が結ばれました。
これらの藩は明治維新の原動力となりましたが、しかし、それぞれの主張や思惑、立場は微妙に異なっていました。

特に意見の相違があったのは、徳川幕府をどうするかという問題です。

土佐藩は幕府と朝廷を一体化させる公武合体を推進していました。
藩主の山内容堂も、15代将軍・徳川慶喜を最後まで擁護していました。
安芸藩も諸外国の脅威に危機感を持っており、徳川幕府を仲間に引き入れるべきだと主張しました。

一方、明らかに倒幕派なのは薩摩藩と長州藩でした。
幕府との武力衝突を避けたい土佐と安芸は、幕府へ働きかけ、大政奉還を実現させました。
徳川幕府が朝廷に政権を返上したのですから、徳川打倒の大義自体がなくなってしまったのです。

■西郷隆盛は「徳川慶喜の切腹」を求めていた

これに頑(かたく)なに反対し納得しなかったのが、薩摩藩でした。
特に意外と思われるかもしれませんが、西郷隆盛だったのです。

彼は武闘派のなかでも最強硬派であり、あくまでも徳川慶喜に腹を切らせるべきだと、武力による倒幕の姿勢を崩しませんでした。
江戸に兵を進めた西郷隆盛が勝海舟と直接会談を行ったことで、江戸総攻撃は回避され、江戸無血開城となったことはよく知られています。

しかし、その直前まで、西郷は断固として軍事行動を進めようとしていたのです。

それは大久保利通に宛てた手紙にはっきりと書いてあります。
このように考えると、坂本龍馬の暗殺を実行したのは薩摩藩である可能性も大いにあるのです。
もちろん証拠となる史料はなく、あくまでも状況証拠を検証した結果、推理されるものの範疇にとどまります。

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本郷 和人(ほんごう・かずと)
東京大学史料編纂所教授
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2024年12月14日

自民党の「先送り」は国民ダマしの常套句…防衛増税に関する所得税増税時期の決定延期を喜んではいけない

自民党の「先送り」は国民ダマしの常套句…防衛増税に関する所得税増税時期の決定延期を喜んではいけない
12/13(金) 日刊ゲンダイDIGITAL

 自民党の宮沢洋一税制調査会長(74)は13日、2025年度税制改正を巡る公明党との税調会合後、防衛増税に関する所得税の増税時期の決定を先送りすることで合意したと明らかにした。

 自民税調は当初、防衛費材の財源について、法人税とたばこ税を26年4月、所得税は27年1月に増税開始を目指すとして、25年度税制改正で決定する方針だった。
しかし、公明から所得税増税の実施時期を決めることに慎重論が出たため、自民側が公明案に譲歩する形となった。

 これを受け、ネット上では《やれやれ良かった》《法人税とたばこ税の引き上げもやめてください》《これ以上、所得税が増やされなくてよかった》などと“評価”する声が出ているが騙されてはいけない。

 あくまで自公両党は増税を開始する時期の「先送り」を決めたのであって、所得増税自体の「廃止」に合意したわけではないからだ。

■故・安倍元首相は国政選挙前に消費増税を2回「先送り」

 増税といった有権者に負担を強いる政策を実施する際、それが国政選挙に影響すると判断した場合、自民が決まって口にする常套句が「先送り」だ。

「アベノミクスの成功を確かなものとするため、消費税10%への引き上げを18カ月延期すべきであるとの結論に至った」

 2014年11月。故・安倍晋三首相(当時)は消費増税関連法で15年10月から10%に引き上げることが明記されていた消費増税の実施時期について1年半(17年4月)の先送りを公表。「アベノミクスへの信を問う」などと言って衆院解散、総選挙に臨んだ。

 安倍氏はさらに16年7月に行われた参院選の1カ月前、新興国の経済の落ち込みなどを理由に消費増税の実施時期を19年10月に再び先送りすると表明。

 結局、増税先送りを決めた直後の衆参両選挙で安倍自民は独り勝ち。その後、国民の反対の声は政府・与党に届くことなく、消費税率は引き上げられることになった。

 22年末に突然、閣議決定した安全保障関連3文書で、23〜27年度の5年間の防衛費総額を43兆円と決めた岸田文雄前首相(67)も“手口”は同じだ。

 世論の強い反発を受けた岸田氏は防衛費増の財源に充てる増税に関する法整備を先送りし、23年10月の衆院予算委員会で増税の開始時期を問われると、「実施時期は27年度に向けて複数年かけて段階的に実施するという枠組み」「景気や賃上げの動向などを踏まえて判断する」として判断先送りを明言。この時も、野党側から「一体いつ増税の具体案が示されるのか」「衆院解散、総選挙を控えているゆえの先送りか」といった指摘が出ていた。

 今回の所得税増税の開始時期の先送りについても同様だろう。
25年夏は参院選や都議選が予定されており、衆院選で惨敗した公明は両選挙に総力を挙げて臨み、党勢回復に力を入れるとみられている。
このタイミングで所得税増税の開始時期が決まれば得策ではないと考えても不思議ではない。

 国民は「先送り」ではなく「廃止」を強く訴える必要がある。
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2024年12月15日

年末年始に増える詐欺の手口

実行犯は「闇バイト」! 年末年始に急増する"名指し電話詐欺"の最新手口と対策
2024年12月14日 :週プレNEWS

非通知で「オレオレ」と語り、ターゲットは高齢者というイメージだった電話詐欺。
今は闇バイトが増えた影響もあり、若者でも引っかかりそうな手で迫ってくるという。
その手口と対策をあらためて聞いてみた!
*  *  *
■携帯電話に番号通知でかかってきた!

ここ週プレ編集部に悩める者がいた。―41歳、男性、会社員。

「先日、080から始まる知らない番号からの着信を取ったところ『警視庁捜査2課の○○です。×山△男(自分の本名フルネーム)さんの電話ですか』とかかってきました。

警視庁というフレーズや、なぜ俺のフルネームを知っている!?とドキドキしながら、『そうです』と答えると、『新潟県警での捜査であなたの名前が挙がっています』と言われ、このあたりで冷静に『なぜ新潟?』となり、いぶかしげに『はい?』と答えたところ、ガチャッと向こうから電話を切られてしまいました。

調べてみると今はやっている電話詐欺の手口のようですが、なぜ俺に? 
そしてフルネームまでバレていることにモヤモヤしています。
電話詐欺の最新の手口や対策を教えてください」

この相談に答えてくれたのは、ノンフィクション作家で犯罪ジャーナリストの石原行雄氏と、元特殊詐欺主犯として逮捕服役、現在は犯罪撲滅活動家のフナイム氏。

――電話詐欺=高齢者宅を狙うものというイメージがありましたが、今は携帯電話にかけるものも増えているのでしょうか?

フナイム
 警察官を騙(かた)る詐欺は昔からある手口で、確かに以前は高齢者の自宅を狙って電話をかけていました。
ですが、今は個人のスマホに電話をかける手口に変わってきています。

個人のスマホの番号などの情報はさまざまなところで売買されており、簡単に入手でき、なおかつ圧倒的にリストの母数も多いため、詐欺に引っかかる可能性のある人が増加します。今後も増えていくと考えられます。

電話詐欺はコスパやタイパがいい

石原
 電話詐欺はコスパやタイパがいいんです。
口座振り込みやレターパックでの現金送付をさせることができれば、電話一本で済む。

高齢者向けのオレオレ詐欺のような劇場型詐欺は息子役、被害者役、警察役など何人もの役が必要なものもありますが、警察からの電話のパターンはひとりで済ませられる可能性もありますので。

フナイム
 闇バイトと大いに関係しています。

電話詐欺にはさまざまな役割があります。

・電話をかける【かけ子】(闇バイトが多い)
・お金の受け取り口座を準備する【口座屋】
・自身の口座を売ったり、貸したりする(闇バイト)
・口座から現金を引き出す【出し子】(闇バイト)
・スマホのSIMを契約する(闇バイト)

少なくともこれだけの人間が関わっています。

石原
 この黒幕のトップには暴力団がいて、指示役は半グレと呼ばれるトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)。そして、実行犯は先の説明のように闇バイトです。

今ニュースになっている強盗を行なうグループと構成はまったく同じで、実施する内容が違うだけ。
強盗を行なっているグループが詐欺電話をしている可能性もあります。
そこでカモだと思われると、次は強盗のターゲットにもなりえるので注意が必要です。

――闇バイトの蔓延(まんえん)で急増しているのですね。

石原
 そのほか、年末年始にも急増します。
理由はふたつで、年末は借金の返済期日が設定されていることが多いので、闇バイトの応募者=捨て駒が増える。

そして、金融機関の休業などを懸念して現金をまとめて自宅に置いておく人が増えるので、郵送してほしい、現金を受け取りに行くなどの詐欺がしやすくなるのです。

年末は借金の返済期日が設定されていることも多く、闇バイトが増えて詐欺電話も増える

――ターゲットはどうやって選ばれるのでしょう?

フナイム
 詐欺師たちはリストの上から順番に電話をかけているので、リストだけでは相手がどんな人物かわかりません。
電話をしてからターゲットにできるかを判断します。

ちなみに、ターゲットにしやすい人は、

・話を聞く人 
・怖がる人 
・詐欺師の言うとおりにしてくれる人 
・ググったり調べない人 
・人に相談しない人 
・プライドの高い人 
・守りたいものがある人 
・連絡がしっかり取れる人 
・約束を守る人
です。
このような揺さぶりには毅然(きぜん)とした態度を取ることが重要です。

■電話からお金を引き出す手口とは!?

――非通知だと無視するのですが、今回は080から始まる番号が通知されていたので出てしまいました。

石原
 指示役は捨てスマホ(SIMカード)をたくさん持っています。
おっしゃるとおり、非通知の電話は警戒されて出られないことが多いため、今は番号をさらして電話をしてきます。

また、電話番号の偽装表示もできます。『スプーフィング』という方法で、プログラミングで実現させたり、海外の違法サービスの悪用でもできる。
オレオレ詐欺では、息子の自宅の電話番号を偽装表示させた例もあり、巧妙になっています。

――ちなみに、私は途中で切られてしまいましたが、冒頭の『新潟県警』のくだりの後どういう手口を使ってお金をだまし取るのでしょう?

石原
 とにかく焦らせて正常な判断力を奪うことが基本なので、さまざまな方法でそれを仕掛けてきます。

『口座が悪用されている恐れがあるので、今すぐ新潟まで出頭してください』など不可能なことを言い、『そんな遠くに行けない』と返すと、『このままだとぬれぎぬでも犯罪者になってしまいます。示談金を支払えば解決します』『口座が悪用されていないか確認するために、一度こちらの口座にお金を振り込んでください』などというウソをついてきます。

そこで引っかからなければ、金融庁や銀行員など別の役が登場する劇場型シナリオに変わっていく流れも考えられます。
また、『電話だけだと信じられない』と言うと、LINEのIDでつながって、偽物の逮捕状や警察手帳の画像を送ってくることもあります。

LINEまでつなげ、偽の逮捕状の画像を送って示談金を振り込ませる手口も

――なるほど。あと、何より気持ち悪かったのが、電話番号とフルネームがひもづいてバレていること。どこから情報が漏れるのでしょう?

石原
 個人情報保護法ができてから20年以上たっていますが、残念ながら個人情報はダダ漏れなのが現状です。

法に抜け穴が多く、取り締まりも甘い。
情報を持ち出されたり、ハッキングされたりした企業は被害者という見え方で『ご迷惑をおかけして申し訳ありません』と謝罪するだけで済む状況で、ありとあらゆる名簿が流出しています。

そのほか、名簿会社に企業の従業員名簿や学校の卒業名簿などを小遣い稼ぎで売る人も少なくありません。
1件数円〜数十円程度ですが、学校の名簿で200〜300人分なら1万〜2万円にはなります。

また、不動産会社が持つ名簿であれば、勤務先、役職、家族構成、資産額なども流出し、狙われやすくなります。
ほかにも、訪問販売で高級羽毛布団を購入した人のリストなども出ていて、それはイコール資産があって人を信用しやすいターゲットのリストでもあるので、高値で取引されます。
ネット上では、アンケートサイトを装って個人情報を取るなどの手口も考えられます。

学生時代の名簿やネットアンケートなどあらゆるところから、名前と携帯番号などの個人情報が漏れる恐れがある

――つまり、いつ詐欺電話がかかってきてもおかしくないという状況なのですね......。
では、最後に詐欺電話がかかってきたときにやるべきこと、やってはいけないことを教えてください。

フナイム
 やってはいけないのは、執拗(しつよう)にバカにしたり、『通報する』など相手の感情を逆なですること。
住所がバレていて、宅配ピザが届くなどの嫌がらせをされたという事例もあります。
最悪の場合、強盗のターゲットにされる可能性も考えられます。

では、するべきはというと

・毅然とした態度で、相手の名前、住所、会社名や所属先、連絡先を聞き、確認してこちらから折り返しますと伝える。 
・聞いた情報を必ずGoogleなどで検索する。 
・相手のペースに乗らない。

これだけで相手は嫌がり、電話を切ります。不可能とわかれば、二度とかかってこないはずです。

皆さんもご注意を!
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2024年12月16日

あなたは本当に「論理的」か?…「攻撃ボタン」実験が明らかにする「持つもの」の心理と人間の誤作動

あなたは本当に「論理的」か?…「攻撃ボタン」実験が明らかにする「持つもの」の心理と人間の誤作動
12/15(日) 読売新聞オンライン

 世界中で平和を望まない人はいない。それなのに、なぜ人は武力を持つのだろうか――。
そんな疑問に答えるべく、ある研究者が心理実験の結果をまとめた論文が、国際学術誌「エボリューション・アンド・ヒューマン・ビヘイビアー」に掲載された。
そこから見えてきた「持つもの」の心理とは。(デジタル編集部 古和康行)

もしあなたが武器を持つなら…
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 「もしあなたが武器を持つなら、私も手にする」。
こんなタイトルの論文を執筆したのは、鹿児島大学法文学部准教授の大薗博記氏(社会心理学)らの研究チームだ。

 「武力の保有」は、外交上、大きな意味を持つ。
例えば、1962年10月に起きたソ連(当時)がキューバへ中距離核ミサイル配備をしようとし、アメリカとの緊張が極度に高まったこともある。
結果的に戦争こそ回避されたものの、外交上の駆け引きとして、武力の保有は、切っても切り離せない関係だ。

 大薗氏がこの研究にとりかかったのも、ロシアによるウクライナへの侵略で、国際的な緊張が高まっていた時期に武力の保持が話題になったことがきっかけだった。
「なぜ、武力を持とうと考えるのか」。
武力は他国に対しての「抑止力」として働くというのが通説だが、社会心理学者として、政治や外交以前に、人の心に注目して考えようと思ったという。

 実験はインターネット上で、男女182人を対象に行われた。
期間は、2022年10月22〜24日。実験の内容は、次の通りだ。

〈1〉参加者同士がペアとなり、それぞれ「攻撃ボタン」を持つか、持たないかを選択する。それぞれの持ち点は1500点。

〈2〉攻撃ボタンを持つことを選んだ参加者は30秒間以内に、押すか、押さないかを選択する。持たなければ、することはない。

〈3〉攻撃ボタンを押すと、自らは100点を失うが、押された相手は1000点を失う。
互いに押さない場合はそのまま1500点ずつを得る。
先制攻撃した方だけが効力を持ち、攻撃された側が後から押しても得点は変わらない。

 実験が明らかにしようとしたのは「人は論理的に判断できるか」(大薗氏)ということだ。
攻撃すれば100点を失うから、攻撃で得られるものはない。
実験では、「相手が持った場合に押すか」と「相手が持たなかった場合に押すか」の両方の場合についても聞いており、双方がボタンを持っていると、「相手から攻撃され、被害を受けるかもしれない」という恐怖が互いに生まれ、「その前に自分から」という先制攻撃を誘発する。

 そのため、「ボタンを持たない」という選択をする方が、相手側の恐怖はなくなり、攻撃されるリスクも低くなる。
つまり、論理的には「持たない」方が得点の「期待値」は高くなる。

 だが、実際の結果を見てみると、参加者の59・3%が「持つ」ことを選んだ。
そして、「相手は持つ可能性が高い」と考えている参加者ほど、「持つ」という選択をしていることもわかった。

相手が「持つ」と知ってしまうと…

 加えて、もう一つの実験も行われた。
これは「相手が攻撃ボタンを持つかどうかは確率的に決まる」というものだ。
そのため、実験参加者は「相手が攻撃ボタンを持つ可能性」をあらかじめ知ることができる。
こちらの実験もインターネット上で131人が参加した。期間は2022年12月18〜25日。実験内容は以下の通りだ。

〈1〉対戦相手がボタンを持つ確率は10%、もしくは90%と伝えられる。そのうえで、参加者は自分がボタンを持つかどうかを決める。

実験2で攻撃ボタンを持った人の割合

〈2〉、〈3〉は先ほどと同様。

 この実験の結果、相手がボタンを持つ可能性が低くても54%の参加者が、可能性が高い場合には73・5%の参加者がボタンを持つことを選んだという。

思想とは関係なく起こった「誤作動」

最も利益を得るパターン

 この実験の肝は「ボタンを持たない方が得をする可能性が高い」という前提にある。
ボタンを持っても、攻撃すれば、自分も得点を減らしてしまう。
また、ボタンを持つことで相手には恐怖を与え、先制攻撃を誘発してしまう。持たなければ、そのようなリスクはなくなる。

 「論理的に考えて最善の方法」を考え、行動したならば「攻撃ボタンを持たない」という選択を皆がするはずだ。
だが、実際の結果を見てみると、いずれの実験結果でもボタンを持つという選択をする人が多数派を占めた。
さらに、相手が「攻撃ボタン」を持つ確率が高い場合には、自分も「持つ」選択をする参加者の割合が増加している。

また、「持つ」選択をした参加者は、「ボタンを持った方が利益を得やすくなる」と考えていたこともわかった。
つまり、「ボタンを持った人」は、合理的な判断をしたつもりなのである。

 「興味深いのは、政治的な主義主張と『攻撃ボタン』の所有には明確な関係がなかったことです」と語る。
この実験では、参加者それぞれに自身の政治的な意見をたずねている。

 実験では、「現在の国際情勢から考えて、日本は核保有を積極的に議論すべきである」や「核保有には、相手国からの攻撃を抑止する機能がある」などの質問をして、「そう思う」「そう思わない」等、7段階で考えを問うている。
ただし、大薗氏は「核保有に積極的か否かと、ボタンを保持するかの選択に明確な関連はなかった」と説明する。
より抽象的な「保守的か、革新的か」や「ハト派か、タカ派か」という質問にも差は見られなかった。

 自身の主義主張とは関係なく、利益を損なうリスクが高い「相手を攻撃できる力を持つ」という選択肢を選ぶ――。
このことを大薗氏は「本来は利益につながる行動傾向が、誤作動を起こしたのかもしれない」と表現した。
「人間は進化してきた中で、または社会生活の中で『相手が力を持っているならば自分も持つ』という行動を取ったほうが抑止力が働くため、利益になる場合が多かったのかもしれない。
攻撃しても反撃される可能性がなく、抑止力が働かない場合でも、直感的にボタンを持つ、という選択をした人が多かった可能性があります」と分析した。

「現実世界で起きていることとは違う」

 ただ、今回の実験では、事前に「攻撃ボタン」のことを「武器」や「核のボタン」などと明示しているわけではない。
大薗氏も「現実世界で起きていることに直接当てはめて考えることはできません」とも付け加える。
「今回の実験は人工的な状況ですし、反撃もできない。利益も損も少額で、現実での武力の保持や行使とは大きく異なります」とも明かす。

 その上で、「国際情勢が目まぐるしく変わっている今だからこそ、一度冷静になって自分の考えを整理するきっかけにはなるかもしれない。
今回の実験は武力の保有がテーマでしたが、合理的な判断だと思い込んでいても、実際にはメリットが少ないケースはあるということ。
そういった誤作動を起こす可能性があるということをこの実験は示しています」と語った。

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2024年12月17日

河井克行元法相、1160日に及んだ「獄中生活」を振り返る トイレ許可までの苦労も…

河井克行元法相、1160日に及んだ「獄中生活」を振り返る トイレ許可までの苦労も…
12/16(月) 日刊スポーツ)

 2019年の参院選広島選挙区買収事件をめぐり公選法違反の罪に問われ、懲役3年、追徴金130万円の実刑判決が確定し、服役した元法相の河井克行氏(61)は、15日に放送されたABEMA「ABEMA的ニュースショー」(日曜正午)に生出演し、合計1160日に及んだ獄中生活について振り返った。河井氏は今年10月20日、刑期を満了している。

 刑務所は更生施設というが、河井氏は、現実は違っていたと証言した。
「私は『逆さまつげ』がものすごく伸びるので、それまでは月に1回切っていた。
(刑務所内で)眼科の専門医に診断書も見せたが『聞いた事がない』『切らない』と言われた。
お願いしますと言ったら、わーと言われ、あのときはいちばん、情けない思いをしました」と振り返った。
最終的には、自身で「むしり取る」しかなかったと述べた。

 さらに、「ある高齢の受刑者が、行進訓練の時にどうしても調子が合わないときがあった。
刑務官は『お前、なんでおれの言ってることが分からないんだ』と怒鳴った」と振り返る中で、自身の体験と重なる思いがあったと言及。
「あっ、と思ったのが、この人は分からないから分からないのに、なぜ分からないかと言われても、分からないよな、と。自分も同じようなことを今まで、周りのスタッフにも同じようなことを浴びせてたようなことがあったなと。
人のふりを見て、いけなかったと思いました」と、自身の言動を反省したことも明かした。

 さらに、当時、トイレに行きたいと思った時の刑務官との複雑なやりとりも回想。
トイレに行く場合は「挙手」と「許可」を17回繰り返さなければならなかったという。
「担当の刑務官は(刑務所内の)工場に1人ずついる。
その人とはだんだん人間関係はできていきますが、その人がいない時は若い方や違う方が臨時で来る。
(その場合は)トイレに行きたくて手をあげても、全然当ててくれないの」とぽつり。

「先輩の受刑者が『河井さん、(挙手した)腕が耳についていない。角度が浅い』と教えてくれた」と述べ「刑務官を1人1人、批判ということではなくて、組織の話。そういう文化になっている」と、問題提起するように語った。

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2024年12月18日

「情報を与えない」「侵入を躊躇させる」…元″強盗犯″たちが伝授する「犯行を諦めさせる」防犯術

情報を与えない」「侵入を躊躇させる」…元″強盗犯″たちが伝授する「犯行を諦めさせる」防犯術
12/17(火) FRIDAY

犯罪のフェーズが一変した年――後に’24年はそう言われるのではないか。

列島を恐怖のドン底に突き落としたのが、今夏以降、首都圏で相次いだ無差別強盗だ。
深夜、家屋へ押し入り、住人らに暴行を加えたうえで金品を奪う乱暴な手口なのだが――。

脅威なのは「犯人らは押し入る先の資産状況などは細かく精査せず、無差別にターゲットを決めている」(全国紙社会部記者)と思われる点だ。

強盗に狙われるような理由がなくとも、誰もが被害者になりうる異常な状況下でいかに備えればいいのか。
FRIDAYは今回、元″強盗犯″たちに接触。強盗の心理や習性を学び、「犯行を諦めさせる」防犯術を伝授してもらった。

ある強盗グループを仕切っていたA氏が打ち明ける。

「侵入するかどうか決めるにはある程度の情報が必要だ。
無差別に襲っているように見えても、最低限の下見は必ず行っている。
つまり、外から見ただけでは得られる情報が少ない家は侵入しにくい」

具体的にはどのような点に気を付ければいいのか。A氏が続ける。

「表札に家族全員の名前が書いてある家は、家族構成を犯人に教えているようなもの。
苗字だけにするとか、@表札に書く情報は最低限にすることが必要。
洗濯物も情報のかたまり。高齢者しか住んでいないかどうかなどすぐにわかる。
A洗濯物を室内の見えにくい場所に干している家は、下見で家族構成を割りにくい。

今はコンビニや街の至る所に当たり前に防犯カメラがつけられているから、強盗側は何度も下見はしたくない。
″数回見ただけでは情報が集まらない″と強盗に思わせることが大切だ」

だが、犯人たちに情報を与えたくないからといって高い塀や植木を使い、外部から完全に敷地内の様子を見えなくしてしまうのもよくない。
かつて半グレ集団に所属し、強盗をシノギの一つにしていたB氏が言う。

「外からの見通しが悪いということは、一度敷地に入ってしまえば周囲の住人に気付かれる可能性も低いということ。
狙われやすいと思ったほうがいい。
逆に、B塀や植木が低くて外から丸見えの家のほうが、俺はイヤだね」

侵入先を見極める際、犯人らが気にする要素はほかにもある。前出のA氏が解説する。

「昔の家は勝手口があった。玄関と窓のほかにもご丁寧に侵入口を増やしてくれているわけだ。
もし勝手口のある家に住んでいるのなら、C植木鉢などの障害物を勝手口までの間に置いておくといい。
″侵入口″への経路を塞がれるのは、強盗側としても面倒だから。
D窓に格子やシャッターを付けておくのもいいだろう。
侵入口を限定できるからだ。小窓にまで格子が付いていたら、″侵入口がない″と手を焼く」

◆時間稼ぎは「5分以上」

最近のケースでは、実行犯が指示役に個人情報を握られており「現場から逃げ出した場合は家族を殺す」などと脅迫を受けているケースが多々あった。
犯罪グループで指示役を務めたC氏がささやく。

「指示役からすれば、実行犯が捕まろうがどうでもいい。
とにかくターゲットの家に突っ込ませようとする奴が少なくないんだ。
だから被害に遭いたくないなら、実行犯がビビったり、躊躇するような″仕掛け″をしなければいけない」

実行犯が躊躇するような″仕掛け″とは具体的に何なのか。前出の半グレ関係者B氏が挙げたのは、意外なものだった。

「E日本警察犬協会や、猛犬注意のステッカーが貼られた家は、侵入前に身構えるもの。
F警備会社のマークが貼られていても、″ここに入ると面倒なことになりそうだ″と思わせる効果はある」

都市防犯研究センターの統計によれば、家屋への侵入に5分以上かかった場合、実行犯の7割が侵入を諦めるという。

「Gドア、窓の鍵の数は多ければ多いほど厄介だね。
当然だけど、1個しか鍵がついていないより2個、3個あったほうが突破に時間がかかるから」(同前)

現在は大掛かりな工事が不要な補助鍵、スマホを使って開け閉めするスマートロックが数千円でホームセンターに売られている。
防犯のために、購入を検討するのも手だろう。

元強盗犯たちが共通して嫌がるシステムもあった。
H家に防犯カメラ、人感センサーライトが付けられている場合は侵入を躊躇するというのだ。

「最近の防犯カメラは画質がよくなっていて、犯人の特定につながっているからね。ただ、ダミーのカメラを付けている家があるけど、あれは意味がないどころか逆効果。

見るやつが見ればすぐ偽物だとバレると思っておいたほうがいい。単純だけど、犯人たちは暗闇から侵入したいから、人感センサーの付いたライトを設置する意味はあるだろう。
音も立てたくないから、I防犯砂利を敷いてある家も嫌だった」(前出・A氏)

令和の強盗はわずかなカネのために、命も簡単に奪っていく。
だからこそ、打てる手はすべて打っておきたい。
ほんの数分足止めできるだけで、助かることがあるのだから。

『FRIDAY』2024年12月13・20日合併号より
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2024年12月19日

高齢者はサービス「無人化」は悪い印象…人手不足ニッポンで「これから起きていくこと」

高齢者はサービス「無人化」は悪い印象…人手不足ニッポンで「これから起きていくこと」
12/17(火) 現代ビジネス

この国にはとにかく人が足りない!個人と企業はどう生きるか?人口減少経済は一体どこへ向かうのか?

なぜ給料は上がり始めたのか、人手不足の最先端をゆく地方の実態、人件費高騰がインフレを引き起こす、「失われた30年」からの大転換、高齢者も女性もみんな働く時代に……

話題書『ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」』では、豊富なデータと取材から激変する日本経済の「大変化」と「未来」を読み解く――。

(*本記事は坂本貴志『ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」』から抜粋・再編集したものです)

論点4 デジタル化に伴う諸課題にどう対応するか

今後、人件費コストの増大によって財やサービスの価格が緩やかに上昇していけば、人手を用いたきめ細かいサービスを大量に消費することは少しずつ難しくなっていく。

働き盛りの労働者が持続的に減少していく未来において、日本の消費者が引き続き豊かな暮らしを送るためには、日本経済のデジタル化を進めていくことは不可欠である。
そして、デジタルの技術が浸透していく過程においては、機械によるサービス提供の限界にも一定の理解を示していくことや、情報技術がもたらすリスクに適切に向き合っていくことも必要になるだろう。

人手不足下におけるデジタル技術の活用に関して、朝日新聞は2024年世論調査を行い、その実態を明らかにしている。同調査においては、デジタル化に伴うサービスの無人化について「これまで人がしてきた仕事やサービスが、デジタル技術の進歩によって無人化されていくことに、よい印象を持っていますか。悪い印象を持っていますか。」という設問を設け、回答を聴取している。
そして、その結果は「よい印象」と答えた人が50%、「悪い印象」と答えた人が36%となった(図表3-8)

この設問の賛否は年齢が大きく影響している。
年齢別に回答結果を見ると、20代ではよい印象があると答えた人の割合が74%に上り、若い人にとっては無人化に伴うサービス水準の低下は抵抗なく受け入れられる様子が見て取れる。
一方で、70歳以上ではよい印象が33%、悪い印象が53%になっており、相対的に抵抗感が強い結果となった。

こうした結果をみると、歳を取った消費者ほどデジタル技術の活用に伴う潜在的なリスクへの意識が高いのかもしれない。
あるいは、スマートフォンでのアプリ操作などの負担感や、無人化に伴うサービス提供者とのコミュニケーションの喪失といった実際のサービス水準の低下を強く感じる傾向があるのだと考えることもできる。

実際に、これらデジタル技術を用いたサービスの多くは経済の効率化に大きく貢献するものの、それでもやはり従来のように人手を介したきめ細かいサービスを享受したいという消費者の欲求は強いのだと思われる。

デジタル技術を用いたサービスの提供には一定のリスクも伴う。
昨今においても、企業側がAIなどを用いて個人情報を情報提供側の意図せぬ形で活用したことが問題になるケースも発生している。
あるいは、ロボティクスや自動運転技術がビジネスの現場に浸透していくにあたっては、事故等の発生に伴って、人に身体的な危険が及ぶこともありうる。

こうしたリスクに関して、欧州ではAI規正法が成立するなど実際のサービスの適用にあたっての規制を導入する動きも広がっている。
デジタル技術の活用には一定のリスクが伴うなかで、こうした規制を導入することによってサービス提供者に認められることとそうでないことを明確化することは今後重要になってくるとみられる。

こうしたなか、今後は何よりも消費者側が、新しい技術の有用性を広く認識し、ロボットフレンドリーな社会風土を形成していくことが重要である。
人口減少が本格化していく日本は、先進技術による機械化・自動化の恩恵を最も受けやすい環境にある。
さらに、日本はロボットに関する大衆コンテンツが幅広く普及しているなど文化的な観点でみても、諸外国と比べればAIやロボットなどの技術が浸透しやすい風土が整っていると考えることもできる。

新しい技術を活用するにあたっては、何か事故が起こったときに、社会がどのような対応をするかがその技術の浸透に大きな影響を与える。
新しい技術を浸透させるためには、それを活用することに伴って顕在化したリスクに対して、技術の有用性自体を否定するのではなく、どうすればより良い活用の仕方ができるかなどを建設的に議論できるような社会風土を形成していく必要がある。デジタル技術を生活の豊かさにつなげていくためには、消費者側の新しい技術に対する寛容度を高めることが重要なのである。

労働力が減少していく未来においては、これまでのような豊富な人手をいくらでも使ったきめ細かいサービスを大量に消費することは許されなくなっていく。
逆に言えば、現代日本は世界の中でもAIやセンサーなど先進技術を使った省力化のメリットを最大限享受できる環境にあるといえる。
新しい技術に寛容な社会風土を醸成することができれば、日本は世界でも有数のオートメーションが進んだ高度な経済社会を構築することも不可能ではない。


坂本 貴志(リクルートワークス研究所研究員・アナリスト)
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国民の声を無視した「マイナ保険証」で露呈…政府の「狂気の沙汰」を後押しする"大企業利権"の存在

国民の声を無視した「マイナ保険証」で露呈…政府の「狂気の沙汰」を後押しする"大企業利権"の存在
2024年12月18日 PRESIDENT Online

2024年12月から、マイナンバーカードと健康保険証が一体化した「マイナ保険証」の本格運用が始まった。
戦史・紛争史研究家の山崎雅弘さんは「以前からトラブルが多発し、国民が不安を抱いているシステムを事実上強制する政府方針は狂気の沙汰に見える。
その頑なな姿勢の背景には、大企業の利権が見え隠れしている」という――。
※本稿は、山崎雅弘『底が抜けた国 自浄能力を失った日本は再生できるのか?』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。

■マイナ保険証から見える大企業の利益

さまざまなトラブルが続出し、それが原因で普及も進んでいないにもかかわらず、自民党政権が異様な頑なさで推進を強行する、マイナンバーカードと「マイナ保険証」についても、自民党と大企業の互助関係や大企業の利益追求という角度から光を当てると、今まで見えなかったメカニズムが可視化されて、浮き上がってきます。

マイナンバーカードは、2015年10月に住民票のある国民と外国人全員に付与された個人番号「マイナンバー」に基づき、個人の本人確認手段や行政サービスなどに使用するためのICカードで、2016年1月から交付が開始されました。

その後、2021年3月からマイナンバーカードに保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」の試験運用が始まり、2022年10月13日には自民党政権の河野太郎デジタル大臣が、2024年秋に従来の健康保険証を廃止し、「マイナ保険証」に一本化するとの発表を行いました。

■トラブル頻発で医療界から疑問の声

しかし、マイナンバーカードと「マイナ保険証」は、それぞれの運用開始直後からトラブルが頻発し、特に命と健康に関わる「マイナ保険証」の医療機関でのトラブルについては、各地の医療従事者からも「診療に支障を来している」「従来の健康保険証の廃止は拙速ではないか」との声が上がりました。

2024年1月31日、全国保険医団体連合会(保団連)は「マイナ保険証」の利用をめぐるトラブルの実態調査についての結果を公表しました。

同日付の東京新聞記事(ネット版)によれば、調査は2023年11月から24年1月にかけて全国約5万5000の医療機関に調査票を送付する形で実施され、回収された8672件(全体の16パーセント)から集計されました。

しかし、試験運用の開始から2年半以上が経過したこの時期になっても、医療機関の6割(59.8パーセント)で「読み取り不具合」や「名前や住所の表示の不具合」、「資格情報の無効」などのトラブルが発生していました。

■欠陥だらけでも強行するなんて狂気の沙汰

これらのトラブル発生により、医療費をいったん10割請求(保険外扱い)した事例は、403の医療機関で少なくとも753件に上りました。
また、トラブルが発生した医療機関の83パーセントは、その日に患者が持っていた従来の健康保険証で資格確認を行ったと回答しました。

都内で記者会見した保団連の竹田智雄会長は「政府はマイナ保険証利用率アップのために巨額の予算を投入する方針だが、システムが不完全なまま保険証をなくせば、医療現場が大混乱することは明白だ。(従来の)保険証はなくすべきではない」と訴えました。

普通に考えれば、いまだ完成度が低く「バグ(原因見落としによる欠陥)」があちこちに存在するシステムを、国民の命と健康に関わる健康保険証の代替物として事実上強制する政府の方針は「狂気の沙汰」に思えますが、その背景には何があるのでしょうか?

■自民党に献金した企業が得た「見返り」

2023年7月13日付のしんぶん赤旗は、政府のマイナンバー事業を計123億1200万円で受注した企業5社のうち、日立製作所と富士通、NEC、NTTデータの4社が、2014年から2021年までの間に計5億8000万円を、自民党に献金してきたと報じました。

そして、自民党に高額献金した各企業には、内閣府や総務省、財務省、経済産業省、国土交通省などの幹部が多数「天下り(退官した官僚の再就職)」したと伝えました。

2023年5月31日付の東京新聞によれば、「マイナ保険証」の資格確認はNTTの光回線が独占した状態にあり、ある歯科医院院長の「すべてが決められた回線や高い価格で進められており、ぼったくりでは」とのコメントも記事で取り上げました。

また、「マイナ保険証」の普及に伴う従来の健康保険証廃止について、経団連と並ぶ経済団体「経済同友会」の代表理事を務める新浪剛史代表幹事が、2023年6月28日の記者会見で次のように述べると、国民から大きな批判が湧き起こりました。

「(政府が健康保険証廃止を目指す2024年秋は)納期、納期であります。
民間はこの納期って大変重要で、必ず守ってやり遂げる。
これが日本の大変重要な文化でありますから、(政府は)ぜひとも保険証廃止を実現するよう、納期に向けてしっかりやっていただきたい」

■新浪発言の裏に見え隠れする「利権」

国民の命や健康を支える健康保険証の代替システムが、現状でトラブル山積にもかかわらず、居丈高に「納期」というビジネス用語を使って、政府に廃止を「指図」するかのような新浪代表幹事の態度は異様です。

彼が社長を務めるサントリー(ホールディングス)は、毎年500万円前後を自民党に政治献金しているほか、新浪社長自身も2014年8月から現在まで、政府の経済財政諮問会議で民間議員を務めています。

また、サントリーは安倍首相主催の「桜を見る会」に、2017年から2019年の3年間で計400本近い酒類を無償で提供していました(2022年5月28日付東京新聞)。
政治資金規正法は、企業の政治家個人への寄付を禁じていることから「違法な企業献金に当たる可能性がある」との指摘もなされました。

■長年、政府と歩調を合わせてきた経済界

サントリーの公式サイトを見ると、「事業紹介」のページに「食品事業」「スピリッツ事業」「ビール事業」「ワイン事業」と並んで「ウエルネス事業」という項目があり、健康食品やサプリメントの製品紹介と共に、次のような説明があります。

「サントリーは長年にわたる食の科学的研究や品質管理技術を礎として健康・ライフサイエンス分野の事業に参入しました。(略)2001年からは、従来からの健康関連の研究開発を一層強化することを目的に『サントリー健康科学研究所(現、サントリー生命科学研究所)』を設立。
(略)また、商品だけではなく、会員向けサービス『サントリーウエルネスクラブ』や無料の健康行動アプリ『Comado』などのご提供を通して、人生100年時代のお客さまのトータルウエルネスの実現をサポートしています」前記した「新浪発言」の問題点を報じた2023年8月15日付の東京新聞は、名古屋大大学院の稲葉一将教授(行政法)の以下のようなコメントを紹介しました。

「2000年代から、経済界が求める要望と政府のデジタル化政策とは、歩調を合わせてきた。
(略)個人情報を資源とみなしたこの段階(2013年6月に閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言」)で、医療や福祉、教育といった分野での情報収集や活用がすでに想定されている。マイナンバーの情報を連携すればその履歴から人物像を人工知能(AI)が解析し、製薬や教材づくりといったビジネス利用も可能となる」

■健康保険証廃止をめぐる公的記録がない

このように、国民の命と健康に大きく関わる健康保険証の運用が、大企業の営利追求という目的によって大きく歪められている疑惑がある中、東京新聞は2024年9月25日、河野デジタル大臣とデジタル庁、厚労省への取材に基づき、健康保険証の廃止という重大な政策決定がどのような議論を経て行われたのかという公的記録が政府内に「残されていない」との驚くべき事実を報じました。

「いつ、どんな議論を経て、誰が決めたのか。現行の健康保険証の廃止がどのようにして決まったのか、その経緯が分かる記録を政府は残していなかった。決定に至るまでの手続きも異例で唐突だった。国民が納得するだけの説明もない」

■公文書管理法が課している記録義務

2009年6月24日成立、2011年4月1日施行の「公文書等の管理等に関する法律(公文書管理法)」の第一条には、「この法律は、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ、国民主権の理念にのっとり、(略)国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする」とあります。

また、同法の第四条は「行政機関の職員は、第一条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、次に掲げる事項その他の事項について、文書を作成しなければならない」との文言で公文書の作成を義務づけています(「次に掲げる事項」の一は「法令の制定又は改廃及びその経緯」であり、健康保険証の廃止という決定はこれに該当します)。

■健康保険証の廃止は誰のための政策なのか

こうした義務を課せられているにもかかわらず、健康保険証の廃止という国民の生死にも関わる重大な決定についての公的記録を「残していない」と平然と言い放つ河野デジタル大臣とデジタル庁、厚労省の態度は、公文書管理法の第一条に示された理念をあざ笑うかのような暴挙であり、法的にも道義的にも許されないものです。

河野デジタル大臣は、2022年10月13日に健康保険証廃止を発表した際、岸田首相への報告内容と首相から受けた指示について、手元の資料を見ながら7分近くかけて説明していましたが、東京新聞の取材に対し、デジタル庁はこの「河野大臣が会見で見ていた資料」についても「首相への報告や首相からの指示を記録した文書も作成していない」として、開示を拒みました(同記事)。

国民の命や健康に関わる健康保険証の廃止という重大な政策決定について、廃止に至る議論で交わされた閣僚や官僚の発言内容が、公文書管理法に基づく形で議事録や会議録に残されず、「口頭のみで議論されたから記録はない」というのは、近代国家としてあり得ない説明です。まさに底が抜けています。

この異様な状況を俯瞰的に観察すれば、よほど「国民に知られたら困るような、公益に反する発言」がそこ(議論の場)で交わされたのだなと、推測するしかありません。

健康保険証の廃止という自民党の政策は、誰のためになされているのでしょうか?

そこに「国民の命と健康を守る」という政府の責任を土台とする観点はありますか?

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山崎 雅弘(やまざき・まさひろ)

戦史・紛争史研究家
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2024年12月20日

「串から抜かないで」 焼き鳥店主が本気で怒るその理由

「串から抜かないで」 焼き鳥店主が本気で怒るその理由
2/16(月) 毎日新聞

 焼き鳥を串から外すか、否か。たびたび議論になる飲み会の作法だ。

 「みんなに行き渡るよう、外して取り分けたい」という気遣いによるものから、「串にかぶりついて食べるのは下品」という価値観まであるらしい。

 そんな中、「串を抜くたびに値段が上がる」と警告する焼き鳥屋が東京・新橋にある。
冗談かと思ったら、本気らしい。そこまでするのには、理由があった。【中嶋真希】

 ◇「抜くなら焼き肉屋へ」

 「串から抜かずに食べてください」

 身のプリッとしたレバーが運ばれてくると、店員から念を押された。
壁には、「串をぬくなら焼肉屋へ行け!」と書かれたポスターが張ってあった。
その下には「抜くたび値段が上がります」という小さな注意書きまである。

 焼き鳥店「出世酒場 大統領」は、客への注文が多い「うるさい店」として知られる。
それでも、店を訪れた金曜の午後4時ごろにはほぼ満席。
レバーをほおばると、口いっぱいにじんわりとうまみが広がった。

 翌週、平日の朝に仕込み中の大将・沢崎誠さん(52)を訪ねた。
なぜ、串から肉を外させないことにこだわるのか。沢崎さんは、笑いながら言った。

 「一口目で心をつかむのが、うちの焼き鳥だからね。
どの焼き鳥屋も刺し方が違って、二口目に大きい肉を刺す店もある。
うちは、一口目でおいしいって思ってもらいたいから、最初が大きいの。
体育会系の俺と同じ、逆三角形体形の焼き鳥だよ」

 自慢の焼き鳥は、沢崎さんが午前5時から仕込みを始め、8時半になると他のスタッフも参加する。
仕込みは、昼過ぎまでかかる。

 沢崎さんと一緒に仕込みをしていた次男の嵐(あらし)さん(27)は、肉を切りながら、大きさごとに順番に並べていた。「串に刺す前の段取りが大事。串から抜かれたら、この作業の意味がなくなっちゃう」と語る。
肉を並べ終わると、沢崎さんが手際よく串に刺していく。

 「肉のカットが大事」と、沢崎さんは言う。

 「あまり小さいとおいしくなくなる。
目いっぱいに、一口でほおばれる大きさにしている」。
肉の大きさ、串に刺す順番、焼き方。串にかぶりついた時に「おいしい」と思えるよう、計算しつくした一本が提供される。

 「抜くたび値段が上がります」というルールは、「もちろん本気」と言う。
「これだけ手間をかけて仕込みをしているのに、勝手に串から肉を抜く客がいるから怒っているんだよね。
串から抜かない客、次も来てほしい客には、いい肉を出すよ。
いい客には、いい肉を食べさせたいから」

 沢崎さんは、和食の板前を経て、15年前に店をオープンした。
「串外し禁止」のルールは、開業当初から。
それから、「飲めない人はお断り」「おひとり様お断り」「食べ残し1本1000円」と徐々にルールが増えていった。

 「おひとり様お断りっていっても、2、3人なら必ず入れるってわけじゃない。
今はもう、店もいい客を選ぶ時代。
郷に入っては郷に従えの遊びができない人は苦しい店。
でも、それができる人には居心地のいい店だよ」と沢崎さん。

 「食べ残し禁止も、せっかくいただく命なんだからっていう理由。
そういうことも考えながら、あとは食べて飲んで、楽しんでいってほしい」と思いを語っていた。

 ◇SNS普及で論争過熱

 マナーという観点ではどうか。

 企業のマナー研修を行い、マナーに関する著書も多いマナーコンサルタントの西出ひろ子さんは「串に刺して焼いて、それを持って食べるというのが、焼き鳥のそもそものスタイルですから。
そのまま食べればいいんですよ、ということがまず大前提です」と言う。

 その上で、「マナーで大事なのは、相手の思いです。焼き鳥店では、職人がそれぞれの思いをこめて、肉を串に刺しています。
一口目は味が薄めでだんだん濃くなっていくように塩を振ったり、タレをつけたりなど考えて焼いているとお店の方に聞いたこともあります。
ですから、出てきたスタイルでいただくのが良いでしょう」と西出さんも料理人のこだわりを尊重したいと考える。

 西出さんによると、「焼き鳥の串問題」「唐揚げにレモンをかけていいか」「サラダを取り分けるべきか」といった飲み会での作法について、メディアからの取材が増えたのは2006年ごろからだという。
その後、SNS(ネット交流サービス)が普及するにつれ、議論が活発化。「それぞれが個人的に悩んでいたテーマが、SNSで広がっていったのではないか」と西出さんは分析する。

 こうした飲み会でのマナーについて、西出さんが提案する解決策はただ一つ。

 「聞けばいいんです」

 焼き鳥を串から外すのも、唐揚げにレモンを搾るのも、サラダを取り分けるのも、気遣いのためにやることだろう。
しかし、「自分が良かれと思ってやるのは、自分中心。マナーは、相手の立場に立って考えることが一番です。
食べ物に関しては、育った家庭などによって食べ方、ルールが大きく異なります。
さまざまな意見があることなので、相手に聞けばいいのです」

 食べる前に、「人数分ないけど、どうしましょうか? 外しますか、それともそのままにしましょうか?」と一声かけることが大事だというのだ。

 マナーには正解がなく、ともに過ごす人、お店の考え方によって変化していく。

 「もし、その場にいる人たちが『人数分ないから、外してもいい』と合意すれば、その場は、それが正解です。
何も言わないでイライラするくらいなら、コミュニケーションを取ったほうがいい。
これは、ビジネスでも一緒ですね。
上司、部下、お客様のことは、聞いてみないとわからない。
聞かれたほうも、『それくらい、勝手にやれ』と言うのではなく、『聞いてくれて、ありがとう』と答えてください」と、西出さんは真心を持って相手に接することを説いていた。

 「飲み会は、より一層、相手のことがわかる機会です。楽しい食事と飲み物で、盛り上がってください」と忘年会・新年会を楽しむ人々にエールを送る。
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「底が抜けた」いまの日本、国民がおとなしすぎる?

「底が抜けた」いまの日本、国民がおとなしすぎる?
12/18(水)  文化放送

大竹まことがパーソナリティを務める「大竹まことゴールデンラジオ」(文化放送・月曜日〜金曜日13時〜15時30分)、12月18日の放送に、戦史・紛争史研究家の山崎雅弘が出演。
今月発売された『底が抜けた国 自浄能力を失った日本は再生できるのか?』に関連し、「底が抜けた」という日本の現状について語った。

山崎雅弘
「そうですね。この本を出版して、既に買って下さって『タイトルの“底が抜けた”という言葉の感覚がわかります』
『同じように感じます』という方がけっこうおられて。長く続いてきた自民党政権の中でも、ここ10年ぐらいの底の抜け方。具体的には様々な不正や横暴、違法,脱法がうやむやにされる状況というのに、どうしてこうなったんだろう、という戸惑いも含めて、驚きと怒りの感情を持っている方が多いと」

大竹
「その10年間が来て、賃金が上がらない中で物価だけが上がっていく。
皆もう少し、いろんなことに怒っていいはずなのに怒らずに……」

山崎
「そう。大企業を国がある程度、応援するというのはどこの国でも多少している。それ自体が悪いとは言いませんが、ここ5〜10年を見るとそれが極端すぎる、と。国民の生活も目配りしつつ大企業を応援する、というのではなく、大企業や富裕層しか見ていない」

大竹
「はい」

山崎
「国民の暮らしがどんどん締め付けられて苦しんでいる。
たとえば母子家庭で、子供に栄養あるものを食べさせるためにお母さんが食費を削って栄養失調になっている、そんなのはもう先進国といえません。
NHKが放送している以上、社会的に皆、知っているはずなのに。
それでもまだ国民に顔を向けずに大企業や富裕層、あるいはアメリカといった、力を持ったところだけ優先する政治をしている。異常だなと」

大竹
「自国第一主義と新自由主義」
.
山崎
「国民も含めた自国第一主義ならいいと思うんです、そうではない感じがする」

大竹
「そうですねえ。この10年を含めた、いまのこの国を見て、10年後の未来から見たら、国の状態がいま、いちばん悪いことになっているのでは、とおっしゃっています」

山崎
「いまがいちばん悪い、ということではなく。この状況を放置しておけば年々、さらに悪くなっていくと思うんですね。
5年前といまとを比べればそれは言えると思います。この流れを止める、緩める、そういう努力をしていかないと、この先どんどん悪くなっていくのではないか、と」

大竹
「韓国の状況がいい、とは言いませんけど。あれだけ市民たちが賛成と反対に分かれて路上に出て声を上げるのと比べると、この国は……」

山崎
「そうなんですよ。一般の国民がおとなしすぎるんです。
本当はもっと韓国のように、おかしいと思ったら怒っていいんですよ。
偉い人にでも。それなのに日本では『偉い人に従わないといけない』と子供のころから刷り込まれてしまう、というのがある。
理不尽だと思っても上の人の言うことなら従う、『おかしい』と言わない。過剰な従順さみたいなものが、さらに状態を悪くしている。
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2024年12月21日

年末の夢 宝くじ「当せん金」への“非課税”制度に落とし穴も!? 「億単位」の“税金”が取られるリスクとは…【税理士解説】

宝くじ「当せん金」への“非課税”制度に落とし穴も!? 「億単位」の“税金”が取られるリスクとは…【税理士解説】
2024年12月20日  弁護士JP編集部 

当せん金の最高金額が7億円の「年末ジャンボ宝くじ」が明日(12月21日)まで発売中だ。

例年、多くの人が、高額当せんを夢見て宝くじを購入する。
そこで気になることの一つが、もし、宝くじに当たって当せん金を受け取った場合の「税金」はどうなるのか、ということである。

よく「宝くじの当せん金は非課税」と言われるが、実はそこには落とし穴があり、一歩間違えると億単位の税金を取られる可能性もある。
では、もし当せんした場合はどうすればよいのか。
納税者の視点からYouTube等で精力的に情報発信を行っている黒瀧泰介税理士(税理士法人グランサーズ共同代表、公認会計士)に聞いた。

宝くじの当せん金は「原則」非課税だが…

まず、宝くじの当せん金についての原則的な課税関係を確認しておこう。
一般に、何らかの経済的利益を得た場合、「所得税」の課税対象となる。
しかし、宝くじの当せん金については、法の明文で、所得税が非課税とされているという。

黒瀧税理士:「『当せん金付証票法』が、『当せん金付証票の当せん金品については、所得税を課さない』と定めています(同法13条)。

なぜ非課税なのかは、宝くじの制度の趣旨によります。
宝くじ事業はもともと、地方の公共事業の財源にするためのものだからです。

宝くじの売上金額のうち40%程度が『収益金』として、発売元である全国の都道府県と20の政令指定都市へ納められ、公共事業に使われます。
2023年度は売上金額8088億円のうち収益金が36.7%(2964億円)でした(【図表】参照)。

つまり、実質的に宝くじの購入代金から税金を取られているのと変わらないので、それに加えて当せん金に課税するべきではないということで、非課税となっています。

したがって、当せん金を受け取るだけでは1円も税金がかかりません」

宝くじの当せん金が「課税される」ケースとは

では、当せん金が課税されるケースは全くないのか。
黒瀧税理士は、受け取った当せん金を複数人で分け合う場合に「贈与税」の課税の問題が生じるケースがあると指摘する。

黒瀧税理士:「特に、受け取った当せん金を家族、友人等で分け合う場合は要注意です。

たとえば、Aさんが1等の当せん金7億円を受け取り、配偶者のBさんに3億円、子のCさんに1億円を贈与するケースを考えてみましょう。

贈与税の課税方法には『暦年課税』と『相続時精算課税制度』の2つの方法がありますが、どちらを選ぶにしても、年間110万円までは課税されない『基礎控除』を受けることができます。

仮に『暦年課税』を選ぶとしましょう。贈与税は累進課税ですが、基礎控除を受けた後の額が4500万円を超えると税率は55%になります。
したがって、Bさん、Cさんにはそれぞれ以下の通り、贈与税がかかることになります。

・Bさん:(3億円−110万円)×55%−640万円(※)₌1億5799万5000円

・Cさん:(1億円−110万円)×55%−640万円(※)₌4799万5000円

合計すると、家族で総額2億円超の贈与税がかかってしまうのです。

なお、このケースのように家族間で贈与する場合には低い『特例税率』が適用されますが、友人等の場合、贈与税はもっと高額になってしまいます」

※累進税率が段階的に適用されることによる、税額計算上の控除額

贈与税がかからないようにする方法は?

では、贈与税がかからないようにするには、どうすればよいのか。
黒瀧税理士は、宝くじを「共同で購入する」形をとるしかないと指摘する。

黒瀧税理士:「共同購入して、自分が出費した購入代金の割合に応じた額を受け取る形であれば、贈与税の対象にはなりません。

たとえば、2人で3万円分(100枚)購入して、それぞれ半額の1万5000円ずつ出し合い、当せん後に当せん金を半分ずつ分け合うといった方式です。

もちろん、購入時に1人に立て替えてもらって、後で支払う形でも問題ありません。

共同購入契約は口約束でも有効ですが、万全を期して契約書を作成しておけばなお良いでしょう。

なお、あまり知られていませんが、インターネット購入の場合は公式HPに『共同購入』のコーナーがあります。
グループを作って共同購入し、当せんしたら、各自が購入した枚数の割合に応じて当せん金が分配され、それぞれ予め登録しておいた口座に直接振り込まれます。
人数未満の端数が生じた場合はグループに参加した順に1円ずつ割り当てられます」

窓口で宝くじを共同購入した場合はどうか。50万円以上の当せん金については、みずほ銀行の本店または支店で受け取りの手続きをする必要がある。
どのような点に注意しなければならないのか。

黒瀧税理士:「原則として、共同購入者が全員揃って銀行へ行き、『当せん金証明書』を受け取ります。
本人確認書類(運転免許証、健康保険証等)と、当せん金が100万円を超える場合には印鑑も必要です。

どうしても全員のスケジュールが揃わない場合は、行けない人が委任状を代表者に渡して手続きをしてもらうこともできます。

いずれにしても、家族や友人等で当せん金を分け合って贈与税が課税されないようにするには、共同購入する形をとり、かつ、受け取る時も、それぞれの口座に直接振り込まれるよう、手続きをすることが大切です。

いったん誰かの口座に全額が振り込まれたとなると、その後のお金の移動は贈与と扱われるリスクが高くなります」

よく、宝くじは「夢を買うもの」といわれる。
しかし、せっかく当せんし、高額な当せん金を受け取っても、形式を誤ったばかりに高額な税金を払うハメになり「夢から覚める」という事態は避けたいものだ。
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2024年12月22日

収入は増えないのに物価は上昇し続ける…国民にだけ我慢を強いる自民党政権の「無責任」を許していいのか

収入は増えないのに物価は上昇し続ける…国民にだけ我慢を強いる自民党政権の「無責任」を許していいのか
2024年12月21日 07時15分PRESIDENT Online

物価上昇の影響で国民は厳しい暮らしを強いられている。
戦史・紛争史研究家の山崎雅弘さんは「政府は物価高を上回る所得増政策をアピールしているが、現実には物価高対策として機能していない。
こうした政府の責任をなぜかメディアは追及せず、国民に工夫と我慢を強いるばかりなのはおかしい」という――。
※本稿は、山崎雅弘『底が抜けた国 自浄能力を失った日本は再生できるのか?』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。

■同じ日に報じられたニュースの“矛盾”

自民党政権が、一般国民の暮らしを本気で守る気があるのかどうか。
そんな疑問をさらに深める二つのニュースを、NHKは2024年9月2日に報じました。

一つ目は、「食品の値上げ 今月は1300品目余 5か月ぶり1000品目超に」という値上げのニュース。
二つ目は「4〜6月 国内企業の経常利益 35兆円余 四半期で過去最高」という、日本の大企業の業績が絶好調だというニュースでした。

ニュース番組やネット記事では、こうしたニュースは別々に報じられるので、いくつかの関連ニュースを頭の中で組み合わせて全体の状況を俯瞰するという思考の習慣(いわゆる「メディア・リテラシー」)がないと、これの何がおかしいか気づかずにやり過ごしてしまうでしょう。
しかし、実はこの二つは国民が組み合わせて考えるべき内容です。

なぜなら、物価高による国民生活の圧迫と、増進し続ける大企業の利益という対照的な状況は、自民党政府が誰のための政治をしているかを如実に物語っているからです。

■値上げの要因の一つは「賃金の引き上げ」

一つ目の値上げのニュースで、NHKは、冷凍食品などの「加工食品」757品目と、アイスやチョコレート製品などの「菓子」169品目、ウイスキーやコーヒー飲料などの「酒類・飲料」135品目を含め、計1392品目が同月に値上げされると伝えました。

値上げの要因については、調査を行った帝国データバンクの分析として、異常気象などに伴う原材料高や物流費および包装資材にかかる費用の増加、そして「最低賃金の引き上げに伴う人件費の増加」などを列挙しました。

この最後に指摘された「最低賃金の引き上げに伴う人件費の増加」という値上げの原因は、きわめて重要な意味を持っています。
なぜなら、岸田首相が国内での物価高への対策として、繰り返し語ってきたのが「賃金の引き上げ」だったからです。

■「物価高を上回る所得増」の3つの問題点

2024年だけでも、1月30日の施政方針演説、3月28日の二四年度予算成立後の記者会見、5月31日の首相官邸での大手企業経営者との懇談、7月19日の軽井沢での経団連の会合、7月25日の首相官邸での記者会見などで、岸田首相は「物価高対策としての賃上げ」や「物価高を上回る所得増」という政策をアピールしました。

けれども、一見もっともらしいこの政策には、重要な「欠落」が三つあります。

まず、月給制でない事業者や年金生活者の状況改善に何の効果も期待できないこと。

次に、経済的な余裕がない企業(特に中小企業)は政府の要請に従えないこと。

そして、政府が企業に「賃上げを要請」すれば、企業側は「人件費の上昇」を理由に商品の価格にそれを転嫁して、さらなる「物価高」を引き起こすという本末転倒。

■収入増の取り組みが物価高を悪化させてしまう

月給制の正社員や非正規社員とアルバイトは、企業側が設定する月給や日給をアップすれば単純に「賃上げ」が実現しますが、個別契約の自営業者や個人事業主、商品の売り上げで収入を得ている店舗などは、それほど話が単純ではありません。

岸田首相が特定企業に「賃上げ要請」を行っても、個別契約の報酬額はさまざまな理由で総合的に決定されるもので、一律にいくらアップという月給制のような方策は適用できません。

そして、店内で作った食品や製品を店頭で販売する店舗の場合、収入を増やすには商品の価格を上げるしかなく、それでは逆に物価高をさらに悪化させる結果となります。

不思議なのは、こうした「物価高対策としての賃上げ」が内包する大きな問題点について、欠陥だと指摘する声がメディアの報道に見当たらないことです。
新聞社やテレビ局などで働く記者たちは、月給制の正社員ばかりなので、月給制でない形態の労働環境や年金生活者の暮らしについては、特に関心がないのかもしれません。

そして、テレビのニュース番組や情報番組は、効果がない政府の物価高対策を「欠陥」だと批判する代わりに、「物価高の状況を乗り切るための我慢と工夫」を国民側に呼びかける、まるで戦時中のような内容ばかりを放送しています。

■政府の失態である物価高が「天災」?

例えば、2023年7月18日にNHK「クローズアップ現代」が放送したのは、物価高をまるで「天災」のように捉えて対処を考える、次のような内容でした。

「食品の値上げが相次ぐ中、食費の節約志向が高まっている。そこに意外な落とし穴が。
食事がパンや麺類など炭水化物に偏り、体や筋肉を作るたんぱく質が不足するなど、いつの間にか“低栄養状態”に陥る人が少なくないことがわかってきた。
さらに持病を悪化させる危険も…。
“値上げ時代”、私たちは節約をしながら、どう健康を守ればいいのか? 
必要な栄養を確保する簡単なコツとは? 専門家と具体的な“秘けつ”を徹底検証する」

政府が有効な物価高対策をできていないから、食品の値上げが止まらないという根本的な原因と政府の責任には目を向けず、やむを得ず食費を減らす行動を「食費の節約志向が高まっている」などと、あたかもライフスタイルの選択肢のように表現し、「“値上げ時代”を前提化して「節約しながら健康を守る秘けつ」を紹介するという姿勢でした。

■まるで戦時中のようなメディアの報じ方

また、2024年9月13日に大阪の毎日放送が放送した「よんチャンTV」は、米が5キロで1000円値上がりしたと指摘したあと、「もち麦」という穀物を米に混ぜて炊けば、ごはんを「かさ増し」できるという「生活の工夫」を紹介しましたが、実際にそれをしているという市民は、こんなコメントを述べていました。

「2合ちょっとをもち麦にしたりして耐えてます。おいしくはないですね」

先の戦争中、日本国民は米不足への対処として、麦や芋、大豆、野菜の葉などを一緒に炊いて「かさ増し」していましたが、それと同じことが、現代の日本で起きています。

にもかかわらず、こうした事態を招いた原因が「自民党政権の失政」だと指摘したり、有効な物価高対策を打てていない自民党政権を批判したりする動きは、大手メディアの報道や情報番組に、ほとんど見当たりません。
政府や国家指導部の失敗の責任を追及せず、国民側の工夫と我慢だけを推奨するという受け身の報じ方も、戦時中と同じです。

自民党は献金やパーティー券購入など、さまざまな形で大企業からの金銭を得ており、物価高という一般国民の暮らしに直結する問題への対応策も、必然的に大企業の利益に沿ったものばかりになります。
言い換えれば、大企業の顔色さえうかがっていれば、それ以外の一般国民を無視してないがしろにしても、権力の座に居座り続けることができる。それが、2024年現在の日本です。

現在の自民党政府は、「自国民の暮らしを守る責任感の底」も抜けたかのようです。

■大企業は利益も内部留保も過去最高なのに…

NHKが2024年9月2日に報じた、「4〜6月 国内企業の経常利益 35兆円余 四半期で過去最高」というニュースも、自民党政権と大企業の親密な癒着関係が生み出した結果だと言えます。

財務省が発表した法人企業統計調査で、同年4月から6月までの国内企業の経常利益が35兆円余りとなり、四半期ごとの額としては「過去最高の数字」だと伝えました。

そして、見出しにはありませんが、金融と保険を除いた国内企業の23度の「内部留保」が、その前の年度より8.3パーセント増加した600兆9857億円で、12年続けて増加している中でも「過去最高の額」となりました。

内部留保とは、正式な会計用語ではありませんが、SMBC日興証券の公式サイトにある用語集のページでは、次のように説明されています。

「内部留保とは、企業が生み出した利益から税金や配当、役員報酬等の社外流出分を差し引いたお金で、社内に蓄積されたものを指します。社内留保ともいいます。
総資産に対する内部留保の比率は、財務の健全性を示す指標としても注目されています」

■物価上昇分を差し引いた実質賃金はマイナス

これを読むと、十分な内部留保を持つことは、企業の財政を盤石なものにする上で有効なのだから、増え続けるのは望ましい状況であるかのように見えます。

しかし、2024年7月8日付の朝日新聞に掲載された、次のような記事と合わせて読むと、その見え方も大きく変わってきます。

「実質賃金26カ月連続減 過去最長を更新 基本給は31年ぶりの伸び」

厚生労働省が同日発表した5月分の毎月勤労統計調査(速報)によれば、労働者が実際に受け取った「名目賃金」は29万7151円で、29カ月連続でプラスだったものの、実質賃金の計算に使う5月の消費者物価指数が3.3パーセント上昇したため、物価上昇分を差し引いた実質賃金は、1.4パーセントのマイナスとなりました。

この報道が意味するところは、企業の「賃上げ(名目賃金の上昇)」は、現実には物価高対策として機能していないということです。

■「過去最低」の労働分配率が指し示すこと

そして、先に挙げた内部留保の資金は、本来なら従業員の賃金に上乗せして払うことも可能な「利益剰余金」ですが、それを賃金に回さずに貯め込むことで、結果として従業員の暮らしが「物価高で圧迫されている状況」を傍観し、放置しているとも言えます。

2024年9月6日付の朝日新聞は、「企業がもうけの中から人件費にどのくらい使ったかを示す『労働分配率』が、昨年度は大企業で過去最低の水準に落ちこんでいたことがわかった」と報じました。

記事は、国内企業の通期決算を集計した財務省の法人企業統計調査(2023年度)を元に同紙記者が分析した結果に基づく内容で、企業が生み出した付加価値に人件費が占める割合を「労働分配率」として算出したところ、金融・保険業を除く全産業では52.5パーセントとなり、1973年度の52.0パーセント以来の低さとなりました。

また、対象を資本金10億円以上の大企業に絞ると、34.7パーセントで、統計記録が始まった1960年以降で「過去最低」となりました。

企業の経常利益と内部留保は「過去最大」で、大企業の労働分配率は「過去最低」。

これは、何を意味しているのでしょうか?

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山崎 雅弘(やまざき・まさひろ)

戦史・紛争史研究家
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2024年12月23日

日本の評価を落とす「薄っぺらい商売」…観光地で「日本人が食べたことがないメニュー」を提供する歪さ

日本の評価を落とす「薄っぺらい商売」…観光地で「日本人が食べたことがないメニュー」を提供する歪さ
2024年12月21日 SPA!

 外食産業専門コンサルタントの永田ラッパと申します。
「日刊SPA!」では、これまで30年間のコンサルタント実績をもとに、独自の視点から「食にまつわる話題」を分析した記事をお届けしていきたいと思います。今回のテーマは、「インバウンド向けの外食・中食産業」です。

◆インバウンドを意識するのは良いのだが…

 新型コロナウイルスの影響で激減していた訪日外国人の数も、2022年ごろから回復傾向にあり、インバウンドビジネスも好調のようです。
とくに日本の食べ物は外国人に人気があり、インバウンド向けに展開している日本の外食・中食産業も好調を維持しています。

 多くの外国人が日本の食文化に触れ、それを満喫してくれるのは私たちにとっても嬉しいことです。
しかし日本の食を提供する側の飲食店などの動きを見ていると「それでいいのか?」と、疑問に感じることもあります。

 外国人に人気の日本の食スポットは、東京ならば豊洲千客万来や築地場外市場、大阪ならば黒門市場、京都なら錦市場などがあります。どこもインバウンドを意識しているのですが、何か勘違いをしてはいないかと感じることがあるのです。

◆「千客万来と築地場外市場」で外国人客の表情が全然違う

 先日、豊洲千客万来に行ってみたのですが、楽しそうにしている外国人客がほとんどいないという印象を受けました。
例えば3階はフードコートになっていますが、買ってきたものをそこで食べている人よりも、疲れた顔で休憩している人のほうが圧倒的に多かったのです。
そしてそのあと、今度は築地場外市場に行ってみました。
するとそこにいる外国人客の多くはとても楽しそうにしていたのです。この差は何でしょうか?

 また、京都の錦市場に来ている外国人がとても楽しそうにしていたのに比べて、大阪の黒門市場に来ている外国人はそうでもない……。そんな印象でした。一体それはなぜなのでしょうか。

◆ニーズに応えていないインバウンドビジネス

 一番重要なのは、お客さんが楽しんでいるかどうか、ということです。
飲食業に限らず、サービス業に携わる者は、お客さんが何を望んでいるか、どうすれば楽しんでもらえるかということを大切に考えなくてはなりません。

 私たちも外国へ行ったときは「せっかく来たのだから」と、そこでしか味わえないもの、その土地ならではのものを食べたいと思います。
来日する外国人の多くもそれと同様に、日本の歴史や文化に触れたいと思っています。
食についても、いままで知らなかった日本の伝統的な家庭料理や屋台料理を味わいたいと思ってやってくるのです。

 ところが昨今のインバウンド向けの飲食店のメニューを見ると、串に刺さった鰻の上に牛肉やウニやイクラがのっかっている……といったような、日本人すら食べたことがないようなものを提供しているところが多いのです。
それは果たしてお客さんの立場に立ったものなのでしょうか。
外国から来たお客さんに、それが日本の伝統食などと思われてしまっても困るというものでしょう。

◆「外国人が本当に触れたかった日本食」は簡単なものが多い

 価格を上げるために、日本人が食べたこともないようなものを作って提供する。そこからヒット商品が生まれる可能性は否定しません。しかしそれは外国のお客さんで“実験”するべきではありません。

 私は高価格のものを提供すること自体を否定するつもりはありません。
しかし鰻に牛肉をのせてインバウン丼……などという名称で提供するような、安っぽい小手先のものであってはならないでしょう。

 ではどんなものならばいいのか。
例えば、日本人も憧れる神戸牛などの和牛。
それがステーキでもすき焼きでも楽しめる、和牛の楽しみ方がすべて詰まったゴージャスなコースを設けるのです。
そして「これは日本人にとっても贅の限りを尽くした和牛コースです。
せっかくいらしたのですから日本の和牛料理を存分にお楽しみください」と、客単価1万円のお店が2万円で提供するというのは、私はアリだと思っています。

 またこの1〜2年で、日本に来た外国人にとって満足度の高い日本食は、ネットなどからもある傾向をつかむことができます。
それは意外にも簡単なものが多いのです。
寿司や刺身、鰻はもともと人気がありましたが、トンカツ、ジャパニーズカレー、煮魚、クリームコロッケなどは最近、外国人の評価が高まっています。
こういったことをしっかり調べれば、奇をてらうことなく、ニーズに応えることはできるのです。

◆日本の価値を下げる「浅はかなインバウンドビジネス」

「せっかく日本に来たのだから」というお客さんの動機に寄り添うことをせず、「売れるから」というだけで日本人が食べたこともないものを提供する点に、いまのインバウンドビジネスの薄っぺらさを感じずにはいられません。

 前出の豊洲千客万来と築地場外市場、黒門市場と錦市場。なぜお客さんの笑顔に差が生まれてしまうのか。
例えば築地場外市場には古くからやっている老舗の寿司店や惣菜店があります。そういうところは昔から変わらない本質的なビジネスでインバウンドに向き合っています。

 錦市場は近くに祇園や四条河原町などがあり、エリア全体が観光地になっています。
錦市場はその中の“ワンシーン”であり、お客さんにとってのウェイトは小さいのかもしれません。
お祭り感覚で錦市場の屋台グルメを味わい、昼食や夕食は別のところですませているというケースもあり、それで差別化ができているのでしょう。

 自分たちはどんな環境でどんなビジネスでお客さんのニーズを満たしているのか、もっとしっかりと考えて取り組む必要があります。浅はかなインバウンドビジネスでは、かえって海外での日本の評価を落としてしまいかねないと危惧しています。

<TEXT/永田ラッパ>
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ホームレスはどうやって「ホームレスになる」のか。誰であろうと、その可能性はある

ホームレスはどうやって「ホームレスになる」のか。誰であろうと、その可能性はある
12/22(日) ニューズウィーク日本版

盗難、病気、倒産......何がきっかけとなり、ホームレスになるかは分からない。
しかし、荒川河川敷のホームレスを取材し続けてきた在日中国人ジャーナリストの趙海成氏は、ホームレスは「絶望ではない」とも言う

日本の元国会議員である知人が、私がホームレスに関するルポを書いていると言うと、次のようなネタを話してくれた。

――ある政治家が自分のイメージを良くするために、思い付きでホームレスの集まりに行き、自らの宣伝を始めた。

「私は国会議員の○○○○です! 皆さんに会いに来ました!」

その場にいたホームレスたちはほとんど、彼をぼんやり見るだけで何の反応もしなかったが、1人だけ、年老いたホームレスが彼に微笑んだ。政治家はすぐに駆け寄って「おじいさん、こんにちは! 私は○○○○です」と言った。

老人は少し耳が遠いようで、「あなたはさっき何だと言っていましたか」と尋ねた。
政治家はもう一度大きい声で「私は国会議員です!」と言った

「国会議員? ハハハ! ハハハ!」老人は笑いが止まらなかった。

政治家は首をかしげ、老人に尋ねた。「なぜ国会議員に会って喜んでいるのですか」

「わしもホームレスになる前は国会議員だったんですよ。ハハハ!」

この話が本当かどうか考証はしていないが、おそらくは誰かが政治家をからかうために作ったジョークだろう。

ジョークとはいえ、ここには2つの真理が示されていると思う。
1つは、ホームレスは玉石混交であり、ホームレスになる前はいろいろな種類の仕事をしていた人がいること。
もう1つは、誰であれ、いつかホームレスになる可能性があることだ。

ホームレスはどうやって「ホームレスになる」のか。
以前に述べたように、倒産や失業、家賃が払えなくなること、あるいは家庭関係や人間関係の悪化などがきっかけという人が多い。

ホームレスは一人ひとり異なる事情とストーリーを抱えているが、それぞれがホームレスになった理由を知れば、きっと「誰であれ、いつかホームレスになる可能性がある」という真理が実感できる。

落とし穴はどこに潜んでいるか分からない。4つの例を紹介しよう。

一夜にしてホームレスになる可能性もある

当時、建築現場の下請け仕事をしていた彼は、何人かの作業員を連れて埼玉県某所の現場に行った。
最終日の夕方に請け負った仕事が完成し、その夜、工事現場の寮から退去するよう言われた。
疲れていたが、手に入れたばかりの数十万円の工賃を見て心が浮き立っていたという。

まず東京に戻るが、深夜になるのでみんなでホテルに泊まり、翌朝、電車やバスでそれぞれ家に帰るというプランだった。

泊まったのは池袋のカプセルホテルだ。
まず貴重品をホテルの鍵付きロッカーに入れて、お風呂に入り、それからカプセルに入ってぐっすり寝た。
この夜、災厄が降りかかった。
翌朝そのロッカーを開けたところ、中にあった数十万円の現金とたくさんの免許証が全部消えていた。

警察によれば、密航してきた不法滞在の外国人がやったのだろうという。
この連中はあちこちで犯罪を犯しており、当時、社会問題になっていた。捕まえるのは難しい。

最も痛かったのは、建築工事に関する各種の免許証や許可証で、大型トラックやクレーン運転、溶接関係、建築施工管理士資格など、すべてを失ってしまったと彼は話す。

これらを再発行してもらうにも、時間とお金がかかる。
手元には、仕事の関係者に公衆電話をかけるお金さえない。生きる道をすべて断ち切られたように感じたそうだ。

彼には、全財産を盗まれた後、首を吊って自殺した友人がいた。
いま自分は同じ窮地に立たされている、どうすればいいのか――。
結局、彼は借りていた家に戻らず、仕事の取引先との連絡も途絶え、荒川河川敷で野宿生活を始めることになった。

体が弱くて労働ができず、ホームレスを選ぶ人もいる

私が荒川河川敷で会ったホームレスの1人は、病気がきっかけだった。

中高生の頃は不自由のない生活を送っていたが、学業は疎かだった。
歌が好きだったので商店街のカラオケ大会に出たり、刺激が欲しくて車を飛ばし、警察に追いかけられたりしたこともあった。
たばこも吸ったし、酒も飲んだ。高校を中退し、働いてお金を稼がなければならなくなると、まず専門学校の食堂に就職し、皿洗いや掃除をした。

しかし、幼い頃から喘息を患っていて、8時間連続で働くことができなかった。
その仕事を辞め、派遣会社に登録した。毎日働く必要はないが、彼に与えられた仕事の多くは建設現場の肉体労働だった。

しばらく経つと、体が悲鳴を上げるようになったそうだ。
仕事中、喘息がよく出て、休まなければならなかった。
加えて彼はヘビースモーカーで、たばこをたくさん吸うのだが、そのたびに喘息がひどくなり、正常に仕事ができなくなった。

そして彼は、生きていくにはホームレスになるしかないと考えた。この時まだ32歳だったという。

もちろん、彼も公的な支援をあおいだり、他の道を選んだりすることができたかもしれない。
しかし、若くても体が弱くて普通の人のように労働ができない人にとっては、ホームレスになることが現実味を増してしまうのだろう。

会社の倒産、リストラ......それぞれの理由

私が取材をしているのは荒川河川敷に暮らすホームレスだが、他の地域のホームレスたちも当然、それぞれに事情を抱えている。

「下町ぶっとびTV」というドキュメンタリーのYouTubeチャンネルには、給料をもらえず、会社を転々として、ホームレスになった江戸川河川敷のホームレスが登場する。

最初は大工に弟子入りをしたが、親方に借金があって、弟子に給料を払えなくなった。
次に入った会社の社長は元暴走族で、いろいろと問題があり、会社がつぶれた。
転職して型枠大工の仕事を始めたが、今度は社長が酒を飲み過ぎて死んでしまったそうだ。
その後は再就職をあきらめ、ホームレスになることを選んだという。

一方、20年以上前の日本のテレビのドキュメンタリーで、新宿の親子ホームレスを取り上げたものがあった。
親子は栃木県のホテルで一緒に働いており、父はそこの副支配人も務めていたが、息子は軽い知的障害があった(母は息子が3歳の時に離婚しており、家を出ている)。

親子は共にホテルにリストラされ、家賃が払えなくなって、やむなく上京する。
東京の親戚を頼ったが、結局、夜はシャッターが降りた後の階段の踊り場で過ごし、昼は飲食店の裏に捨てられていた食べ物で空腹を満たす生活になったという。

絶望から希望への「緩衝期」が得られるはず

日本人が他人に迷惑をかけないことを重視しているのは、よく知られている。
自分が困っていて、生活を維持できないような場合でも、他人に助けを求めるより自殺を選んでしまう人がいる。
本当に他に選択肢はないのだろうか。

そんな時は、ホームレスになろう――。
極端な意見に聞こえるかもしれない。もちろん、路上生活を誰にでも推奨するわけではないが、これまで荒川河川敷で交流と取材を続けてきた私は、それも1つの道だと信じている。
ホームレスになることで、絶望から希望への「緩衝期」が得られるはずだ。

キリスト教には「神は扉を一つ閉じれば、必ず窓を一つ開けてくださる」という教えがあるという。日本ではこの窓が「ホームレスの窓」なのではないか。
窓の向こうには、お金がなくても、生きていける世界が広がっている。

私が言いたいことは、ホームレスという存在は、さまざまな理由で人生に行き詰まった人々の貴重な命を延長することに直結しているというものだ。

趙海成(チャオ・ハイチェン)
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加速する高齢化、救急態勢見直し…地方が悲鳴を上げる「医師の偏在」の実態

加速する高齢化、救急態勢見直し…地方が悲鳴を上げる「医師の偏在」の実態
12/22(日) 産経新聞

都市部など一部地域に人材が偏る「医師の偏在」を巡り、医療現場が苦悩を深めている。
地方では医師の高齢化が加速しており、救急態勢の見直しを迫られる医療機関も。
「このままでは地域医療を守り切れない」。
砦(とりで)を守る現場医師たちの思いは切実で、偏在の是正に向けて厚生労働省は年内にも、総合対策をとりまとめる。

■70代が月8回の当直勤務

「当直勤務は昔、55歳くらいになると免除されていたが、今は60代以上にもお願いしなければ回らない。
月8回ほど当直に入る70代の産婦人科医もいる」

16診療科と約400の病床を持ち、地域の中核病院として多くの急性期患者を受け入れる「阿南医療センター」(徳島県阿南市)の前田徹院長(66)は、こう打ち明けた。

約45人いる常勤医の平均年齢は53歳。前田院長も朝7時半ごろには始動し、外来診療のほか週平均で5件の手術も担う。
帰路につくのは夜9時ごろが多く、自身も月1回ほど、当直にも入る。

徳島県は医療機関で働く人口10万人当たりの医師数が令和4年末時点で335・7人と、全国トップ(全国平均262・1人)。だが人材の52・22%は徳島市に集中し、医師不足が深刻な他地域では人材の高齢化が著しい。

同センターは徳島大病院から医師派遣を受けるが、近年は同大の医学生は国家試験合格後、県外に出ていく傾向にある。
派遣してもらえる若手・中堅医師は少なくなっており、県南部では勤務医のみならず、開業医の高齢化も進む。
後継者がなく、閉院を模索する動きも広がっているという。

「10年先には地域医療を支える人材がいなくなるかもしれない」。前田院長は危機感を隠せない。

■引退の理事長も復帰

地域だけでなく「診療科の偏在」も影を落とす。

医療機関で働く人口10万人当たりの医師数が4年末時点で全国最少(180・2人)の埼玉県。
特に深刻なのが、1市4町からなる秩父医療圏(人口約9万2千人、同年末時点)だ。

同医療圏は夜間・休日に入院が必要な救急患者を交代で受け入れる輪番制を導入。かつて7病院の参加があったが、医師不足を背景に離脱が相次ぎ、今は3病院で回している。

こうした中、3病院の一つで民間病院の「秩父病院」(同県秩父市)が来年度、夜間・休日の輪番制から撤退することに。
「現場にこれ以上の負担を強いることはできない」。同院の花輪峰夫理事長(76)は、苦渋をのぞかせる。

15診療科がある同院は年間約500件の手術を担う。52ある病床の稼働率は9割近いが、常勤医7人中外科医は2人だけ。外科医を志す若手の減少も指摘される中、人材集めは困難を極めてきた。
2年半前に引退した花輪理事長は復帰し、今も外科医として働いている。

宿直は開業医らの助けも借りながらなんとか回すが、週1回以上のペースで入ってもらわなければ立ち行かない。
「ぎりぎりの状態」(花輪理事長)は続く。

■「実効性ある対策を」

全国の医師数は令和4年時点末で約34万人。
40年で約2倍に増加したが、近年は都市圏での就職を希望する者が多く、激務とされる外科や救急科、産婦人科などでは人材不足が深刻化している。
収益を上げやすい美容外科に人材が流れ、医師の偏在に拍車をかけているとの指摘もある。

各地では、大学の医学部入試に卒業後一定期間の地方勤務を条件とする「地域枠」を設けるなどして偏在の解消を模索。
同枠の定員は昨年度、全国で約1700人に上った。

取り組みは一定の効果をあげるが、地方で専門性を高めることや私生活の両立に難しさを感じる人もおり、人材定着の決定打にはなってはいない。

埼玉県では医師免許取得後、特定地域の公的医療機関などに一定期間勤務すれば、返済が免除される奨学金制度を用意。ただ、人材を欲する秩父病院などは制度の恩恵を受けれていない。公的・民間の区別のない偏在対策を求める声も上がる。

花輪理事長は「行政は各病院が置かれる窮状をしっかりと見て、実効性ある対策を講じてほしい」と話している。(三宅陽子)
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2024年12月24日

刃物を持つ犯人に「絶対してはいけない」3つの事

刃物を持つ犯人に「絶対してはいけない」3つの事
刃物を持った人物が現れたら…どうすればいい?
松丸 俊彦 : セキュリティコンサルタント
2024/12/21 東洋経済オンライン

「安心して外出できないような世の中になった」。そう嘆く声が全国から聞こえてくる。

刃物による恐ろしい事件が多発している。

12月14日、福岡県北九州市のファストフード店で中学生の男女2人が突然、男に刃物のようなもので刺され、女子生徒が死亡し、男子生徒が重症を負った。
その後、19日に現場近くに住む43歳の男が殺人未遂の疑いで逮捕された。

18日には、2つの事件が起こっている。

まずは昼に兵庫県神戸市の地下鉄三宮駅の改札付近で、75歳の女性が背中など2カ所を刃物で刺された。
女性は全治1カ月の重症だ。同日、49歳の女が現行犯逮捕されている。

同日夜には、千葉県柏市の住宅街で59歳の夫婦が刃物で殺害された。
近くでは火事が発生しており、住宅など8軒が全焼。この火元となった家に住む77歳の男が、翌日に公務執行妨害で逮捕された。

柏市の事件は顔見知りのようだが、北九州市と神戸市の事件は通り魔的な犯行と見られている。

凶刃を前に「絶対にしてはいけない」3つの行動

突然、しかも背後から襲われた場合は、正直どうしようもないというのが現実だ。
しかし、それをなるべく事前に防ぐ方法はある。
また、襲われた際に被害を拡大してしまう「危険な行動」というのもある。

相次ぐ刺傷事件に不安を募らせている人も多いだろう。
自分や大切な人の身を守るためにどうしたらいいのか、具体的な対策について説明していきたい。

まず、生死を分けるのは「初動」である、という点を念頭に置いてほしい。
これによってその後の結果に大きな差が出る。
警察官は至近距離から刃物で急襲されたときの訓練をするが、その際に徹底的に叩き込まれるのが初動の動きだ。

刃物を持った人物が現れたとき、「絶対にしてはいけない行動」というものがある。
以下の3つだ。

【「絶対にしてはいけない」3つの行動】

1:声をあげる
2:背中を向けて逃げる
3:戦う

1つ目は、声をあげること。
もちろん、突然刺されてしまったという場合には別だが、目の前に刃物を持った人物が現れたとき、声をあげて自分の存在を知らせたり、犯人を刺激したりしてしまうと、犯人のターゲットになりやすい。

この後の動きにつなげるため、そっと存在感を消すことが必要となってくる。

2つ目は、背中を向けて逃げること。
目の前に刃物を持った人間がいれば一目散に逃げ出したくなるが、それでは犯人の攻撃から目をそらすことにもなる。
背後から襲われてしまうと、初動で最も重要な防御をすることもできない。

凶器による攻撃が届く範囲にいる場合は、犯人のほうを見ながら、後ずさりする。
つねに犯人を視界にとどめる。
犯人の攻撃範囲から出て、距離をとることができて、なおかつ犯人が背中を見せるなど、こちらから注意がそれたタイミングがきたら全速力で走って逃げるのがベストだ。

逃げる間もなく凶刃が届きそうになったら…

そして最後の危険な行動は、戦うことだ。
自身の腕っ節に自信があったり、犯人が小柄だったりすると、勇敢な人は立ち向かおうとするかもしれないが、それは最後の手段である。

アメリカでも、テロ対策として「ラン(Run)・ハイド(Hide)・ファイト(Fight)」を推奨している。
まず、走って逃げる。
次に隠れて身の安全を確保する。
そして、最終手段として戦う。
あくまでも何もしなければ座して死を待つのみという状況になって初めて、「戦う」という選択肢が出てくるのだ。

では、逃げる間もなく、犯人の凶刃が届きそうになってしまったらどうすべきか。

これは警察官も徹底して叩き込まれる手法であるが、モノで刃物を叩くことだ。
モノというのは、身につけているバッグや買い物袋などである。

初動で最優先されるのは犯人の第一撃を防ぐこと。
したがって、ここでの「叩く」という動作は、攻撃ではなく防御を目的とする。

その際に、相手の攻撃の動線(刃物の軌道)から自分の体を外すことが重要だ。
とても難易度の高い動きになるが、凶器を叩きながら自分の体を犯人に対して斜めにして正面を見せないようにすると、急所に攻撃を受ける確率を下げることができる。

そこまでできなくとも、刃物を叩き落とすだけでも効果はある。
また、叩き落とすことができなくても、相手が落としそうになるだけで少しの時間を稼ぐことができるだろう。

相手の第一撃を交わしても、また襲ってくる場合、基本的にはこの動きをくり返すことになる。
相当に武道や格闘技の修練を積んでいる人でない限り、危険なので打突(だとつ)や投げといった技で犯人を制止しようとすべきではない。

丸腰の状態だったら、どう防御する?

しかし、北九州市で中学生が襲われたときのように店でレジに並んでいたり、ちょっとトイレに立ったときなど、手にしているのは財布のみで、防御できるようなモノは何もないことがあるかもしれない。

その際には、刃物を叩き落とさずとも、前述したように攻撃の動線(刃物の軌道)から自分の体を外すことに尽きる。
その際、体を半身にして、意外かもしれないが犯人が刃物を持っている利き手側に回り込むように体をそらすのがいい。

これは、攻撃の的をできる限り小さくすること、そして犯人が力を入れやすい方向から逃れる目的だ。

もしあなたの利き手が右手だとすると、少し左側にいる人と、右手よりもさらに右側にいる人、どちらが攻撃しやすいだろうか。刃物を振り下ろしたり、突き刺したりする場合、利き手と反対側のほうが力を入れやすいため、利き手側に回り込むと攻撃力を落とすことができるのだ。

警察官も刃物を取り出す危険のある人物に同行する際、利き手を見極めてそちら側を歩くように指導されている。

もっと手前の段階から身を守る方法は1つだ。
とにかく周りに気を配り、不審者から距離をとること。

不審者と至近距離で対面しないためには、不審者をできるだけ遠くで、いかに早く見つけるかに限る。
スマートフォンに集中したり、イヤホンをして周囲の音を遮断していたりすれば、不審者発見は遅れてしまうし、襲われたときにも初動が遅れるだろう。

「直感」は馬鹿にならない

2021年に京王線車内で起きた刺傷事件がある。

ハロウィーンであった10月31日、八王子から新宿に向かう京王線の車内で、当時24歳の男が乗客たちを無差別に刃物で襲った事件だ。
男性1人が意識不明の重体となり、車内には火が放たれた。
犯人の男が『バットマン』に出てくる「ジョーカー」のコスプレをしていたことから、「ジョーカー事件」とも呼ばれている。

この事件映像を見て筆者が気になったのは、乗客が隣の車両から走って逃げてきているにもかかわらず、 ヘッドホンをしていて逃げ遅れている人がいたこと。
スマホに夢中になっていたり、イヤホンで周囲の音を遮断していたりする人の姿は、最近では当たり前に見られる。これは非常に危険だ。

イヤホンをするにしても片耳は空けた状態にしたり、スマホをずっと眺めるのではなく、頻繁に顔を起こしたりすることで、初動への反応速度を上げることができる。

そして不審な人物を見かけたら、とにかくそっと距離をとることだ。
そのために重視するのが「直感」。
これが意外と馬鹿にできない。
公共の乗り物などで「何かが怪しい」と感じたときの“言葉には表せない直感”に頼る。
この感覚的な気づきを逃さないためには、先ほども述べたように周りに気を配るのが肝心だ。

最近起こった事件については、こういった対策をもってしても防げない最悪のケースだったといえる。
しかし、普段から注意して周囲を見るようにすれば、あなた自身、そして大切な人を守ることができるかもしれない。

まずは備えるという意識をもっておくには越したことがないだろう。

松丸 俊彦 セキュリティコンサルタント
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2024年12月25日

黒でも赤でも緑でもない…覚えたいことをメモするなら字は小さく、読みにくく、そして最も意外なこの色で

黒でも赤でも緑でもない…覚えたいことをメモするなら字は小さく、読みにくく、そして最も意外なこの色で
2024年12月22日 PRESIDENT Online

記憶力が上がる音楽や文具・ツール、文字の色・形があるのをご存じだろうか。
記憶力日本チャンピオンかつ、世界記憶力グランドマスターの青木健さんは「どの色で書かれると記憶力が高まるかを調査した複数の実験では心を落ち着かせる効果のある色が最もいいという結果が出た」という――。
※本稿は、青木健『東大式記憶力超大全』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。

■記憶力が上がる音楽

普段勉強をするとき、どのような環境で行っているでしょうか?
 図書館のような静かなところで勉強する人もいれば、カフェの少しガヤガヤした中で勉強する人、家で音楽を聴きながら勉強する人もいるでしょう。

覚えるということにおいては、どのような環境が「最適」なのでしょうか?

もし何か特定の音楽を聞くと記憶力が高まるのであれば、試したいという人もいると思います。
心理学や認知科学の研究で有名なものとして、「モーツァルト効果」というものがあります。
1993年にカリフォルニア大学のラウチャー氏による実験で、モーツァルトの「2台のピアノのためのソナタニ長調」を学生に聴かせたところ、癒やし系の音楽や無音だったときと比べて、記憶力の知能テストのスコアが高くなったという結果が発表されました。

これは音楽を聴きながらではなく、音楽を聴いた直後10〜15分間程度に効果があり、長くは続かないというものでした。
その後、ラットなどの動物や、他の音楽家の曲でも実験が行われました。
「他のクラシック系の音楽でも効果がある」という肯定的な説から、「音楽を聴いたことにより脳が覚醒しただけ」という否定的な説までさまざまです。

ただし、モーツァルトを聴いて記憶力が悪くなるということはないようですし、ポジティブな気分で何かを覚えるのは良いことです。
モーツァルトの「2台のピアノのためのソナタニ長調」を聴き、良い曲だと感じたのであれば、勉強前に聴いてみるのはいかがでしょうか。

学習系のセミナーや商品などでは、このモーツァルト効果を拡大解釈し誇大広告気味に使用しているものもあるようなので、ご注意ください。

POINT 「2台のピアノのためのソナタニ長調」を聴くと10〜15分程度に効果があるといわれている

■勉強の記憶効率が良いのは「手書き」か「タイピング」か?

昔はノートに板書を写したり、メモをするということが一般的でしたが、近年では小中学校でタブレットが導入されたり、大学生や社会人はパソコンを持ち込んで授業や会議に参加したりしています。

2024年に発表された、ノルウェー科学技術大学で大学生を対象に行われた実験で、画面に出てきた文字をデジタルペンで手書きする場合とキーボード入力する場合、どちらが脳が活性化するかを調査しました。

その結果、デジタルペンで手書きをしたときのほうが、記憶に関わる脳の部位やそれらを接続する部位が活性化していることがわかりました。
デジタルペンではなく、紙にペンで書く場合でもほとんど同じ効果があると結論づけています。

また広島大学の研究チームによると、朗読の書き取りを、ノートにペンで書く場合とタブレットにデジタルペンで書く場合では、タブレットに書くほうが書いた文字の確認や認識に注意が取られるため、紙に書くよりもストレスがかかることがわかりました。

今後タブレットやデジタルペンの機能が改善されたら、アナログで書く場合との差はより縮まると考えられます。

これらの結果から、社内の議事録や業務中のちょっとしたメモなど、覚える必要のない内容は、早く正確に入力できるタイピングで行ってよいでしょう。

反対に漢字の読み書き、英単語のスペル、専門用語の暗記などには、できる限り手書きで、さらに紙とペンを使うのがおすすめです。
特に漢字は部首の種類や点の数、文字の形など、英単語の場合は文字数や接頭語や接尾語などの細かいスペルを意識しながら書くことになるので、キーボード入力と手書きでその差は大きくなると考えられます。

POINT しっかり覚えたい勉強は紙とペンを使って手書きで行う

■記憶力を高める色

「文字」が記憶に作用するのか、という実験が世界中で行われています。ここでは、文字の「色」「大きさ」「フォント」についてお話しします。

私たちの生活の中にはさまざまな「色」があります。
人間が認識できる色の数は、なんと100万色もあるそうです。

色に対してあまり強く意識を持っていない人が多いと思いますが、色には興奮作用や鎮静作用、リラックス作用があります。「赤」はお祭りのようなエネルギッシュなイベントで使われたり、寝室のライトは「真っ白」よりリラックス効果のある少し「オレンジ系の色」が使われていたりしますよね。

それでは記憶に良い色はあるのでしょうか?

単語を記憶する際にどの色で書かれていると記憶力が高まるかを調査した複数の実験の中に、「記憶には青がよい」というものがあります。
その理由として、青色は心を落ち着かせる効果があるからといわれています。
また文字の色は濃い色よりも「薄い色」がよいようです。

■文字の大きさやフォント

文字のサイズは大きいものよりも「小さいもの」のほうが記憶に残りやすいです。
これは薄い色が記憶に効果的であることと同様に、文字が小さいと、その文字を認識しようとして注意力が上がるため記憶に残りやすいという結果になったようです。

フォントの種類でも同じことがいえます。
読みにくいフォントのほうが、はっきりと読めるフォントよりも記憶に残りやすいという実験結果が出ています。
このような結果を最大限活用しようとすると、すべての文字を認識しづらい文字で書くことになります。

しかし、それではストレスが溜(た)まり、なかなか読み進められないと思いますので、基本的な文章は黒い文字で普通に書きつつ、覚えるべき重要な用語は薄めの青い文字で小さく書くとよいのかもしれません。
PCなどで文章を作るときも、薄めの青い文字で小さく読みにくいフォントで書くとよいでしょう。

POINT 覚えたい用語は薄い青色・小さい文字・読みにくいフォントで書く

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青木 健(あおき・たける)
株式会社メモアカ代表取締役CEO、日本メモリースポーツ協会会長
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【大掃除】「あるのが当たり前」という思い込みと一緒に捨てた“意外なもの3つ”とは

【大掃除】「あるのが当たり前」という思い込みと一緒に捨てた“意外なもの3つ”とは
筆子:ミニマリスト
024年12月22日 ダイヤモンドオンライン

年末が近づき、慌ただしさが増すこの季節。
大掃除や年越しの準備、新年の計画など、気ぜわしい日々を過ごしている方も多いのではないでしょうか。
そんな時期だからこそ、「本当に必要なもの」を見極め、暮らしの余白をつくる時間をとりたいものです。
本記事では、ミニマリスト・筆子氏の新刊『それって、必要?』(三笠書房)より、大掃除をシンプルに進めるための「捨てるスキル」や、必要以上に物を増やさないための「買わない挑戦」など、新年をすっきり過ごすためのアイデアをお届けします。

思い込みと一緒に捨てたあれこれ

 さまざまな生活習慣の中には、それをするのが当然、と常識にとらわれてなんとなく続けていることがあります。
立ち止まって、考え直してみるのも生活をシンプルにするのに役立ちます。

 化粧品や水切りカゴなど、私はこれまでにいろいろな物を手放してきました。
なかでも、これから紹介する三つの物は、簡単に捨てられそうだけど、常識が邪魔をしてなかなか捨てられない物かもしれません。
ですが、大事なことは「自分にとって必要かどうか」。
その視点で見極めると、家事全般がラクになり、ストレスが減ります。

 日常生活で使っている物の中には、長年使っていて、それがない生活を想像できない物がたくさんあります。
しかし、自分の年齢や家族形態、生活環境が変われば、必要性を失う物は意外と多いのです。

小さくても大丈夫、バスルームがすっきり

 バスタオルは10年ぐらい前に使うのをやめました。
お風呂からあがったらバスタオルで体を拭くものだと小さな頃から思い込んでいましたが、そんなことは全然ありません。
体の水気をとるために、あそこまで大きくて分厚いタオルは必要なかったのです。

 お風呂あがりに体を拭くときは、フェイスタオルを使っています。1枚で充分間に合いますが、もし足りなければ、フェイスタオル2枚を頭と体で1枚ずつ使います。

バスタオルはとにかくかさばるので、使うのをやめたら、バスルームが見違えるほどスッキリしました。

 バスタオルはほかの洗濯物と違って、洗濯する頻度に悩むものです。

 日本ではけっこうまめに洗うと思います。
でもカナダではあまり洗わないようで、「もっと洗うべきだ」という記事を雑誌やインターネットで見かけます。
「1日1回の頻度で使ったバスタオルは3回使ったら(つまり3日で)、洗いましょう」とか「1週間に1回は洗いましょう」といった記事です。

 バスタオルは分厚いから、雑菌が繁殖しやすいです。バスタオルを使わなければ、こうした問題からも解放されます。

洗濯しないのだから、長い目で見れば、水や洗剤の節約にもつながります。
干したり乾かしたりする必要もありません。

何か頭につけて洗わなければならない、は思い込み

 20年ほど前から湯シャンをしています。
湯シャンとは、お湯のみで髪を洗うことです。

 きっかけはたまたま読んだブログの記事でした。
それまでにも石けんや重曹、お酢などシャンプー以外のもので洗髪してみましたが、どれも一長一短で、なかなか満足のいくものに出会えませんでした。

 そんなとき、お湯だけで髪を洗っている人の記事を読み、「それでもいいんだ」と目からうろこが落ちました。
「何かを頭につけて洗わなければいけない」というのは完全な思い込みだったのです。

 近年、湯シャンの知名度もあがってきましたよね。でも多くの人が躊躇しています。
髪がべたつき、臭くなるという懸念があるからでしょう。

 たしかに私も、湯シャンをはじめて最初のうちは髪のべたつきに悩まされました。
乾いた髪をクシでとくと、白い汚れがいっぱいつきました。

 ネットでいろいろな人の体験談を読み、髪がべたつくのは、きれいに洗えていないからだとわかり、きれいに洗う方法を調べました。

 湯シャンできれいに洗髪するコツは、髪というより頭皮(毛穴)をしっかり洗うこと。湯シャンをはじめて間もないときに髪がべたつくのは、毛穴の中に、これまでのシャンプーやパーマ液、毛染めの薬剤が残っているからだそうです。

 また、これまでシャンプーなどの薬剤が地肌の皮脂を取っていたので、それを補うために、髪を洗うたびにたくさん皮脂が出ていました。湯シャンをはじめてもこの状態がしばらく続きます。

 いまはそこまでしっかり毛穴から汚れをかきだすように洗わなくても、べたつかなくなりました。
湯シャンをはじめて髪のべたつきが取れるまでの期間は3週間.半年、あるいはもっと長期間というように、個人差があります。

 いったん、薬剤を取ることができたら、あとはお湯だけでよくなりました。

 湯シャンしかしていませんが、7年ぶりに行った美容院で美容師さんに「髪は健康だし、きれいに洗えてます」と言われました。別に問題はないようです。

 シャンプーをしていて、かゆみがある、臭い、抜け毛がひどいというトラブルがあるときは、湯シャンにしないまでも、シャンプーの頻度を減らすといいと思います。

 強い洗浄剤は正常な頭皮にある常在菌を洗い流して、雑菌を増やします。
「臭いから」という理由でシャンプーの頻度を増やすと、さらに臭くなり、ますますシャンプーする、という負のサイクルに入ってしまいます。

 抜け毛が気になるときも、抜け毛を防ぐために、特別なシャンプーを使ったり、頭皮にケミカルな何かをふりかけてゴシゴシしたりすることが多いと思います。
いずれも、問題に対して何かをプラスして対処する方法です。

「原因はシャンプーなのだから、そのシャンプーをやめてみる」という発想がなかなか出てきません。
というのも、みんなシャンプーしているし、小さいときからずっとシャンプーをしているから、シャンプーをするのはあまりにもあたりまえなのです。

 この固定観念をはずして、あえてマイナスの対処法を試みるのはミニマリスト的な生き方でもあります(湯シャンの詳しいやり方は、拙ブログ「湯シャンのススメ」をご覧ください)。

ベッドに寝るのをやめた

 いちばん捨ててよかった、と思うのはマットレスです。

 2014年の秋の引っ越しをきっかけに、ベッドに寝るのをやめました。
マットレスを手放して、床に寝るようにしたのです。

 あるとき、平床寝台というものを知りました。
平らな床の上に寝ることです。床の上に寝ると、背骨や骨盤の歪みが矯正されて、より健康になる。腰痛の改善も見込める、というのです。

 私には腰痛はないものの、ひどい肩こりでした。それに、長時間パソコン作業をすると、腰がこる感覚がありました。

 そこで、平床寝台に興味を持ちました。
しかし、当時はベッドで寝ていたので、とりあえず、できるだけ硬いものの上で寝ようと、二つ重ねていたマットレスのより硬いほうを上にして寝てみました。

 最初は違和感がありましたが、すぐに慣れ、硬いほうが快適なことに気づきました。
硬いマットレスに2年ほど寝ていましたが、引っ越しをきっかけにマットレスを処分し、今度は床に寝ることにしたのです。

 フローリングの上に段ボールを敷き、その上に二つ折りにした毛布を敷いて寝ています。
床に寝はじめて、10年たちますが、いまでは、もうベッドに寝たいとは思わなくなりました。
やはり硬い床の上に寝たほうがぐっすり眠れるのです。

 寝具が少なくなって、よけいな仕事がなくなったメリットもあります。
あの忌まわしいベッドメーキングをしなくてすむのです。

 娘はベッドに寝ていますが、ベッドはとにかく装備が多いと感じます。
ベッドフレーム、マットレス、ベッドパッド、シーツ、掛け布団、ベッドカバー。ファブリックが多ければ多いほど、部屋のほこりが増え、清潔に保たないとアレルギーになる可能性もあります。

 もう一つのメリットはどこでも眠れるようになったこと。
毛布を置ける、平らなスペースさえあれば、そこが寝室に様変わりします。
大きなベッドはスペースをとってしまいます。
布団ならしまえますが、布団の上げ下げという作業が発生するし、敷布団はそれなりの収納スペースが必要です。

 敷布団を捨てたら、なんだかとても身軽になったのです。
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2024年12月26日

がんと闘う森永卓郎氏、まるまる自己負担の自由診療でクレカは限度額パンパン 後期高齢者を狙い撃つ医療費負担増の改悪に憤り「官僚たちの財政均衡主義にほかならない」

がんと闘う森永卓郎氏、まるまる自己負担の自由診療でクレカは限度額パンパン 後期高齢者を狙い撃つ医療費負担増の改悪に憤り「官僚たちの財政均衡主義にほかならない」
12/22(日) マネーポストWEB

闘う経済アナリスト・森永卓郎氏の連載「読んではいけない」。 今回は医療費改革について。
永氏は近年の高齢者ばかり負担が増えるような制度改正は“高齢者いじめ”と疑義を呈する。 こうした制度改悪が続く原因は数字を守ることを優先する官僚にあると指摘するが、どういうことか。 森永氏が解説する。
* * *
現在がん闘病中の私は、免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」を使った保険診療に加えて、1回の治療費が50万円かかる血液免疫療法という自由診療を併用している。
そのほか検査を含めると毎月預貯金が100万円以上減っているのが現状だ。
そんなことで、私は3枚のクレジットカードを使い分けているが、うち2枚は毎月の医療費で限度額パンパンになってしまっている。

保険適用下の標準治療でがんと闘うのであれば、「自己負担3割」に加え、所得に応じて一定額以上の治療費が控除される「高額療養費制度」という優遇策がある。

日本が医療に手厚い国であることは間違いないのだが、私のように自由診療に手を出すとそうはいかず、毎月100万円以上の医療費が全額自己負担である。
唯一の救いは確定申告の際の医療費控除だが、その上限は年間200万円と決められている。
私の場合、たった1〜2か月で控除枠を使い果たし、あとは純粋な出費となるのだ。

莫大な医療費がまるまる自己負担となる自由診療と、毎月一定額に収まる保険診療の差はとてつもなく大きい。
その事実を身をもって知るからこそ、周囲には保険適用の範囲内での治療を勧めてきた。
実際に標準治療だけでがんに打ち勝った人はたくさんいるのだから。

ところが、いま多くの患者にとって頼みの綱である医療費の優遇制度が国に狙い撃ちされている。

厚労省は11月21日の社会保障審議会医療保険部会で、高額療養費制度の上限額の引き上げ案を提示。
その後の部会で引き上げ幅5〜15%を軸として調整に入ったというのだ。

政府が邁進する医療費負担増の企みはこれだけではない。
ターゲットとなっているのが、75歳以上の後期高齢者の医療費負担だ。
当初は無償だった後期高齢者の窓口負担は2001年に1割負担となり、2006年から現役並み所得者は3割負担となった。 2022年からは住民税課税所得が年間28万円以上など、一定以上の所得のある人は窓口負担が1割から2割に引き上げられている。

さらに、である。 政府は9月13日に閣議決定した高齢社会対策大綱の中に、後期高齢者について医療費の窓口負担の拡大に向けた検討を行なう方針を盛り込むとともに、3割自己負担となる人の対象範囲拡大に向けて「検討を進める」と明記したのだ。

高齢者いじめともいえる制度改悪の原因は、行政を司る官僚たちの「財政均衡主義」にほかならない。
経済学的に何の問題もない財政赤字をことさら問題視し、「国の財源を逼迫させている一因は高齢者の医療費である」として、高齢患者から命の金を吸い上げている。

高齢者に負担増を集中させることで、現役世代のガス抜きをする意図も透けて見える。

国民の命よりも数字を守ることを優先する官僚によって、高齢患者が殺されていくのである。

【プロフィール】

森永卓郎(もりなが・たくろう)/1957年7月12日生まれ。 東京都出身。 経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。 日本専売公社、経済企画庁、UFJ総合研究所などを経て現職。 近著に『身辺整理』(興陽館)『投資依存症』『書いてはいけない』(ともに三五館シンシャ)など。 テレビやラジオのコメンテーターとしても活躍中。

※週刊ポスト2024年12月27日号
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2024年12月27日

「クリスマスも正月も祝う」日本の不思議な価値観

「クリスマスも正月も祝う」日本の不思議な価値観
神道、仏教、キリスト教と受け入れられた背景
宇野 仙 : 駿台予備校地理科講師
2024/12/26 東洋経済オンライン

日本史と地理は、別々の科目として学びますが、多くの接点があります。
『日本史と地理は同時に学べ!』を上梓した駿台予備校地理科講師の宇野仙氏が日本で多様な宗教が受け入れられている背景を解説します。

多様な宗教が生活に根付く

多くの日本人は、年末年始にキリスト教の行事であるクリスマスを祝います。
テレビでは「クリスマス特番!」と題し、クリスマスプレゼントを渡し合う光景が流れます。

その数日後の正月になると、今度は神社に「初詣」という形でお参りに行きます。
「神様、今年も良い年でありますように」と祈るわけです。
一方で、葬式の際にはお坊さんを呼び、お寺にお墓を作ってもらう人がほとんどです。

もっと言うのであれば、「結婚」と聞くと多くの日本人は「ウェディングドレスを着て教会で式を挙げる」イメージを抱くのではないでしょうか。
教会で式を挙げるのも、クリスマスと同じくキリスト教の文化ですよね。

日本人の日常生活には、なぜたくさんの宗教が受け入れられているのでしょうか?
 地理と日本史の両方の観点から、このような不思議な状況が発生することになった原因をお話ししていきたいと思います。

そもそも、宗教はどのようにして生まれ、どうして人々の間で信仰されるようになったのでしょうか? 
いちばんの要因として挙げられるのは、共同体を維持するうえで有効だからです。

人口が増えると、人々が仲良く暮らす必要性が自然と高まります。
例えば、飢えで苦しんでいる人がいるとしましょう。そして、その人の前をちょうど通りかかったあなたの手には、パンがあります。あなたもお腹が空いているので、自分のパンを分け与えるかどうか少し悩みます。

そんなときに、神様を信じている人であれば、パンを分け与える選択を取りやすいでしょう。
「もし死後の世界があったとして、『あのとき、どうしてあの人を助けなかったのだ?』と聞かれたらどうしよう」と思えば、自分のパンを分け与える選択をするわけです。

神様を信じていれば、人々は助け合うことができるようになる。
だから宗教は、国を統治するために必要なものとして機能します。
これが、全世界的に宗教が発生し、それが広まった理由なのではないかと言われています。

稲作文化の日本でも宗教は不可欠

日本においても、宗教は不可欠でした。日本は稲作文化なので、共同で農業をする必要があり、手と手を取り合って稲作を行わないと、全国民が飢えてしまうリスクがあったのです。

米は栄養価が高く、非常に優れた食糧です。一方で、戦乱の元になってしまうリスクが大きい食糧であるとも言えます。

また、川から水を引いて稲作をするためには、大規模な灌漑工事や関係者の利害調整のコミュニケーションが必須になります。

水源や水路を決めなければなりませんし、上流で水を取りすぎてしまうと下流でなかなか取れなくなってしまうので、場所ごとに引く水の量に対する取り決めを設けることも必要です。

水路の整備に付随する作業を滞りなく進めるには、全体の指揮を執るリーダーの存在が不可欠です。
リーダーの指揮のもと、灌漑工事をしたり、水の配分を決めたりする必要が生まれたことが、身分の差をつくることにつながった1つの要因ではないかとされています。

そして、そうしたリーダーの誕生や身分の差は、不満や怒りの感情を生みやすいため、当然ながら戦乱をもたらすことになります。

稲作文化がある中国やインドでも同様の現象は発生していたのですが、日本の場合は特に顕著でした。
日本は、山の多い地形で、川もほかの国に比べて多くの急流があります。

急流である分、灌漑の整備も大規模になりがちです。
また、山が多いということは平地も少なく、農業に適した土地と、そうでない土地で差が出てしまいます。

そうすると、農業に適した土地を人々の間で奪い合う状況が発生するわけです。
それが、日本の数々の騒乱につながった、と考えられます。
そしてそんな日本において、宗教は必要不可欠なものだったと考えられます。

さて、そもそも昔から日本人の多くは、日本古来の考え方であり八百万の神を祀る「神道」と、ブッダを開祖として輪廻転生と解脱を説く宗教である「仏教」の2つを同時に信仰していました。

このような状況が発生したのは、6世紀のこと。大陸から伝えられた仏教の扱いをめぐり、当時の日本の有力者の意見は2つに分かれました。「仏教を広めるべきだ」という蘇我氏と、「広めるべきではない」という物部氏の対立です。

神道も仏教も日本の統治に必要だった

この対立こそ、いわゆる「崇仏論争」と呼ばれる争いです。
最終的には蘇我氏が勝利し、先にも触れた通り、現在の仏教と神道が結び付いた日本の不思議な宗教観になったというわけです。

神道と仏教は、両方とも日本の統治に向いていました。
神道は、天皇の威光を示すために必要でした。
そして、人々が規律を守って生きるために、「不殺生(生き物を殺してはならない)」という仏教の考え方も必要だったのです。

このように、必要なもの同士が手を取り合うことで、現在の日本の独特の宗教観が形成されたと考えることができます。

少し時代が飛んで、戦国時代から江戸時代にかけて、今度はキリスト教が日本に到来しました。
イエズス会のフランシスコ・ザビエルをはじめとして、宣教師たちによってキリスト教が広められたのです。

ところが、キリスト教の場合、仏教とは違って神道と融合することはありませんでした。
神道だけでなく、キリスト教は仏教とも融合していません。

その理由は、いろいろと考えられますが、有力な説としては、「仏教と神道が共に多神教なのに対して、キリスト教は一神教だった」ということです。

仏教も、神道も、複数の神様を信仰しています。日本において仏教と神道、ともに信じる人が多かった理由の1つは、「(多神教であるため)仏教を信じるからと言って、神道を捨てることにはならなかったから」と考えられるのです。

それができたからこそ、仏教と神道は両方日本で受け入れられてきたわけです。

1つの神を信じるキリスト教

ところが、キリスト教を信じることは、複数の神様ではなく、1つの神様のみを信じなければならないことを意味します。
つまり、神道や仏教は捨てなければならないということです。
そのため、キリスト教は日本の宗教との融合は進まなかったと言われています。

しかし、逆に言えば、日本人は多様な宗教を受け入れてきたからからこそ、同時に「キリスト教も受け入れる」ということができたのではないかと言われています。

今、キリスト教のしきたりも日本人の文化として受け入れられているのは、こうした理由からなのではないかとされています。

いかがでしょうか? 年末年始のシーズンは、さまざまな宗教に触れることが多い時期です。
こんな時期だからこそぜひ、改めて歴史を学んでみてもいいのではないでしょうか。

宇野 仙 駿台予備校地理科講師
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2024年12月28日

緊張する場で平常心が保てる人・保てない人の差

緊張する場で平常心が保てる人・保てない人の差
焦る・不安な気持ちになるときの「心の仕組み」
和田 秀樹 : 精神科医
2024/12/27  東洋経済オンライン


真面目な人や繊細な人ほど、人前に出ると緊張したり、アガってしまったりして、本来の実力を発揮できないことがあります。
男女を問わず、こうした悩みを抱えている人はたくさんいると思います。

どうすれば緊張せずに、本来の自分でいられるのか?
どうしたら焦らずに、本領を発揮できるのか? 

精神科医の和田秀樹氏が、精神医学や心理学の視点から、新刊『仕事も対人関係も 落ち着けば、うまくいく』をもとに、3回にわたり解説します。

平常心を保てない理由とは?

平常心とは、普段通りの落ち着いた心の状態を指します。
平常心を保てれば、緊張するような場面でも、リラックスして本来の実力を発揮することができますが、平常心でいるというのは、意外に難しいことです。

私たちの日常には、感情を高ぶらせる要素があふれているため、ほんの少しのことで、気持ちが落ち着かなくなるからです。

どうすれば、平常心を保つことができるのか?
 ここでは、緊張したり、不安な気持ちになる「心の仕組み」(心理メカニズム)に焦点を当てます。
平常心を保てないのは、周囲の人たちではなく、実際には自分の考え方に原因があることがほとんどです。

私が精神科医として用いている治療法のひとつに「森田療法」があります。
森田療法とは、精神科医の森田正馬先生によって創始された精神療法で、不安や恐怖を排除するのではなく、「あるがまま」に受け入れることによって、症状の安定化を目指すという療法です。

森田療法では、不安が強い人というのは、「欲望」が強い人と考えられています。

会社の健康診断を受けて、何かの項目で引っかかったら、あなたはどうしますか?
 血圧が少し高いとか、尿酸値がわずかに上がったときの反応は、大きく2つに分かれると思います。

「これは大変だ!」と慌てて病院に駆け込む人もいれば、「少しくらい数値が高くても大丈夫だろう」とノンビリと構えている人もいます。

大慌てで病院に行く人は、「健康でなければならない」とか、「すべての数値が正常であるべきだ」と考えていますから、少しの数値の変化に動揺して、すぐに不安な気持ちになります。

「多少の問題があっても、気にする必要はない」と考える人は、気持ちが焦ることはなく、不安になることもありません。
森田療法では、この違いを「生」に対する欲望の差……と考えています。

「生」に対する欲望が強ければ強いほど、「死」に対する不安が強くなります。
「まだ死にたくない」とか、「死ぬのは怖い」と考えるから、健康診断の結果に動揺して、不安な気持ちになります。

極端なことをいえば、「いつ死んでもいい」と思っている人であれば、死の不安を感じることはないのです。
「生」に対する欲望が極端に強いことが、不安になる原因の1つといえます。

人に嫌われてもいいと思えば、緊張は和らぐ

入学試験のケースで考えてみると、試験に落ちるのが不安で仕方がない人というのは、絶対に合格したいと思っている人です。
「合格したい」という欲望が強いから、「不合格になったら、どうしよう……」という不安を抱え込むことになります。

同じ学校を受験しても、それが「記念受験」(合格する見込みがない、記念のための受験)であれば、緊張や不安を感じることなく、気楽に臨むことができるのです。

健康でありたいとか、希望する学校に合格したいという思いは誰にでもありますから、緊張したり、焦ってしまうことを良し悪しで考える必要はありません。
大事なのは、自分の欲望が強いから、不安になるのだな……という心の「仕組み」を理解して、前向きな気持ちで不安と向き合えばいいのです。

その不安にどうしても耐えられなければ、欲望のテンションを意識的に下げることによって、その不安から解放されます。

日本人の場合は、「周囲から嫌われてはいけない」という強い欲望があるため、少しのことで不安になったり、焦ったりします。
「少しくらい、人に嫌われてもいい」と考えることができれば、それに応じて、緊張や不安を和らげることができます。

欲望のテンションを下げるとは、これまでとは違う視点で物ごとに向き合って、少しだけ考え方を変えることを意味しています。

インターネットやSNSの普及によって、現代は情報過多の時代になっています。
便利になった一方で、新たな問題も起こっています。
情報を知りすぎることで、考えることが多くなり、どうしても不安になってしまう傾向があることです。

例えば、ネット上には無数の健康情報がアップされていますが、間違った情報や、最新の科学で否定されている古い情報がアップデートされないまま掲載されていることが少なくありません。
そうした情報に振り回されて、不安を抱え込む人が増えているのです。

ネット上では、海外の医学論文や数値データなどを引用して「エビデンスがある」などと紹介されているため、多くの人が知識として知っているものの、その大半は新たな研究成果が追加されていないのが現状なのです。

現在の日本には、「これを食べたら身体に悪い」とか、「これを飲んだら害がある」という情報が氾濫しているため、情報が少ない時代であれば、心配しなかったようなことまで気にするようになり、情報を知った途端に心配になって、不安を高めているといえます。

理系の人が文系の人より焦らない理由

人の考え方には、「文系思考」と「理系思考」の2種類があります。
文系思考とは、人間関係やコミュニケーションを重視して、言葉の意味を深くとらえ、物ごとの背景や感情的な部分にも目を向ける考え方を指します。

一方の理系思考とは、データやエビデンス(客観的な根拠)を重視して、論理的に筋道をハッキリさせる考え方のことをいいます。
私は文系の人よりも理系の人の方が不安になったり、焦ったりすることが少ない傾向にある……と考えています。

仕事も対人関係も 落ち着けば、うまくいく

その理由は、理系の人には、「実験は失敗するものだ」という考え方が前提があり、いくら失敗を重ねても、最後に成功すればいい……という発想ができるからです。

例えば、ロケットの発射実験に失敗した映像がテレビで放送されると、理系の人は、「成功に向かって歩みを進めている段階だな」と解釈しますが、放送では「日本がまた失敗した」という深刻なトーンの扱いになります。

これはテレビ局のスタッフの大半が、私立文系出身者であることが関係しているように思われます。

理系と文系という区分けに明確なエビデンスがあるわけではなく、あくまでも性格的にどちらかの傾向が強いか……ということですが、文系思考の人よりも理系思考の人の方が、失敗やアクシデントに対する「耐性」があるといえます。
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2024年12月29日

「えぐい」「やばい」「すごい」に見る言葉の"世代交代"

「えぐい」「やばい」「すごい」に見る言葉の"世代交代"
全部ほぼ同じ意味だが"発展段階"が異なる!
石黒 圭 : 国立国語研究所教授、 / 石黒 愛
2024/12/28 東洋経済オンライン

会話をする2人
「やばい」や「それな」などを「若者言葉」と言いますが、新しく作られた言葉だけでなく、もともとあった言葉と違う意味で使う場合などさまざまで、ほかの世代には通じないことが多くあります。
新著『言語学者も知らない謎な日本語』は、「若者言葉」について、国立国語研究所教授の石黒圭さんが大学生の娘たちとの対話から得た学びの記録です。
本稿は、同書より一部抜粋、再構成のうえ3回にわたってお届けします。

「推し」のおかげでがんばれる

長女:
お父さんお父さん、YouTubeの虎信選手見た?

父:
そんなに騒いでどうした? 虎信選手と言えば、今年入ったばかりの野球選手だよな。

長女:
そう! その選手笑わないって有名なのに、ファンの子どもにフェンス越しにボールを笑顔で渡すシーンが激写されてたの!

父:
あの虎信選手が? 意外だな。

長女:
今私の最推しだから嬉しい。あの笑顔で白飯が3杯食べれるよ。

父:
「最推し」? 知らない言葉だな。よし、例文を作ってくれたまえ。

長女:
「くれたまえ」って今どき昭和でも使わないよ……。
じゃあ、まず推しから。
「推し」は、アニメやゲーム、現実のアイドルグループ。何でもいいんだけど、好きなキャラクターや、応援したい人のことだよ。

父:
なるほど。好きな人か。

長女:
そうそう。でも恋愛感情とはたいてい別かな。
「最推し」ならthe best of 推しってことだね。
よく聞く「推ししか勝たん」は「推ししか勝たない」つまり「推しが最高」ってこと。

父:
とにかく推しが好きなのがよく伝わったよ。……あ、虎信選手だ。

長女:
どこどこ!? あ、でも待って、あのルーキーの選手もかっこいい。
めっちゃイケメン! 今日から推す!

父:
すぐ目移りする……。

「推し」とは

終止形を連用形にすると名詞として使える。
そのことに気づくと、途端に言葉のネットワークが広がります。

「はさむ」ものだから「はさみ」、「流す」場所だから「流し」、「立って食べる」から「立ち食い」、「引き出す」から「引き出し」、「首に飾る」ものは「首飾り」、「物を置く」ところは「物置き」など、動詞から魔法のように名詞を作ることができます。

麻雀用語は、連用形による名詞の巣窟です。「あがり」「当たり」「流れ」「鳴き」「待ち」「決め打ち」「引っかけ」「振り込み」「ツモ切り」「対子落とし」「全突っ張り」など、こうした言葉がなければ麻雀はできないと思うほどです。

「引きが強い」の「引き」もまた麻雀用語ですが、「押しが強い」の「押し」は性格の形容です。

しかし、「推し」となると意味が違います。
応援したい対象○○のことを以前は「○○推し」と言っていたものが、単独で使用されるようになったものです。
人に勧めるものを「お勧め」と言いますので、「推し」自体が単独使用されても、理屈としてはおかしくないのですが、「推し」にはサブカルの香りがします。そこには、「萌え」や「映え」と共通する感覚があるように感じられます。

文化庁の2022年度の「国語に関する世論調査」によれば、全体の49.8%が使う言葉、49.2%が使わない言葉だとしており、拮抗していました。おそらく拙著が出版される時点では、使う派が過半数を占めているのではないでしょうか。

「やばい」から「えぐい」へ

➖➖姉妹でスマホを見ている。

長女:
うわ、えっぐ……。

三女:
本当だ。すごすぎ。

父:
何がえぐいんだ?

長女:
お父さん、この動画見てよ。
この選手さっきから2打席連続でホームラン打ってるの。しかも2打席目はバックスクリーン直撃の弾丸ホームラン。推定飛距離、130メートルだってさ。

父:
それはすごいな。それを「えぐい」って言うのか?

長女:
うん、言うよ。

父:
ああ、「やばい」と同じでいい意味もあるんだな。
お父さんは、「えぐい」っていうと悪いイメージが先行するんだが。

長女:
そうだね。確かに単純なほめ言葉だけではないけどね。
「えぐい」は私的には「やばい」の一段階上を行くと思ってるよ。

三女:
うちは若干引くくらいの神業とか見せられると「えぐい」って感じる。

父:
たとえば?

三女:
大谷翔平の活躍ぶり!

父:
確かにえぐい……。

「えぐい」とは

「えぐい」という語は、山菜などを食べたときの独特の苦みのことを指す言葉です。
あくが強く、口のなかに不快感がまとわりついて消えない感じです。

「えぐい」は、もともとよい意味ではなかったはずですが、そのインパクトの強さから現在では「ありえないほどすごい」という意味で使われ、「やばい」のインパクトが薄まるなかで「やばい」に取って代わりつつあります。

強調を表す形容詞の用法は世代とともに変遷します。
ぞっとするという意味だった「すごい」、危機的な状況にあることを表す「やばい」、強い不快感を表す「えぐい」、いずれも否定的な意味から始まります(第1期)、
それが肯定的な意味に拡張を起こし、程度の甚だしいレアなケースにたいし、強いインパクトを表すようになります(第2期)。

「えぐい」はその時期に達しているように思われます。そして、インパクトがあれば、どのような事象でも、適用できるようになります(第3期)。これが「やばい」の段階です。

そして、意味の希薄化を起こし、世代を越えて安定的に使われる段階に達します(第4期)。
「すごい」はこの段階に達していると言えそうです。
その後は安定した使用が続くかもしれませんし、他の形容詞の台頭による衰退や消滅が待ち受けている可能性もありそうです。


石黒 圭
国立国語研究所教授、総合研究大学院大学教授、一橋大学大学院言語社会研究科連携教授

石黒 愛
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2024年12月30日

深刻な睡眠不足の日本人が知ったら驚く「人は眠らないとどうなるか」危険すぎる実験の末路

深刻な睡眠不足の日本人が知ったら驚く「人は眠らないとどうなるか」危険すぎる実験の末路
12/29(日) 現代ビジネス

私たちはなぜ眠り、起きるのか?
長い間、生物は「脳を休めるために眠る」と考えられてきたが、本当なのだろうか。

「脳をもたない生物ヒドラも眠る」という新発見で世界を驚かせた気鋭の研究者がはなつ極上のサイエンスミステリー『睡眠の起源』では、自身の経験と睡眠の生物学史を交えながら「睡眠と意識の謎」に迫っている。

日本人の「睡眠不足」が深刻な状況にあることをご存知だろうか。
〈経済協力開発機構(OECD)が2021年に公開した、各国の平均睡眠時間の調査結果によると、33ヵ国のうち、日本の平均睡眠時間は最短だった(7時間22分)。

日本では、例えば都心に職場がある人が、郊外に住まいをもっていて、長い時間をかけて通勤している場合も多い。睡眠に費やせる時間は、必然的に短くなりがちだ。
日本のビジネスパーソンは、通勤電車で不足した睡眠を補っているのかもしれない。
言い換えれば、人間はどんなに忙しくても、ちょっとした隙間時間で眠ろうとする。

そういえば私は幼い頃、あまりに当たり前なことに疑問を抱いていたのを思い出した。
眠るのが嫌いだった私は、「睡眠は本当に必要なのか」と疑問に思っていた。
夜になるといつも考えていたことがある。
もしこのまま眠らずに起き続けたらどうなるのだろう──。〉(『睡眠の起源』より)

実際、人は眠らなかったらどうなるのだろうか。

実は、アメリカの高校生による「断眠の実験」が行われたことがある。

〈1963年12月28日、ランディはクリスマス休暇を使って“挑戦”を始めた。
実験には協力者がいて、彼が眠らないように常に話しかけたりしていたという。

眠らずに起き続けた彼は、どのような経過を辿ったのか?

徹夜2日目、彼は目の焦点を合わせることが難しくなって、テレビを見なくなった。
3日目になると情緒の変化が激しくなり、吐き気を催した。

徹夜4日目になっても、彼は眠気に抗い、耐え続けた。
幻想や妄想があらわれ、道路標識が人間であると感じたり、自らが偉大なフットボール選手だと誇示したりしたという。

7日目あたりになると、言葉が不明瞭になって、まとまった話をすることができなくなっていた。

もう中断してもよさそうなものだが、ランディはそのまま耐え続け、なんと年が明けた1964年1月8日までの11日間、時間にして264時間の断眠記録を達成したのである。当時としては、最長の断眠記録だった。〉(『睡眠の起源』より)

その後、どうなってしまったのか。
〈後年、深刻な不眠症になったことを明かした。毎晩眠ることができず、「もう眠ることを諦めた」と語っている〉(『睡眠の起源』より)という。こうしたことからも睡眠の必要性・重要性が見えてくる。
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「なぜ私は出来ないんだろう」元・片づけられない人間が大変身できた理由

「なぜ私は出来ないんだろう」元・片づけられない人間が大変身できた理由
12/29(日) 現代ビジネス

この年末、心地よい状態で新年を迎えるべく家のお掃除や片付けに励んでいる方も多いのではないでしょうか?

とはいえ「どこから手をつけたらいいのかわからない!」
「せっかく頑張っても、どうせすぐにしっちゃかめっちゃかになるんだろうな……」と始める前からどんよりしてしまう人もいるかもしれません。

そこで今回は、以前話題を集めた『「ちゃんとしなきゃ!」をやめたら二度と散らからない部屋になりました』の著者・なぎまゆさん(@naggy2018)のインタビューを、本書籍の一部試し読みとともに改めてご紹介。

元・片付けられない人間だったというなぎまゆさん曰く、「あること」に気づいてから、片付けられるようになったのだそう。
それは一体どんなことなのでしょうか? キレイを保つのが難しい! という方、必見の内容です。

“元・片付けられない人間”という、なぎまゆさん。
親に怒られるたび、友人を家に招くたびに「ちゃんとしなきゃ!」とキレイにしても、すぐにリバウンドして元の状態に戻ってしまうことが多かったといいます。

「何故 私はきちんと出来ないんだろう」「何故 私はこうなってしまうのだろう」とずっと思っていたある時、几帳面な人の何をするにも丁寧におこなうその所作を見て、「大雑把」である自分は「几帳面」な人と同じようにはなれない、ということに気づいたそう。

「必要なのは几帳面な人と同じになる『努力』ではなく、大雑把な私でも片付いていられる『工夫』ではないか」

それをきっかけに、自分にあったやり方で試してみたところ、気づけば片付けられるようになっていたそう!

そんななぎまゆさんが、今度はご友人宅の片付けを手伝うことに。
物に溢れたご友人のお部屋を片付けながら「こうなってしまう気持ちすごくわかる…」ととても共感したといいます。

じゃあ、どうやって自分は片付けられるようになったのかーー実際の片付けの事例を漫画で振り返るとともに、なぎまゆさんが見つけた「“大雑把な人”ならではの片付けアイデア」を1冊にまとめたのが、2018年に発売された著書『「ちゃんとしなきゃ!」をやめたら二度と散らからない部屋になりました』。

「どこから手をつけたらいいんだろう」と頭を抱えている人、「何度やってもリバウンドしちゃう」という人でも、自分が知らず知らずのうちにやっている癖に気づき、片付けの知恵を分けてもらえる内容になっています。

今回改めて、「ちゃんとしなきゃ!」と思ってもそれができずに悩み続けてきた著者のなぎまゆさんに色々とお話を伺いました。

ーー“元・片付けられない人間”だったけれど、今では“ごく普通に片付けられる人”になった、とのことですが、そもそも以前はどのくらい片付けられなかったのでしょうか?

「人生で片付けられなかった期間の方が圧倒的に長いです。
子供時代は親に毎日のように『部屋を片付けなさい』と注意されていましたし、成人してからも人を部屋に招く時は、床に散らかった物をブルドーザーのようにかき集めてクローゼットに隠すのが常でした。
普通に片付けられるようになったのは、ここ数年と言っていいと思います」

ーー「何度トライしても『大雑把』である自分が『几帳面』な人と同じにはなれませんでした」とありますが、なぎまゆさんが考える「几帳面な人」と「大雑把」だとおっしゃるご自身とでは、具体的にどんなところが「違う」と感じましたか?

「無意識の時の所作です。
几帳面な人は物を出す時もしまう時も所作が丁寧ですが、私の場合、無意識の時は特に、物を出す時に周りの物が多少ズレても気づかないし、しまう時も放るようにしまったりします。
これは片付けができるようになった今でも変わりません。
だから大雑把な性格のままでも片付けが続く工夫が必要だったんです」

ーー片付けがうまくできなかった当時の「このようなことを試してみたけどうまくいかなかった」というようなエピソードがあれば、ぜひ伺いたいです。

「『床に落ちている物をかき集めて、ダンボールや紙袋に入れて部屋のスミに寄せておく』という方法です。
その時は片付いたように感じるのですが、何度も同じことを繰り返しているうちに同じようなダンボールや紙袋がいくつも積み上がって部屋は狭くなるし、必要な物を取り出すためにそれらをひっくり返したりするので、最終的には余計に散らかってしまいましたね……」

ーー本棚、書類の整理、洋服など、やらなければいけないことだらけで「一体どこから手をつけたらいいんだろう」と悩む人も多いと思うのですが、なぎまゆさんは、まずどこから着手して、今のように“片付けられる人”になれたのでしょうか?
また、「ここから手をつけるのがおすすめ!」という部分などはありますか?

「私は『場所ごと』ではなく『物ごと』に片付けることで片付けができるようになりました。
ですので『場所ごと』の片付けは基本的には推奨していません。
それでも取っ掛かりとして『場所ごと』に少しでも片付けたいという方は、物を捨てる捨てないの判断が比較的容易なので『消費期限がある物の収納場所』『愛着がない物が多く収納されている場所』がおすすめです。

具体的に言うと冷蔵庫、薬箱、洗面台の下やトイレの収納等ですね。愛着のある本や写真を手放すことは難しいですが、消費期限が切れた薬や腐った食材を手放すことは比較的容易だからです」

ーー片付けられるようになってからハッと気づいた、1番の「ご自身の変化」はなんでしたか?

「片付けでも片付け以外でも以前は『誰々が考えた方法をそのまま取り入れた結果、なぜか続かない、なぜか失敗する』ということが多かったのですが、今は『誰々が考えた方法を参考にはするけど、合わなければ自分の性格や生活スタイルに合う方法を考える』という視点が前より強くなったように感じます」

ーー片付けられるようになってから、「物の買い方」や「時間の使い方」などにも変化が起きたりしましたか? 以前と変わった習慣などがあればお聞きしたいです。

「片付けができるようになってから、自分は今、何をいくつ持っているか、何がいくつ必要なのか、自分が管理できる物の種類や数はどれくらいなのかが明確になったので、買い物をする時に『何となく欲しいから買う』ということがなくなりました。

時間の使い方については、意識的に何かを変えたわけではないのですが、物を探す時間や片付けに割いていた時間を他の時間に当てられるようになったので、その分生活や精神的に余裕ができたと思います」

自分自身が深く悩み、色々と考え試してきたからこそ気づけた「キレイを保つ方法」。
皆さんも本書を通して、「そんなやり方があるんだ〜!」と片付けのヒントを得てみてはいかがでしょうか?


なぎまゆ、FRaU マンガ部
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2024年12月31日

警察官“ノルマ”のため12月に「交通違反取り締まり」強化する?

警察官“ノルマ”のため12月に「交通違反取り締まり」強化する? 「やった・やってない」水掛け論になったときの対処法
2024年12月20日 弁護士JPニュース

12月は警察官が交通反則切符のノルマを達成するために取り締まりが多くなる――。
このようなうわさを見聞きしたことがある人も少なくないかもしれない。

警察庁の資料「令和5年中の交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」によれば、昨年、特に検挙数の多かった違反は
0@一時不停止(126万7094件)、A最高速度違反(88万8500件)、B放置違反金納付命令件数(64万6973件)、C通行禁止(61万6174件)、D信号無視(42万8565件)だった。

取り締まりをめぐっては、警察官とドライバーの間で「やった・やってない」の水掛け論になりやすいが、もし身に覚えのない交通違反で呼び止められた場合、ドライバーはどのように対処すればよいのか。

「12月は取り締まり多い」うわさの真相は?

まず、「12月は警察官のノルマ達成のために取り締まりが多くなる」といううわさは本当なのか。
元警察官のN氏は「ノルマというより、そもそも12月は交通事故が多くなるため取り締まりが強化される」と話す。

前出の警察庁資料を見ると、例年、交通事故死者数は12月がもっとも多くなっている。

月別死者数の推移(警察庁「令和5年中の交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」より)

「人身事故はもちろんのこと、忘年会シーズンということもあり、飲酒運転への警戒も強化されます」(N氏)

「なぜここが通行禁止なのか」ゴネるドライバーに警察官は…

交通違反の取り締まりをめぐっては、警察官とドライバーの間で「やった・やってない」の水掛け論となることも少なくないだろう。
取り締まりの“基準”について、N氏は次のように話す。

「たとえば信号無視なら、確実に赤信号に変わってから交差点に進入するなど、『相手が言い逃れできない状況』でなければ、基本的には取り締まりをしません」

ところが、確実に違反をしている状況であっても“ゴネる”ドライバーは珍しくないという。

「明らかに通行禁止の場所に入ってしまっていても、『なぜここが通行禁止になっているのか』『なんで曲がる前に言ってくれなかったんだ』など理不尽なことを言われるのは日常茶飯事です。

しかし、いくらゴネたからといって警察官が見逃すことはありませんし、運転免許証の提示を求めても応じることなく、説得にも応じない場合は、現行犯逮捕に踏み切る場合もあります」(同前)

なお判断が微妙なケースであっても、危険性を感じる場合は、事故防止のためにドライバーを呼び止めて「このあたりはスクールゾーンになっているので気をつけてください」など警告することはあるそうだ。

身に覚えのない場合の対処法

警察官が基本的に「確実な違反」と判断した場合にのみ取り締まりをするとして、もしドライバー側が身に覚えのなかった場合、どのように対処すればよいのだろうか。
交通事故に詳しい伊藤雄亮弁護士は次のように説明する。

「まず、警察官に呼び止められたとしても、それ自体はあくまで任意の事情聴取であり、刑事訴訟法上、強制されるものではありません。
だからといって逃げたり、怪しいと思われる行動をむやみにとるなどした場合は、マークされたり、逮捕されるなど不利益を被る可能性もあるでしょう」

もし「絶対に違反していない」と自信を持って言える場合は「基本的にはきちんと止まって対応し、潔白を強く主張することが穏当な対処法」(伊藤弁護士)だが、実務経験上、次のような場面に遭遇することも少なくないという。

「交通違反単体の争いが裁判にまで発展するケースはまれですが、たとえば交通事故の刑事訴訟や、過失割合を問う民事訴訟では、違反の有無について争われることがよくあります。

これらを見ていると、本人は『違反していない』と自信を持っていても、よくよく調べてみると実は違反していた…ということは珍しくありません。

交通違反においては、いくら主観的に『絶対にやっていない』と自信があっても、証拠を突き付けられたときにどこまで強く出られるかは、ケースバイケースなのではないかと思います。

ただし『袴田事件』に代表されるような、捜査機関の違法な取り調べによる冤罪事件は実際に発生しているので、捜査官の誘導に乗らないよう警戒することは大事です」(同前)

年末に向けてスケジュールにも気持ちにも余裕がなくなっている人は少なくないだろう。
取り締まりを心配するよりも、まずは違反を疑われないような安全運転を心がけることが合理的なのかもしれない。
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「9・11同時多発テロはなかった」 気付けばとりこになる“あまりにもよくできた”陰謀論(中川淳一郎)

「9・11同時多発テロはなかった」 気付けばとりこになる“あまりにもよくできた”陰謀論(中川淳一郎)
12/28(土) デイリー新潮

 イスラエルがシリアに侵攻しましたが、この国が何かをするとネット上が陰謀論で盛り上がる傾向にあります。
ディープステートだのフリーメイソンだのユダヤマネーだのといった言葉が飛び交う。

 陰謀論は話半分に聞いておけばいい、と思ったのですが、あまりにもよくできた話であることが多く、新たな信者を作り出してしまう。
「9・11同時多発テロはなかった」「ハワイの山火事では、青い壁にしていた富裕層の家は焼けなかった」「能登半島地震は人工地震」といったことを根拠とともに熱く語られるのです。

 昔、スナックで隣り合った男性がこの手の話を自信たっぷりに語っていました。
しかも、それ用の小道具まで出して。一つは20ドル札と同時多発テロを巡るもの。札を横に向け、半分に折って紙飛行機を作ると、世界貿易センターが燃える図柄が浮かび上がる。
裏にはペンタゴンが燃える図柄が見える。
さらに、別の折り方をするとウサマ・ビンラディンを表す「OSAMA」の文字列が現れる。
20は「9+11」である。よって、20ドル札は9・11を予想していたのだ! 

 続いて彼はタバコのマルボロを出す。
パッケージには「K」に見える図柄が三つ。
これは白人至上主義団体のKKK(クー・クラックス・クラン)を表す。箱を180度ひっくり返し、Marlboroの文字列を上半分隠すと、Mの縦線部分2本が出てきて、これは木につるされる黒人を表すそうです。
lとbは地面に立つ白人だと言います。
続いて「しかもだね、この真ん中に2本脚で立つ2頭の馬の脚部分の空白は白い頭巾のように見え、これはKKKの頭巾なのですよキミィ!」

 私はすっかり彼の漫談というかプレゼンのとりこになり、ゾワッとするとともに、この話を誰かにしたくなってしまったのでした。
まあ冷静になると後付けでうまい話を誰かが作りそれを彼が紹介した、ということだと思いますが。
ハワイの「青い壁」については、アニメ「ザ・シンプソンズ」で火事が発生した後、青いモノだけが燃えずに残っていたシーンがベースにあり、ハワイで焼け残った青い壁を関連づけたということでしょう。

 陰謀論といえば、2018年には元号を巡り日本でも発生しました。
当時、各メディアは元号を予想する企画を展開していましたが、歴史学者らが「安」の文字を挙げるわけです。
さらに「年号ワイン.com」というサイトが新元号を予想するキャンペーンを行ったところ、トップ10では1位の「安永」に始まり「安」は6件入りました。
すると、反安倍政権派が「独裁者の安倍晋三に対する忖度だ!」とネットで大騒ぎ。

 結局「令和」になりましたが、これに対しても「国民はアベの命令を聞け、ということか!」とまた不満が噴出。
アベ憎しでもそりゃこじつけでしょう、と私もこの騒動に便乗。
ツイッターで「令和はローマ字でREIWA。これはReturn to the Era of Imperialism With Abe、を意味する。
アベと共に帝国主義の時代に戻ろう、ということだ」と書きました。

 当然フザけて書いたのですが、これがまさかのネットニュースに掲載されるというトホホな事態を思い出しました。

「週刊新潮」2024年12月26日号 掲載
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【ゆく年くる年】年末はどう過ごす? 「カウントダウンする」or「いつの間にか」意見続々

【ゆく年くる年】年末はどう過ごす? 「カウントダウンする」or「いつの間にか」意見続々
12/29(日) ラジトピ ラジオ関西トピックス

 お笑い芸人・はるかぜに告ぐ(一色といろ・とんず)が、パーソナリティーをつとめるラジオ番組のオンエア中にアンケートを実施。
X(旧:Twitter)のアンケート機能で、年末は「カウントダウンする派」か「いつの間にか年越し派」のどちらかを調査した。

 といろは、「カウントダウンする派」と回答。
「もともと、アイドルの方々が(カウントダウンの)テレビやってたじゃないですか。あれ毎年見てましたから」と、テレビ番組に合わせてカウントダウンを楽しんでいたことを明かした。

 一方のとんずは、
「逆にテレビをぜんぶ消して、カウントダウンせえへん」そうで、いつの間にか年を越しているとのこと。
「年越しで『わ〜!』となる気持ちがわからんねん」とも話し、年越しに特別感を得られないのだと説明した。

 そんなとんずは初詣にも行かないそうで、「何に並んでんねん、あれ。あんなん『日常から行きや』ってなる」と否定的。「人混みが苦手なためそう感じるのかもしれない」と自己分析しつつ、“いつの間にか年越し派”の心情を吐露した。

 アンケート結果は番組終盤に発表。523票の回答があり、「カウントダウンする派」が68パーセント、「いつの間にか年越し派」が32パーセントと、カウントダウンをする人が多数を占める結果となった。

「カウントダウンする派」からは、「あけおめのタイミングでわんこを抱っこしてお祝いしたい」「地元で集まってカウントダウン」「年越しの瞬間、手をつないで飛ぶ」などの楽しげな年末年始の様子がうかがえるものから、「お腹を壊してトイレでカウントダウンした」という、つらそうな体験談も寄せられた。

「いつの間にか年越し派」の人たちからは、「22時ぐらいに寝る」「気づいたら0時を回ってる」というメッセージが。
とんずと同様に、年越しというイベントに興味がなく普段通りに生活していることがわかった。

 どんな季節のイベントも、参加するかどうかは自由。それぞれ自分なりの新年を迎えられれば、それに越したことはないのではないだろうか。

※ラジオ関西『Clip火曜日』より
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大晦日にやってはいけない6つのこと……お風呂に「年またぎで入るのは縁起が悪い」のはなぜ?

大晦日にやってはいけない6つのこと……お風呂に「年またぎで入るのは縁起が悪い」のはなぜ?
12/30(月) All About

大晦日にやってはいけない、昔ながらの言い伝えがいくつかあります。時代とともに大晦日の過ごし方も変わってきていますが、知らないよりは知っておいた方が役に立つものです。

【保存版】2025年「寅の日」&「巳の日」はいつ?

◆そもそも「大晦日」とは?

「行く年来る年」……大晦日から元日を境にして、終わる年と、新しく始まる年。行く年を振り返り、来る年に思いを寄せる1年の最後の日。歳末にはよく耳にする言葉です。

「日本文化いろは事典」で「大晦日」の意味を調べると、次のように記されています。

『1年の最後の日を大晦日(おおみそか)または、大晦(おおつごもり)とも呼ばれていました。
この晦日(みそか)とは毎月の末日のことです。
一方晦(つごもり)とは、「月が隠れる日」すなわち月隠(つきごもり)がなまったもので、どちらも毎月の末日を指します。

“1年の最後の特別な末日”を表すため、末日を表す2つの言葉のそれぞれ「大」を付けて「大晦日」「大晦」と言います。』

新年を迎えるための準備も終えて、家族が全員そろい、一年の無事を祝い、新年の抱負を語り合い、のんびり夜更かしができる……。そんな大晦日を迎えるために覚えておきたい「大晦日のタブー」を6つご紹介します。

◆大晦日のタブー1:長時間、火を使用する

煮焚きすると必ず灰汁(あく)が出ます。
この「灰汁(あく)を出す」が、「悪く(あく)を出す」の意味につながっています。

かまどなど、火を使うところには、火の神としてまつられる「荒神様(家の中心にあって家人を守護する)」がおられます。大晦日に火を使うと、その「荒神様」は怒ってしまいます。といっても火を使わないと年越しそばも食べることができません。火を使用するなら、長時間にならないように気を付けること。

◆大晦日のタブー2:一夜飾り

お正月飾りの代表的なものに門松、鏡餅、しめ飾りがありますが、これらのお正月飾りを大晦日に飾ることを「一夜飾り」といいます。昔から一夜飾りは縁起がよくないといわれています。

その説はいろいろあるようで、年神様をお迎えするのに大晦日に飾りつけを行うような急ごしらえでは、神様に失礼、誠意に欠けるため、また葬式の時と同じように一夜飾りに通ずるため。

弔事の際にはお通夜の準備をした翌日に葬式を執り行い、その日に飾り物を全てを取り外すため、それを連想させて縁起が悪いといわれます。

・29日:「二重の苦」や「苦が立つ」という語呂合わせとなり縁起が悪いといわれる

・30日:旧暦では大晦日とされるために、一夜飾りと同じ意味になりますが、気にしなければ問題ないでしょう。

・31日:一夜飾り

◆大晦日のタブー3:餅つき

大晦日についた餅は「一夜餅」といい、一夜飾りと同じように縁起がよくないと言われています。
また29日は上述したように「二重の苦」や「苦が立つ」という語呂合わせとなり縁起が悪いとされています。餅つきも28日まで、もしくは30日に。

◆大晦日のタブー4:大掃除

「正月の事始め」として12月13日は、お正月準備のスタートの日。
まず「すす払い」から始めます。新しい年神様をお迎えして、神棚や仏壇を清める信仰的な行事。昔は仕事を休み、家族全員一致団結して行っていました。現代では日程にこだわらず、大掃除を兼ねて年末に行うのが一般的です。

しかし大晦日に忙しく大掃除をしていると年神(としがみ)様という神様が、福を持って家を訪ねてきてくれません。
大晦日は1年の最終日。そして年神様をお迎えする日なのです。
それなのに掃除をして追い払うなんて、もってのほか! 福を払いのけてはいけませんね。掃除するなら軽くささっと、早めに済ませておきましょう。

◆大晦日のタブー5:早く寝る

大晦日の夜は眠らずに過ごすべきとされ、もし禁を破れば白髪になるとかしわがふえるという言い伝えがあります。
大晦日の夜は、訪れた年神に侍座すべき時と考えられていたからです。
神社に年籠りして夜を明かす例もありますが、現在では元旦の未明に参詣するように変わってしまっています。

年越しには火を欠かせないとする考えもあり、今では神社の境内で火をたいて新年を迎えています。

※出典:株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

◆大晦日のタブー6:年またぎのお風呂

日本では大晦日にお風呂に入る習慣を「年の湯」といい、一年の汚れを落とし、お湯につかりながら今年一年を振り返り新年を迎えます。
心身ともにリフレッシュできますね。
しかし住む地域によって「大晦日にお風呂に入るのは縁起が悪い」という言い伝えがあります。
新年を迎える時に福を洗い流してしまう恐れがあるのだからです。

また、新年を迎える時間帯は避けるといいとされています。
何の根拠もありませんが、住む地域によって昔からの言い伝えがあるようです。

中山 みゆき(冠婚葬祭ガイド)
posted by 小だぬき at 01:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする