2025年03月03日

春の疲労・だるさの正体「自律神経の乱れ」対策5つ

春の疲労・だるさの正体「自律神経の乱れ」対策5つ
問題は「急性ストレスの慢性化」防ぐ方法とは?
<2025/03/02>
君塚 靖 : えむでぶ倶楽部ニュース編集部 記者

環境が変わることが多い春は自律神経の乱れに注意だ

心臓や胃腸の動き、体温、血圧、発汗などは、ヒトの意識とは無関係にコントロールされており、この調節を担っているのが自律神経だ。

そして、ヒトは疲れてくると自律神経系に変化が生じやすく、特に春先は要注意だという。
どんな対策が必要か、自律神経に詳しい倉恒弘彦氏(大阪公立大学医学部代謝内分泌病態内科学客員教授)に話を聞いた。

春先に自律神経が乱れやすい訳

自律神経が、文字通り「失調」した状態となる自律神経失調症とは、脳が受けたストレスが原因で自律神経のバランスが崩れ、内臓が円滑に機能しなくなった状態を指す。

疲れやすい、動悸、立ちくらみ、発汗、血圧上昇(変動)、下痢や便秘、片頭痛、肩こり、手足の冷えなど、さまざまな症状が表れる。

春先は入社や入学、異動などで環境が変わることが多いが、このような環境変化にうまく適応できないと、自律神経のバランスが崩れて失調症状が出てくる。
倉恒氏は「新しい環境に対応しようとする4月に症状が出やすいが、そこから遅れて5月の連休明けに症状が出ることもある。いわゆる五月病と呼ばれるものだ」と話す。

症状が出てから対策をとることも大事だが、今から環境の変化で起こる問題を頭に入れ、事前対策をとったほうがいい。

正常→重症化のメカニズム

自律神経には交感神経と副交感神経がある。

交感神経の活動が高まると心拍数は早くなり、血管が収縮して血圧が上昇する一方、胃腸の動きはゆるやかになる。
対して、副交感神経の活動が高まると体は逆の方向に働く。

簡単に説明すると、環境にもっとも適した状態が@正常で、自律神経が良好に保たれている状態を示す。

そして、環境が変わると交感神経の活動が活発になり、緊張状態に陥る。これがAの急性ストレスがかかった状態だ。
環境が変わったときだけでなく、職場で過剰労働をさせられたり、人間関係でトラブったりしたりしたときも同じことが起こる。

「ただ、急性ストレスは体の正常な反応で、帰宅してリラックス状態になれば@に戻る。@とAを行き来するのであれば、まったく問題ありません」(倉恒氏)

ところが、自宅にいてもリラックスができない状態が続くと、Bの慢性ストレスへと移行する。
これは交感神経、副交感神経に関係なく、自律神経の活動そのものが低下した状態だ。

「仕事を家に持ち帰って続けていたり、すごくストレスを感じる翌日のことを考えたりすると、家でも急性ストレス状態のままでリラックスできない。その状態が続くと慢性ストレスへと移行してしまう」(倉恒氏)

その倉恒氏が「もっとも重い状態」と指摘するのは、Cの疲弊状態だ。

一見、リラックスできているようだが、自律神経の活動が低下して正常な動きができなくなっている状態で、出社できなくなったり、仕事に集中できなくなって単純なミスが続いたり、夜眠れなくなったり、食欲がなくなったり……といった、まさに“うつ”のような症状が表れる。

したがってCに行かないようにすることが、自律神経の健康を保つために必要になる。
倉恒氏によると、Cに進まないための対策として、以下の点を挙げる。

・アロマ、ストレッチなどでリラックスする

・意識的に休養(休息)を取る

・十分な睡眠を取る

・活動のONとOFFをしっかりする

・朝は朝日を浴び、朝食をきちんと摂る

特に大切なのは「朝」の過ごし方

「大事なのは、自分の体調に合わせたケアをすること。
例えば運動は自律神経の正常化に役立つが、体調によってはやりすぎがかえって逆効果になる。
同じく、リラックス法も合う・合わないがあるので、自分が心地よいと思う方法を探してやってほしい」(倉恒氏)

休息にもなるのでリラックスすることは大事だが、ただだらだらと過ごすのではなく、ON・OFFの切り替えは必要だ。

「特に大切なのは朝。起きたら交感神経の駆動をかけたほうがいい。
目覚めたらカーテンを開けて朝日を浴びる。その後、熱いシャワーを2〜3分浴びればさらにスイッチが入る。朝食も欠かさないでほしい」(倉恒氏)

こうしたケアをしても、Cの状態から抜け出せない場合は、医療機関で診てもらったほうがいいとのこと。
また、すでに病院にかかっている人は、運動や日々の過ごし方について、かかりつけ医に相談したうえで実践したほうがいいそうだ。

ところで、自分が@からCのどの状態にいるのか。それを「見える化」する方法もある。

自律神経の状態を調べる手法は複数あり、倉恒氏が患者に勧めているのは「心拍変動解析」というもの。心拍計のデータを活用し、心拍間隔の周波数を分析する。保険がきかないため自費になるが、調べてくれる医療機関もある。

また最近では、手軽に計測できるスマホアプリも登場している。

ただ、倉恒氏によると、こうした機器を使わなくても、心拍数の変化を見れば、自律神経バランスの状態がある程度はわかるという。

例えば、Aの急性ストレスとBの慢性ストレスでは、心拍数が上がっていることが多い。
個人差はあるが、自宅で安静にしているときでも100を超えている場合は要注意だ。

自律神経と「睡眠の質」の関係

倉恒氏は、慢性疲労の病因・病態の解明や診断指針を作成する厚労省の研究班の代表を長年、務めてきた。
現在も、大阪公立大学医学部附属病院生活習慣病・糖尿病センターの慢性疲労外来で、診療を続けている。

その両者の経験から、「睡眠」の重要性を感じているという。

自律神経活動と、睡眠効率(中途覚醒がどの程度あったかなどの指標)の間には、正の相関関係が確認されている。
倉恒氏は、「副交感神経活動が活発になっていると、睡眠は良質になる」と指摘する。

自律神経を正常に保つためには、良質な睡眠でいかにリラックスできるかが重要だ。

寝る前にはスマホを使わないようにして、照明を落として交感神経を刺激しないようにする。
朝は、先に挙げたとおり朝日を浴び、朝食を摂ることで交感神経の活動が活発になり始める。

自律神経バランスと自律神経活動量は、24時間で同じ変動を繰り返している。
心身が健康状態にある人の自律神経バランスをみると、日中は交感神経が活性化し、寝ている間は収まっている。

対して、副交感神経は睡眠中に活動が活発になり、リラックスしている状態が続いている。

出口の見えないストレスを感じたら

先に自律神経の健康の保つための、日常生活のケアのポイントを伝えたが、そもそも「問題(ストレス)になっている環境」を変えなければ、なにも始まらない。

だが、職場での人間関係や、労働環境、仕事量、上司・部下との関係などが原因で生じるストレスは、個人の努力では解決しにくい。

従業員が50人以上いる事業所では毎年1回、ストレスチェックを実施することが義務付けられている。
ストレスチェックで「高ストレス群」と判定され、メンタルヘルス不調の兆候が強く確認された場合、産業医と面談することが推奨されている。

ストレスの出口が見えればいいが、先が見通せない場合は、こうした制度を利用して、環境を変えていくことも大事だ。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする