2025年03月04日

【元銀行員が教える】役所に死亡届を出したら口座は即凍結!?ATMで勝手にお金を引き出すとバレる?相続で知っておきたい「預金払戻し制度」

【元銀行員が教える】役所に死亡届を出したら口座は即凍結!?ATMで勝手にお金を引き出すとバレる?相続で知っておきたい「預金払戻し制度」
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2025年1月20日に総務省統計局から公表された「人口推計(2024年(令和6年)8月確定値。2025年(令和7年)1月概算値)(2025年1月20日公表)」によると、2025年1月1日現在、総人口は1億2359万人で、前年同月に比べて56万人減っています。
一方、65歳以上の人口は増加しており、特に75歳以上の人口は前年同月より約69万人増えています。

高齢者の増加に伴い、今後「相続」に関する問題が増えると予想されます。

本記事では、銀行口座の名義人が死亡した際の口座凍結や預金払戻し制度、口座から預金を引き出すリスクについて解説します

役所に死亡届を提出しただけで銀行口座は即凍結されない

役所に死亡届を提出しただけでは、銀行口座がすぐに凍結されるわけではありません。
実際には、親族が銀行に連絡し「口座の名義人が死亡した」と伝えた時点で口座が凍結されます。

稀なケースとして、銀行関係者が新聞の訃報や葬儀情報から名義人の死亡を知り、親族に確認して口座を凍結することもあります。

また、同じ銀行の複数の支店で取引がある場合、一度の手続きで他の支店の口座も含めて口座が凍結されることがあります。

ただし、名義人の死亡に関する情報は、他の銀行間で共有されないため、相続人は故人が取引していたすべての金融機関に届け出る必要があります。

預金口座が凍結されると引き出しができなくなる

銀行に死亡の連絡をすると、相続手続き完了するまで口座が凍結され、すべての入出金ができなくなります。

そのため、以下のような影響が生じます。

・亡くなる直前の入院費や葬儀費の清算ができない

・口座引き落としによる支払いが停止される

・振り込みによる受取ができなくなる

・電気、水道、ガス、携帯電話料金の未払いにより、延滞料の発生やライフラインが止まる可能性がある

このような影響を回避するため、事前の対策が必要です。


口座凍結前に勝手にATMで預金を引き出すリスク

銀行に死亡の届出をしない限り、口座は使用できます。

そのため、銀行へ連絡する前にATMで預金を引き出そうと考える方もいるかもしれません。

しかし、以下のようなリスクやトラブルが起こる可能性があります。

親族間でトラブルが起こる可能性がある

相続手続きをすることなく、凍結前に口座から預金を引き出す行為は、他の相続人から「不正行為」とみなされることがあります。

引き出された預金は「相続財産」として、遺産分割協議の対象となるものです。
そのため、無断で引き出すと、親族間の不信感を招き、深刻なトラブルに発展することもあります。

相続放棄ができなくなる可能性

相続では、故人の財産(プラス)の負債(マイナス)の両方を承継します。

借金が多額の場合、家庭裁判所に申述すれば「相続放棄」も可能です。

しかし、口座凍結前に名義人以外が預金を引き出すと、財産も負債も受け継ぐ「単純承認」とみなされ、相続放棄や限定承認の手続きができなくなる可能性があります。

そのため、相続財産の内容が不明な状態で預金を引き出すのは避けた方が賢明です。

しかし、葬儀費や故人の医療費など、手続きのためにまとまった資金が必要になることがあります。

次の章では、口座凍結後でも預金の一部を引き出せる「預金払戻し制度」について解説します。

「預金払戻し制度」の利用で預金の一部払い出し制度を利用する

「預金払戻し制度」とは、相続発生後に口座が凍結されても、家庭裁判所の判断を経ずに相続人が一定額を引き出せる制度です。
2019年7月に施行された「改正相続法」により新設されました。

【単独で払戻しができる金額】
払戻し可能額は、以下の計算式で決まります。

・相続開始時の預金額×1/3×払戻しをする相続人の法定相続分

ただし、1つの金融機関から払戻しが受けられるのは150万円までです。

制度新設の背景

相続が発生すると、以下のような問題が生じていました。

・口座が凍結され、預金が引き出せない

・遺産分割協議に時間がかかり、相続手続きが長引く

・葬儀費や生活費の立替額が大きく、喪主の負担が増える

このような問題を解決するため、一定額の預金を相続人が単独で引き出せるようになりました。

なお、この制度により払い戻された預金は、後日の遺産分割協議において調整されます。

「預金払戻し制度」が利用できるかどうかは、金融機関によって異なります。
事前に取引銀行へ確認しておきましょう。

相続に関するトラブルを防ぐために生前から対策をしておきましょう

相続が発生すると、口座の凍結や手続きの負担が大きくなります。

家族と話し合い、必要な制度の確認をしておきましょう。

生前から対策することで、相続後のトラブルを防ぎ、安心して手続きを進められます。


参考資料
・総務省統計局「人口推計(2024年(令和6年)8月確定値、2025年(令和7年)1月概算値)(2025年1月20日公表)」
・法務省「相続に関するルールが大きく変わります」
・一般社団法人全国銀行協会「ご存知ですか?遺産分割前の相続預金の払戻し制度」
・裁判所「司法統計年報」
・e-GOV法令検索「民法」
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする