@「人間の壁」 石川達三著
昭和30年代の学校の予算不足から始まった教員の「勤務評定」での闘いを 現場教員の視点から教員の生活・教員の組合活動・勤務評定反対の闘いを描いた作品。
観念的に日教組の是非を声高にいう前に 読んで欲しい本。当時の貧しさからは脱却していても 教材備品の現場要請と違う配分や特定研修、免許更新制などの多忙化で 校内の教員の置かれた立場は、現在の方が悪化しているかもしれません。
A「人間の条件」五味川純平著
戦争や朝鮮民族・中国の差別扱いに内心反対しながら、戦争政策のため自分が朝鮮・中国の捕虜、徴用工の現場監督になり 「自分の信念」と「現実の生産増強」の狭間で 良心と現実の板挟みになりながら苦悩する「梶」という人物をとおして 戦争の不合理と人間の強さ・弱さを丹念に描いた小説。
労務政策に最後まで非協力ということで 現地徴収の兵として徴集され 日本軍隊の内務班の偽善・暴力に耐え、ソ連参戦時に関東軍司令部要員はいち早く帰国したのに 前線部隊として取り残され、シベリアに抑留される。
労働者の国 ソ連邦のハズが 捕虜管理のために軍の階級での管理を行うに至り希望を喪失させられ、シベリア鉄道建設に劣悪な条件で従事させられる。
一人のリベラリストが戦争という極限状態で「いかに人間性を維持しつづけることが困難か」を問いかける巨編です。
この「人間の壁」「人間の条件」の一個人の視点での作品が その後の読書でも「なぜ、どうして」と考える基礎を作ってくれたと思っています。
もう古典に入る小説ですが、一気に読ませる筆力のある作品です。
何かの折り、目に触れる機会があれば 是非読んでいただきたいな・・・と思うのです。
2009年08月06日
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