適度に休憩、集中力維持=當瀬規嗣
毎日新聞 2011年12月18日 東京朝刊
根を詰めて仕事や家事、勉強などをこなすと、一息つきたくなるものです。
確かに仕事に熱中して時間を忘れるようなこともありますが、そんな時にフッと長い時間がたっていたことに気付くと、休憩を取りたくなるものです。
つまり、人の集中力というものは、案外長続きしないということです。しかし、集中力が途切れても、何かの都合で仕事を続けなければならないことも多いと思います。いや、ほとんどそうだと思います。
でも一旦集中力が途切れてしまった状態では、仕事を続けても効率はがた落ちになります。タイプミスしたり、何度も同じところを読んでしまったり……作業の場合は手元が狂って危険な目に遭う可能性すらあります。
本当は集中力が途切れたら休憩を入れるべきなのです。
休憩をすれば、また集中力がよみがえります。そうすれば、集中力が途切れたままで仕事をしたときよりも、はるかに効率が良くなって、休憩時間を勘定に入れても、仕事は段違いにはかどったことになります。
集中力の途切れは、「脳の疲労」とたとえることができます。脳が疲労すると思考が進まなくなり、ものを思い出す力が減退し、周囲が気になって集中力がなくなります。
至極当たり前のことをいっているのですが、脳の疲労が起こることは昔から知られています。
ですから、学校の授業は時間割で行われます。
小学校は45分くらい、中学校や高校で50分、大学では90分授業が主流です。これぐらいの時間が集中力持続の限界だということです。
教壇から見ていると授業の後半には集中力の途切れた学生がたくさん……。そこで休み時間を入れて気分転換、脳をリフレッシュします。
ですから、本当は2時限連続で同じ教師の授業を行うのは、効率を悪くするばかりなのです。
場合によっては集中講義と称して朝から晩まで同じ教科の講義をする学校もありますが、講義は集中しても集中力は完全に消失してしまうのです。授業をやったというアリバイ作りに過ぎません(反省……)。
そういえば、小学校の頃は国語、算数、理科、社会……同じ教科を2時間連続でやることはほとんどありませんでしたね。
適度な休憩と気分転換は、脳の集中力を維持するための秘訣(ひけつ)です。
(とうせ・のりつぐ=札幌医科大教授)