2012年01月10日

励ましの言葉:困難抱える人に接するとき、「がんばれ」押しつけないで

励ましの言葉:困難抱える人に接するとき、
「がんばれ」押しつけないで
毎日新聞 2012年1月10日 東京朝刊

 東日本大震災に見舞われた昨年は、人と人との絆が見直された年でもあった。

温かい励ましの声があふれる一方、「がんばれ」「元気を出して」などの言葉が相手には負担になることもある。

身の回りで困難を抱える人と接する際、何を心掛けたらいいのか。【丹野恒一】

◇「前向き」強調は重荷に/立ち上がれない人支えて

 仙台市若林区の和地(わち)理恵さん(55)は震災で一人息子の克倫(かつのり)さん(当時31歳)を亡くした。消防団員として住民の避難誘導にあたり、津波に襲われた。

地域のお年寄りから「あなたの息子のおかげで助かった」と言われても、素直に喜べなかった。いまも「時間は止まったまま」。街中で同じ背格好の若者を見ると、心をかき乱される。


 「周りには『いつまでもくよくよしていてはいけない』と動き出した人もいるが、私はその流れについていけない」。久しぶりに会った友人に「元気になったね」と言われると、「そうじゃない」とも言えず、作り笑いを浮かべてしまう。


 身内を亡くしても気丈に振る舞う被災者をテレビや新聞で見ると、違和感がある。「美化し過ぎてゆがめている気がする。みな、夜になれば泣くこともあるはず。がんばる被災地というイメージが固定化されると、一部の被災者には重荷になる」と懸念する。


 月に2回、震災で子どもや夫を亡くした女性同士が集まる会に参加している。本当の自分をさらけ出せるのはそこだけ。「すべての人に理解してもらおうとは思いません」


 上智大グリーフケア研究所長でシスターでもある高木慶子さんは、震災2カ月目から被災各地で遺族らの悲しみを和らげる傾聴活動をしている。「元の元気を取り戻せればいいが、現実にそうなれるとは限らない。震災から時間がたち、個人差がはっきりしてきた」と感じるという。


 「周りの人は、立ち直ってほしいというある種の願望から、過剰に励ましの言葉を押しつけてしまいがち。

大きな災害があった時だからこそ、自覚しなくてはならない」と相手をせかさないよう呼びかける。

     *


 「障害があってもがんばって」−−ダウン症の長女(15)を育てる東京都内の母親(55)は、こんな言葉に引っ掛かりを感じてきた。障害のマイナスイメージを前提にしているからだ。

インターネット上で「キラキラ差別」と命名されているのを知り、昨夏に自身のブログで「名前が付けられただけでも気持ちがおさまる」と記した。


 「キラキラ差別」は、「負けないで」や「希望を持って」など輝くような明るい激励が、逆に相手を傷つけてしまうという意味で使われている。

母親は「娘は歩くのにも会話をするのにも、他人の何倍も疲れ、びくびく恐れながら努力している。

 私は軽々しく娘にがんばれとは言えない」。日ごろ面倒を見てくれる学校教諭からの励ましは、娘   の力になっているとも感じるが、「同じ言葉でも高い目線から言われると傷つくことがある」という。


 先天性多発性関節拘縮症で生まれつき手足が使えない漫談家のホーキング青山さんは「災害でも障害でも、克服できた人や苦境に立ち向かっている人にばかり光が当たる。

 本当に手を差し伸べるべきは、立ち上がるすべを持たず、生きる張り合いをなくし、投げやりになっているような人たち」と指摘する。


 青山さんは著書「差別をしよう!」(河出書房新社)で、他人と自分の違いを認めることから社会を変えていこうと訴えている。

「障害や悲しみを『乗り越える』という言葉が世の中で安易に使われすぎている。

それができるのなら、私は今ごろ自分の足で歩いているはず」とし、被災地の人たちには「立ち上がりたくても立ち上がれない人を責める権利など誰にもない。

立ち上がらない自由があっていい。すくなくとも『まだいいよ』と言いたい」と力を込めて語る。

◇悲しみ突き詰めることが癒やしに

 心理学者で臨床心理士の植木理恵・慶応大講師は著書「ネガティブな自分をゆるす本」(大和出版)で、ポジティブシンキングにとらわれない生き方を勧めている。

心理学の「皮肉過程理論」では「意識的に何かを忘れようとすると、逆になぜそうしようとしているのかを強く意識してしまう」とされる。

「むしろ悲しみの原因をとことん考え続けることが、徐々にでも癒やしにつながっていくと思う。焦りは自己嫌悪やストレスのもと。

初七日、四十九日、一周忌なども、遺族に弔いの機会を与え、気持ちを徐々に整理させる意味合いがあるのだろう」と指摘した。


 一方、「がんばれ」などの激励はカウンセリングでは禁句ともされるが、植木さんは「私の臨床経験では、どこかのタイミングで少しずつ声をかけ、背中を押してあげることも大切だと感じる」と話した。

posted by 小だぬき at 07:52| Comment(0) | TrackBack(0) | うつ病について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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