インフルエンザが昨季を上回るペースで広がっている。
今季はA香港型が主流で、患者数は年少者を中心に170万人を超えた。予防への関心が高まっているが、ワクチンでは発症を完全に防げないことも理解した上で、手洗いなどの基本を守ることが必要だ。
東京都江東区の清澄白河こどもクリニックでは、1月末から発熱などを訴えて受診する患者が急増。インフルエンザと診断されるのは1日に20人前後だ。
38度を超える熱を出した長男(7)を連れてきた母親(38)は「生後7か月の妹にうつさないようにしないと……」と心配していた。
今季のインフルエンザワクチンは、A香港型とB型、3年前に発生した「インフルエンザ(H1N1)2009」の3種類が含まれる混合ワクチンで、現在の流行に対応している。
だが、ワクチンは肺や気管支の免疫力を高めることはできても、主な感染経路となる喉や鼻などの粘膜には作用しないとされる。
北里生命科学研究所の中山哲夫所長(ワクチン学)は「ワクチンは肺炎などの重症化を抑える作用はあるが、ウイルスの侵入を防ぐのは難しい。過信せず、外出後の手洗いなどの予防策を心がけてほしい」と話す。
手洗いは、せっけんと流水で15秒以上かけて洗う。市販の速乾性アルコール消毒剤(濃度60〜80%)も、ウイルスを死滅させる力がある。乾燥でウイルスが活性化しやすいため、厚生労働省は加湿器で適度な湿度を保つことも勧めている。
うがいの効果については、専門家の間でも意見は分かれる。インフルエンザに詳しいけいゆう病院(横浜市)小児科の菅谷憲夫医師は「うがいにインフルエンザウイルスを除去する効果はないが、喉の粘膜を潤して感染しにくくする利点はある」という考えだ。
治療には、ウイルスの増殖を抑えるタミフル(飲み薬)、リレンザ、イナビル(吸入薬)などの抗インフルエンザ薬が使われる。
早ければ1日で熱が下がるが、発症から最長1週間程度はウイルスが体内に残り、せきやくしゃみなどのしぶきで排出する。このため、熱が下がってすぐに学校や職場に行くと、感染を広げてしまう恐れがある。
菅谷医師は「熱が下がっても2〜3日間は外出を避け、静養して」と話す。