2012年03月03日

“かけがえのない記録”

3月3日付 編集手帳
2012年3月3日01時26分 読売新聞

 豪雨で堤防が決壊し、いままさに流されようとしている自宅に、一家は忘れ物を取りに戻る。制止する警官に母親が言う。「2冊でも3冊でも、アルバムをとって来たいんです。家族の記録なんです。かけがえがないんです…

◆かつて放送された山田太一さん脚本のテレビドラマ『岸辺のアルバム』最終回の一場面である。家族のかたちが壊れかける物語の筋はたとえ知らずとも、“かけがえのない記録”という言葉には誰もがうなずくだろう

◆震災で肉親を亡くし、せめて思い出だけでもと、がれきから家族のアルバムを掘り出す人の姿を、幾度、目にしたことか
◆この季節になると思い出す詩に、吉野弘さんの『一枚の写真』がある。雛(ひな)飾りの前で、幼い姉妹がおめかしをして座っている。〈この写真のシャッターを押したのは/多分、お父さまだが/お父さまの指に指を重ねて/同時にシャッターを押したものがいる/その名は「幸福」〉

◆きょうも、どこかの屋根の下で“かけがえのない記録”が生まれることだろう。指に指を重ねてくれる者のありがたさが身にしみるに違いない。いつもの年にまして。

posted by 小だぬき at 13:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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