2012年03月09日

香山リカのココロの万華鏡:あれから1年

香山リカのココロの万華鏡:あれから1年

毎日新聞 2012年3月6日 東京地方版

大震災から間もなく1年。


 あなたにとって、どんな1年だっただろうか。
目の前の問題への対処や余震や新たな災害への備えで手いっぱい。ゆっくり自分自身に向き合ったり、先のことを考えたりする余裕など、とてもなかった。そんな人も多いのではないだろうか。


 震災が起きた直後、被災地以外の場所で、これまでの社会のあり方や自分の生き方を振り返り、反省や見なおしを促す声が上がった。

「モノやお金ばかり大切にして、人と人とのつながりを犠牲にしてしまったのではないか」「いつのまにか自然までも制御できる、とおごった気持ちになっていたのではないか」
「大災害でいちばん苦しむのは子ども、高齢者、病気の人などの弱者だ。日ごろからその人たちにもやさしい社会であるべきだ」


 家族や地域を大切に、お互いに思いやりを忘れずに生きていこう。誰もがそんな気持ちになったはずだ。


 しかし、現実はそう甘くなかった。グローバル社会での競争はますます激しくなるばかり。国内の不況は終わりが見えず、若い人の就職すらむずかしいのに、弱い人たちに手を差しのべることなんてできない。


 昨年の夏は節電に協力していろいろがまんしたが、いつまでも電力が使えないのは困る。モノやお金より人のほうが大切だが、生活水準が下がってもよいというわけではない……。いつのまにか私たちは、またこんな気持ちに戻っているのではないだろうか。


 もちろん「喉元すぎれば熱さ忘れる」というのは、悪いことばかりではない。
つらいこと、イヤなことも時間とともに記憶が薄れるからこそ、私たちは日々を生きていくことができるのだ。

とはいえ、震災後に「よし、これからは家族や友人など身近な人を大切に生きよう」「“もっともっと”という欲望は抑えなければならない」とそれぞれが心に決めたことは、忘れてはならないのではないだろうか


 東京の診察室には、企業で残業に追われて心身ともにボロボロになったビジネスマン、交際していた人にお金をだまし取られて生きる希望を失った女性などがやって来る。


 大震災後の日々、誰もが自分の心に問いかけたはずだ。「私にとって、本当に大切なものはなんだろう?」。あれから1年がたったいま、それぞれがもう一度、考えてみたい。

posted by 小だぬき at 08:25| Comment(0) | TrackBack(0) | うつ病について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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