2012年03月18日

年金「積立制」の検討を急げ

これが言いたい:年金「積立制」の検討を急げ
毎日新聞 2012年3月15日 東京朝刊
                         学習院大教授・鈴木亘

◇将来の破綻から目を背けた議論は「談合」だ


 年金改革に関する与野党の最近の議論は実質的な「談合」に等しい。
現行の年金制度の維持は不可能であるという現実から目を背け、改革をまたも先送りしようとする意味においてである。


 そもそも「今の制度で大丈夫か」をどう分析するかが極めて重要だ。旧自公政権が今後100年間の年金財政維持を確約した「年金100年安心プラン」は、リーマン・ショックや東日本大震災等によって、もはや破綻状態にあることは明らかだ。


 5年前の06年度に厚生年金と国民年金を合わせて約150兆円存在した積立金は、11年度末には110兆円近くまで取り崩される。この40兆円もの取り崩しは全く「想定外」のものである。このままのペースで進めば、28年度には積立金が枯渇する。仮に景気が潜在成長率に急回復しても、筆者の試算では30年代には枯渇が避けられない。


 しかし、政府の現状認識は極めて甘い。元々100年安心プランを不可能と批判して政権交代を果たした民主党が、なぜか今になって「100年安心」と強弁している。


 その根拠は、今から3年以上前に厚生労働省が行った財政検証という年金の健康診断である。
厚労省はこの時、再び100年安心との診断結果を下したが、これはリーマン・ショックが起きる前の統計に基づく。積立金の運用利回りを4・1%もの高率に設定する「粉飾決算」も行った。


 野田政権がこの粉飾健診の上にあぐらをかく限り、論理的に改革は必要無いので、最低保障年金等を提案してもまるで説得力を持たない。


 「税と社会保障の一体改革」も支給開始年齢の引き上げ、高所得者の年金減額、マクロ経済スライドの即時発動が葬り去られ、バラマキ案ばかり残った。自公両党もそもそも自分たちの100年安心プランを批判できる立場にない。


 これを年金談合と言わずして何と呼ぶべきか。与野党とも厚労省の健診結果を疑いつつ、3年間も新たな健診を避け続けている。
与野党のほおかむりをいいことに厚労省も動かない国民不在の「三すくみ」状態の放置である。


 そんな中、橋下徹大阪市長率いる大阪維新の会が次期衆院選に向けた公約案で大胆な年金改革案を打ち出した。
詳細な制度設計はこれからだが、現行の年金制度はいったん清算し、積み立て方
 式に移行したうえで、高所得者には「掛け捨て」を迫るという。正しい現状認識と方向性だ。
特に掛け捨てに早くも批判が出ているようだ。
だが、公的年金の役割を老後に貧困に陥らないための「保険」と考えれば、幸運にも貯金を十分蓄えられた高齢者には、少なくとも基礎年金分は放棄してもらってよい。所得比例部分は、退職一時金の形で一部を返却することも一案だ。


 また、積み立て方式には移行のためのコストが高すぎて非現実的という指摘がある。しかし、そのコストを100年、200年かけて少しずつ返済する方式にすれば、現行の賦課方式よりも現役、将来世代の負担を少なくできる。


 いずれにせよ、公約案への批判の多くが現行制度が安心という前提に立つ限り、本質的に間違っている。
我々は現状を放置し近い将来の制度終了を選ぶのか、痛み覚悟で今すぐ改革し、将来も維持可能な年金制度にするかの、二者択一を迫られているのだ。


 維新の会が提起した「積み立て、掛け捨て」案が軸となり、既存政党の年金談合を突破する議論が沸き起こることを期待している。

posted by 小だぬき at 16:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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