毎日新聞 2012年08月10日 02時31分
小学校6年、中学3年を対象に抽出実施した今年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果が出た。
今回は07年度以来続けている国語、算数・数学の2教科に初めて理科を加え、3教科で行われた。
理科は、他の2教科同様に応用が苦手な傾向が表れた。
質問調査でも、理科が嫌い、授業がわからないという回答が中学でぐんと増えた。
文部科学省は「理科離れ」といわれる実情が、この調査で「確認」できたという。
「確認」が成果であっては、いかにも心もとない。
子供たちの理科離れ、理科嫌いといった傾向は既にさまざまな国内外の調査などで明らかだ。肝心なのは、「離れ」させない、きめ細かな対策の方だ。
確かに工夫された良問もあり、手間をかけたテストだ。
しかし今のところ、いわば学力問題の“症状”を整理したにとどまってはいないか。
来年は全校調査(悉皆(しっかい)調査)が行われる。
10年度に抽出に移行した際、数年に1度は全校調査をやるとしていたものだが、必要があるだろうか。
全体の理解度や得手不得手の傾向を的確につかみ、それを参考に各現場で指導法の改善を図るには、抽出で十分だという指摘がある。
全校調査は、自治体によっては地域間、学校間で正答率の順位競争をもたらしかねない。
現に過去の全校調査では一部でそれが表れた。
本来このテストは、事後の活用による授業改善が主眼のはずだ。だが、このテストの活用について、例えば中学ではこの4年、2〜3割が「ほとんどしていない」と答えている。
教室外でも職務負担が大きい教員に、新学習指導要領で教える内容を増やし、さらに学力テストを基に指導改善を求めても容易ではない。
学校現場が必要なのは改善のポイント、具体的な手法である。
国語、算数・数学で「知識問題はできても、応用が苦手」といった結果を毎年のように解説するより、「じゃ、どうする」にもっと集中的に力点を置いた施策を促進すべきだろう。
文科省は9月、全国都道府県教育委員会の学力テスト担当者らを集め、テストの授業活用法を説くという。その際、現場側の意見や要望もぜひ集約してほしい。
これまでのテストは状況を「確認」こそすれ、新傾向を浮かび上がらせたとはいい難い。その意味でも、テストは実施するにしても間隔を空け、抽出方式で足りるだろう。
毎年要する巨費は、読解力や理科教育の拡充など、もっと具体的で手厚い施策に回してはどうか。