毎日新聞 2012年08月28日 東京地方版
学校は夏休みももうすぐ終わりに近づいているが、北海道など一部の地域では、すでに2学期が始まっているところもある。
大人としてはつい、2学期が始まって学校で再会を喜びあう子どもたちの無邪気な笑顔を想像したくなる。
きっと子どもたちは、「夏休みの遊びもそろそろ飽きたし、勉強もいいね!」などと言ったり、苦手だった給食さえ、なんとなくおいしく感じているのではないだろうか、などとも考えたくなる。
しかし、実際にはそんな大人にとっての“理想の子ども”はそう多くないはずだ。
オリンピックなどもあり、すっかり昼と夜とが逆転した生活を送っていた子どもたちは、なかなか学校中心のリズムについて行けず、授業中に居眠りをしたりしているかもしれない。
「遊びに飽きた」どころか、夏休み中は塾の夏期講習ですっかり疲れきり、もう勉強はたくさん、と思っている子どもたちもいるのではないだろうか。
そして何より、今年は「いじめ」の問題が大きくクローズアップされている。「学校に行くのがこわい」と感じている子どももいるはずだ。
いや、疲れたり恐れたりしているのは、子どもたちだけではない。
今は学校の先生たちも、夏休みとはいえ、研究会があったり学校での業務がびっしりつまっていたりして十分に自分の時間を取ることができない。
「うちのクラスには本当にいじめがないのだろうか」とあれこれ考えている先生もいるだろう。
学校ってこわいところ。疲れるところ。こんなふうに思ってしまっている子どもたちや一部の先生たちに、どうすればのびのびと2学期を送ってもらえるか。
大切なのは、この夏休みを乗り切って、また元気に2学期を迎えられたことに対して、まずは「よかったね」とお互い喜び、認め合うことなのだと思う。
「どうしてできなかったの?」「ダラダラすごしたんじゃないだろうね」などと、厳しすぎる目を子どもに向けることは、ただでさえ自信を失いがちな今の子どもたちをさらに追い詰めるだけだ。
でも、学校に戻ってきた子どもたちに「待ってたよ! さあ、楽しく2学期をすごそうね」と明るく声をかけるには、先生たちの気持ちの余裕も必要だ。
先生は大人だから、自分で自分に「うん、私も自分なりに夏休みを乗り切った」と声をかけることで、心のゆとりを作ってほしい。
暑い夏でからだも心も夏バテぎみだけれど、ゆっくり深呼吸していざ、2学期のスタート。
さわやかに歩き出したいものだ。