2012年09月27日

「私は私。私のことは私が決めたい」

香山リカのココロの万華鏡:サイコオンコロジー 
毎日新聞 2012年09月25日 東京地方版

日本サイコオンコロジー学会が主催した「精神腫瘍医研修コース」に参加してきた「サイコオンコロジー」を日本語にすると「精神腫瘍学」、どちらもなじみがない言葉だが、「がんになった患者さんや家族の心の苦しみやストレスを理解し、適切に対応する方法を研究し、実践する」という新しい心の医学の領域だ。


 研修でいちばん印象的だったのは、いろいろなケースやデータから、患者さん本人が「自分の病気や見通しについて知りたい、いろいろなことを自分で決めたい」と思っているのがわかったことだ。

 日本ではまだどうしても、「不必要な情報は本人には伏せておいたほうが」とすべてを伝えなかったり、「病気になると気持ちも弱るだろうから、むずかしいことは決めさせないように」とまわりが気をきかせたりする場合がある。
しかし
「私のことは私が決めたい」と考える人は確実に増えているようだ。

さらに、「自分で決めると治療にもプラス」ということを示唆するデータもある。

アメリカの最近の論文には、「がんになったときに、早い段階から終末期の選択肢なども含めてきちんと本人と話し合えたケースのほうが、結果的に命の期間が延びた」という報告が載っているそうなのだ。

もちろん、「患者さんが自分で考え、決められたことが、がんを消した」などというのは言いすぎだと思う。
ただ、「まだ早期なのに、“終末期になったら延命治療を望みますか?”などときくのは希望を奪い、からだにも良くないのでは」と考えるのは必ずしも正しくない、ということは言えそうだ。

 たしかに、がんに限らず重い病気になると、検査するのも治療するのも医者をはじめとした医療関係者で、本人や家族は“かやの外”に置かれる場合も少なくない。しかし、いくら病気になったとしても、「私は私。私のことは私が決めたい」という気持ちまで失う必要はないのだ。

病気になったときにも、患者さん自身になるべく意思決定してもらう。
そのためには、本人や家族の心のサポートを行える、サイコオンコロジーの知識を持った看護師、医師などの存在も大切だ。

私の医者人生もいよいよ後半から終盤にさしかかりつつあるが、重いからだの病気の人が、最後まで自分らしく生きられるためのサポートができる精神科医になりたい、と“五十の手習い”に励むつもりだ。

posted by 小だぬき at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | うつ病について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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