2012年10月23日

「権威」の落とし穴

【私説・論説室から】
「権威」の落とし穴
2012年10月22日  東京新聞


 体温計が計測不能になった状態を初めて見た。
 当時一歳の長男の熱は、四〇度を上回り計測限度を超えていた。

 異変に気付いたのは夜だ。
かかりつけの医院は開いていない。
迷わず小児医療専門の国立病院の夜間救急に向かった。
設備も整い権威ある医療機関だ。


 診察した医師は、考えられる検査をしたが診断がつかない。
最後は「検査で後遺症が残ることがある」と覚悟を求められ、脳の異常を調べる髄液検査まで受けた。
結局、発熱の原因は分からずじまいで帰宅した。


 翌日、かかりつけの開業医を受診すると「それならマイコプラズマ肺炎しかない」と言う。処方薬で高熱がうそのように下がった。


 病院の医師も懸命に診察してくれたが、開業医の知識と臨床経験に救われた。


 偽のiPS心筋移植騒動は東大やハーバード大という権威に惑わされ、メディアは真偽を確かめる思考を停止させてしまった。


 医療では大学病院を筆頭に大病院にいる医師が最も腕がいいと思いがちだ。

 だが本来、所属する医療機関の大小と医師の能力は関係ないはずだ。
 騒動で長男のこの一件を思いだした。そして反省も含め、思考停止の落とし穴を再認識させてくれた。


 診察室に入ると「お待たせして申し訳ないですね」といつも謙虚に声をかけてくれるかかりつけ医の顔を思い浮かべながら、そう実感した。 
              (鈴木 穣)

posted by 小だぬき at 09:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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