2012年10月26日

坂村健の目:ネット犯罪の本質

坂村健の目:ネット犯罪の本質
毎日新聞 2012年10月23日 東京朝刊

 ネットを普通に使っていただけのごく一般的な人たちが被害にあったパソコン(PC)遠隔操作事件への社会の関心は高い。

しかし、この事件を「ネット時代の新犯罪」として恐れるなら本質を見誤るだろう。
今回の一つの手口は「トロイの木馬」と言われるものだ。
便利と思い無料ソフトをPCに入れたら勝手に脅迫文を送り出した。
ネットでは、情報の発信元を特定するIP番号が記録されるので、PCが特定され所有者が逮捕された。
しかし現実世界でも、家に招き入れた人に勝手にメールを打たれたら同じことが起こる。 

横浜市のホームページへの襲撃予告書き込みでは、「クロスサイト・リクエスト・フォージェリ」という、これもよく知られた手口が使われた。
たとえるなら郵便ポストの管理がルーズで、届いた封筒の中身を脅迫文に取り換えられたような話だ。
このようにネット絡みといっても、本質は魔法でも何でもなく現実世界の詐欺のトリックと似たようなものだ。
被害はネットの絡まない現実世界の詐欺の方がはるかに大きい。
映画「それでもボクはやってない」に出てくる現実世界の痴漢冤罪(えんざい)被害の方が、真犯人は名乗りでてくれないのでより深刻だ。

 ネット犯罪の特徴は手口や被害でなく、今回のように技術をもった人間にとって、実行もその後の勝ち名乗りもローリスクで行えるという点にある。
一方、ローリスクの後ろに隠れているネット犯罪者にとって、愉快犯的な他人のPCのデータ破壊や個人情報の抜き取りまでは、容易に行えても、物理的「実害」を及ぼすのは意外と難しかった。
ネット操作だけで人をエレベーター閉じ込めることは簡単にはできない


しかし「閉じ込め」攻撃が、皮肉なことに警察の力を借りて可能になってしまった。
ネットで予告後に凶行に及んだ何件かの殺害事件により、それまでは無視していたような脅迫文にまで、それがネット絡みだと特に過剰反応するという風潮が確立したからだ。

最近のネット犯罪は人をだますことで発動するようになってきている。
「トロイの木馬」も
「クロス〜」もまずユーザーをだまして(便利なソフトやサービスサイトに見せかけて)、ユーザーに「うかつな」操作をさせる。
その後の被害も警察の人をだますことにより実現した。
システムの最も弱いパーツは依然人間というわけだ。 

posted by 小だぬき at 05:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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