2012年11月02日

税金に殺されてたまるか 音の消えた町工場

税金に殺されてたまるか 音の消えた町工場 やるせなさビートルズに重ね
2012年11月2日 07時02分   東京新聞

 欧州や中国など海外経済の変調はデフレに苦しむ日本経済の立ち直りをさらに遠くしようとしている。
消費税増税、復興予算の流用問題…。
やるせなさは1960年代に英国政府への憤りと皮肉を歌ったザ・ビートルズの『タックスマン』に時を超えて同調する。そんな現場の怒りや苦痛に耳を澄ませて書きとめた、名もなきケイザイの唄を。 
(石川智規)


 そこに音はなかった。
十月下旬、ある水曜日の昼下がり。工場の扉は開け放たれていた。
機械油で黒ずんだスチール机の前に、部品加工業を営む社長(46)はいた。
うつろな目でぎこちない笑顔をつくる。
「連絡できずすみません。九月から急に仕事がなくなって…」


 東京・多摩地区に、その工場はある。
取材の約束はなかったが、私は構わずJR中央線に乗った。
頻繁に連絡をくれる社長の、音信不通が気になった。


 帳簿は斜線だらけだった。
取引先から発注があれば数字を書く。ゼロならば、線。
九月以降、取引先二十五社の半分から連絡がないという。
「リーマン・ショックの時よりひどい。最近、株価が上がる訳がわからない」


 顧客からの連絡を待つ日々。
電話が鳴った。
受話器から冷たい声が響いた。「法人税を滞納しています」


 設備投資で借金を増やした時以外、納税を怠ったつもりはない。

 この税務署員は何を言っているのだ?


 聞くと、今まで経費として控除が認められた社長自らへの未払い給与が、課税対象になったという。
売り上げが乏しく、自分の報酬は後回しにしていた。

 「滞納額三百万円を払ってください」


♪仕組みをお教えしましょう 私は税金取り そう 税金取りなんです


 社長の話を聞きながら、「タックスマン」の一節が頭に流れた。

 一九六六年、ジョージ・ハリスンが作詞した。
当時の英国労働党政権は富裕層に95%の税を課していた。
そんな政府を、税金を、皮肉った曲といわれる。

 「仮に」。社長は怒鳴ったそうだ。「税金を払ったとしても、復興予算みたいな変な使い方しかしないじゃないか!」


 電話口の向こうで、税務署員は淡々と話したという。
「それは私の担当じゃありません。各省庁です」

 その後も何度か電話があった。
書類を持って説明しに来てほしいと求めても、応じなかった。
「彼らはきっと形に残る証拠を残したくないんでしょう」


 ここにきて、景気が急速に減速し始めた。
九月の鉱工業生産指数は前月比4・1%減。
日銀の白川方明総裁は「海外経済の減速が強まっている。
日本の内需にも影響してくる」と述べ、追加金融緩和策と新たな融資制度の導入を決めた。
政府も緊急経済対策をまとめたが、デフレに陥る日本の人・モノ・サービスが回りだす気配はない。


 社長はあえいだ。「世の中を巡るのは、借金の金利と税金だけなんじゃないか…」。二〇一四年には消費税が上がる可能性がある。負担がまた、増える。

 機械の動かない工場に、社長の言葉が響いた。「税金に殺されるわけにはいかない


♪何に使うかなどとお尋ねにならないことです 税金額を増やしたくないならね そう 私は税金取り


 ビートルズは、今の日本をどう歌うだろうか。 

(東京新聞)
posted by 小だぬき at 07:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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