2012年11月07日

強がりな人ほど心に弱さ

香山リカのココロの万華鏡:強がりな人ほど心に弱さ
毎日新聞 2012年11月06日 東京地方版

  都知事を辞任した石原慎太郎氏は、最後の登庁の日、報道陣に心境を尋ねられて「(寂しさは)全然ない。
心ウキウキ、ワクワクだ」と笑顔で語った。


 この言葉を聞いて「最近、ウキウキ、ワクワクしたのはいつだっけ」とつい考えてしまったのは、私だけではないだろう。
いまだに来春の就職先が決まらない大学4年生にきくと、「メールを開けば“残念ですが”という不採用通知だし、家族はうつ病になっちゃうし、好きなサッカーチームまで成績が悪くて、楽しいことなんてひとつもないですよ」とのことだった。


 では石原氏は、いったいどうして「ウキウキ、ワクワク」しているのだろう。
都知事の荷を下ろした解放感もあるかもしれないが、それだけではないはずだ。
日本維新の会の橋下徹代表は、結党のあいさつで「大いくさが始まる」と述べていたが、新党の発足を予定している石原氏もおそらく、“乱世”のいま、新党を率いて国政の場に打って出ることに高揚感や興奮を感じているのだろう。


 まさに戦国時代のように奮い立つリーダーたちの姿に、頼もしさを感じるべきなのだろうか。
それとも、あまりにも「一般の生活者とかけ離れている」と違和感を抱いてよいのだろうか
正直言って、私は後者だ。


 精神分析家フロイトの影響を受けたラスウェルという政治学者は、「権力と人間」という本の中で面白いことを述べている。
世の中には権力に目がない「政治的タイプ」と呼ばれる人間がいて、この人たちがしばしば政治家になるのだが、ラスウェルによるとその動機の多くは「子ども時代のイヤな思い出の克服」など個人的な動機に基づいているのだという。

ラスウェルは、このタイプの政治家について「個人的な動機を、公の目的にうまくすり替え、公共の利益の名において合理化できる人」といった説明をしている。


 すべての政治家が、「子ども時代のコンプレックスを晴らして世の中を見返すために」といった自分だけの動機で権力を目指しているとは思いたくない。
とはいえ、「強く見える人ほど、心の中に弱さを持っている」という真実は政治の世界でも生きているのか、と思うとちょっとおかしくなり、「あの政治家はどうなのだろう?」と心配になる。


 もちろん弱気なだけのリーダーばかりでは困るが、このむずかしい時代、やっぱり優しさや思いやりを忘れない人に社会を動かしてもらいたい。
そう思うのは間違いなのだろうか。

posted by 小だぬき at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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