2012年11月20日

香山リカのココロの万華鏡:政治家の本業は選挙?

香山リカのココロの万華鏡:政治家の本業は選挙? 
毎日新聞 2012年11月20日 東京地方版

衆議院が解散、総選挙となった。
テレビのニュース番組などにはいろいろな議員や政党の党首が登場して、選挙への意気込みなどを語っている。


 ちょっと不思議だな、と思うのは、どの政治家も表情や声が生き生きしていることだ。
「いよいよです」と笑顔で楽しいことが待っているかのような顔をする人さえいる。
有権者としては「この先、どうなるんだ」と不安でいっぱいなのに、と落差を感じる。
かつて政治の世界にくわしい知人に、「選挙が好きでないと政治家にはなれない」と聞いたことがあるが、もしかするとこの人たちは本当に選挙が好きでうれしいのかもしれない。


 いろいろ戦略を立てて選挙運動をやり、疲れと期待、不安がピークに達したあたりで投票日を迎え、ドキドキしながら開票速報を見守り、勝敗が決まって一気に緊張から解放される。

このプロセスは、買い物依存症の人たちに少し似ている。あれこれ考えながら商品を見てまわり、店員さんたちと話をし、「買おうか、やめようか」という迷いや緊張がピークに達したところで、「じゃ、買います!」と思いきった決断をして、自己嫌悪と解放感が混じったような心境に陥るのだ。


 一般に買い物依存症の人たちは、商品そのものではなくて、何かを購入するまでのプロセスの刺激に依存していると考えられている。
ハラハラ、ビクビク、ドキドキといった日常にはない刺激がないと、物足りなく思えてしまうのだ。


 さて、“選挙好きの政治家”はどうなのだろう。
まさか、選挙の刺激や興奮に依存しているからこの道を選んだのではないはずだ。
しかし、「いよいよ戦いだ」と言ってほおを紅潮させている人たちを見ると、「もしかしてあなたが政治家としていちばん力を入れている仕事は選挙?」とつい言いたくなってしまう。


 もちろん、刺激を避けてばかりの弱気な人が政治家になるのも問題だ。
とはいえ、「勝敗が決まる戦い」と言われるととたんに高揚し、やる気が全開になる人ばかりでいいのだろうか。
彼らは、争いごとを避けようとしたり傷つきやすかったりする人たちの気持ちなど、理解できないような気がする。

あるいは万が一、国際社会の中で日本が争いごとに巻き込まれそうになったら、「これは戦うしかない!」ととんでもない決断をしそうで怖い。

自分のことだけではなくて、本当に国民のことを思ってくれる政治家は、いったいどこにいるのだろう。

posted by 小だぬき at 20:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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