2012年11月26日

もうだまされない<中> 公約トリック見抜け マジシャン警鐘

 もうだまされない<中> 公約トリック見抜け マジシャン警鐘
2012年11月26日  東京新聞夕刊


 トランプの山が二つ、テーブルに並ぶ。

「あなたの意思でどちらかを選んでください」。
ゆうきさんが記者にそう促しながら、紙に何かを書いて折り畳んだ。
「結果がメモに書いてあります。必ず当たります」

なんとなく片方の山を選ぶ。
「では、枚数を数えて。そして、メモを見てください」。
カードは五枚。
紙を開くと「あなたは必ず『5の山』を選びます」と書かれていた…。


 この短いマジックの中に、人間の心理を突いた数々の「だまし」が潜む。
タネは「5の山」という言い回し。
もう一つの山を見ると、枚数は四枚だが、いずれも「5」のカード。
どちらを選んでも「5の山」になる。


 答えを知れば「単純でばかばかしい」仕掛け。

でも、いざ目の前だと気付かない。
「視覚でなく思考をだますのがマジックです」。

メモに答えを書く思わせぶりな演出も、ミステリアスな空気を漂わせ、表現のあいまいさに気付かないようにするためだ。
 「マジックは必ず弱点(タネ)がある。それを突っ込まれたらおしまいなので、都合のいい部分だけ見るよう客を誘導します」


 業界でミスディレクション(誤った方向付け)と呼ぶテクニックは、無意識だろうが政治家もよく使っているという。

「財源や実効性に問題があるのに、良い面ばかり並べた公約を強調することも同じかもしれません」


 マジックは自信たっぷりに演じることが必須。
これは政治家の演説にも通じる。

「人間はおどおどした人を信用しない。


さも自分が正当で、すべてが決定事項のように振る舞う。劇的に演じ、考える時間を与えないことも重要です」


 「必ず当たる」などのフレーズを繰り返せば、相手の思考や行動を固定化する「キャナリゼーション(水路付け)」と呼ばれる効果も生まれる。

人間は信じたいという願望があり、よくできたパフォーマンスに弱い。
選挙も同じなんじゃないでしょうか」


 冒頭のマジックでは、最も恐るべき「だまし」も隠されている。相手の意思でカードを選ばせながら、実際は結論が用意されている「誘導」のトリックだ。これは日常でも使うことができる。


 例えば、営業マンがセールスしたい相手に電話で面会を申し込む際、「お伺いするのは明日が良いですか、それともあさってが良いですか」と問い掛ける。
「相手に選ばせるようで、最初から『会わない』選択肢を奪うわけです


 「郵政民営化に賛成か反対か」
「民主党か自民党か政権選択を」。
最近の衆院選で繰り返されたフレーズは、選択肢があるようで実は少なかった。

ゆうきさんは次の衆院選に向け、警鐘を鳴らす。


 「もし候補者が『今回は皆さんが○○か××かを選ぶ選挙です』と二者択一を迫ってきたら…。
あなたはすでに選択肢を奪われているかもしれません。

********************************
 ゆうき・とも 1969年、岩手県奥州市生まれ。本名は高橋知之。
トランプやコインを使って観客の目と鼻の先で演じる「クロースアップ・マジック」の専門家。
92年に「世界マジックシンポジウム」優勝、2004年に優れたマジシャンを表彰する「厚川昌男賞」を受賞。
「あなたにもできる! メンタル・マジックで奇跡を起こす本」「人はなぜ簡単に騙(だま)されるのか」など著書多数。

posted by 小だぬき at 16:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
モッピー!お金がたまるポイントサイト