2012年12月16日 東京新聞朝刊
全国の公立小中学校で臨時採用などの非正規ので臨時採用などの非正規の教員が増え、二〇一二年度は教員全体の16%に当たる十一万三千人となったことが十五日、文部科学省の調査で分かった。
一方で正規教員が減少しており、
同省は十分な研修を受けていない非正規教員の増加は教育の質向上の面で問題があるとして、正規採用を計画的に増やす考えだ。
非正規教員は、産休や育休の代替を含む臨時採用の常勤講師と、非常勤講師。年々増え、八万四千人だった〇五年度から約三万人増えた。
半面、正規教員は〇五年度の五十九万七千人から一二年度は五十八万七千人に減った。
教員定数に占める割合でみても、正規教員は94・8%から92・7%に下がった。
都道府県別では沖縄が83・8%で最も低い一方、財政力のある東京は101・8%で定数を上回って採用しているなど地域間格差もみられた。
こうした背景には、教員を複数年にわたって増やす国の「定数改善計画」が、財政難などを理由に〇六年度以降策定されていない事情がある。
このため各自治体は国が予算編成で教員増の予算を計上するかどうか年末まで見極めなければならず、十分な採用期間を確保できないのが現状だ。
文科省は今年九月、正規教員の増員と少人数学級の推進を図るため、一三〜一七年度で二万七千八百人の増員を盛り込んだ定数改善計画案をまとめた。
しかし財務省は少子化を理由に五年間で一万人削減できると主張しており、来年度予算編成の焦点となりそうだ。
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「年収170万円」の聖職
クローズアップ現代(2008年11月6日放送)
教員の世界でとんでもないことがおこっている。
予算削減で教員を減らし、その穴を非正規教員で埋めているのだ。
産業界は、派遣社員でもっているようなものだが、教員の世界までもそうなのか。
非正規教員とは、教員免許はもっているが、教員採用試験に合格していない教師のことだ。
収入も正規教員の半分。
雇用も不安定で最長でも1年契約で、年度の途中で打ち切られることもある。
国谷裕子は、「正確な数はわからないが、公立の小中学校で少なくとも9万人、全体の14%にのぼる」といった。
「学習塾でバイト」しないと食べていけない
小泉首相の三位一体改革で、国は自治体に公務員削減を求め、一方で少人数学級などきめ細かな教育も求めた。
この矛盾を切り抜ける手段が非正規教員だという。
広島市内・公立中学の非常勤講師松浦佑紀(23)は、昨(2007)年大学を卒業したが、まだ採用試験に合格していない。
給料は時間単位、ひとコマ2500円。
ボーナスや手当もないので、年収は正規教員の半分の170万円だ。
この学校では44人の教員のうち13人が非正規だ。
広島県は財政事情から全国に先駆けて教員削減を進め、2002―07年の間に1200人を減らし、代わりに非正規教員を700人増やした。
一方国が求める教育改革で、広島市では習熟度別授業でクラスを2つに分け、先生1人に生徒20人態勢を進めようとしている。
それに必要な教員200人はすべて非正規をあてる方針だ。
松浦佑紀もその1人というわけだ。
しかし、彼は授業が終わると早々に学校を後にする。
学習塾でのアルバイトをしないと食べていけないからだ。
帰宅してからも、学校でのテストの採点などをするが、手当はつかない。
「生徒たちと一日中一緒にいたいが、できないのが寂しい」という。
「国が責任を持って負担すべきだ」
取材したNHK広島の戸来久雄記者は、「パートタイムで4つの学校を行ったり来たりの人もいた。
しかし、みな正規採用を目指しているが、やめていく人も多い」という。
国谷は、「非正規教員がふえて、教育の質は保たれるのか?」と藤田英典・国際基督教大学教授に聞いた。
藤田教授は、「質の低下はありうる」として、
(1)非正規教員は研修の機会もなく、力量があっても発揮できない、
(2)他の教師との連携が弱い、
(3)専任教師の負担が重くなる、などをあげた。
元をたどれば財政問題だ。
三位一体改革では、義務教育への国庫負担が2分の1から3分の1に減らされ、減った分は交付税として自治体にいってはいるのだが、非正規教員で浮いた予算を他にまわすというのが実情だという。
現に広島県内で、病気で欠けた理科教師の代わりが見つからず、自習を続けたあげく中間試験を見送った学校。
数学の教師の穴を保健体育の教師が埋めた話があった。
一方東京・杉並区は、区独自に教員研修を行って採用。
プラスの配置で30人学級を増やしたりしている。
財政力によるとんでもない格差……。
藤田教授は、「義務教育はライフライン。
予算は国が責任を持って負担すべきだ。
金も人手もかけずでは、質が保てまい」という。
教育改革は、安倍首相(当時)がイギリスのサッチャー改革を範として進めたものだ。が、サッチャーの政策は教育現場を荒廃させたとして、ブレア首相(当時)が建て直しに着手した。決め手は巨額の予算投入だった。
*NHKクローズアップ現代(2008年11月6日放送)