余録:「軍事行動が繰り広げられる場の4分の3は多かれ…
毎日新聞 2013年01月23日 01時16分
「軍事行動が繰り広げられる場の4分の3は多かれ少なかれ不確実性の霧によって覆われている」。
プロイセンの軍人、クラウゼビッツの言葉である。
いったん戦闘状態に入れば戦場は予測不能な事態が積み重なり「戦争の霧」がたちこめる
▲そんな霧の中に無防備な民間人が閉じ込められたようなアルジェリア人質事件だった。
世界中が息をのんだ犯人グループへの政府軍の攻撃だが、「作戦終了」発表の後も拘束された人々の安否についてなお情報が錯綜(さくそう)した
▲つのる不安の中、ひたすら無事を祈るしかない人質の家族にはあまりにむごい霧の中の時間である。
その果てに明かされた惨状はさらに無慈悲なものだった。
人質多数の死が明らかとなり、その中で日本人犠牲者が確認された。
人々の祈りを「戦場」は冷たく拒んだ
▲拙速(せっそく)に見える強襲にも相応の理由があったのかもしれない。
多くの人質を惨殺した犯人の非道より先にアルジェリア政府を非難しては倒錯になろう。
ただあまりに痛ましい結末を目(ま)の当(あ)たりにすれば、犯人掃討(そうとう)のために人質の犠牲をいとわなかった非情もうらめしい
▲思えば日本人も、他の国々の人質たちも豊かな未来に向けた資源開発をめざし、愛する家族と別れて砂漠のプラントへと出向いていた人々であろう。
だが、その砂漠はまた人の情をあざ笑うかのような荒々しい力が流血をいとわない闘争を繰り広げる世界でもあった
▲むろん砂漠とて異界でも何でもない。
私たちが暮らす平和な日常と同じ空気が満ちる同じ世界の一部である。
無残に断たれた犠牲者の志は、私たちがこれからの世界でなすべきことを問いかける。
2013年01月23日
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