2013年02月06日

香山リカのココロの万華鏡:広がる「嗜癖」の範囲 

香山リカのココロの万華鏡:広がる「嗜癖」の範囲 
毎日新聞 2013年02月05日 東京地方版

 よく一般の人から、「うつ病って言っても、血液検査やレントゲンで診断がつくわけじゃないんでしょう?
 医者や国によって診断にバラつきが出ることもあるよね」と言われる。
放っておくとそうなるかもしれないがそれでは困るので、世界の精神科医たちはなるべくみな同じ診断基準を使うことにしている。
そこで使われているのが、アメリカ精神医学会が作成したDSMという指針だ。


 それがこのほど約20年ぶりに改訂され、「DSM−5」として今年の5月ごろから使われることになった。


 なんだ、精神医療の業界でマニュアルがかわっただけじゃない、と言われそうだが、これはいまの社会の“心の問題”を反映するものであり、また逆に社会にじわじわと影響を与えるものでもあるのだ。


 たとえば、改訂版からはアルコールや薬物などへの「依存」という用語が消えて、「使用障害」という分類でまとめられている。

そして、一度、診断基準から消えた「嗜癖(しへき)(アディクション)」という大きな概念が復活している。


 この問題にくわしい精神科医・松本俊彦氏は、学会のシンポジウムで「この『嗜癖』という用語は、偏見を助長する侮蔑的表現としてではなく、より新しい意味をまとって復活した」と述べている。
その上で、この背景にあるのは、お酒にせよ薬物にせよ、何かに病的にハマってやめられないという問題の中心は、「身体依存の有無ではなく、人が物質にとらわれ支配される事態、『コントロール喪失』であり、今日ふうにいえば『精神依存』」だと考える。

そうか、アルコール依存はやっぱりからだの病気じゃなくて、こころの持ちようなんだな、という意味にとらないでほしい。

嗜癖」というより広い概念を提示しなければならないほど、いま「コントロール喪失」が原因で自分を抑えられず、さまざまな“やってはいけないこと”に手を出し、ついには生活や人間関係の破綻にまで進んでしまう人が増えているということだ。

また、そのハマる対象も古典的な酒や覚醒剤に限らず、ギャンブルや買い物、さらにはスマホやSNSなどより目に見えにくい方向へと広がりつつある。

今回の改訂では「嗜癖(アディクション)」はまだその範囲が限られているが、今後、「コントロール喪失」に陥る人がさらに増えれば、また変わるかもしれない。

「あの人もこの人もアディクションで治療中」という社会が来ないことを望みたい。

posted by 小だぬき at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | うつ病について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
本当にそうですよね…どんどん昔みたいに目に見えているギャンブルや買い物ではなく、スマホやSMSなどの掲示板などに、依存している人が増えていると思います。
今はそれが大きな問題とまでは発展していませんが、これが若い人を中心になにかしらの影響が出てくると思うと、なんかソワソワしてしまいます。
Posted by 盗聴調査比較 at 2013年02月06日 15:18
はじめまして、コメントありがとうございます。
自律と依存、趣味と依存、嗜虐と好み
考え出すと 境界線が難しいですね。
携帯依存などは前から指摘されていましたが
 今は 昔と比べて「範囲」が広くなっていることは確かなようです。
人間らしさを取り戻そうと始めたことが 反対に「嗜虐」への依存につながっているみたいですね。生きることが難しい時代なのかな?
Posted by 小だぬき at 2013年02月06日 17:01
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