2013年02月17日

幸せの学び:ことばの貯金箱=城島徹

幸せの学び:ことばの貯金箱=城島徹
2013年02月06日   毎日新聞

 東日本大震災の被災地のプレハブ仮設住宅で、新聞から大切な言葉を切り抜く「ことばの貯金箱」という取り組みが始まった。

救済や追悼、再生や希望など心の叫びを託す言葉を探して台紙に貼る試みだ。
年配の人から子どもまで世代を超えて広がり、東京でも実践する小学校が現れた。


 震災から1年3カ月過ぎた昨年6月のある日、仮設訪問を続ける元中学教諭で白鴎大学講師の渡辺裕子さん(61)=仙台市在住=は太平洋沿岸に近い同市若林区の仮設住宅にいた。
集会所のテーブルにはお母さんたちが持ち寄ったキュウリの漬物、フキの煮物など手作りの味が並び、仙台弁での会話が弾む。

渡辺さんは古新聞を取り出すと、呼びかけた。「今日は『ことばの貯金箱』をやってみます。自分にとって大切な言葉を選んでください」


 はさみで切り抜いた文字を台紙に貼って並べる。
「半歩ずつでいいんだ」「恩返しの人生を」「花咲く未来心待ち」……。
完成したら、隣の人たちに見せながら自分の思いを語る。
そうやってが整理されスッキリしたという感想が聞かれたという。


 「あなたもすぐにできます」「体験してみませんか?」
「言葉の億万長者になりましょう」。
渡辺さんは「ことばの貯金箱」の伝道師として被災地の学校も回る。
教師になる前のアナウンサー時代に培った巧みな話術が生きる。

手ほどきを受けた仙台の中学生たちは未来への思いを込めた言葉を並べた。
「なせば成る」「再生へ 心ひとつに」……。

 被災地以外からも講師として招かれ、東京都内で昨年末に開かれた教師向けNIE(教育に新聞を)セミナーではワークショップを行った。

受講した東京都北区立東十条小学校教諭の川崎由美子さん(32)が飛びついた。「道徳の授業に取り入れよう」


 1月23日、川崎先生は教室で受けもちの5年生と向き合っていた。
人種差別と闘った米国の黒人女性歌手マリアン・アンダーソンの黒人霊歌「深い河」を聴かせた後、「マリアンの気もちや生き方に合う言葉を新聞の見出しから見つけよう」と呼びかけた。


 児童らは「心の貯金箱」と書かれた手作りの紙箱を取り出し、新聞を机に広げた。

「言葉を箱に入れるときには大きな声で『チャリーン』と言ってくださいね」。
先生の掛け声を合図に子どもたちは喜々としてハサミを動かし始めた。
「変わらぬ輝き」「あきらめない未来」「人間を信じたい」「未来向いて世界と交流」……。

 チャリーンという元気な声が教室に響く。
そのたびに、子どもたち自身にも励みとなる言葉が「心の貯金箱」に次々吸い込まれていった。【城島徹】

*毎日jp掲載の記事・写真・図表など無断転載を禁止します。著作権は毎日新聞社またはその情報提供者に属します。

posted by 小だぬき at 07:21 | Comment(2) | TrackBack(0) | 教育・学習 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
みんな土壇場になると、意地悪になったりするけど、こうやって思いやりを率先する人がいる
素敵だね
言葉の貯金箱
ブログも心の貯金箱です。
Posted by みゆきん at 2013年02月17日 12:17
人間ってすてたものではないですね。
希望・展望・明るさ・やる気などを 自然に実践できる人がいる。殺伐な事件が多い中 素敵な人も多くいる・・・。
最近、心にしみるコラムがあると つい紹介したくなります。
みゆきんさんのブログのように コメントが多く頂けるブログを目標にしています。
いつもありがとうございます。
Posted by 小だぬき at 2013年02月17日 15:07
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