毎日新聞 2013年03月01日 00時27分
1月半ほど前、突然、目の隅に影が見えるようになった。
受診した近所の総合病院で若い女医さんが何度も繰り返したのは、「お年を考えると」という言葉。
「はいはい、老化だっていいたいんですね」と心の中でつぶやきつつ、ふと、頭に浮かんだのは再生医療だ。
iPS細胞を使った再生医療1号と目されるのは加齢黄斑変性。
名前の通り加齢に伴う目の病気だが、失明の恐れもあるというから考えると、「お年を考えると」、ではすまない。
これ以外にも、脊髄(せきずい)損傷や心筋梗塞(こうそく)など深刻な病気の治療への期待は高い。
一方で、加齢に伴うさまざまな不調を「再生医療でなんとか」と願う人も増えていくはず。
とすると問題は、どこまでを「治療」の対象とし、どこから「老化」と納得してあきらめるのか。
思い出すのは、10年前に米国の大統領諮問委員会がまとめた報告書「治療を超えて」だ。
白熱教室のサンデル先生も委員で、「不老の体」をバイオ技術で実現することの倫理を検討していた。
「老化遅延」は歓迎されても、世代交代への意欲が減るかもしれない。
老化は治療されるべきかも問われるようになるだろう、と分析している。
考えてみれば、卵子提供による妊娠・出産も同じ問題をはらむ。
最近登場した国内初の卵子あっせん団体は、対象を40歳未満の早期閉経や染色体異常の人に限るというが、40代、50代に卵子をあっせんする組織は海外にたくさんある。
技術と人間の欲望の切っても切れない関係を改めて思う。
私の担当医の診断では異常は見あたらず。「治らないけど、慣れます」ときっぱり。本当にそうだといいんですが。
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笑い事じゃないよね(^^;;
でも、考えてしまうのです。100歳前後ならなんとか生きられても・・・、それ以上になると幸せかどうか・・・。
クローン研究、再生医療の倫理感が 強く求められる時代になったと思います。