毎日新聞 2013年03月12日 東京地方版
「株価がリーマン・ショック前を超えた」といった明るい話題が報じられるたびに、「これを見て喜べる人とそうでない人との割合は、どれくらいなのだろうか」と考えてしまう。
自分の体調が悪いとか家庭に悩みごとがあるなど、個人的に深刻な問題を抱えていれば、いくら社会で明るい話題が出たとしても、とても喜ぶことはできないだろう。
診察室にはそういう人たちが大勢、やって来る。
たとえば「がんの疑いがあります」と言われて検査を進めているときに、「オリンピック候補地、東京が有力か」などというニュースを見たとしても、「いいぞ!」と心をときめかせたりはできないと思う。
そういう人はテレビを見るのもつらい。
そうだとしたら東日本大震災の被災地の人たちはどうなのだろう、と気になる。
家族や住まい、職場を失って大きな喪失感を抱えたままの人が大勢、生活を営んでいる。
「時間が止まったまま」という人も少なくないはずだ。
しかし、当然のことながら、被災地でもテレビをつければ「景気が回復してます」「東京で新しい施設がオープン」といった明るい話題も流れてくる。
それを見ながら「世の中は私とは関係ないところで、前へ前へと進んでいるんだ」と孤立感を強めている人はいないだろうか。
もちろん、被災地の人たちも日本中の人がいつまでも悲しみ、暗い顔をしていてほしい、と思っているわけではないだろう。
たとえ自分とは関係ない話ではあっても、がんばっている人の姿や業績をあげた企業の姿を見て励まされ、自分を奮い立たせている被災者も大勢いる。
ただ、私たちはどんなときも忘れてはいけない。
自分やまわりが楽しかったりハッピーだったりするときにも、どこかで悲しみに暮れたり重い悩みで苦しんだりしている人がいる、ということを。
楽しむな、というわけではないが、悲しんでいる人に寄り添う準備はいつもしておくべきだ。
「社会は前に進んでいるんだから、あなたも早く笑顔になって追いついて」などと強制してはいけないことは、言うまでもない。
自分がうれしいとき、楽しいときこそ、そうでない人たちにも心配りができるか、その人の真価が問われる。
経済に明るい兆しが見えてきた日本も同じ、今こそ被災地の人たちの深い悲しみに心を寄せたい。
東京オリンピック誘致に躍起になっているどころではないと、言ったら、それも一つの意見ですが、もう少し前向きに希望を持つことも大事なのではないでしょうか? と言われ、返答に困っています。いま言われたように、同じ被災者の中でも、それぞれ立場の違いがあると思います。それでも、私は、原発事故の処理の先が見えない状況では、オリンピック誘致はすべきではないと考えます。
小たぬきさまの意見を聞かせてもらえればと思いコメント致しました。
そうでないなら 貧困層の増大、物価高騰、被災地復興に 予算を集中投下すべきです。
私は 今の段階での東京オリンピック招致には反対です。