毎日新聞 2013年04月09日 東京地方版
小説家の佐藤亜有子さんが、43歳の若さで亡くなっていたことがわかった。
アルコールと睡眠薬を併用したことによる急性薬物中毒だそうだ。
どちらかを大量摂取してしまったのだ。とても残念だ。
佐藤さんは、女子大生が自分の体をモノのように扱い、契約で他人に提供する「ボディ・レンタル」という作品でデビュー。
08年発表の「花々の墓標」では、幼い頃に受けた肉親からの性的虐待というトラウマと闘う女性を描くなど、どのテーマも衝撃的だが、現代を語る上で切り離せないものだった。
作品の多くは、実体験をもとにしているとも言われた。
そうだとしたら、小説家として社会で認められることで、
少しでも「私は私、これでいいんだ」と自分を認められるようになりつつあるのだろうか、と思っていた。
佐藤さんに限らず、「子どもの頃に親から愛されなかった」「虐待を受けていた」という心の傷が、大人になってからも癒えない人は少なくない。
それが原因で友人や恋人をなかなか信頼できず、わざと相手の愛情を試すようなことをしてしまって関係が破綻する例もある。
逆に「この人なら」と思う相手にもたれかかりすぎて「重すぎる」と思われる場合もある。「相手の自分への関心が薄れないように」と、必要以上にサービス精神を発揮し、その結果、疲れ果ててうつ状態に陥る人もいる。
いま子育て中の人には理由や条件抜きで、子どもに「世界一かわいいわね」「こんなにお利口さんはいない」と、声をかけてあげてもらいたい。
「私が私であれば大丈夫」という基本的な自信を、子どものうちに与えてあげてもらいたいのだ。
そんな自信を身につけないまま、大人になってしまった人はどうすればいいのだろう。
私は、その自信は10代、20代になっても自分で身につけられるはず、と信じている。
家事をする。
本を読む。
散歩に出かけるなど、日常のことをこなすたびに、自分で「よくやったじゃない」「ほら、大丈夫だよ」と軽く声をかける。
誰かから「あなたの歌、上手ですね」などとほめられたら、疑わずに「そうですか」と信じてみる。
そんな小さな積み重ねが、いつか必ず「きっと何とかなるよ」と、自分をゆったりと信じる力にかわるはずだ。
もちろん、カウンセラーなどもその助けをしてくれるだろう。
不幸な子ども時代をすごした人にこそ、
自分や他者を信じて、笑顔いっぱいの人生を歩んでほしい、と心から願っている。
これは、死に急ぐ組み合わせです
残念です
お悔やみ申し上げます。