(5月5日付・読売社説)
きょう5日は「こどもの日」。育児について、ソニー創業者で教育にも情熱を注いだ井深大氏は「これほど崇高で素晴らしい仕事はない」という言葉を残している。
それを実感させるのが、今年の「こども未来賞」(読売新聞社など主催)に選ばれた「親父(おやじ)のキャラ弁」という作文だ。
幼稚園に入った長女のために、つわりのひどい妻に代わって弁当作りをした埼玉県の会社員中村竜太郎さん(38)が書いた。
人見知りする長女が友達を作るきっかけにと、おかずでアンパンマンや動物を描いた。
父の気持ちを察してか、長女はいつも残さず食べ、「おいしい」と言った。
小さな体には量が多い弁当を、皆が食べ終わった後も涙目でほおばっていたのだと後に知る。
中村さんは「いろいろなことを教えてくれた子供たちに感謝し、これからも一緒に成長していきたい」と受賞の喜びを語った。
愛情を持って子供を育てることで、親も成長する。
夫の育児時間が長い夫婦ほど、第2子を持つ割合が高いというデータもある。
中村さんのような「イクメン」を増やすことが大切だ。
父親向けに、料理やアイロンのかけ方などの家事講座を開く自治体が増えてきた。
父親同士で子育ての楽しみや苦労を語り合う会合などを開くNPO法人の活動も広がっている。
安倍首相は、現行法では最長1年6か月までの育児休業期間について、子供が3歳になるまで男女とも取得できるよう、経済界に自主的な取り組みを要請した。
男性社員に2週間程度の有給での育児休業を認める企業もある。男性の育児参加をさらに促す企業努力を各社に求めたい。
育児中の家庭を温かく見守る地域とのつながりも重要だ。
親子が公園で遊んでいても「うるさい」と言われることがある。
これでは居場所がない。
こども未来財団の調査では、母親の34%が育児中に「社会から隔絶され、自分が孤立しているように感じる」と回答している。
親子が気軽に集える場を増やすべきだ。
公民館や児童館を利用した「地域子育て支援拠点」では、親同士が語り合い、子供を遊ばせている。
運営に、子育てを終えた人たちの協力を期待したい。
地域で子供を見守り、母親を支えることが育児の力になる。