2013年5月14日 東京新聞社説
名づけて「母さん助けて詐欺」−。
警視庁が公表した「振り込め詐欺」に代わる新しい名称だ。
お年寄りの注意を喚起する効果を期待したい。
捜査現場も手抜かりのないよう気を引き締めねば。
振り込め詐欺が急増したのは十年くらい前だ。
息子や孫に成りすまして電話をかけ、現金自動預払機で指定口座に現金を振り込ませる手口が主流だった。
「おれおれ詐欺」と呼ばれるようになった。
うその融資話を持ちかけて保証金を要求したり、架空の有料サイト利用料を請求したりする手口まで現れた。
そこで二〇〇四年に警察庁がまとめて振り込め詐欺と名づけたわけだ。
最近では金融機関の警戒が厳しい。
おれおれ詐欺では息子や孫の知人をかたって現金を受け取りに来る方法が横行している。
名称と実態がそぐわなくなった。
被害の抑止効果が見込めるような新しい名称を警視庁が募ったところ、全部で一万四千件余りが寄せられた。
最優秀作品に選ばれたのが「母さん助けて詐欺」だ。
子を思う母親の気持ちにつけ入る悪質さが伝わる。
祖父母や父親は大丈夫かという異論も聞かれたが、被害に遭いやすいお年寄りへのアンケートで人気が高かった作品だ。
そのセンスを信じたい。
警視庁はこの名称を啓発キャンペーンに用いる考えだ。
「だまされるとは思っていなかった」と悔やむ被害者が後を絶たない。
世間の防犯意識を呼び覚まし、協力して根絶を目指してもらいたい。
東京であった昨年の振り込め詐欺は二千百一件で、被害額は五十九億円に上った。
過去最悪とされる〇六年の六十一億一千万円に迫る勢いだった。今年に入っても歯止めがかかりそうにない。
おれおれ詐欺はそのうち千四百十一件で、お年寄りを中心に女性が被害者の八割を占めた。
「母さん助けて」とせがまれ、だまされた人が多かったのではないか。
現金を直接やりとりする方法が一件当たりの被害額を増大させているとの見方が強い。
昨年は一千万円以上の被害が二百件を上回り、前年の二・六倍に達した。
大金を欲しがる相手はまず疑ってかかるべきだろう。
振り込め詐欺は関東のみで全国の七割に及ぶ。
愛知や岐阜、三重などの中部は6%足らずだ。
しかし、核家族化が進み、お年寄り世帯が多い大都市では要注意だ。
宅配業者やコンビニ店員らが被害を防いだ事例も目立つ。地域全体のまなざしと機転が大切だ。
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クローゼットの中の大掃除にてんてこ舞いよ(ーー;)