過労死防止法求める声 遺族訴え、議連結成も
共同通信 2013/06/24 14:53
職場での対人関係やハラスメントなどが原因の精神疾患の労災認定が2012年度は過去最多となった。
専門家は「近年、若い世代の精神疾患が増えている」と指摘。
職場環境の悪化を背景に、過労死も後を絶たない。
遺族を中心に「過労死防止基本法」の制定を求める声が強まっており、国会議員が議連を結成する動きも出てきた。
▽若年層
「どういう育ち方をしてきたんだ」「人間として腐っている」。
飲食店を展開する会社の社員で、東京都内のカフェで働く20代前半の女性は店長から何度も長時間 叱責 された。
客の前で、お盆で殴られたこともあった。
昨年7月に入社。
接客の仕事は今でも好きだが、度重なる店長のパワーハラスメントで不眠になり勤務中に体調を崩すようになった。
「周りに迷惑がかかる」と我慢して働き続けたが、今年5月に入って心療内科で「適応障害」と診断され、6月休職に追い込まれた。
厚生労働省の集計で12年度、心の病で労災認定されたのは前年度比150人増の475人。
申請も1275人と高止まり状態だ。
「嫌がらせやいじめ」「上司とのトラブル」「セクハラ」といったハラスメントが急増。
労働局の個別労働紛争解決制度への相談件数も、12年度はパワハラ関連が最多を記録した。
今年で活動25年の「過労死110番」に携わってきた 川人博 弁護士は「近年は精神疾患の相談が半分以上で、20〜30代が多い」と明かす。
いわゆる「ブラック企業」で長時間労働や残業代不払いなど劣悪な環境にさらされ、あげく退職を迫られる若者たち。
関西大の 森岡孝二教授(企業社会論)は「正社員の労働時間はバブル時から減っていない。
職場に余裕がなくなり、新入社員も即戦力として長時間労働を強いられている」と話す。
▽次の犠牲
精神疾患による過労自殺(未遂を含む)の認定も過去最多の93人。
脳・心臓疾患による過労死も123人と依然多い。
「もう夫は帰ってこないが、次の犠牲を出さないようにすることはできる」。
6月6日、東京・永田町で開かれた過労死防止基本法制定を求める集会。
介護施設勤務の夫を亡くした女性が切々と訴えた。
遺族グループや弁護士、学者らが作成した法案に「過労死はあってはならない」と明記。
国に対し、職場での過労やストレスの実態を把握するための調査研究を求めた。
昨年、住宅メーカー勤務で恒常的な長時間労働だった35歳の長男を亡くし、労災申請中の 安井敏一 さん(63)=大阪府藤井寺市=は「基本法は企業への一定の圧力になるはずだ」と強調する。
▽超党派
遺族の訴えは、国際社会にも届いた。
国連の社会権規約委員会は今年5月、過労死や過労自殺の多発に「懸念」を表明、日本政府に防止のための立法や規制措置を取るよう勧告したのだ。
国会議員も動き始めた。
6日の集会には代理の秘書も含め約50人が出席。
6月中旬に、自民、公明、民主など与野党9党の議員らが集まり、議連結成に向けメンバーを募る方針を確認した。
中心的に関わっている民主党の泉健太衆院議員は「経済界の反発はあるかもしれない。
しかし過労死防止に焦点を絞り、超党派でもって理解を得たい」と話す。
早ければ今秋の臨時国会に法案を提出する考えだ。