「心のバリアー」から自由になる
毎日新聞 2013年06月25日 東京朝刊
6月上旬、障害や病を持つ人たちと一緒にハワイに行ってきた。
毎年2回開催しているバリアフリーツアーだ。
最高齢の参加者は、95歳の秋池さん。
肌がぴかぴか輝いている。
「きれいですね」と声を掛けると、「化粧水も使わない、お化粧もしない。ただただ好きなことをしているだけ」と笑顔が返ってきた。
趣味は旅行。
今年はサンディエゴやパラオ、香港に行ったという。
パラオでは転んで、腰を打った。
「今も腰が痛いけど、閉じこもらないようにしているの
年齢なんて関係ない。人生を楽しんでいるのが伝わってきた。
高齢者や障害者、病を患う人たちが旅を楽しむには、よりきめ細かい安全性の配慮が必要になる。
段差などの環境的なバリアーをできるだけ取り除くことも大切で、最近はだいぶ整備されるようになってきた。
だが、なかなか取り除くのが難しいバリアーがある。
「高齢だから、障害や病を持っているから、もうダメ」という「心のバリアー」だ。
77歳の勝間さんは、視力にやや障害があるが、積極的な女性だ。
片言の英語で、シルバーカーを押して、ハワイの町を1人で散策した。
入所している介護施設のスタッフたちから、このハワイ旅行に参加することを反対されたという。
「けがでもしたら大変だ」というのが理由らしい。
だが、勝間さんの意志は固かった。
「私には私の自由があると思って、この旅に参加しました」
そう、人には、自分で決めて行動する自由がある。
心配してくれるスタッフの気持ちは分かったが、勝間さんはやりたいことを選んだ。
参加者の中に石田さん夫妻の姿を見つけ、ぼくは少し驚いた。
84歳の夫は、前回のハワイ旅行の最終日、意識を失った経験があったからだ。
飛んでいって診察すると、脈が触れない。
心筋梗塞(こうそく)の既往歴もある。心筋梗塞ならば、一刻も早く救急車を呼んで、心臓蘇生をしながら病院へ運ばなければならない。
一瞬冷や汗が出たが、幸い、心臓は動いていた。
脈が触れないのは、低血圧による意識消失発作だった。
ホテルのロビーに横たわらせていると、しばらくして意識が戻った。
こんな出来事があれば、たいていはへこたれてしまう。
それなのに1年後、またハワイで再会できるとは。
「死にかけたのによく来たね。一度不安なことが起きると消極的になるんだけどな」と冗談交じりに言うと、妻がニコニコしながら言った。
旅をしなくなったら、夫はもっと動けなくなってしまう。今回は初めてマウイ島を回って大満足。これからも、2人で旅を続けます」
この夫婦も「心のバリアー」から自由な人たちだ。
自分たちにとって大切なことは何か、自分たちの価値観をきちんと持っていて、ぶれない。
九州からやって来た村田さんという母と娘がいた。
36歳の娘は、ぼくに会うなりこう言った。
「いろんな旅行会社に電話をしたんだけど、私の障害を聞くと『無理です』と断られた。
この旅が初めて、私を受け入れてくれました」
娘が生後1カ月の時、健診を受けに行った母が交通事故を起こしてしまった。
幼い娘は頭に外傷を負い、障害を持つ身となった。
どうすることもできないことが、人生には起きてしまう。
母親はずっと自分を責めてきたのだろう。
母と娘ははじめ、硬い表情をしていたが、多くのツアー参加者と交流するうちに、娘の顔がどんどん輝いていった。
障害や病にとらわれず、自由に、時にはわがままに、旅を楽しむ参加者たち。
その姿に、彼女は心が揺さぶられたのだ。
娘の弾む声を聞きながら、母親は「私が一番救われる旅になりました」と涙した。
旅は、人生のいろんなバリアーから自由になる機会をくれる。
社会通念や他人の価値観に縛られない心のバリアフリーが広がれば、この国はもっと元気に、もっと明るく、もっとやさしくなると思う。
9月には東北を応援する旅に出る。
「鎌田實と行くドリームフェスティバルin会津」は、9月9日から2泊3日、星野リゾート・裏磐梯ホテルに宿泊し、秋の会津を楽しむ予定だ。
お問い合わせはクラブツーリズムバリアフリー旅行センター
電話03・5323・6915へ。
だから、私は父を、何処にでも連れて歩きます
母がいたら、もっと楽しかったろうな
母の分も、近くの温泉宿でいいから、連れてくわ(*^^*ゞ
金は墓場まで持っていけないから 私の銀行・郵貯カードを使って タクシーかハイヤーを借り切り行こうと誘っています。私も長くて あと20年。
贅沢も4回程度は 派手にできると説得の日々です。
少しだけ時間が出来ましたので
いまぞとばかりに
ご無沙汰をお詫びかたがた
訪問させていただいております
さすがの表現力
心打たれました
今後ともよろしくお願いします