2013年08月29日

香山リカ:FBの書き込みに嫉妬 

香山リカのココロの万華鏡:FBの書き込みに嫉妬

毎日新聞 2013年08月27日 東京地方版

 
 米国のミシガン大学が、ネット上の交流サイト「フェイスブック(FB)」のユーザーの調査から、興味深い結論を導き出した。

このサービスを使えば使うほど気分が落ち込み、幸せ感や満足感が損なわれる可能性がある、というのだ。


 研究対象となったユーザーは82人、調査期間も2週間なので「これだけで結論づけるのは難しい」と思う人もいるかもしれないが、
「やっぱり! 私も交流サイトを見ると何だか落ち込んでしまう」と感じた人も少なくないのではないだろうか。

また、別の研究者たちは「FBを利用することによって生じる最も一般的な感情は、嫉妬である」という調査結果を発表している。


 ネットに載せるからには、なるべく楽しそうな写真や前向きな話題を選びたい。
「今日も仕事で叱られた」と愚痴をこぼすより、「こんなにおいしい夕食を食べました」とレストランのディナーの写真を載せるほうが、見る人も喜んでくれるに違いない。

そう考えて投稿するうちに、次第に「昨日よりもっと明るい話題を」とか「あの人よりきれいな盛り付けの料理を」などと去の自分や他人との競い合いになっていく。


 そして、「ハワイの別荘でくつろぎました」といった友人の日常を目にしたりすると、「うらやましいな」だけではなく、意味なく「負けてしまった」「あの人だけずるい」と敗北感や嫉妬心を抱くことになるのだ

。これでは、せっかくいろいろな人たちと日常の様子や関心ある話題を共有し、交流するためのサービスがイライラ、ギスギスの原因になってしまう。


 他人と比べるのは本当に意味がない、と診察室にいてつくづく思う。
どんな人でもそれぞれ悩みや苦しみがあり、多くの場合それを外には見せない。
私たちは表面に表れたその人の一番良い部分だけを見て、「うらやましい」「それに比べて自分は不幸」と勝手に思い込んでいるのだ。


 もちろん、疲れているときに楽しかった旅行の話をされたり、お金で悩んでいるときにぜいたくなディナーをした話をされたりすると、素直に「よかったね」とは言えないこともある。
でも、だからといって「私だけどうして不幸せなの?」と落ち込む必要はない。


 「今はネットの交流サイトを見る元気がないな」と思う時期は、思い切ってしばらく離れる勇気も必要だ。
あそこに描かれているのは、その人のすべてではないし、自分と比べるための何かでもないのだから。

posted by 小だぬき at 00:00 | Comment(2) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
トラウマになるサイトがあります
なので私の訪問サイトって少ないよ
小たぬきさんは、心の師匠です(*^^*ゞ
Posted by みゆきん at 2013年08月29日 10:31
みゆきんさん、穴があったら入りたい心境になりますよ。自分の考えに近い記事を紹介しているのが現状です。これからもよろしくお願いします。「あし」だけでも復活しませんか・・・・
Posted by 小だぬき at 2013年08月29日 11:53
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