出社がつらい… 憂鬱な気分の切り替え法は
2013年8月30日 東京新聞「暮らし」
まもなく九月。とはいえ、夏休み気分が抜けず、「仕事をやる気がしない」「会社に行きたくない」と感じている働く人も多いのでは−。
そんな休み明けの憂鬱(ゆううつ)な気持ちを、どう切り替えたらいいか。専門家に聞いた。 (発知恵理子)
「休み明けに会社へ行きたくないのは、自分だけではない。
まずは『みんなそうだ』と思うこと」。
こう話すのは、看護師で産業カウンセラーの柳原里枝子さんだ。
企業や行政のメンタルヘルス研修などを行う「株式会社ハートセラピー」(東京都武蔵野市)の代表を務める。
残暑が厳しく、夏の疲れも出やすいこの時季。
仕事への意欲が湧かないのは、きっと部下や上司も同じ。
そう力を抜いて考えれば、少しは気が楽になるのかもしれない。
一人で思い詰めないことだと言う。
次に大切なのが出勤前夜の過ごし方だ。
夏場は涼しい夕方から活動しがちだが、「無理して遊んだり、ゲームやパソコンなどで夜更かししたりして睡眠不足になると、翌朝に力が出ない」と柳原さん。
「明日、会社に行くのが嫌だと思っている人は、緊張や不安を感じている。意識して自分をいたわる時間をつくってほしい」。
ヨガやストレッチ、ぬるめのお湯につかる半身浴や、アロマオイルで好きな香りをかいだり、好きな音楽を聴いたりしてもよい。
最も簡単なリラックス法として柳原さんが勧めるのが、深呼吸だ。緊張をゆるめ、心身を休息させる副交感神経の働きを高めてくれるという。
「職場やトイレでもできて、プレゼン前にも効果的。家では寝る前に行い、そのまま眠ればよい」
方法は、軽く目を閉じ、五分くらいぼーっとするだけ。
呼吸は吐ききるのがポイントだ。
すると、吸わなくても自然に空気が入る。
(注.水泳での呼吸法=小だぬき)
職場などでは深呼吸の後、伸びなどをして少し体を動かすと、すっきりする。
休み明けがつらいといっても、いつもの職場で普段通りに仕事をするだけだ。
それなのになぜ、憂鬱になるのか。
「本当の意味で休めていないから、心身とも回復していない」と話すのは、ストレスケア日比谷クリニック(東京都千代田区)院長の酒井和夫さん。
「今や誰もがスマホやパソコンの“奴隷”になっている。
会社や取引先から、いつ連絡があるか分からない状況では、休みきれない」
現代人が疲弊している原因は、通信機器の発達のほかに、将来に希望が持てない時代背景も。
「高度経済成長の時は、会社が楽しい場所だった。
景気が悪く、先の見えない今は、九割以上の人が会社へ行きたくないし、働くことを苦痛に感じている」
そのため、「週休三日にするか、欧州のように、一年に一カ月のバカンスを取るくらいの余裕がないと、ストレス過多になる」と酒井さん。
解決法は、長めの休みを取ること。
「自分と家族のために、計画的に有給休暇を使い、リフレッシュする。
企業はもっと、社員に取得の推進を」と言う。
「本当に休むとは、携帯電話の電源を切るなど、いろいろなものから完全に自由になること。
心身の調子が悪くなる前に、休暇を楽しむことが、うつ病などの予防になる」と話していた。