漢方薬は使い方次第
2013年8月30日 読売新聞 yomi Dr.
(長年悩んでいた蓄のう症が漢方薬でよくなった患者さまがいました)
「漢方薬の使い方は、他の薬とどこが違うのですか?」と質問されることがあります。
別に目立った違いはありません。
漢方薬を新たに処方する場合、私が研修している心療内科では、必ず1週間後に患者さまに外来に来ていただきます。
予約は4か月先までいっぱいですから、予約以外の薬だけの外来訪問という手段を取っております。
予約なしで11時までに診察室にいらっしゃって、薬の効き具合だけを先生と話し、処方を続けるかどうか決めます。
漢方薬だからといって、すぐには効かないとか、飲み続けていればいつかは効くだろうということはありません。
確かな効果は、1週間ぐらいで出る場合があります。
あるいはまったく効果が見られないか、副作用が大きいこともありますから、それを診ます。
先日、長年の蓄のう症の治療に効果がないとおっしゃった患者さまに、漢方薬を処方しました。
辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)はエキス顆粒(かりゅう)で、効能は鼻づまり、慢性鼻炎、蓄のう症と書かれてありますが、内容は石膏(せっこう)、麦門冬(ばくもんとう)、黄芩(おうごん)、山梔子(さんしし)、知母(ちも)、升麻(しょうま)、百合(びゃくごう)、辛夷(しんい)、枇杷葉(びわよう)がそれぞれの割合でバランスを考えて混合され一包になっています。
この漢方薬で効果がかんばしくない場合は、その他に類似処方が2種類ほどあります。
その患者さまの場合は、抗生物質を少量続けて服用していただきましたが、めざましい効果があったようで、大変喜んでいました。
漢方薬を、その他の薬の処方とミックスする提案を私の研修先ではよくやりますが、それは担当医とかなり細かいコミュニケーションが必要とされます。
これまでどんな薬を飲んできて治らなかったか、治療方法はどんなものだったかの経緯を手帳などを見せていただき、説明していただきます。
ときおり「漢方だからいいでしょう?」とおっしゃって、決められた以上の用量でお飲みになる方がいらっしゃるのですが、電解質などのバランスが崩れてしまって、副作用がきつく出る場合もあります。
私もかつて、むくみを取る漢方薬をあせって勝手に飲んでしまい、脱水状態になったことがありました。
今では、常備薬として上手に使っています。
漢方薬は市販されているものも多いのですが、医師の処方のほうが内容が充実していて、値段も安いという利便性があります。
たとえば、葛根湯(かっこんとう)などは肩こりに効果があることはごぞんじの方が多くなりましたが、結膜炎などの炎症性疾患にも効果があります。
私も時々、ひどい口内炎が出来ることがあり、その多くは疲労が原因なのですが、葛根湯を練って患部に綿棒で塗りつけてしばらく口を閉じて唾液とまぜ、そのあと口を常温の水でゆすぐという作業を1日に何回かやっていると、確かに治りが早い。
その他にビタミン剤を飲み、早く寝る、お酒をやめるなど工夫はしていますが、応急処置としては痛みを緩和するので大変助かっています。