2013年9月2日 東京新聞「私説・論説室」
なぜ家族にすべての責任を負わせるのか。
八月に名古屋地裁で出た賠償命令は、認知症の人の介護にかかわる家族や事業者に、大きな衝撃を与えたに違いない。
判決はこうだ。二〇〇七年十二月、愛知県内に住む認知症の男性(91)が線路内に立ち入り、電車にひかれて亡くなった。
JR東海は遺族に「監督責任を怠った」として列車遅延に対する七百二十万円の損害賠償を要求。
同地裁は認め、妻と長男に全額支払いを命じた。
男性は八年前から認知症状が出始めて、事故当時は「要介護度4」。
徘徊(はいかい)もあるため、介護は週六日のデイサービスと、八十五歳の妻と県外から引っ越した長男夫婦が協力していた。
事故は妻がまどろんでいた間に男性が外出して起きた。
判決は医師の診断書などから事故を予見できたとし、「安全対策や注意義務を怠った」と断じた。
線路への侵入防止策を十分にとっていなかったJR側の責任は問わなかった。
遺族は怒りでいっぱいだろう。
認知症の男性を部屋に閉じ込めておけばよかったのか?
自宅でも、施設でも、ヘルパーに頼んでも、一瞬の隙もなく見守るなんてできないはずだ。
認知症の人が人生最期までよりよく生きるために、家族や事業者たちは日々、悩んでいる。
老老介護。介護のあり方。
みんなで考える時代に逆行しない、もっと温かな視点を込めてほしかった。 (佐藤直子)
このような場合『大岡裁き』が出来んもんですかねぇ。
東海旅客鉄道株式会社は、新しい鉄道に注ぐカネがあったら
こういう所にも氣配りをして貰いたいもんです。
儲けりゃーいいってもんじゃなぁないでしょ。
介護度4の方の事故に 損害賠償を求める会社の姿勢と踏切安全対策を取っていない会社の主張を認めた裁判所の判決、どう考えても理不尽です。事情が分かれば 列車の遅れで迷惑を受けた乗客も納得してくれる事故だと思うのです。余りにも非情な家族への仕打ちと思わざる得ません。記事として疑問をなげかけた佐藤直子さんのような記者がいることが唯一の救いです。是非 上級審で争って欲しいし支援もしたい事例です。私の母も介護度3、父も介護度1で 老老介護。徘徊がなくても目を離せないのは納得ですが 常時とはいきません。「うつ」の私も父が疲労でたおれないようにするのがやっとです。
みゆきんさんへ
こんな裁判では、弱いものがより悲しむ社会しかできませんね。