毎日新聞 2013年10月29日 東京地方版
毎週のように日本列島を台風が襲う。
伊豆大島などで大きな人的被害が出たが、診察室にもいろいろな意味で台風の影響を訴える人がやって来る。
一番多いのは、「直撃されたらどうしよう」と不安を訴える人。
東日本大震災以降、「いつまた大きな天災がやって来るのか」を考えて、いても立ってもいられなくなる人や、避難の準備をしておかないと夜、眠れない人も増えている。
そういう人にとって、時々刻々と近づいてくる台風は「目に見える恐怖」そのもの。
特に今年は突然の竜巻や土砂崩れなど予想のつかない被害も相次ぎ、「次は何が起きるのか」と不安を募らせる人も多い。
「大丈夫です。家から出なければ」などと慰めながら、こちらも「でも、思わぬ被害もあるかもしれない」と、正直言って不安になってくる。
さらに、台風の接近で気圧が変化することにより頭痛、肩こり、血圧の動揺、うつ症状の悪化など心身の不調を訴える人もいる。
「気象と健康」との関連については諸説あるようだが、患者さんたちの話を聞いていると確かに気圧や湿度変化に敏感な体質の人もいると言ってよさそうだ。
その人たちが言うには「特に台風のように急激に気候が変わる時が一番つらい」という。
ただ、ここまで台風や「ゲリラ豪雨」による被害が続いた結果、社会全体の防災意識が高くなってきたのは、よい傾向だと思う。
かつては、「少々の風雨なら休むなよ!」と出勤を強要していた会社や工場も、台風の接近が予想される日は従業員を自宅待機にしたり早退を促したりするようになってきた。
学校も早めに休校を決定しているようだ。
「根性さえあれば荒天も苦にならないはず」という誤った精神論が、ようやく消え去りつつある。
とはいえ、台風や地震など以外では、まだまだこの精神論を振りかざす人がいる。
学校や職場で「頑張れば何でもできる」「気合があればもっと働ける」などと追い込まれ、ボロボロになって診察室に駆け込む人は後を絶たない。
「うつ病で2カ月の自宅療養が必要」という診断書を書いても、「経営者に見せたら『長期の休み? とんでもない』と一蹴された」というようなケースも実際にあるのだ。
台風には早めの警戒や慎重な対応が必要。
精神論だけでは自然災害には対処できない。
そういう考えがようやく広まりつつある中で「頑張りすぎ、働きすぎにも早めの注意を。
精神論を押しつけてはいけない」というメッセージも一緒に広まらないものだろうか。
今日も寒い
明日はもっと寒いかな?
「春があるから 厳しい冬も耐えられる」
もっとユニークなのは
「寒くなるから 鍋物や麺類が旨い」
すべて小だぬきの日々メモです。