失敗したいわけではない
毎日新聞 2014年03月04日 東京地方版
ソチ・オリンピックから帰国したフィギュアスケートの浅田真央選手が、外国特派員協会で記者会見した。
試合や今回の結果を振り返った後で、
外国人記者が森喜朗元首相の「あの子は大事なところで必ず転ぶ」という発言についてどう思うか、と聞いた。
踏み込んだ質問にも、浅田選手が笑顔で「人間なので失敗する。したくてするわけではない」と切り返した言葉にハッとした。
これは、いろいろな場面で共通しているのではないか。
例えば診察室にやって来る人たち。
病が長引き、障害者として手帳や年金を申請しなければならなくなる人もいる。
申請書類は何通にも及び、医師の診断書もけっこう複雑だ。
「何とか今日中に診断書を書いてもらえませんか」と言われると、つい「診察が終わってから夜、遅くになりますけど」とぶっきらぼうに答えてしまい、患者さんは「本当にすみません」と何度も頭を下げる。
その姿に「そうだった。この人も病気になりたくてなったわけではないんだ」と今更ながら気づいて「こちらこそごめんなさい。なるべく急いで書きますね」と、不機嫌な態度を取った自分が恥ずかしくなることがある。
今はちょうど受験のシーズンだ。
合格する人がいれば不合格者もいる。
我が子が失敗すると、親はつい「どうして不合格なわけ? 勉強しないからこうなるのよ!」と叱ってしまうこともあるが、本人だって落ちたくて落ちたわけではない、ということは忘れないようにしたい。
もちろん、「したくてしたわけじゃない」と言って全てが許されるわけではない。たとえうっかりミスや過失であっても、相応の罰を受けなければならないこともある。
ただ、日常の場面では、特に一生懸命努力した人が期待された成果を上げられなかったからといって、「どうして?」「あなたが悪いから」と一方的に責めるのは控えたい。
特に病や障害を抱えている人、事故や災害に巻き込まれた人は、「それだけは避けたい」と思っていたのに、そうなってしまったかもしれないということをしっかり胸にとめておくべきだろう。
そうすれば、なりたくもない病、経験したくもなかった災難に関わることになってしまった人に対して、もう少しやさしくなり力を貸そうとしたくなるはずだ。
失敗したくてする人や、不幸になりたくてなる人はいない。
シンプルで、でもつい忘れてしまいそうになる大切なことをオリンピックから帰ってきた浅田選手は教えてくれた。
森さんだって、悪気はなかったのかも知れません。(これも“失敗”ですね)
みんなそうですね。みんながお互いに「間違わない人はいない、失敗しない人はいない」って思えれば、互いにもっとやさしくなれるような気がします。
人は誰でも間違えるものだと思えば、思ったことをもっと慎重に口にするようになるのではないかと思います。
そして、いつも言動に気をつけて精一杯生きてれば、間違ったり失敗したりしても、後悔するのではなくそれをいい経験としてこれからの人生に生かすことができるようになるんだと思います。
しかし、許せないことがあります。福島第一原発の度重なる事故です。それと政府の大企業擁護・弱者切り捨てです。
言葉とは 怖いもので 初めの発言が本音で、訂正や取り消し・謝罪ではすまない 人間の質が顕れる問題になりかねません。
森元首相発言への痛烈な皮肉と憐れみが 真央ちゃんの見事な発言には感じ取れます。
22歳にして 素敵な女性・知性になっている真央ちゃんに負けないよう生きていきたいです。