復興っていったい何?
毎日新聞 2014年03月11日 東京地方版
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から3年。
自分がどこにいて、この大災害とどういう関わりを持っているかで、「復興の進み具合」の捉え方は大きく違うと思う。
たとえ被災地に暮らしていても力強い復興への歩みを感じ、希望を持って日々を送っている人も多いはずだ。
私は東京にいるが、正直に言うと、ほとんど復興を実感できずにいる。
それは私があの日以降、被災地の自治体職員の、心のケアに携わり続けているからだ。
こういった大災害が起きると、仕事の量や内容が最も大きく変わるのが、役場や公立施設などの職員だ。
この震災では税務係や戸籍係といった部署に関係なく、多くの自治体職員が避難所や遺体安置所で苛酷な労働に従事した。
中には自分も家族や家を失い、悲しみの中にありながら、住民のために働き続けた人もいた。
それなのに、住民のために尽くすのが仕事である公務員にはねぎらいや感謝の声がかけられない。そんな中で心身の調子を崩す人も少なくなかった。
そういう自治体職員のための電話相談や現地での相談室を続けているのだが、その件数は2年たっても3年たってもあまり変わらない。
とはいっても、その件数は最初からそれほど多くなく、かといってゼロになることもなく、いつも同じペースを保っている。
しかもその内容は、震災直後より最近のほうが深刻になりつつある。
震災後、激増した業務のストレスに加え、自分の家族や同僚との人間関係など日常的な問題も出てきて悩みがより複雑になってきている印象がある。
なかなか進まない復興に、管理職らもイライラしてきているせいか、役所内でのパワハラも目立つ。
被災地自治体職員の電話相談の日。
今日も電話が鳴る。
「ずっと相談したかったのですが、その余裕もなかった。ようやくかけられました」と、匿名で被災地の役所に勤める人が震災以降、たまっていた思いを吐き出す。
最初はおずおずと、そしてそのうち声が大きくなり、涙で言葉が詰まることもある。
こんなことが2年前にも、1年前にも、そして今も続いている。
被災地の「支援者への支援」の重要性を感じている専門家仲間と一緒に相談に応じながら「復興っていったい何のこと?」と言いたくなることもある。
電話の件数ゼロが続く日など、本当にいつか来るのだろうか。
「きっと来るはず」と信じて、今は「進まぬ復興」に伴走していくしかないと思っている。