何が正しいのか。
これからどうなっていくのか。
2014年3月16日 東京新聞「筆洗」
真面目な正義の人。
どんな役柄にもそんな印象が強く残っている。
俳優の宇津井健さんが亡くなった
▼「ザ・ガードマン」や山口百恵さんと共演した「赤い疑惑」など、昭和のテレビドラマの歴史に大きな足跡を残した
▼「赤い運命」(一九七六年)の子どもを取り違えられてしまった父親の役を覚えている。
宇津井さんに対し、敵役の三国連太郎さんが何と憎らしかったことか。
みけんにシワを寄せる宇津井さんの深刻な芝居や、ドラマの分かりやすい展開を思い出すと、昭和の日々が戻ってくる
▼俳優座養成所で同期の仲代達矢さんは「暗い役が多い自分に比べ、明るく健康な青年を演じていた」と回想する。
なるほど、仲代さんの「凄(すご)み」や、同じ三一年生まれの高倉健さんの背負った「苦悩」「忍耐」や勝新太郎さんの「色気」「狂気」。
いずれも宇津井さんは持ち合わせていない
▼宇津井さんの良さは迷いのない「善」である。
堅苦しいほどの正しさ。
良い夫で良い父親。
苦しくとも真面目に生きていれば、きっと幸せになれる。
いいことが待っている。
そんな宇津井さんの役柄は成長期の昭和という時代全体が醸し出す空気にぴたりと合っていた気がする
▼何が正しいのか。これからどうなっていくのか。価値や方向さえも分かりにくい現在にあって、宇津井さんの死が無性に寂しい。どうも後ろばかりを振り返らせる。
2014年03月17日
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お悔やみ申し上げます。
ザ・ガードマンが一番 宇津井さんらしい演技だと思います。
私もご冥福をお祈りします。