2014年04月04日

香山リカのココロの万華鏡:医療特区の理想と現実

香山リカのココロの万華鏡
 医療特区の理想と現実
毎日新聞 2014年04月01日 首都圏版

文部科学省は、世界の医療分野をリードする人材を専門に育てる「国際医学部」が必要と判断して、医学部新設の検討を始めたそうだ。

政府は世界最高水準の医療を提供できる国家戦略特区の設置を計画しており、そのための人材育成を目的としているとのことだ。

 日本の医療水準は現在でも世界有数を誇っているが、世界で活躍する教授らと優秀な学生が集まる国際医学部は、どれほどの高レベルになるのだろうか。

もちろん公用語は英語で、スタッフは「明日はパリで講演、週末はロンドンで手術」と、世界を飛び回るのだろう。

世界からセレブが超一流の健康診断や治療を求めてやって来て日本経済の後押しもしてくれるに違いない。

 夢のような華やかさだが、ふと現実に引き戻されると手放しで喜ぶわけにもいかない、という気分になる。

日本では今、あちこちの医療現場、特に地方では深刻な医師不足にあえいでいる。

地域医療の中核を担うはずの公立病院からも常勤医がいない、外来を閉鎖せざるをえない、という声が聞こえてくる。
また、都市の病院であっても、小児精神科などまだまだ人材不足に悩む科も少なくない。

 私は現在、東京で民間の診療所に非常勤で勤務しているが、パソコンのメールボックスを開くと、毎日のように医師の転職情報サービスからメールが届いている。

私自身、転職などまったく考えていないのだが、「年収も休日もたっぷり」「都心で働きませんか」といった魅力的な誘い文句を日々見せられるとなんとなく気になってくる。

もし今、地方で多忙な病院に勤めていたら、きっと誘いに乗ってしまったのではないかと思う。そう考えると、激務を離れて都市のクリニックに移る医者を責める気にはとてもなれないのだ。  

文科省が考えている「国際医学部」はどうなのだろう。
世界水準で腕を試したい、という野心を持つ医者や学生は、そこでの勤務や勉強を希望するのではないだろうか。
向上心は否定されるべきではないが、その分、一般の地域医療に“空席”が生じることになる。

 もちろん、理想は最高水準の医療も地域医療も、ともに充実することだ。

とはいえ、それが現実的でないことは誰の目にも明らか。

となると、少数のセレブが恩恵を受ける「世界最高」と無数の人のための「地域一般」、どちらのレべルを優先すべきか、ということになるのではないか。

 その答えはあえてここには書かず、みなさんはどう思いますか、と尋ねたい。
posted by 小だぬき at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
医者不足は深刻な問題
だけど、頭脳明晰だけじゃなく、それなりに財力も必要だから大変
そして医者になったら、やっぱりお給料の高い所にいっちゃうのかな・・・。
Posted by みゆきん at 2014年04月04日 09:06
以前より弱くなったとはいえ 東大閥の支配や医局制度で 勤務医は生活が大変なようです。

財産があれば 独立開業も可能でしょうが それでも紹介病院が必要な場合は 医局の束縛から逃れられません。
日本の医療をダメにしているのは 厚生省と各学会のようです。有能な人は 諸外国に行き 臨床経験や研究に努める傾向が大なようです。

東大医学部学園闘争の時の医局は、ブラック企業なみの残業と無料に近い賃金でした。
Posted by 小だぬき at 2014年04月04日 15:14
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