余録
「高いつもりで低いのが教養/低いつもりで高い…
毎日新聞 2014年04月04日 01時40分
「高いつもりで低いのが教養/低いつもりで高いのが気位(きぐらい)/深いつもりで浅いのが知識/浅いつもりで深いのが欲の皮/厚いつもりで薄いのが人情/薄いつもりで厚いのが面(つら)の皮……」。
これは「越中富山の薬売りの秘伝」の一つという
▲富山の薬売りがお客の家に置き薬と共に置いていく標語集にあった言葉というが、この後もある。
「強いようで弱いのが根性/弱いようで強いのが意地/多いようで少ないのが分別(ふんべつ)/少ないようで多いのが無駄」(寺田(てらだ)スガキ著「『言葉』の置きぐすり」東邦出版)
▲最初に「教養」が出てくるが、昔は薬売りがへき地で「先生」と呼ばれ、代書や講演を頼まれる場合も少なくなかったという。
教養と礼儀とはお客の信頼を得る決め手とされていた。
だが今やもっぱら「欲の皮」「面の皮」ばかりが目立つ先端医薬の売り手も現れた
▲降圧剤の臨床試験疑惑を機に臨床試験への社員の関与を禁じたはずの製薬会社ノバルティスファーマである。
だがその後、白血病治療薬の臨床試験への関与が発覚し、調べるとその中で重い副作用があった事例を把握しながら国への報告を怠っていたことも判明した
▲試験への関与の中止よりも隠蔽(いんぺい)という「面の皮」の厚さ、薬の安全より販売促進という「欲の皮」のつっぱり方、いやはやなみたいていではない。
さすがにスイスの本社から来日した同社社長は日本法人のトップらの総退陣を発表した。
後任は全員が外国人となった
▲少なすぎたのは、やはり「分別」というしかない。こちらは薬の臨床研究と販売促進とを企業内においてはっきり「ぶんべつ」できるふんべつのことである。