2014年04月21日

照れも遠慮もない。車内の好奇の目も気にならない。母親を楽にしてやりたいという気持ちしかなかった

筆洗
2014年4月20日 東京新聞

 混み合う通勤電車の中で風体のよからぬ中年の男に声を掛けられた。
三十年ほど前の話である。
若い時の川谷拓三さんに似ていた。
たまたま、自分は座っていた。
「学生さんか」「ええ」「席をかわってくれねえか」

▼男は健康を害しているようには見えない。
むしろ頑強そうである。
厚かましいなとは思ったが、断れば面倒なことになる気もした。
席を立った

▼自分が座るのかと思っていたらそうではなかった。
車内の奥から年老いた小柄な女性を連れてきた。
「かあちゃん、席をかわってもらった」。
母親はすみません、すみませんと何度も頭を下げた。
男は、オロナミンCを自分に差し出した。「疲れちゃうからさ」

▼この男を恐れた自分を恥じた。
男のようにあっけらかんと生きたいとさえ思った。
男には照れも遠慮もない。車内の好奇の目も気にならない。母親を楽にしてやりたいという気持ちしかなかった。
あの母親にはいつまでも長生きしてほしいと本気で思った。
あの男のために

▼韓国南西部の珍島(チンド)沖。
沈没した船の中に大勢の人が閉じ込められている。
つらい。
本当につらい。
日本政府は支援を申し入れたが、韓国側は今は必要ないといっている

▼事情もあるのだろう。海域が混み合うことを心配しているのかもしれないが、もし変な遠慮であれば、それはあまりにも悲しい。
あの男と母親はどうしているか。
posted by 小だぬき at 12:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
感動して涙が零れた。
Posted by みゆきん at 2014年04月21日 14:24
母思いの心情が溢れていますね。
ただ座っている立場からだと 怖い気持ちも分かる・・。ただこの母思いの男性も 元気そうな学生に頼む所がいいですね。

私も妊婦さんに席を譲った経験があります。

一番腹が立つのは、座って当然な態度をとる中年以上のおばさんと 管理職タイプの男性。意地でも譲るものかと思った記憶があります。
Posted by 小だぬき at 2014年04月21日 15:43
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