2014年06月13日

製薬元社員逮捕 医師との癒着の解明を

製薬元社員逮捕
 医師との癒着の解明を
毎日新聞「社説」 2014年06月12日

 製薬会社ノバルティスファーマの降圧剤「バルサルタン」(商品名ディオバン)を巡る臨床試験疑惑が、刑事事件に発展した。

 東京地検特捜部は元社員を薬事法違反(虚偽広告)容疑で逮捕した。

京都府立医大の臨床試験データをバルサルタンに有利になるように改ざんし、論文に掲載させていた疑いが強まったためだ。

今後は、ノバルティスの組織的な関与や医師、大学側とのかかわりが焦点となる。

捜査当局には、医師と製薬会社の根深い癒着を徹底して解明してもらいたい。

 疑惑が指摘された臨床試験は、バルサルタンについて、他の降圧剤よりも脳卒中予防などの効果が大きいかどうかを国内5大学が検証するものだった。
ノバルティスは「効果あり」との論文を宣伝に多用し、バルサルタンは累計売り上げ1兆2000億円を超す大ヒット薬になった。

 ところが、5大学すべてでこの元社員が肩書を伏せたまま論文のデータ解析に関与していたことが発覚。
各大学が調査に乗り出し、府立医大、東京慈恵会医大、滋賀医大、千葉大でデータ操作された疑いが判明した。
ノバルティスは当時の社長らの決裁を経て、5大学に計11億円を超す奨学寄付金を提供していた。

 こうした金銭の流れは強い癒着ぶりを感じさせる。

 厚生労働省が設置した有識者検討委員会の調査では、関係者いずれもがデータ操作への関与を否定したため、同省は今年1月、容疑者不詳のまま刑事告発に踏み切った。

 元社員は、知人男性に「会社が自分のせいにしようとしている。裏切られた」と話していたという。

検討委によれば、ノバルティスも、寄付金が臨床試験のために使われることを期待していたことは認めている。
常識的には、元社員が個人の意思で操作をしたとは考えにくい。

 複数の大学で、データ操作の疑いが発覚したことも疑惑を深めている。
臨床試験には多くの研究者らがかかわっている。
だれも改ざんを見抜くことができなかったのか。
医師側の関与は本当になかったのか。

 製薬会社は、同じ薬効を持つ他社製品と差別化するため、自社製品の副次的効果を臨床試験で見つけ出そうとする。
そこに医師と製薬会社のもたれ合いも生まれる。
バルサルタン疑惑はその典型例といえる。

 日本製薬工業協会は、自社の薬が対象の臨床試験に絡み、医師側への奨学寄付金の提供禁止を加盟社に通知した。

厚労省も臨床試験の法的規制に関する議論を始めた。
バルサルタン疑惑が問題となっている今こそ、制度改革を進め、もたれ合いを断つ好機だ。

国や医学界、製薬業界は再発防止に全力を挙げてほしい。
posted by 小だぬき at 00:00 | Comment(3) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
国や医学界、製薬業界は再発防止に全力を挙げてほしい。・・・同感です。人は利益が絡むとそちらに行きやすい! ブックマークさせて頂きました。
Posted by Ms mimi at 2014年06月13日 09:33
裏切りの裏には金
世の中、正直者が損をするなんて・・・。
残念な国だわ
ここだけは、中国や韓国と同じ人種だと思う。
Posted by みゆきん at 2014年06月13日 12:50
この医療と製薬会社の癒着問題は 昔からありますが、データー改ざんというのは許しがたい行為です。
薬害に苦しむ人を増やしてしまいかねませんからね。

私など数回手術して悩むのは「医師へのお礼」の問題です。原則は 渡さない方がいいとわかっていても なかなか決断できないもので困ります。

防衛医科大学に弟が入院した時は ナースへのお礼さえ断られました。ごみにしてもいいから 置かせてくださいと菓子折りを角に置いたのですが、とっても新鮮で好感をいだきました。
Posted by 小だぬき at 2014年06月13日 16:10
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