石井苗子の健康術
現代の「夏バテ」を乗り切るには
2014年6月13日 読売新聞yomiDr.
(医学専門用語ではありませんが、自覚しやすい体調不良です)
自分のことで申し訳ないのですが、私は食欲を抑えることに精いっぱいで「食欲不振」を体験したことがないのです。
「夏バテ」という夏の暑さのせいで何も食べなくなり、結果的に栄養が偏ってしまい、体調不良になっていくことについても体験談ができないのですが、昔と今は「夏バテ」の解釈が違うと最近知りました。
以前は夏が過ぎると、体が重くなり倦怠感が増し、食欲不振になって気力が減退し、痩やせるといった症状がでるのを「夏バテ」といっていました。
今の夏バテは夏の真っ最中に起こります。
大きく分ければ、ひとつは熱中症、もうひとつはエアコンによる冷え過ぎから起こる夏バテです。
冷え過ぎも女性だけとは限りません。
男性も冷え過ぎにご注意です。
男性のほうが女性より筋肉の量が多い分だけ熱中症にかかりやすい。
水分補給は大切なのですが、最近はどこでも手軽なコーヒーショップがあったり、自動販売機がありますので、つい冷たいものを飲みすぎてしまう。
そして夜はビール。
気がつくとお腹なかの中でちゃぷちゃぷと水分の音がする。
これは具合が悪い証拠です。
胃の調子がよくありません。
先日から梅雨入りしましたが、人間の体はこのベトベトした梅雨の間に汗をかき、夏の準備を始めるのですが、最近はちょっとでも蒸し暑いとエアコンをつけます。
ジメジメしたまま空気だけ冷えているという、最も体によくない状態でデスクワークをしていることになります。
冷たいものを飲むのを控えるといった生活習慣は実行できるでしょうが、公共の建物や乗り物で体が冷えるのはどうしようもありません。
オフィスでも快適温度が人によって違いますから、自分の好みでは変えられません。
現代人は、梅雨時からすでに「夏バテ状態」で猛暑を迎えていますので、猛暑がくるころに体力が減退しています。
したがって、夏の終わりごろになると大バテバテになっている方もいらっしゃいます。
今年から予防に心がけてみられたらどうでしょう。
50代以降の男女がこの梅雨時の夜、お酒を飲みすぎると夜中から明け方にかけて「こむら返り」を起こすことがあります。
そんな経験がおありの方は、内科で芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)エキスを処方してもらうことをお勧めします。
「病気でもないのに医者に行くなんて…」と思わないで体調がすぐれないという状態は治療と予防のどちらも必要です。
夏バテ症状の一つに、外回りが多くて汗を大量にかき、疲れのために食欲不振になられている方は、「清暑益気湯(エシショエッキトウ)」がお勧めです。
家の中でエアコンをつけて暮らし、けだるさからついついベッドに寝転がってしまい、やる気がおきず、消化器官がすべて衰えていく感じがする方は「補中益気湯(ホチュウエキトウ)」。
手足が冷え、食べたいと思うのだけど胸がつかえて食が進まず、胃腸が年中弱い方には「六君子湯(リックンシトウ)」。
パソコン仕事をしているのに喉が渇き、それなのに尿量が少なく、体がむくむ、あるいは下痢に悩むといった方には「五苓散(ゴレシサン)」がお勧めです。
どの症状も少しずつ察されるからといって、いっぺんに全部飲まないでください。
必ず医師に相談して、最初は1週間、朝、夕2回ぐらいから様子をみながら体にあった漢方を始めるのがよいかと思います。
エアコンがある環境で働く女性は腰だけあたためる電気ざぶとんをいすにおいて温めたり、スイッチを切ったりをまめにやると体調がよくなります。