2014年07月03日

使用一瞬、依存一生

香山リカのココロの万華鏡:
使用一瞬、依存一生
毎日新聞 2014年07月01日 首都圏版

東京・池袋で車が暴走し、8人が死傷する事件が起きた。

運転していた男性は「脱法ハーブ」を購入して使用していたことを認めており、暴走はその影響と考えられている。
許されない話だ。

 「ハーブ」という名前はついているが決して植物性のものではなく、覚醒剤や大麻と似た作用のある化学物質を植物のかけらにまぶしたりした加工製品である。
それら化学物質の多くはがんの鎮痛など当初は医療用に開発されたものが不法な経路で流出し、加工されて売られているのだ。

 あたかもリラックス効果のある安心な天然素材というイメージで手を出す人もいるようだが、含まれる成分は非常に強力だ。

摂取してすぐの急性症状としては興奮、幻覚、けいれんや嘔吐(おうと)、意識障害などが起き、頻回の使用で慢性の精神病状態に陥ったり、心身の依存が形成されて手を切れなくなったりして人生が崩壊してしまうケースも少なくない。

その強烈さと恐ろしさは一般の「ハーブ」のイメージとはほど遠い。

 厚生労働省はこれまで1300種以上の化学物質を有害な「指定薬物」として覚醒剤や大麻と同様に所持や使用を禁止しているが、それをすり抜けるかのように新しい化学物質が出回り、取り締まりが困難となっている。

 かつて交通事故撲滅を呼びかけるコピーで「注意一瞬、事故一生」というのがあった。

脱法ハーブの後遺症で苦しむ人を見ると、私はいつも「使用一瞬、依存一生」だと思う。

使ったのは人生の中のほんの一時期であったとしても、その人はその後、薬をやめるために多大なエネルギーを使ったり、ぶり返す精神病のような後遺症で仕事もできなくなったり、あまりにも大きな“ツケ”を払わなければならなくなる。

「あのとき、誘いに応じて気軽に手を出したばっかりに」と悔やんでもどうにもならない。  「ハーブ」「アロマ」「サプリ」といった名で「飲んでみない?」と差し出される錠剤や液体。

とくに相手が恋人や友人の場合、断ったら人間関係にヒビが入るのでは、と「一度だけなら」と義理で応じてしまう人もいる。
しかし、その最初の一錠が不幸の扉を開けるかもしれないのだ。

よくわからないものは「私、アレルギーがあるから」とでも言ってとにかく口に入れないでほしい。
それで「なんだ、もう友だちじゃないよ」などと言う相手は、はじめからあなたのことなど大切にしていないのだ。
脱法ハーブのまん延は何としても防がなければならない。(精神科医)
posted by 小だぬき at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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